エピソード『草むらの約束』
- 宮部晃一(みやべ・こういち)
- 強化超能力少年。
- 森江新(もりえ・あらた)
- 先天的な操水術士
- 谷山麻衣(たにがわ・まい)
- 天才的な才能を持つ(鎮魂の)舞姫
伴緒の家から少し行ったところにある裏山。
晃一が新を連れて来て以来、三人はよくそこで遊ぶようになったそして今日も、裏山からの帰り道。
- 麻衣
- 「あー、おもしろかったぁ」
- 新
- 「うん! またあそぼうっ。ねっ、こーいち」
- 晃一
- 『うん』
- 麻衣
- 「あははっ! そうだね。
あ、ねえ、この道どこにつづいてるのかなぁ?」
麻衣が指さしたのは、家と家との間の細い路地。外はまだ日が高いが、その道は家の影に隠れ、心細いくらい薄暗く見える。
- 晃一
- 『麻衣ちゃんの知らない道なの?』
- 麻衣
- 「うん。いつもはとおらないよ。いつもこっちの大きい道
とおるもん」
- 新
- 「あ、ほら! あそこ、おっきい木がみえるー。この道
まっすぐだからあそこに行くんじゃないかな」
- 晃一
- 『どれくらい、大きいのかな?』
- 新
- 「こっから見えるんだもん。んーこんぐらいかなぁ」
そういって、手をぐるーっと回す。
- 麻衣
- 「ちがうよう、もっと、もーっと大きいよ」
- 新
- 「よぉし! じゃ、たしかめてこよーよ」
- 晃一
- 『でも、知らない道なんでしょ? まよっちゃうよ』
- 麻衣
- 「だぁいじょーぶよ、晃一君。まぁーっすぐだもんこの道。
まよわないよ」
- 新
- 「きまりっ! いこっ」
- 麻衣
- 「うん! いこ、晃一君」
- 晃一
- 『う、うん』
細い道を歩く。知らない道、周りの景色が全く違う。お隣の庭に続く猫の通り道、小さな発見。驚きと……少し心細い気持ち。
- 晃一
- 『……』
きゅ
- 晃一
- 『?』
- 新
- 「手、にぎってればこわくないっ(にこっ)」
- 麻衣
- 「だいじょーぶ、だいじょーぶっ(にこっ)」
- 晃一
- 『……うん(にこ)』
家と家の間から見える、杉の木に向かって進む。進むうちに夕方になっていた。細い路地の向こうが明るく光る。
- 新
- 「明るいね」
- 晃一
- 『もうすぐ出口なのかな?』
- 麻衣
- 「これは……あそこまできょうそうーーっ。よーい、ど
んっ!」
- 新
- 「あー。麻衣ちゃん、ずるいっ」
- 晃一
- 『わ、まってよ。新君』
- 麻衣
- 「わぁい! いっちばーん。あ……」
- 晃一
- 『あ……』
- 新
- 「もー麻衣ちゃん、ずるいよ。って……すごーい。ここ、
町がぜんぶ見える!」
路地を抜けた先は、小さな高台の公園。草の生い茂る忘れ去られた壊れたブランコ。そして、いっぽんの杉の木。
- 晃一
- 『さっきの木かな?』
- 麻衣
- 「ほら、てがとどかないよっ。おっきいっ!」
- 新
- 「麻衣ちゃん、手かして。んーーまだとどかないー。こー
いちも手かしてっ」
- 晃一
- 『うん、こうでいいの?』
きゅ……と握る。三人の輪っかにすっぽり入った杉の木。くす、と笑う。
- 麻衣
- 「ここ、わたしたちのひみつの場所にしようよ」
- 新
- 「うん! やくそく」
- 晃一
- 『やくそく』
きゅっとお互いの手を握りしめ、また笑った。
子供達の日常……でしょうか。
小さな高台の公園というのがどこなのかはかなりの謎ではありますが……。
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