エピソード002『教室放浪記』
- 鈴掛真一(すずかけ・しんいち)
- メガネの男子高校生。いつも平静な語り手。
- 赤碕大悟(あかさき・だいご)
- ごっつい男子高校生。鈴掛の友人。
- 加賀見みよし(かがみ・‐)
- 女子高校生。鈴掛の友人。
いつものように校門を突破し、いつものように廊下ビルに入り、教室への扉に向かう。ここ数ヶ月ほど教室への入り口として利用されていた扉の前には、人だかりが出来ていた。クラスメイトたちだ。
横開きの扉の向こうには、いつもの教室の姿はない。どうやら、昨晩のうちに、体育倉庫へと扉の接続が変わってしまっていたらしい。
- みよし
- 「今回は、長かったわよねー」
- 真一
- 「ああ、これで扉の平均安定接続時間記録が伸びたな」
そんななか、遅刻寸前で大悟がやってくる。
- 大悟
- 「よお。なにやっとんのや」
- 真一
- 「見てのとおりだ。我らが教室は、長き旅に出た」
- みよし
- 「扉のリンクが外れちゃったから、今までの教室は使えないって言いたいのね(冷めた目)」
- 大悟
- 「みょーなもんでも食うたか?」
- 真一
- 「たまには、かっこうをつけてもいいだろう。と思っただけだよ」
- 大悟
- 「ま、えーか」
- 担任
- 「さて、新しい教室を占拠しに出発するぞ」
連絡要員三名を旧教室への扉の前に残して、ぞろぞろと廊下を歩きはじめる。
みんなでクラス名の貼っていない扉をがらがらと、あるいはぎしぎしと開き、中を覗き。使えそうな教室がないか探して歩くことになったのだ。
- 担任
- 「授業中失礼しました」
使用中の教室だったらしい。
- みよし
- 「あ。こんなとこにカラオケボックスがっ☆」(紙を貼ってマーカーで書き書き)
みんなが廊下ビルと呼んでいる、この建物は。薄い壁で仕切られた、迷路のような構造になっている。そしてみっしりと、扉が続いているのだ。どの扉がどこに繋がっているかは、あけてみないとわからない。
- 大悟
- 「ここはドーム球場らしいの。野球部が使うとええんちゃうか?」
- 真一
- 「貼り紙貼っとくか。たまには草野球するのもいいだろうし」
- みよし
- 「ソフトボールがいいな〜」
扉の幅と中のサイズはまったく無関係。だからだろうか、廊下ビルの壁面は扉でびっしりと埋められている。
- 担任
- 「よーし、からの教室みつかったぞ〜。みんな早く来い、ホームルーム始めるぞ〜(大声)」
- SE
- がらがら
- 別の教師
- 「授業中ですから静かにしてくださいっ」
- みんな
- (げらげら)
いつものように校門を突破し、いつものように廊下ビルに入り、教室への扉に向かう。昨日みつけた(その翌日に私が死んだのでなければ)はずの教室への入り口として利用されていた扉の前には、人だかりが出来ていた。クラスメイトたちだ。
- みよし
- 「今回は、短かったわねー」
- 真一
- 「ああ、これで扉の平均安定接続時間記録が縮んだな」
そんななか、遅刻寸前で大悟がやってくる。
- 大悟
- 「よお。なにやっとんのや」
- 真一
- 「見てのとおりだ。我らが教室は、長き旅に出た」
- みよし
- 「扉のリンクが外れちゃったから、昨日みつけた教室は使えないって言いたいのね、また(肩をすくめる)」
- 大悟
- 「みょーなもんでも食うたか?」
- 真一
- 「たまには、かっこうをつけてもいいだろう。と思っただけだよ」
- 大悟
- 「どこが、たまにや(呆)」
扉の機能解説と廊下ビルの概観をしめすための話です。
意図:扉の接続が変わることを示す舞台:廊下ビル(壁に扉が並んでいる廊下が迷路状に無限に存在するビル)異常:いままで利用していた教室が開かなくなる日常:別の教室をもとめて放浪する落ち:繰り返しギャグ
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