小説紹介『アナンシ号の降下』


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小説紹介『アナンシ号の降下』

 AD2045の参考にできそうな小説の紹介です。
 実はこの作品、古本屋の店頭で発見するまで名前も聞いたことが無かったん
ですが……。

 創元推理文庫『アナンシ号の降下』ニーブン&バーンズ
 ISBN4-488-67702-9

 一種のテロものです。海賊ものといってもいいのかも知れない。谷甲州の軌
道傭兵シリーズなどを思いだすような内容でしたけど、こっちのほうが古いん
ですね。


初期状況

 軌道上の研究開発企業フォーリング・エンジェル社がNASAの支配から独立を
宣言、アメリカとの対立が起きる。
 対馬海峡に橋をかけるために無欠陥鉄のケーブルを大山建設が購入した。資
金的には大きな賭けであった。この無欠陥鉄はフォーリング・エンジェル社が
最近制作したものである。
 大山建設を傘下に納めるためにブラジル・テキメタル・エレクトロモーター
ズは、ケーブルの奪取をもくろむ。そのためにブラジル軍と回教徒活動家戦線
連合を動かした。


事件

 ケーブルを搬送していたシャトル、アナンシ号のエンジンが時限爆弾で爆破
され、その後救援と称してやってきたのがブラジルのシャトル二機。
 月軌道にも地上へも向かうことのできない状況に陥ったアナンシ号は、どう
やってブラジル船の襲撃を乗り切り、逃れることができるのだろうか。


解決法

 積み荷のケーブルをテザーとして利用して、ケーブルの末端を高軌道に、シャ
トルを低軌道に移動させた。ブラジルのシャトルは旧式(アメリカの初期シャト
ルとあるから、今のスペースシャトルですね)なので高軌道には遷移する推進剤
がないため、ケーブルを回収できない。また、潮汐力で移動するシャトルを捕
らえるだけの機動力を実現するような推進剤もない。
 ケーブルの回収が敵の目的であるため、ケーブルの切断はされない。移動が
不十分な時点での人間による襲撃と、ケーブルを収納しているポット(ここか
らケーブルが繰り出されている)に取り付いてなんらかの方法でケーブルの展
開をを止めるられることが危険要因として残った。シャトルは重いので追い付
けないが、人間なら追い付けるわけである。(機動力はあるが最終到達速度は
遅いわけですね、人間用の機動装置は)


戦闘1

 ブラジルのシャトルからの襲撃。三人が無反動ライフルを持って接近、エア
ロックを爆破して進入しようとした。この時、機動装置の操作ミスで一人が脱
落している。宇宙空間ではちょっとした操作ミスで助からなくなるものである。
 アナンシ号側は、(地上用)消火器と信号弾から取り出した雷管を使用して改
造し、迎撃した。消火器ってのは結局炭酸ガスボンベで、ガスで相手を吹き飛
ばし、消火器の破片で相手の宇宙服を傷つけることを狙った。


戦闘2

 もうひとつのシャトルの乗員がケーブルにナイフを噛ませて速度を落として、
繰り出せなくした。これはアナンシ号の乗員には予想外だった。
 ケーブル操作用の道具を漁ってケーブルを伝って移動するための滑車(ケー
ブル・グリッパーと呼ばれている)を発見し、それを用いて300km上空のケーブ
ル・ポッドまで向かい、敵を排除することにした。しかし、人力で行かねばな
らないし、酸素が足りない自殺任務だった。
 とりあえず奇襲効果でポッドに取り付いていた乗員を取り押さえたものの、
シャトルからはもうひとりの乗員が無反動ライフルをもって襲撃。宇宙機動に
不慣れな敵から逃れ、背後から一撃して倒した。
 その後ブラジルのシャトルの乗員と交渉、フォーリング・エンジェル社に移
籍する可能性を条件に投降させた。



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