エピソード『女の香り……』


目次


エピソード『女の香り……』

登場人物

薔氷冴(みずたで・ひさえ)
バー FROZEN ROSES の経営者。呪符使い。
我那覇鷹央(がなは・ようおう)
老若男女どんな人間にも化けられる役者。
本宮友久(もとみや・ともひさ)
空間操作能力者。

本編

裏路地にある古い洋館を改装して作ったバー。FROZEN ROSES……
  男が一人、入っていく。黒髪に端整な顔立ち、不自然に青い双眸の男。
  キィ……古びたドアを開ける手、いつもの店内。人懐こい笑みを浮かべてカウンターの女が出迎える。

氷冴
「いらっしゃい」
友久
「ああ」

  店の隅……古びたピアノが耳に優しいメロディを奏でている。黒く艶のあるチャイナドレスを着込んだ女が静かに指を滑らせる。いつものカウンターに腰をおろす友久。
友久
「めずらしいな……人は雇わない主義じゃなかったか?」
氷冴
「ええ、そうよ。あの子はいるべき場所にいるだけ」
友久
「いるべき場所?」
氷冴
「役者は舞台に……バーテンはカウンターに、自然なこと でしょ」
友久
「なるほどな……あんたらしい」

  カタン……と席を立ち、ピアノのそばに歩み寄る友久。カウンターで、笑みを浮かべながら様子を見守る氷冴。
氷冴
「くす……どうなるかしらね」

  そっと女の肩に手をのせ、女の耳元に顔を寄せる。
友久
「なかなか……いい腕前だな」
鷹央
「(くす) ありがとう」

  少しハスキーな女の声、目を合わせそっと微笑む。一瞬、見詰め合う……黒と青の瞳。しばらくして……友久が口を開く。
友久
「……うまく化けたもんだな」

  意地悪い笑みを浮かべ、鷹央の肩から手を離す。
鷹央
「あれ、もう気が付いた」

  驚いた表情を浮かべ、声が深い男のものに変わる。
鷹央
「最近……不調だな。見破られてばかりだ」
友久
「そりゃわかるさ、お前からは……女の匂いがしない」
鷹央
「女の匂い……か、結構好き者だな」
友久
「それなりに」
鷹央
「そうだ、自己紹介忘れてたな。俺は我那覇鷹央(がなは・ ようおう)。タカオでいいよ」
友久
「本宮友久(もとみや・ともひさ)。友久でいい」
鷹央
「じゃ……お近付きのしるしに何か弾こうか」
友久
「それじゃ……俺もご一緒させてもらおうか」

  がさがさと……部屋の隅にかかっていたギターを下ろし、弦の調子を確かめる。
氷冴
「ふふ……久しぶりに聞けるわね、あなたのギター」
鷹央
「いいね……こういうセッション」
友久
「そうだな」

  ギターの弦が震える……指が滑るようにピアノのキーを叩く。静かなメロディーが……FROZEN ROSESの空気を満たした……

解説

我那覇鷹央と本宮友久の顔合わせエピソード。
  幻覚投影能力:15もしくは演技力:13による偽装を見破ったのは、技能値的にはオーラ(気の流れ)視認能力:14+女好き:1かな?


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