エピソード『バイトするっ』
- 姫野薫(ひめの・かおる)
- 人造人間。3ヶ月ごとに性別が入れ替わる。
- 姫野洋子(ひめの・ようこ)
- 売れっ子漫画家でマッドサイエンティスト。
- 薫
- 「あ、はい、はい、では明日ですね。はい、解りました」
電話を受けている薫。7月までは男性形だったが、今出は立派な女性形である。
- 洋子
- 「なによ、あんたが電話なんて珍しいじゃない」
- 薫
- 「(受話器を置いて) なぁ、洋子」
- 洋子
- 「なに?」
- 薫
- 「俺……」
- 洋子
- 「はい、減点1! あんたは今、女の子なんだから。もう
ちょっと言葉遣いを女の子らしくしなさい」
- 薫
- 「あ、ごめん……なさい」
- 洋子
- 「で、なんなの?」
- 薫
- 「あ、そうだ。俺……私、バイトしようと思うんだけど」
- 洋子
- 「なんでっ? 私が十分稼いでるじゃない!」
- 薫
- 「だって、洋子ばかり仕事してて。お……私、なにもして
ないし」
- 洋子
- 「いいじゃない、あなたは私のアシスタントしてるし、家
事もしてるじゃない」
- 薫
- 「明日……面接なんだ。ダメ?」
- 洋子
- 「(少し考えて) まったく、そういうところは誰に似たの
か……」
- 薫
- 「(ぼそっ) 人間の因子は洋子のしか入ってないんだけど
な」
- 洋子
- 「で、どんなバイトなのよ。変なのだったら許さないわよ」
- 薫
- 「あ、これなんだけど(紙を見せる)」
『中原医院・アルバイト募集中要項』
勤務時間8:30〜19:30
五時間以上
月〜金週三日以上
仕事薬剤の整理
資格20〜40歳位まで
経験者優遇
時給900円 賞2
交通費全額支給
まずは電話にて確認を。委細面談。
- 洋子
- 「うむ……まぁ、いいわ。ちょうどいい社会勉強になるで
しょう、行ってらっしゃいな」
- 薫
- 「ありがとっ(抱き付きっ)」
- 洋子
- 「ちょ、ちょっと(考え込んで) これは……ネタになるわ
ねぇ(にやり)」
- 薫
- 「ここ、だな」
目の前には『中原医院』と書かれた看板がある。
- 薫
- 「あのー、昨日電話したものですけど」
- 受付の人
- 「ええと、姫野さん……かしら?」
- 薫
- 「あ、はい。そうです」
- 受付の人
- 「それじゃそこを行ったところに診察室がありますから、
そこへ行ってください」
- 薫
- 「あ、はい」
てくてくと歩いていく薫
- 薫
- 「(むぅ、確か研究所もこういう匂いがしたっけ)」
ガチャリ
- 薫
- 「失礼します」
- 中原
- 「ええと、あなたは確か……」
- 薫
- 「あ、姫野薫です。あのバイトの面接で……」
- 中原
- 「そうそう。あやうく忘れてましたよ(にっこり)」
- 薫
- 「……(この先生大丈夫なんだろうか)」
- 中原
- 「それじゃ、そこに座ってもらえますか」
- 薫
- 「あ、はい」
- 中原
- 「えっと、バイトの内容は薬の整理なんですけど。何か資
格とか持っていますか?」
- 薫
- 「ええっと、資格は持っていないんですけど、薬学を少し」
- 中原
- 「薬学ですか。それは都合がいいですね。他には何かあり
ますか?」
- 薫
- 「西洋白魔術とか……」
- 中原
- 「西洋白魔術? ……というと、ケアルとかホイミとかで
すか?」
- 薫
- 「はあ、そんなところです」
- 中原
- 「そうなんですか。なるほどぉ……(考え込む)」
- 薫
- 「あの、なにか……」
- 中原
- 「明日から来れますか?」
- 薫
- 「えっ、あ、はい。もちろんです」
- 中原
- 「それじゃよろしく。あ、詳しいことは受付の所にいた看
護婦さんに聞いてください」
- 薫
- 「あ、はい。失礼します」
ガチャリ
- 薫
- 「(やった、バイトできるぞぉ)」
- 看護婦
- 「あの、先生」
- 中原
- 「はい?」
- 看護婦
- 「あの方、西洋白魔術っていっていませんでしたか?」
- 中原
- 「はあ、そう聞こえましたが」
- 看護婦
- 「……またそっち方面の人ですか」
- 中原
- 「いいじゃありませんか。面白ければ全てよし、ですよ」
- 看護婦
- 「やっかいごとにならなければいいですけれど……」
中原医院に姫野薫がバイトとしてはいるまで……の話です。このあとの騒動などは……書かれていたっけな?
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