いつものように登校。今日は無事に教室にたどりつけた。校門で射殺もされなかったし、教室へのドアも見つけられたし。めでたい。
ふと気がつくと、窓のほうで人だかりが出来ているようだ。
窓の一つのむこうには。熱帯の海岸が広がっていた。
白い砂浜。サンゴ礁。見たこともないほど澄んだ空と海。陽射しがまぶしいのはなんだけど、いい景色だった。
担任がいちばん喜んでしまい、授業は浜辺で行うことになった。とはいえ形だけだ。みんな泳いでみたり、火をおこして騒いだり。
まあどのみち、あの日光の入るなか、教室で勉強なんて出来るわけもないから、先生の判断は賢明だったのかも知れない。
窓や扉がどこに繋がっているかわからない、ときどき別の場所に繋ぎなおされてしまうしまう。というのは、無限都市ではあたりまえの現象だった。
……と。泳いでいた連中から悲鳴が聞えた。
悲鳴の砲を眺めると、ワニに似た体の半分ほどもある大口のトカゲがいた。牙は一メートルはあるだろうか。みんなまとめて食われている。
翼竜らしいものが飛んでいるのも見えた。
日は沈み、乾いた流木をあつめてつくったキャンプファイアも、そろそろ尽きようとしていた。
教室の窓と繋がっていたはずの場所は、いつのまにか、ただの岩場になっていた。空間の接続が切れるのが、予期していたよりも早かったらしい。ふつうは一月くらいは続けて繋がってるものなんだけど。
しかたなく、みんなで薬をのんだ。
今日の記憶が持ち帰られないのは残念だ。
たしか1989年ごろに書いていた、無限都市の初期作品のネタをもとにしたエピソード量産計画の試作品。ネタはいっしょでも、料理法や話は別物になってますね。
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