エピソード『眠る』


目次


エピソード『眠る』

登場人物

鬼李(きり)
影猫。性格的に一番おとなである。
鬼崎野枝実(きざき・のえみ)
影使い。
宮部晃一(みやべ・こういち)
超能力者。野枝実らに救出され同居中。

本編

某日、夕刻。野枝実の部屋の扉が、がちゃり、と音をたてる。

晃一
『あ、おねえちゃんだ』
野枝実
「……ただいま」

  ぼそっと言うと、溜息をついて目をこする。
鬼李
「どうした?」
野枝実
「ちょっと長距離運転した」
鬼李
「……お前が?」
野枝実
「車運転してた奴が居眠りしそうになったんで、代ったん だけど、こちらもいつも運転してる訳じゃないし、他に二、三人乗っかってるし」

  ぼそぼそ言いながら靴を脱ぎ、部屋の真ん中まで行った途端。
野枝実
「……寝る」

  ころん。体を丸めて、野枝実はそのまま床に転がった。
晃一
『野枝実お姉ちゃん?』
野枝実
「ごめん。一時間寝る。ご飯その後で作るから……」

  語尾が消える。
鬼李
「……よく事故らなかったもんだ(感心)」
晃一
『鬼李、お姉ちゃん、お布団敷かなくって』
鬼李
「ああ、いらんいらん。そんなものあった日には、一時間 で起きなくなる」
晃一
『でも』
鬼李
「確かに一時間で起こすってのも難題だけども」
SE
TELTELTELTEL……

  晃一が反応するより、野枝実が起きる方が速かった。
野枝実
「もしもし……ああはい……明日ぁ? そりゃ無理だ…… じゃ」
SE
 かちゃん。

  野枝実は不機嫌な顔のまま受話器を置き、またそのまま丸くなった。
晃一
『お姉ちゃん、よく起きれるね』
鬼李
「基本として寝起きはいい奴だから」
晃一
『今まで寝てたのに』
鬼李
「熟睡……既にしてるな。しょうがない……」
SE
TELTELTELTELTEL……
不機嫌そのもの、の顔で野枝実が起き上がった。
野枝実
「もしもし……ああ、それなら聞いた。知ってる。……だ から、やるのは良いけどあんたらでやればいいだろ。今日知って明日、てのが急すぎる。こちらも予定がある」
SE
かっちゃん。

  ふう、と溜息をついた矢先。
SE
TELTELTELTEL……
野枝実
「いい加減にしてくれっ……もしもし! ……何だ母さん。 何一体……だから用事も無いくせにかけてきて、不機嫌も何も無いでしょうが。切るよっ」
SE
がっちゃん。

  頭を抱えて、野枝実は座り込んだ。
野枝実
「こういう時に限って……」
鬼李
「日頃の行いが悪いとみた」
野枝実
「やかましい」
鬼李
「まだ眠いのか」
野枝実
「まだも何も、まだ寝てない! ……寝る」

  宣告すると、ころんと横になる。
野枝実
「(どすの効いた声で) 少年」
晃一
『え?』
野枝実
「今から一時間ね」

  きっぱり言うが早いか、野枝実の体から力が抜けた。

解説

野枝実の性格を示すための日常系エピソード……だと思います。コントみたいな構成の繰り返しギャグですね。


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