語り部入門講座


目次



語り部入門講座

 この文章は、NIFTY-Serveの FSF1(SFファンタジーフォーラム)の壁会議室で
書いた、語り部紹介原稿に手を入れたものです。
 サンプルキャラクターは当時の壁の住人(アクティブな参加者)のネタをもと
にしています。ちなみに今は私も壁は読んでません。


技能とは何か

 では、ここで語り部における技能について簡単に解説させて頂きます。

 技能とはキャラクターの行動能力の程度を示すデータです。技能値が高けれ
ば高いほど、極端なことが可能になります。
 例えば、健全な状態のキャラクターで、核兵器を防ぐのに使えそうな技能の
技能値が24ほどもあれば、核兵器の直撃にも耐えられるのです。創竜伝でもこ
れでOKかもしれませんね。
 さて、技能値の決めかたですが、特徴同様に「どの程度強いのか」について
のイメージから数値が決定されます。以下に、ルールブックよりイメージ技能
値対照表を引用します。

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    技能値  ,熟練度
    6   ,初心者。やったことのない人間。
    7   ,へたくそ。
    8   ,入門者。本格的に習い始めたところ。
    9   ,一応基礎ができたあたり。何とか見よう見真似で処理できる
        程度。スポーツなら学生の大会レベル。
    10   ,9割のプロ。凄くうまいと言うほどではないが、一通りのこ
        とはこなせるかもしれない。一応金がとれる程度にはこなせ
        る程度。
    11   ,ましなプロ。一応その分野での専門家らしいといえます。
        プロスポーツ選手などはこのあたりからでしょうか。
    12   ,本物のプロ。まともな教授や院生クラス。その分野の進展に
        なんとか貢献が可能。
        名前を知られているプロ。
    13   ,非常に有能であると衆目の一致するところ。一般的能力の範
        囲内ではあるが周囲に隔絶した能力。
    14   ,指折りのプロ。トップではないもののその近く。
        横綱。
    15   ,飛びっきりのプロ。普通のプロにできる程度のことは片手間
        にできる。学園アクションの主人公クラス。
        普通の世界チャンピオンは、せいぜいこのあたりでしょう。
    18   ,異能の域に達している。
    20   ,非常識な能力。超伝奇アクション。
    24   ,神の如き技量。
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 これらの技能の取得には制限はひとつしかありません。
 GURPS(角川より訳出されているアメリカ製のルール)などとは違い、 キャラ
クター作成用のポイントを割り振ったりする必要はありません。

 では、そのたったひとつの制限とはなにか。
 それは「最高技能値」と呼ばれるものです。
 PCの技能値の上限を決定して、それ以下の技能値を持つ技能値であればいく
つでも、どのような技能であってもとることができるのです。
 これが許されるのは技能の等価性という概念に関ってきます。

 では技能の等価性とは何か。
 語り部では技能によってなにをすることができるかは、数値の大きさとイメー
ジによってのみ規定されます。
 例を挙げてみましょう。
 「妖魔をあやつる:15」技能と「自爆:15」とは、攻撃として利用する場合に
は、ルール的には同等です。攻撃の威力や防御側の避けにくさなどはどちらも
15という数字によって示されます。
 ただし「イメージが許せば」ですが。

 イメージとして、「自爆」は自分自身の周辺にしか被害を与えることはでき
ないでしょうが、「妖魔をあやつる」ならば遠隔攻撃も容易でしょう。
 また逆に、自爆であれば誘爆するような対象には威力が大きくなるでしょう
けど、妖魔ではそれは期待しがたいでしょう。

 このように語り部では、技能の名前が示すイメージによる制約と、技能の点
数(技能値と呼びます)のみが可能行動を制約します。

 ここでひとつの疑問が浮かぶかもしれません。
「『万能技能』ってやつをひとつ最高技能値で取ってしまえば、他に技能なん
て要らないじゃないか」
 実は語り部では、すべての技能が原則として万能技能であると考えることが
できます。単に、イメージに応じた名前をつけてやることによって、キャラク
ターの個性を表現できるようにしてあるだけなんですね。
 ですから、語り部ではルール的には「万能技能」というものを持つことを禁
止してはいません。
 極東少年の一巻の 132ページにある「法力僧か。なんでもありの世界になっ
てきたな。もっとも力の質はどれも同じみたいだ。制御をそれぞれの宗教に頼っ
ていて、世界観が違うから差が出るのだろうけど」というセリフは、語り部の
技能の等価性と同質のものだと思います。
 
 ただし、サプリメント(各種世界観を再現する資料とルールの集まり)におい
て「イメージ的に」制限されることは有り得ます。
 どんな世界にもその世界固有の世界法則や制約などがあります。例えば、現
実世界の我々は原則として魔法や超能力は使えませんよね。他にも……細かい
例でいえばグインサーガではクリスタルパレスの転送機は送信にしか使えなく
て、戻ってくるのには使えませんよね。スレイヤーズでは精霊魔法しか習得し
ていなければ、どんなに優秀な魔導師でも竜破斬は使えませんよね。
 このような世界ごとの制約を用意することによって、その世界をうまく再現
でき、キャラクターをその世界での登場人物らしくすることができるわけです。



特徴の使い方

 特徴とはルール的には細かな個性を表現するための数値でして、技能を使用
する際に修正値として利用します。
 使い方を解説するためにはまず行為判定について話す必要がありますので、
まずはそちらから。

 自爆技能を利用することを考えてみましょう。
 技能値は15です。この15を、目標値と強制力のふたつに分割します。
 例えば、目標値7の強制力8といった具合に。
 このように、技能を目標値と強制力に分割することを「技能分割」と呼んで
います。

 ここで、目標値と強制力にはどのような意味があるのか、疑問に思われたこ
とと思います。解説いたしましょう。
 目標値とは、行動の実行しやすさのことです。大きければ大きいほど、失敗
しにくくなります。具体的には、六面体サイコロを振って目標値以下を出せば
行動が成功したことになります。
 強制力とは行動の結果の程度の大きさのことです。強制力が大きければ大き
いほど、派手な結果が起き、回避しにくくなります。

 そして、特徴は強制力に加算されます。自爆の例では自爆王3が加算され、
8+3=11が最終強制力となります。ここで「命を惜しむ2」といった逆効果
になりそうな特徴がありましたら、8+3−2=9が最終強制力となります。

 こうして、自爆技能を目標値7の強制力8で使いますと、7以下を出せば行
動は成功、行動の結果の程度は難易度で11相当となるわけです。


プレイ中の特徴・技能の追加修正

 一般的なルールでは、キャラクター作成システムの都合上、プレイ前にキャ
ラクターに関するデータをすべて決定する必要があります。このために、あら
かじめよくよく考えた上でデータを決定していくことになります。
 剣士として作って、ストーリーの必然から実は宮廷作法も完璧な元王子だと
いう設定を追加したいとしても、ルールをきちんと適用する場合には、それに
あわせた数値データを追加することは困難なんですよね。

 しかし、語り部ではプレイ中にさえ特徴や技能といったキャラクターを表現
するデータの修正や追加が可能です。
 剣術:15などを持たせて作った剣士的なキャラクターに、宮廷作法:12といっ
た技能や元○○国王子:3といった特徴を追加してもかまわないんですね。
 こういったことが可能になるのは、以前説明しました「技能の等価性」のお
かげです。どの技能もイメージによる制約以外の点では同等のことが可能であ
るために、最高技能値以下の技能であればいくつでもとって良い。そのことが
プレイ中にさえ技能を追加しても問題ないという特性を産んでいるのです。

 また、特徴は一般に適用されるのが、有利なもののうち最大のものひとつと
不利なもののうち最大のものひとつだけなので、特徴の個数が増えることには
ルール的には問題が無いのです。



余力と行為判定

 余力とは、ヒットポイントと疲労点とヒーローポイントを混合したような概
念でして、余力が多いほど行動が失敗しにくくなります。
 ルール的には振りなおしポイントとなっていまして、ロールに失敗した場合
に一点消費することによって再度成功判定を振りなおすことができます。余力
が残っている限り再ロールは可能です。
 余力には、身体的な行動の際に利用する「体力」と、精神的な行動の際に利
用する「集中力」の二種類がありまして、体力と集中力の和は最高技能値から
算出されます。
 最高技能値が15の場合には、余力総計(体力+集中力)が18ですから、体力を
9にして集中力を9という平均的な割り振りやにしたり、体力を5にして集中
力を13という集中力重視型にしたりなどが可能です。

 具体的な戦闘の例を出してみましょう。

 なんだかんだあって。戦闘シーンに入ったところです。

 巫女		: 妖魔をあやつる:15で饕餮(とうてつ)を召喚して攻撃し
		:ます。
		:「いってらっしゃい、饕餮☆」
		: 技能分割は……目標値8の強制力7にします。

 攻撃側の行動宣言をしています。
 使用する技能を指定し、どのような効果を得たいのかを明確にし、技能をど
う分割するかを決定することで行動宣言は終了です。

 GM		: 了解。
 巫女		: 力ある巫女:3はつけていいですか?
 GM		: うーむ、良いんじゃないかな。

 ここでは特徴の使用許可を願っています。GMは許可していますね。
 ちなみに、後を見れば分かりますが、特徴3点の修正はかなり大きなものに
なります。

 巫女		: では、最終強制力は7+3=10になりますね。
		: サイコロを振って……2と6、合わせて8なので目標値
		:以下ですから、成功ですね。
 機械人	: ちょっとつらいな。
		: At.フィールド:14技能を追加して、At.フィールドで抵
		:抗します。適用できそうな特徴はありませんね。

 攻撃を受けた側は、攻撃の無効化を試みることができます。
 無効化とは一般的な防御行動や回避行動に限らず、笑顔で戦意を無くさせた
り、幸運で少しだけ狙いがずれていたことにしたりといったものも含まれます。

 機械人	: そちらの攻撃の最終強制力が10ですから、こちらの強制
		:力を10にして……目標値は4ですか。
 GM		: 辛いねぇ。
 機械人	: 2+3で5! 失敗です。再ロールします。集中力を一
		:点減らしておきます。

 ここで行為判定に一度失敗しましたが、再ロールを試みました。
 再ロールの際は余力のうち行動内容にそったものを一点減らします。

 機械人	: ああ、また失敗! 集中力は残り一点です。
		: ……今度は出目の合計が2で、成功です。

 再ロールは余力が残っている限り何回でも可能です。
 ただし、余力が尽きると行動不能になり、何をされても抵抗不能になります。

 GM		: 了解。防御側が無効化成功ですね。
		: 巫女さんの召喚した饕餮が機械人さんを襲いましたが、
		:とっさに展開した At.フィールドのおかげて攻撃はとりあ
		:えず届きませんでした。余波で周辺の家屋が崩壊してい
		:ます。
		: しかし、一度の攻撃を防ぐだけで疲れ果ててしまい、も
		:はやふらふらになっていますから、もう一撃喰らうと持ち
		:そうにないですね。

 以上のように、強制力を評価して攻撃の程度を描写しつつ、戦闘結果をゲー
ムマスターが発表します。

 機械人	:「今度は負けんぞ」といって近づいて行きます。
 巫女		:じゃあ今回は性格をアオモードにします。
		:「え〜っ。またミドリがなにかやっちゃったのかしら」
		: 脅えてますね。
 機械人	: いきなり自爆攻撃。自爆は体力ですかねぇ、やっぱり。
 GM		: 体を使うような気もするし、そうしておきましょう。
 機械人	: 自爆:15に自爆王:3が修正としてつきますね。目標値を
		:5の強制力10でいきます。
		: ……五回失敗で成功。体力を5点減らしておきます。
		: 最終強制力は13ですね。
 巫女		: そっ、それは大きい。
		: 妖魔をあやつるで防御するしかありませんね。力ある巫
		:女3がつけばなんとか互角ですけど……。

 機械人のほうは、もっとも得意な技能に最大の特徴をつけて、さらに目標値
を5と低めにして成功率を落とすかわりに、強制力(行動結果の強度)を高くし
ています。
 最終強制力が13ですから、特徴がつかなければ最高技能の15で防いでも目標
値は2。六面体サイコロをふたつ振って出目を合計して目標値以下を出さなけ
ればならないで、ピンゾロ(両方が1の目)でないと成功になりません。

 GM		: うまいこと理由付けできればいいけど。例えば妖魔を盾
		:にするとか、妖魔を犠牲にして身を護るとか。
 巫女		: じゃあ、思わず妖魔を召喚してしまって、結果として盾
		:にしてしまうということにします。

 このように、性格設定とすりあわせた行動宣言を工夫すると、面白くなりま
す。語り部ではどの技能も等価ですから、それらしい演出を心掛けると楽しめ
るでしょう。

 巫女		: 7回失敗で何とか成功しました。
 GM		: では、召喚した妖魔を盾にできたわけですな。
 機械人	: じゃあ、こんな演出にしましょう。

 行動の結果について口出しできるのは語り部の特徴のひとつでしょう。もと
もと行動の宣言時に、どのような結果を望んでこうどうするのかをプレイヤー
が定義していますから。
 今回はさらに進んで、最終結果と簡単なストーリーを提案さえしていますが。

 機械人	: 爆発がおさまると、あたりは瓦礫の山になっています。
		:強制力13ですからビルでも半壊状態ですよね。

 強制力と同一の難易度分までの破壊が可能です。強制力と難易度表と照らし
合わせることによって、行動によって得られる破壊力が決定できるわけです。

 機械人	: 吹き飛んだパーツが再び寄り集まって再生します。
		:「……パーツがいくつか入れ代わっているな。まあ調子も
		:良くなっているし、いいか」
 GM		: あー、特にプラスはつかないと思うけど。
 機械人	: 気分ですから。まあ
		:「パーツが入れ代わったが、安定して動作しているようだ
		:な」
		: としてみますか。
		: で、このあたりで瓦礫の中から立ち上がってみると良い
		:でしょうね、巫女さんが。
 巫女		:「いきなりひどいことしないでくださいっ」
		: とボケをかましてみます。
 機械人	:「……いきなりでなければ良いのか」
		: と突っ込みます。

 とまあ、こんな具合に戦闘は進められます。



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