語り部:本体ルール・リファレンス 0.39


目次


語り部:本体ルール・リファレンス 0.39

汎用ロールプレイングシステム 語り部 Ver 0.39 1997年09月10日
Copyright(C)1993,1996  sf こと古谷俊一
協力:
 旧サークルPartner及び語り部通信倶楽部、工房 匠、UG-NET、不思議の国の
ねっと、RPG-ML他の皆さん


はじめに

 この文章は創作TRPG「語り部」の参照用のルールファイルです。
 setextという構造化テキスト(章や節を明示するテキスト)の規格を使用して
かかれています。


語り部とは

 語り部は、自由な発想にもとづいた多様なキャラクターを数値で表現するた
めの機能をもった、強力なTRPGのルールシステムです。
 語り部が他のルールと異なる点には次のようなものがあります。

・性格、外見、体格、地位などの「特徴」が行為判定に大きな影響を与える
・同様に感情、過去の出来事、好み、素質なども「特徴」になる
・状況の有利・不利や武器の特性も一時的な「特徴」として扱う
・キャラクターの数値データがイメージから即座につくられる
・数値とイメージが直結している
・最高技能値による上限以下であればどんな能力を持っていてもかまわない
・プレイ中の追加設定を即座にキャラクターの数値データに変換できる
・疲労度をヒーローポイント的に扱う
・累積ダメージという概念が(疲労以外には)無い
・ルールレスセッションでありがちな暴走を抑止するための制約としてのルール


コンセプト


・個人の強さを重視している
・キャラクターを演じるよりもキャラクターを演出することを望む
・プレイヤーはストーリーの共同製作者である
・プレイヤーの創意によるロールプレイを阻害しない


キャラクターの作成手順

まずはイメージから

 キャラクターを作成するためには、まずどんなキャラクターをプレイしたい
かを考えることから始めます。
 どの程度の事がこなせるかから技能値を決めて、どんな個性が際立っている
かから特徴を決めて行きます。


ひな型の利用

 あらかじめ設定や能力を用意して、数値データをある程度作ってある
ひな型と言います。??A?????.TXTというファイル名になっているはずで、最初
の二文字は世界設定コード、あとの五文字は識別用の数字となっています。
 ひな型がある場合には、このひな型を利用してキャラクターの作成の参考に
してみてください。
 以下にひな型の例を引用しておきます。これは「狭間」という現代オカルト
もの世界設定のために用意されたひな型の一つです。

例:

□□□□□□□□□□ 語り部 キャラクターひな型 □□□□□□□□□□
☆狭間:一般的な浪人ゲーマー
☆役割
 他のひな型と組み合わせて個性を出すのに利用できるでしょう。
 また、ゲーム能力が戦闘能力に直結するような世界へ飛ばされるという設定
では、ゲーマー技能を少しかさあげしてやると魅力的なキャラクターになるで
しょう。
 ついでながら、ゲームセンターで情報収集できることも見逃せない長所と言
えるでしょう。
-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=- 個人情報 -=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
☆氏名:普通
☆性別:男が多い。女はまれ。
☆身長:問わず。
☆体重:問わず。一般的には重いか極端に軽い。
☆年齢:問わず。普通は若い。
☆親族
 普通一般。
☆経歴
 ゲームに狂って勉強に身が入らずに浪人。それでも反省の様子を見せず、か
えって暇が増えたと喜んでゲーム三昧の日々を過ごしている。
 朝から予備校。早弁して昼休みに欠かさずゲーセンへ。当然ながら、予備校
が終わってからもゲーセンにいく。
-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-= 余力 =-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
余力総計[10]		体力[4]	集中力[6]
-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-= 特徴 =-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
社会的特徴:
・必須	浪人生:1  予備校生:1
・選択	ゲーム会社のアルバイト:1  ゲーセンのバイト:1
身体的特徴:
・必須	手先が器用:1
・選択	眼が悪い:1  眼鏡をかけている:1  長髪:1  太っている:1
	無精髭:1  やせている:1
精神的特徴:
・必須	ゲーム好き:2  ゲームに金をつぎ込むことを厭わない:1
	気が弱い:1  勉強に関しては根気に欠ける:1
・選択	新作が出たら授業をサボることもいとわない:1  アニメファン:1
	メジャーを嫌う:1
その他特徴:
・必須	特定のゲームがうまい:1
・選択	特になし
-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-= 技能 =-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
複合的技能:
・必須	ゲーマー:10
・選択	文化会系部活動:9
行動系技能:
・必須	体育活動:9
・選択	体育会系部活動:8
知識系技能:
・必須	ゲーム史:10  雑学:9
・選択	アニメ知識:10
生活技能 
・必須	特になし
・選択	バイク:9  自動車:9
言語技能 :
・必須	日本語:10  英語:8
・選択	マシン語:10  C言語:10  BASIC:10
-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=- 所持品 -=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
衣類:Tシャツ。ジーンズ。
道具:コンシューマゲーム機。アーケード基盤。
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□



技能値の読み方

 技能値はキャラクターを表わすもっとも基本的な数値データで、そのキャラ
クターの行動能力を表わすものです。キャラクターがなんらかの影響を外部・
内部に行使することのできる能力を示す数値だと考えてください。
 この技能のうち数値が最大のものを「最高技能」と呼び、キャラクター作成
時には最高技能の値がいくつであるかだけを指定します。最高技能値以下の技
能であれば、いくつ技能を取っても、どんな技能を取ってもかまいません。
 どの技能も本質的にはなんでもできます。ただ、技能の効力の大きさが技能
値によって制約されるだけです。 技能の定性的な制約(ある技能に対抗するの
に使用できる技能はなにか、歩こうかを引き起こすのに使える技能はなにかな
ど) はサプリメントの指示、もしくはセッションの場における共通の了解事項
によってのみ発生します。

 プレイ中に設定が増加・変化することはよくあることですから、設定の変更
に応じてキャラクターの数値データが増加・変化することはルールにおいて明
確に許可・推奨されています。
 設定が変化したり増補されたりして数値の変更、追加が必要になったときに
は、マスター及び他のプレイヤーの同意を得た上で、制限の範囲内で数値を変
えたり特徴を取り直したり、取り消したりして頂いて結構です。

 以下に技能値と熟練度の対照表を示します。

	技能値  熟練度
	6	初心者。やったことのない人間。
	7	へたくそ。
	8	入門者。本格的に習い始めたところ。
	9	一応基礎ができたあたり。何とか見よう見真似で処理できる
		程度。スポーツなら学生の大会レベル。
	10	9割のプロ。凄くうまいと言うほどではないが、一通りのこ
		とはこなせるかもしれない。一応金がとれる程度にはこなせ
		る程度。
	11	ましなプロ。一応その分野での専門家らしいといえます。
		プロスポーツ選手などはこのあたりからでしょうか。
	12	本物のプロ。まともな教授や院生クラス。その分野の進展に
		なんとか貢献が可能。
		名前を知られているプロ。
	13	非常に有能であると衆目の一致するところ。一般的能力の範
		囲内ではあるが周囲に隔絶した能力。
	14	指折りのプロ。トップではないもののその近く。
		横綱。
	15	飛びっきりのプロ。普通のプロにできる程度のことは片手間
		にできる。学園アクションの主人公クラス。
		普通の世界チャンピオンは、せいぜいこのあたりでしょう。
	18	異能の域に達している。
	20	非常識な能力。超伝奇アクション。
	24	神の如き技量。


 次に、技能値別に可能な破壊活動の程度を示します。
 目標値4で可能な行動だと考えてください。難易度のところに書かれている
ように、行動の難易度はここの技能値を−4した値です。

	技能値	破壊力
	10	板くらいなら割れる。
	13	壁を壊す。石を砕く。
	15	家屋が破壊できる。
	18	ビルが破壊できる。
	24	(小型)核攻撃。
	34	小規模(四国や北海道程度の大型の諸島サイズ)の宇宙を創製
		維持・消去が可能。(仮数値)
	44	宇宙をつけたり消したり……(仮数値)

 語り部では基本的に技能を「攻撃」と「無効化」に利用します。詳しくは行
為判定の解説をお読み頂きたいのですが、要するに、(なんらかの意味で)攻撃
に利用できる技能と、(どうにかして)攻撃を無効にする技能とに分けることが
できるというわけです。(両用できる技能も多いのですが)


 初期技能として誰もが以下の五つの技能を持ちます。キャラクターの個性に
合わせて名前を変えたり別の技能に吸収したりしてもかまいません。

技能名		一般人	判定用途
運動能力	10	一般的な運動能力。走ったり登ったり。
格闘		7	殴る蹴る。肉体的攻撃の回避。
自律		7	精神系攻撃への抵抗。努力できるかどうか。
学業		10	学校で習うようなことに対する知識。
一般常識	10	普通に生活していれば知っているであろう知識を思
			い出す。
雑学		8	生活には特に必要ないような知識。
母国語		10	母国語による会話。読み書きが普通にできる社会で
			は読み書きも含む。


 追補。
 語り部はすべての技能が最高技能値というキャラクターであっても問題ない
ことが前提としてデザインされています。以前語り部通信倶楽部などで「万能
技能」という話題が出ました。最高技能値15だとすれば、 「万能:15」だけと
いうキャラクターを作っても良いのかという問題提起です。そして実は、語り
部では実はルール的には万能技能をとってもそれでもかまわないんですよね。
 マスターは語り部の本体ルールの元では、PCは障害に対してなんらかの方法
で最高技能をあててくるものと覚悟してマスタリングを行なう必要があります
から、すべてに万能技能をもって当たられたとしてもマスターにとってはたい
した問題ではないわけです。
 しかしプレイヤーにとっては若干異なります。一般に技能を万能化するとイ
メージしにくくなり、行動を描写しにくくなります。キャラクターのロールプ
レイを考える上でも欠点の無いキャラクターなんてのは非常にやりにくい。
 そこでおそらくプレイヤーはキャラクターを個性的な存在にすべく努力して、
結果として色々と欠点をつけていくことになります。最高技能値で上限は押さ
えられているんですから、当然技能値は最高技能値から下げる以外の個性化は
できないわけですね。
 とまあこんな感じに万能技能を取りうることは問題とはならずに、逆に語り
部の柔軟性を引き出す道具として利用できると考えているわけです。



特徴の読み方

 「特徴」は、キャラクター個人の素質や地位、性格や癖などを表わす数値で
す。キャラクターの行動の見事さ・避けにくさを表わす数値である「強制力」
への修正として用いることで、性格・感情・習慣のもたらす行動能力の変化を
表現しています。
 性格・経歴・適性・好み・才能・癖・地位などがどの程度であるかを特徴に
よって表現していますので、これはロールプレイの指針として有効に活用して
ください。もしも特徴に反する行動が頻発する場合には、プレイ中であっても
特徴の内容を変更してしまうべきです。
 語り部はロールプレイを支援するためのルール体系ですから、プレイヤーが
妙な行動をすること自体は制限しないものの、キャラクターの設定とロールプ
レイしている内容と同じであるようにすることだけは最低限守って頂きたいと
思います。
 特徴もサプリメントの制約が無い場合には、いくつでも取ってかまいません
が、ロールプレイできないような特徴は取らないこともテクニックの一つとし
て覚えておいてください。

 プレイ中に設定が増加・変化することはよくあることですから、設定の変更
に応じてキャラクターの数値データが増加・変化することはルールにおいて明
確に許可・推奨されています。
 設定が変化したり増補されたりして数値の変更、追加が必要になったときに
は、マスター及び他のプレイヤーの同意を得た上で、制限の範囲内で数値を変
えたり特徴を取り直したり、取り消したりして頂いて結構です。

 特徴の数値が持つ意味について、以下に示します。

	特徴値	イメージ
	1	普通より少し優れている。くせ程度。good。
	2	かなり優秀。衆に秀でている。better。
	3	圧倒的に優れている。卓越した能力。best。
	4	普通の意味での人の域を超えている。crazy!
	5	まさに神の域に達している。Oh!my God!

 特徴の取りうる値は1から5の整数であり、分数だの小数だの負の数だのは
使用してはいけません。
 詳細に解説いたしましょう。

【特徴が1】
	普通より少し優れている。くせ程度。good。数十人に一人程
	度の頻度。関係ないものから見れば凄いが、関係者としては
	当たり前程度。
【特徴が2.】
	かなり優秀。衆に秀でている。better。甘めにみても数百人
	にひとり。ふつう、数千人にひとり。関係者としてもなかな
	か凄い。
【特徴が3】
	圧倒的に優れている。卓越した能力。best。出身地の経験以
	外に3がついていることは、かなりまれです。ある組織での
	トップクラス。ある社会でのトップ水準。甘めにみても数十
	万人にひとり。
【特徴が4】
	普通の意味での人の域を、超えている。常識を超えている。
	crazy! 一般的には、表に出てきにくいくらいの凄さ。3ま
	でとは格が違う、桁外れの凄さ。
【特徴が5】
	まさに神の域に達している。Oh!my God!ほんとの神々以外
	では、それほどいない。ヒロイックな世界でも一世代につき
	数人程度だろう。


 誰もが持っているような一般的な特徴として以下の二つがあります。キャラ
クターの設定に合わせて具体的な名前を入れて下さい。

特徴名		一般人	判定用途
出身地		3	出身地にかかわる知識を思い出す。
地位		1〜3	組織内の人間に対する命令など。


 特殊な特徴のイメージ数値対照表をあげておきます。

【地位】
	特徴値	イメージ
	1	組織の構成員。
	2	組織において責任と権限のある役についている。
	3	組織の頂点に立っている。
	4	すべての権限を握っている創業者の一部。


余力の決定

 「余力」とは、どれだけ自分の力を発揮しきれるかを表わす数値で、人間に
は「体力」と「集中力」の二種類の余力があります。
 難しい行動をすると減りやすいので、これが大きければ大きいほど、長いあ
いだ難しい行動を続けられることになります。
 ルール的には、行為判定ロールに失敗した時に、振り直しポイントとして用
いられます。一点消費するごとに、一回の振り直しができます。この振り直し
回数には余力の残り数以外には制限はありませんから、成功するか余力が0に
なるまでまで余力を消費し続けることができます。余力が0になったならば、
そのキャラクターは行動不能になります。
 このルールにより、難しい行動をすればするほど「余力」が消費される事に
なりますから、「体力」は肉体の疲労度を、「集中力」は精神の疲弊度を、そ
れぞれ表わす事になります。
  結局、余力は既存のルールでの疲労やHPのようなものですが、多くのルー
ルとは運用方法が異なっているのだと考えていただけばよいかと思います。


余力総計:
 「余力総計」は、キャラクターの強さを表わす、最も大まかな分類です。
 最高技能値(キャラクターの技能値でもっとも大きなもの)に応じて定まり、
キャラクター作成時に「体力」と「集中力」に分割されます。この時、「体
力」と「集中力」の和が「余力総計」と等しくなるように分割します。


体力:
 「体力」は肉体的疲労の少なさや体調の良さを表わす数値で、物理的行動を
失敗無く行なうことができるかを示します。
 これが0になった時には、肉体的な行動を行なう能力を一時的に喪失してし
まい、マスターがその時のイメージに応じて指示した休養を取るまではなにも
できなくなります。
 白兵戦、肉体労働、持久走、反射的行動、本能的行動などの、体を動かす
行動の判定で、振り直しポイントとして利用します。


集中力:
 「集中力」は精神的疲労の少なさややる気の多さを表わす数値で、精神的行
動を失敗無く行なうことができるかを示します。
 これが0になった時には、精神的な行動を行なう能力を一時的に喪失してし
まい、マスターがその時のイメージに応じて指示した休養を取るまではなにも
できなくなります。
 射撃、呪術、知識の確認、知能的行動などの、精神活動が中心となる行動
の判定で、振り直しポイントとして利用します。

 まずは余力総計ですが、そのキャラクターの持つ技能のうち最大の技能の数
値をもとにして決定します。この最大の技能の数値を、ルールでは「最高技能
値」と呼んでいます。

 最高技能値から余力総計を決める方法を説明します。以下の表にありますよ
うに、最高技能値から余力総計は一意に定まります。

	最高技能値	余力総計
	9以上		10
	12以上		15
	15以上		18
	17以上		20
	20以上		25
	23以上		30
	27以上		35
	30以上		40
	34以上		45
	37以上		50
	40以上		60

 体力と集中力は、余力総計を二つに分割して決めます。

	体力+集中力=余力総計

 となるように振り分けるわけです。


回復:

 余力の回復は、十分な休みを取ったとマスターが判断したときに行われます。
 休みは、睡眠・食事・入浴といったところが代表的なものでしょう。



行動判定の手順

余力による再ロール

 余力は余力の決定の項で前述しましたように振り直しポイントでして、一点
消費するごとに一回振り直しが可能になります。この振り直しは、多くのルー
ルとは異なり、余力が残っている限りは何回でも可能です。
 体力と集中力のどちらの余力を使うかは、行なっている行動によって決めま
す。どんな行動がどちらの余力に関係するかは、それぞれの用語の解説をお読
み下さい。
 大まかに言って、次のような感じです。

体力:
  白兵戦、肉体労働、持久走、反射的行動、本能的行動など。

集中力:
  射撃、呪術、知識の確認、知能的行動などの精神活動。

 語り部のバランスは余力による再ロールが行われることを前提として取られ
ていますから、目標値を低めにとって思い切って行動していきましょう。

 ただし、余力が尽きたら技能を利用できなくなります。行動不能になってし
まい、煮るなり焼くなりされても文句の言えない状態になってしまうのです。
 体力ならば体が疲れきって力が入らず動けない状態であると、集中力ならば
精神的に消耗しきって何も手につかない状態であると考えていただければ結構
です。
 キャラクターの安全のため、余力の使いすぎには気をつけましょう。



難易度ロール

 行為判定のうち、行動の難しさ(難易度)をマスターが提示する場合につい
て説明します。難易度を提示されて判定するために、これを難易度ロールと呼
びます。難易度ロールではプレイヤーは成功率(目標値)を操作する事はでき
ません。
 「語り部」では影響表を利用してプレイヤーが成功率(目標値)と効果の大
きさ(効果値・影響)を選択するのが基本ですが、奇襲を受けた場合に対応で
きるかどうかや、隠れ潜む敵の待ち伏せに気が付くかなどの外力への対応にお
いては、マスターもしくは攻撃側によって難易度が決定され、結果として成功
率をプレイヤーが左右する事ができなくなるのです。
 成功率(目標値)や行動の見事さ(強制力・無効化の難易度)をプレイヤー
が決定する「強制力ロール」について次の項目で解説します。

用語説明:

なんいど【難易度】《ルール用語》
	 行動の難しさを数字で表したもの。
	 相手が自然物の場合にはマスターが難易度イメージ表によって決定
	することもある。
	 相手の攻撃を無効化する際には、攻撃側の強制力をそのまま難易度
	として適用する。
なんいど・ろーる【難易度ロール】《ルール用語》
	 行為判定のうち、行動の難しさ(難易度)をマスターが提示するも
	ののこと。他の行為判定とは異なり、プレイヤーは成功率(目標値)
	を操作する事ができない。
	 技能値−難易度=目標値となり、2D6で目標値以下を出せば行動
	は成功する。
もくひょうち【目標値】《ルール用語》
	 行動の成功率の事。2D6で目標値以下を出せば、行動は成功する
	ことになる。ただし、成功した場合にも相手には無効化の余地が残さ
	れている。

判定手順:

	1.難易度の決定
	2.適用される特徴の検討と加算
	3.目標値の算出
	4.ダイス・ロール
	5.余力による再ロール

1.難易度の決定

 マスターが難易度イメージ表を用いて難易度を決定する。

	難易度	行動内容の程度
	1	簡単な行動。
	3	プロならこの程度までは楽にこなせるはず。
	5	プロが全力をつくせば可能であろうもの。
	8	プロでも無理があるもの。
		本物のプロならば何とか可能かもしれない。
	10	飛び切りのプロでも困難。
	12	飛び切りのプロが全力を投じても、失敗しそう。

	難易度	破壊力
	1	ガラスを割る。
	3	板を割る。
	6	厚い板くらいなら割れる。
	9	壁を壊す。石を砕く。
	11	家屋が破壊できる。
	14	ビルが破壊できる。
	20	核攻撃。


2.適用される特徴の検討と加算

 行動内容、状況に応じて、適用できそうな特徴のうち最大のもののみを適用
することになります。

	最終難易度=イメージによる難易度−正の特徴+負の特徴

 クライマックス時のみ

	最終難易度=イメージによる難易度−正の特徴1−正の特徴2.

 クライマックスでは、普段取ることのできる正の特徴以外にも、正に取るこ
とのできる二つめの特徴を採用してもかまいません。

3.目標値の算出

 行動者の技能値から

	技能値−最終難易度=目標値

4.ダイス・ロール
 2D6を振って目標値以下が出れば成功です。
 失敗した場合は5.の「余力による再ロール」へ。成功した場合は「余力によ
る再ロール」を行なう必要はありませんので6.の「結果の適用」に飛んでくだ
さい。

5.余力による再ロール
 失敗していた場合には、関係する余力を一点消費して再びロールできます。
 余力が残っている限りは、何度でも再ロールできます。

6.結果の適用
実例:

GM	: 赤柿の忘れ物は用水路の向こうにあるぞ。用水路の幅は6m、一般
	:人ではちと辛いかもしれんが、体操選手なら楽勝だな。難易度は3
	:程度だな。
鍵谷	: ふふふふふ。運動能力12だから楽勝。んじゃ、飛び越えます。
GM	: 難易度3の難易度ロールをしてみてくれ。
鍵谷	: 技能値12−難易度3=9。目標値は9か。
  	: ダイスを振って……2+3=5っと。楽勝で9以下だな。
GM	: 了解。無事忘れ物を手に入れたぞ。



強制力ロールの概略

 生き物であれ物体であれ、相手を行動不能にするためのルールです。一対一
の戦闘ルールとして用いられます。
 技能値を強制力と目標値とに分割して、2D6で目標値以下を出せば攻撃が
成功です。攻撃が成功したら、防御側は強制力を難易度として難易度ロールを
行い、成功すれば攻撃を回避(無効化)もしくは受け止める事ができたことに
なります。
 強制力にまわすぶんだけ目標値が減少しますから、強制力を大きく取れば取
るほど防御の成功率は落とす事ができるものの、攻撃の成功率も低下します。

用語説明:

きょうせいりょく【強制力】《ルール用語》
	 攻撃を受けた側はこれを難易度として難易度ロールを行います。難
	易度ロールに成功すれば攻撃は失敗しますが、失敗した場合には戦闘
	能力を失います。
きょうせいりょく・ろーる【強制力ロール】《ルール用語》
	 生き物であれ物体であれ、相手を行動不能にするためのルール。一
	対一の簡易戦闘ルールとして用いられます。
	 技能値を強制力と目標値とに分割して、2D6で目標値以下を出せ
	ば攻撃が成功したことになります。攻撃が成功した場合、防御側は強
	制力を難易度として難易度ロールを行い、成功すれば攻撃を無効化で
	きたことになります。失敗して再ロールしない事になれば、防御側は
	戦闘不能になります。
	 この時に、戦闘不能とはどのような状態であるかを描写するために
	は、最終強制力を難易度と照らしあらせて決定します。
	→強制力
	→最終強制力

判定手順:

	1.技能分割
	2.適用される特徴の検討と加算
	3.攻撃側のロール
	4.余力による再ロール
	5.適用される特徴の検討
	6.特徴の加算
	7.防御側目標値の決定
	8.防御側のロール
	9.余力による再ロール

1.技能分割

 技能値を強制力と目標値の二つに分割します。
	技能値=強制力+目標値
 となるように、強制力と目標値を決めるわけです。
 強制力を難易度とみなして難易度ロールをすると考えてもらってもかまいま
せん。

2.攻撃側の適用される特徴の検討と加算


3.攻撃側のロール

 2D6を振って目標値以下を出す事に成功すれば、ロールは成功です。
 ロールが失敗した場合は4.へ。
 ロールが成功した場合は攻撃側行動が成功した事になりますので、5.へ。

4.余力による再ロール

 失敗していた場合には、関係する余力を一点消費して再びロールできます。
 余力が残っている限りは、何度でも再ロールできます。
 余力がなくなったりそれ以上再ロールする気がなくなった場合には、その行
動は失敗した事になり、防御側は何もする必要はなくなります。

5.防御側の適用される特徴の検討
6.防御側の特徴の加算
7.防御側目標値の決定

 1.で攻撃側が決定した強制力を難易度として、防御側が難易度ロールをし
ます。
	防御側の技能−難易度(=攻撃の強制力)=目標値

8.防御側のロール
 2D6を振って目標値以下を出す事(ロール)に成功すれば、防御行動は成
功となります。
 失敗した場合は9.へ。
 成功した場合は攻撃は完全に無効となります。

9.余力による再ロール
 失敗していた場合には、関係する余力を一点消費して再びロールできます。
 余力が残っている限りは、何度でも再ロールできます。
 余力がなくなったりそれ以上再ロールする気がなくなった場合には、防御行
動は失敗し、防御側は完全に行動不能になります。
 脳味噌が吹っ飛んでもすぐに回復する存在であるか、脳味噌が吹っ飛んでも
すぐに再生することが当たり前である世界でもない限り、脳味噌が吹っ飛んだ
ことによる行動不能は語り部で扱う戦闘不能ではありません。
 なぜなら、語り部では自分が怪我をしたり死んだりするかどうかは自分で選
ぶべき事柄なのです。
 ちなみに、肉体的に行動不能であるとは限りません。萎縮して戦えないとか、
身がすくんで戦えないとかといったことのほうが多いと思います。


実例:

 鍵谷		:「この、軟弱ものめっ!」柳場を軽くはり倒します。
		 僕の「格闘」は13だから、目標値8、強制力5でいってみよう。
		: 2D6を振って……7。ロール成功。行動も成功だね。
 柳場		: 私の「体術」の技能値は10ですから、強制力の5を引けば5しか
		:残りませんね。 2D6で5以下ですか……ああっ、6。ロール失敗で
		:す。体力は2点しか残っていないけど、再ロールします。
		: あ、8! ……駄目だ、失敗です。あきらめます。
 GM		: 了解。防御側の行動失敗ですね。
		: 鍵谷の張り手は疲労しきった柳場には耐えられなかった。
		: まあ、格闘13だからかなりの達人。軽く殴った程度だったけど、肉
		:体的には一般人の柳場ではほとんど勝ち目はなかったんだよね。
		: とはいえ格闘10の人間がほぼ全力で攻撃(難易度5)したのに匹敵す
		:るのか。3点の差でも大きいな。



時分割進行処理の概略

判定手順:
 戦闘などでは、行為判定は全員の行動宣言が終了した後に技能値の高い側か
ら処理されます。行動宣言ではどの技能を使用するかを宣言し、行動に利用す
る技能の高いものから順番に強制力ロールによって攻撃していくのです。
 技能値が同一の場合には、特徴を見て速そうなほうを決めるようにしてくだ
さい。「素早い」とか「機敏である」とか「○○が得意」だとかの点数が高い
ほど、早めに行動できると考えるのです。
 それでも駄目なら、行動内容がイメージ的に速そうにみえるほうから処理し
ます。これはまさにマスターの恣意的な判断になります。

 1ターンの所要時間については、0.20までは5秒程度となっていましたけど、
今では「マスターと世界設定によって決定される任意の分割された時間」が経
過するものと考えています。
 ターン分割というのはプレイの進行管理を行なうために便宜上時間を分割し
て処理するための方策ですから、ターンの長さは任意でもかまわないと思いま
したので。


ダメージの記述

 攻撃を無効化するのに失敗しても、即座に死亡だとは言えません。語り部で
は「威力の具体的表現に関しては、強制力と等しい破壊力を上限とする」こと
になっています。
 現在のダメージ関係の結論としては、攻撃を受けた結果は攻撃の強制力を物
理的破壊の難易度と比較して、その難易度以下の破壊程度を描写するというこ
とになっります。


治療

 語り部では攻撃の強制力が治療の難易度になるので、強制力を高く取れる技
能値の高い人間の撃った弾丸のほうが治療しにくいものになります。
 無論強制力を落としたりダメージの記述を強制力と等価な難易度のものより
も低くしたりすれば、治りやすくなるでしょうけど。
 弾丸のタイプによって治りにくさの特徴をつけてもいいんですが。



体力0

 物理的アクションは起こさないだろうと考えられますから、そうなるのかな……。
 ルール的には0だと行動不能と判定されるのですが、特例として考えたほうが
いいのかな……?
 ……そういえば簡易ひな型のヒダルガミが体力が0ですから、昔の判断では
かまわないことになっていたのか……。ルールブックにこのあたりの記述も追
加しておきます。

連絡先
ディレクトリルートに戻る
語り部総本部