エピソード『かわった伊勢エビ』


目次


エピソード『かわった伊勢エビ』

登場人物

白井みき(しらい・みき)
  長谷川の縁者。どんな鬼にでも「お・ね・が・いっ★」ができる女子高生。ひとみの妹(2卵性双生児)。
白井ひとみ
  長谷川の縁者。妹と同じような能力を持っているが、ただし通じる相手が人間をメインとする部分が違う。
長谷川伴緒(はせがわ・ともお)
  長谷川郷の武芸者。白井姉妹の兄替わり的側面あり。
本宮友久(もとみや・ともひさ)
  魔性の瞳の持ち主。一応、死んだことになっている。

水族館にいこう!

夏休みもそろそろ終りの8月30日。場所はサンハイツ吹利103号室、長谷川伴緒の部屋。

友久
「すると、この水族館に古代魚がいる?」
伴緒
「真名見の見立てだとそうなるな。現在の仕事にどれだけ 関わるかはわからないが」
友久
「関わらないことを確認しておくのも必要だろう」

  畳の上に散らかっている水族館のパンフと地図。地図には真名見の字でいろいろと書き込みがされていた。
友久
「しかし、古代魚か……」
伴緒
「刺身にすれば食えるのかな?(笑)」
友久
「そいつで一杯やるか?(笑)」
伴緒
「土佐の酒がいいぞ(にや)」

  馬鹿なことを話していると。
SE
ぴんぽ〜ん
伴緒
「はい?」
ひとみ+みき
「伴緒ちゃ〜ん、開けてっ!」

  伴緒の愛敬はあるが武骨な顔を見、思わず吹き出す友久。伴緒は苦笑し、ドアのチェーンと鍵を外す。
ひとみ
「あれ、お客さんだったんだ」
みき
「(友久に) こんにちは〜(手をパタパタ振る)」
伴緒
「いつ来たんだ、おまえら……上がれよ。すまんな、本宮」
ひとみ
「お土産に梨持ってきたよ」
みき
「ほら」

  みきが下げていたバッグには、梨が10個ばかり詰まっていた。
友久
「じゃあ、おれは失礼しようかな」
伴緒
「遠慮は無用だが……梨だけ食って帰ったらどうだ」
みき
「じゃ、剥くね」
ひとみ
「伴緒ちゃん、あたしらの荷物、そこらに置いといて」

  アパートに入るなり荷物を伴緒に押しつけ、台所に立つ二人。剥き上がった梨は……。
伴緒
「……一つ聞きたいんだが」
ひとみ
「なに?」
伴緒
「十個全部剥いてどうする気だ?(汗)」
ひとみ
「もちろん食べるんでしょ(にっこり)」

  友久の方はすでに梨の刺さったフォークを押しつけられ、しゃくしゃくと食べ始めていた。
  その友久が無造作に押しのけたパンフレットに、みきが目を止める。
みき
「あ、吹利に水族館があるんだ」
ひとみ
「なんか涼しげでいいよね〜。でも、なんでこんなもんあ ……るの?」

  伴緒、答えずにちらっと笑っただけ。しかし、白井姉妹にはそれで十分であったらしい。
ひとみ
「なるほど」
みき
「お仕事で水族館かあ……でも、男同士で行くの?」
友久
「それは確かに問題だな」
みき
「じゃ、一緒に行かない?(にこにこ)」
ひとみ
「それいいね。ね〜ね〜、行こ。連れてってくれるよね(上 目使いでにっこり)」
伴緒
「その上目使いはやめろよ。……いいだろ、邪魔にはなるなよ」
みき+ひとみ
「はぁ〜い」
友久
「いいお返事だな(笑)」

水族館!

中はひんやりした空気が流れ、照明はあまり明るくない。壁に埋め込まれた水槽には、様々な魚が泳ぐ。

アナウンス
「只今より、大水槽にてイルカの餌づけを行ないます」
みき
「行こ〜」
伴緒
「……仕方がないな」
友久
「(伴緒だけに聞こえるように) 今のところ、異常なし…… だな」

  階段を上がって大水槽へ。四人が到着した時はすでに、餌づけが始まっていた。……が。
伴緒
「あのイルカ、どこか変わっているような気がするが」
友久
「そうだな。いろいろな種類がいるようだ」

  イクチオサウルスをみてコメントする野郎二人。
みき
「あの人、すごいよ」
ひとみ
「さっきからずっと息つぎしてないよねえ」

  水槽の中で餌をやる鱶水を見ながら感心する双子姉妹。餌づけが終ると、散ってゆく他の客と一緒に4人も大水槽を後にする。
  そして、次は甲殻類のコーナーへ。片隅にある水槽のラベルは「伊勢蝦の変種」。しかし中身は……アノマロカリス。それを見て、
伴緒
「(こそこそと) これが古代魚か?」
友久
「(ひそひそ) そうらしいが……自信はないな」

  言っている野郎どもを後目に。
みき
「この伊勢蝦、かわってる〜」
ひとみ
「おいしそ〜」
みき
「焼いて食べたら良さそ〜だよね☆」
伴緒
「……食うな(汗)」

解説

結局事件の導入部近辺で終わっているのですが……。
  本来は、霞山動物園水族館の職員にして魚人協会会員の鱶水一ノ介との対決、もしくは妥協・合意形成の話に持っていく予定だったはずです。そちらのプレイヤーのひとが居なくなっちゃったんで、続かなかったわけですが……。


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