血塗られた誕生日(バースデー)愛はトゥーフを駆け巡る!


目次


血塗られた誕生日(バースデー)愛はトゥーフを駆け巡る!

シナリオ

 墓参りに出かけたナーフェンに命じられて、通り魔事件の操作のため、市内巡回をするアレス。

「墓参りをしておきたいからね。私の優柔不断さゆえに命を落とした娘の命日に、自分を見つめなおすためにも」

 シャティが、男(あの時の隣人トーリン・マフィス)に酒を無理矢理すすめられて、襲われそうになる。

「助けて、誰か助けて」

 か細い声が響く。

 助けられたら崩れるようにもたれかかって気を失う。

 意識が戻ると、「外にはこんなに恐いことがあるなんて……」

「家に帰りなさい」「でも、どうしても会わなければならない人がいるの」

「そうだよ、恐い所だよ」「でも、アレス様みたいな人もおられます。私、アレス様に出会えただけでもトゥーフまで来たかいがあったと……」はにかむシャティ。

 キリマーが師匠に頼んでおいた贈り物を取りに行くと、家が瓦礫の山になっていた。

「これだから魔法使いが隣りに住んでるなんて嫌だったんだよ。さっさと消えな、邪魔だ邪魔だ」

「ああ、今朝、明け方だったかな、突然爆発音があったと思ったら、これだよ」

 死体は残っていない。呪具や書物は荒らされている。

 冬至祭の迫る350日。

 そのころ、ティリアの誕生会が開かれている。

 豪商達が息子とティリアを引き合わせるために開くように要請した。

 何故か、絶対に来ると言っていたティックの姿がない。(既に暗殺教団に拉致されているため)

 タワン抜きのマファルの姿がある。

 ティリアに言い寄る豪商の息子たち。

 ファーンに迫る豪商の娘達。

 エリーサはシャムアト・タリムにナンパされる。

 しばらくすると、アレニスの信用の失墜を狙って、敵が殴りこむ。

 エリーサを狙った攻撃をマファルがかばって倒れる。

 ごろつき5人、暗殺教団の男二人。

 ファーンかエリーサに、毒蜘蛛ユロンに襲わせる。

「おめーみたいな顔が自慢の高慢な奴が大嫌いなんだよ、俺は」

「お前達を倒すためなら、どんなことだろうとして……」と息絶える。

 アレスとシャティのいる所に乗り込むチャイル。

「ちょっとあんた、こっちに来なさい!」

 うむを言わさず物陰にアレスを引きずっていく。

「シャティ、あなたはそこでまってて!」

 アレスの首根っこをつかみ、

「さあ、白状なさい! シャティにいったい何をしたの」

「今までシャティは、あんな目をした事は一度も無かったわ。あなたが何か良からぬ事をしたんでしょ!」

 そうこうするうちに、シャティの悲鳴が上がる。

「ついに出たわね、ナーフェンの手先め!」

 シャティがさらわれている。

 アレスをじっと睨み、「あんたもあの極悪人の手先なのね!」

 ファーン達が、白い服の女性(シャティ)を担いで駆けてゆく男達を発見。

 足留めに、四人のごろつき。

 シャティを担いだ男を「虫」を使って追いかけたら、本拠が分かる。

 ごろつきどもを脅しても分かる。

 家に帰ったなら、ナーフェンからの贈り物がある。

 手紙が入っている。中身は謎の円盤(暗殺教団がすり変えた偽物)。

「私が生きてトゥーフに帰る事が出来るかどうかはわからないので、これを送っておくことにする。

 絶対絶命の時のみ、以下のようにする事。

 同封したキシャナの円盤を両手ではさみ、カフナの聖句を三度唱える。

「カフナ、カフナ、我が力のもとに、供物を約し奉る」

 その後、「偉大なるものよ、霊魂の導き手たるものよ、神霊シャムアネよ、我が願い聞き届けたまえ」と唱え、円盤を胸に当てると、神霊シャムアネを呼び起こして使役する事ができる。

 使用後に使用者が生きていられる事はまれであるらしいから、いよいよの時にしか用いるべきではないだろう。

 五日経っても戻らない場合、アフィ・ユーロに連絡をして欲しい。

                         ナーフェン・カフィル」

 実はこれは暗殺教団に対する罠である。

 書いてある通りにすると、シャティ・メイロンに神霊を呼びおろす事になる。

 死ぬらしいなどと書いてあるのは、これがシャティに大きな負担をかけることになるためである。

 負担とは、血の気が失せ、血の咳を吐く、体に力が入らない、など。

 この後キシャナの円盤は、供物として消える。

 カフナ神とは、人々と神々との仲立ちをする伝令神。

 ティリアとシャティが逃げた後、敵の本拠にたどりつく。

「残念ね、小娘二人は別の場所に移したわ」と嘘を付く。

「あなたたちのボスも今頃は死んでいる頃。あなたたち部下も御一緒願いましょうか」

 と、酷薄な笑みを浮かべていった。

 サーリャと復活したユロンが、

 ティックが、血だるまになって牢に倒れている。

 この頃、アレニスが暗殺教団に狙われ、撃退するが怪我をする。

 アレス家かナーフェン宅に向かえば、アレニスが襲われた事を知ることができる。

 ナーフェン宅に戻ったキリマーを、チャイルが迎える。

 照れ笑いしながら言うには、

「えーとね、おお見え切って、兄貴を倒して来るんだって家を出たもんだから、ちょっと今すぐには帰りにくいのよ。今まで兄貴を倒す事ばかり考えてて損した分、帰してもらうためにも、しばらくここに居座る事にしたのよ」

 家の奥から、こうばしい香り。ナーフェンが料理を作っている。

 そう、ナーフェンは帰って来たのだ。

 ひと仕事終えて、家路に付くアレスとファーン。

 包帯姿のティックが現われる。

「アレスさん、シャティって娘が、ウィスタ家の居候になるそうですよ」

 帰ってみると、ティリアと一緒に料理を作っていた。

ハル=シフォン・の・じゅんれい
ハル=シフォンの巡礼《習俗》
 30ヶ所(2×3×5)の聖地を祈りをささげつつ巡礼すれば、平穏な生活を得る事ができると言う民間信仰に基づき、聖地を巡礼する人々の事。結婚前の女性が、幸福な結婚を願って巡礼することも多くみられます。
 男性の巡礼は、総数の1割程度で、たいていは現役を退いた老人達です。
 一般的な巡礼期間は半年くらいですけが、人によっては何年も続ける場合も有ります。
 巡礼達は、独特の、くるぶしまでの白い長衣の上に、頭巾の付いた白い上着を羽織り、薄絹で顔を隠しています。この独特の服装をしていると、巡礼であるとの印象が大きいために、個人の印象が薄れてしまうため、正体を隠したい人々が巡礼服を着ている事もあります。

暗殺教団側の計画と行動

 各個撃破をねらい、集まった所で罠にかける。

 シャティは、始祖の降臨のための器とするためにオーリンの指示でさらう。

 捕まえた後で、シャティの斥霊の髪飾りを奪った為、サーリャがひどい目に合う。

 二人で捕まり、協力して逃げた後は、シャティもティリアを親友として、さんを付けずににできるようになる。

 いったんは逃れたシャティとティリアも、オーリンにより見つかる。

 オーリンはシャティだけを捕まえる。

「私にとって重要なのは、始祖の器たるこの娘だけだ。お前まで連れて行こうとは思わぬぞ、その必要はないからな。どうせ偉大なる我等が始祖の前には、ナーフェンの手下共は無力なチンピラにすぎぬのだ」

 無力さに震えるティリア。

 降霊術により蘇った始祖の考え方と現在の教団員の持つ美学の違いが、分裂を呼ぶ。

 最後に、ナーフェンの送ったものを発動させ、宿った始祖を放逐する結果を招く。

登場人物

シャティ・メイロン《人名》
 4109年の事件当時は17才。
 ナーフェンの姪。父シャムノン。
 笑顔がとても可愛らしい。ほっそりとしている。やわらかな黒髪を髪飾りでまとめている。はかなげな雰囲気。
 素直だが、思い込んだら梃子でも引かない。普段は引っ込み思案なだけに、感情が高ぶると見境がなくなる。自分の力を恐れている。一途な人。
 照れると口元に人差し指で髪を持ってきて、軽くうつむく。自分で自分を犠牲にしやすい。信頼を裏切られたと思うと、放心状態になってしまう。酒は弱い。
 アレスをアレス様と、チャイルを叔母様と、その他の人はさんをつけて呼ぶ。
 霊感と霊視能力を持ち、霊が憑依しやすい。感情が高ぶると騒霊現象を引き起こす。時空門を開く触媒として誕生した。
 イスカ王国出身の箱入り娘。父シャムノンは、ナーフェンの異母兄弟。9才の時にナーフェンによって召喚の器にされた。夢に出てきたナーフェンが「商都トゥーフへ来なさい。君の運命が待っている」と繰り返したためやって来た。
 斥霊(せきれい)の髪飾りと隠形の護符を持ち、ハル=シフォンの巡礼風の白い服を着て旅をした。
 アレスに恋している。ティリアとは親友。
チャイル・カフィル《人名》
 4109年当時21才。
 ナーフェンの妹。異母兄シャムノン、兄ナーフェン、姪シャティ。
 すらりとした長身で、短い黒髪は男のような髪型。真紅の外衣をまとっている。
 思い込みが激しく無鉄砲。おっちょこちょいで意地っ張りな所がかわいい「あんた達のために同行するんじゃなくて、大事な姪を助けるために行くだけよっ!」。通称は烈火のチャイル。
 結構さっぱりとしたたち。行き遅れと言われると怒る。
 独断専行して失敗する。自分をあたしと呼ぶ。
 理法ベースのシハート系の符術を極めている。みかけによらず怪力の持主。
 太陽鏡(呪力反射能力、太陽の理の触媒)のついた護符、風の呪符(風の理の触媒)、封呪の珠、封印用呪符、矢立て(携帯用の筆と墨)と紙、竹簡呪符(炎爆、粘着、水撃、崩呪、光爆、閃撃、崩土、溶金、治癒、解毒など)を持ち歩いている。
 出身地はイスカ王国。姪のシャティの父の件などもあってナーフェンに敵意を燃やしていた。結局、勘違いであったことが判明してからも、これまでの償いと称してナーフェンにたかっている。
ラスク・トーリス《人名》
 二重十字の暗殺教団に潜り込んだ時の印章の一人。
ロルフ・カルシェ《人名》
 表向きは現在はナーフェン宅となっている「ロルフの館」の管理人にして執事となっているが、実際にはロルフの館自体の館霊である。ニモト人アキウによって人としての姿を与えられた。
 温厚な物腰の痩せた老紳士で、ときどき謎めいた微笑みをみせる。背筋はしゃんとしていて礼儀正しい。人の名前に殿を付ける。
 家の自己修復ができ、念動力や高速治癒、霊撃といった能力も持っている。
ユロン・ケスティス《人名》
 通称は毒蜘蛛ユロン。背は低く、せむしのため余計にその印象は強まる。長っ鼻。釣り上がった目。
 性格は陰険。苦しませながら殺したがり、毒で動けなくして足蹴にする。毒を塗った非常に細い針金、錆びた釘、少し舌にぴりりとくる痺れ薬を多用する。
 二重十字の暗殺教団の捨て駒にして尖兵。
シャムアト・タリム《人名》
 ツァールの大商人キシェレクの息子。21才。
 金のかかった服装。容姿端麗。背が高く、優男風。
 演技派。目的のためには手段を選ばないようになろうとしているが、なりきれない。話しながら右手の中指で左手の甲を叩く癖がある。
 所有物はお金沢山、華麗な装飾を持つ紋章入りの金の指輪。
 エリーサに好意を持ったが……。裏切ったと思ったエリーサと戦うなら、全力防御して、負けたら、「エリーサ、君に殺されるなら、文句はないよ。君とあえただけでも、これまで生きて来て良かったと思う」。
 トゥーフ掌握のため、二重十字の暗殺教団と接触を持つ。
サーリャ・ケリス《人名》
 二重十字の暗殺教団の新トゥーフ支部長。筋骨たくましい大女。
 自分の力に溺れていおり、しかも陰険。相手を力任せに握り潰すのが好き。遠回しな嫌味を言う。ひ弱な奴、特にかよわげな女などは大嫌い。
 筋力と斧槍をあやつるのが得意。一家全員を重ねて、踏み殺したという逸話がある。
オーリン・キャリク《人名》
 始祖の子孫。美学を貫きたがる。
 二重十字の暗殺教団の始祖降臨計画のため、やって来た。

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