エピソード001『窓のむこうの楽園』


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エピソード001『窓のむこうの楽園』

登場人物

鈴掛真一(すずかけ・しんいち)
メガネの男子高校生。いつも平静な語り手。
赤碕大悟(あかさき・だいご)
ごっつい男子高校生。鈴掛の友人。
加賀見みよし(かがみ・‐)
女子高校生。鈴掛の友人。

教室にはいると

いつものように登校。今日は無事に教室にたどりつけた。校門で射殺もされなかったし、教室へのドアも見つけられたし。めでたい。
 ふと気がつくと、窓のほうで人だかりが出来ているようだ。

真一
「おーい、どうした」
大悟
「みろや、えー天気や(大きく腕を回す)」

窓の一つのむこうには。熱帯の海岸が広がっていた。
 白い砂浜。サンゴ礁。見たこともないほど澄んだ空と海。陽射しがまぶしいのはなんだけど、いい景色だった。

授業

担任がいちばん喜んでしまい、授業は浜辺で行うことになった。とはいえ形だけだ。みんな泳いでみたり、火をおこして騒いだり。
 まあどのみち、あの日光の入るなか、教室で勉強なんて出来るわけもないから、先生の判断は賢明だったのかも知れない。

大悟
「しかしまあ、こないに快適な場所に繋がるのも珍しいわな(にかっ)」

窓や扉がどこに繋がっているかわからない、ときどき別の場所に繋ぎなおされてしまうしまう。というのは、無限都市ではあたりまえの現象だった。

真一
「酷い場所に繋がってたら生きてないから覚えてないはずなんだが。それでも、ろくな記憶がないからなぁ」
みよし
「水着を持ってこれなかったのが残念ね」

……と。泳いでいた連中から悲鳴が聞えた。

大悟
「どないした?」
真一
「快適な場所というわけでもなかったようだな」

悲鳴の砲を眺めると、ワニに似た体の半分ほどもある大口のトカゲがいた。牙は一メートルはあるだろうか。みんなまとめて食われている。

真一
「なんだ、中生代につながってたのか」
みよし
「そうみたいだね。記念品拾ってかえろっと」
大悟
「あいかわらず、ええ根性やな」

翼竜らしいものが飛んでいるのも見えた。

真一
「世はなべて事もなし」

夕方の浜辺

日は沈み、乾いた流木をあつめてつくったキャンプファイアも、そろそろ尽きようとしていた。

みよし
「……帰れないみたいだな」
大悟
「ああ」

教室の窓と繋がっていたはずの場所は、いつのまにか、ただの岩場になっていた。空間の接続が切れるのが、予期していたよりも早かったらしい。ふつうは一月くらいは続けて繋がってるものなんだけど。

真一
「食われたれんちゅう、楽したのかもな」
みよし
「そうね。12時になる前になんとかしないと」

しかたなく、みんなで薬をのんだ。
 今日の記憶が持ち帰られないのは残念だ。

解説

たしか1989年ごろに書いていた、無限都市の初期作品のネタをもとにしたエピソード量産計画の試作品。ネタはいっしょでも、料理法や話は別物になってますね。


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