小説『研究所にて』


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小説『研究所にて』

 冴えない表情をしてドアを開ける。
 その先には白衣を着た小太りな中年男性が待ちかまえていた。彼は淡々と喋
り出す、しかし私はそんな物聞いてはいない。
 必要な情報は後からデータジャックから入って来る、目の前のことよりも今
これから起こることの方に私の心は大部分を占められていた……機能テスト、馬
鹿げた戦闘マシーンを作るためのデータ取りだそうだ、私は力の半分しか出し
ていないのにそれをあの研究員達は喜んで収集している、馬鹿な人たち……そん
なことに優秀な特殊部隊を使わなくてもいいのに。
 戦闘開始、その瞬間……私は変わる。私は特殊部隊が待ちかまえる熱帯の密
林と設定してある戦闘フィールドへナイフ一本で入っていく。武器は倒したター
ゲットから奪えばいいし、私は軽装が好きだった。
 フィールドへ入ってからどの位経っただろう、私は木の上でターゲットを捜
していた。暑い……戦闘モードに移行して感覚カットしてあるはずなのに暑い、
この肌がねとつくような感触、嫌な感じだ。
 《熱源反応! 後方よりターゲットが接近》
 ISSACが警告する、私はディスプレイ表示される情報などを頼りにターゲッ
トを確認する。ターゲットは私に気づかずに私の下を通り過ぎる。
 馬鹿。
 私は上よ。
 ばっと飛び降り、相手が気づく前に与えられたナイフで喉を切り裂き同時に身
をひねって返り血をかわす。一人殺した……。
今までこれが3回ぐらいあった、いずれも全員を殺した……そうしないと私が殺
されちゃうから……
3人……4人……5人、次々と声を上げる間もないままターゲットは息絶える、そ
して、残りの者たちは恐慌に駆られる。そして、あと2人……手強い。奴等は罠
を張りながら巧みに私のセンサー群をかいくぐって移動している、だけど……彼
らは私からは逃れられない。
 《最終ターゲット発見!》
見つけた! ……奴等のうちの一人は木の陰にいる、距離は約100メートル……葉っ
ぱがじゃまだけど確実にヒットできる、そう思った瞬間に私の体はそれに対応
する。左手には倒してきたターゲットから奪った拳銃……ベレッタM92Fが握
られていた、 スマートリンクはないがISSACのデータを照らし合わせながら照
準を合わせる、そして……発砲。
 《ターゲットの戦闘能力を奪いました》
ISSACが伝えてくる…… 私は奴の死を確認するために奴に近づく。弾丸は見事に
耳を貫いていた。
 《後方に熱源反応!》
ISSACの警告に対して私は振り向きざまに銃を連射する、全弾ヒット! だが……
奴は倒れなかった、奴は腰だめに構えたヘビィーマシンガンのトリガーを引い
た……
迂闊だった、普通ならあれで倒せるはずだった。まさかメンバーの中に試作型
のロボットが混ざってるとは思わなかった。脇腹……右肩……左腿、その全てが被
弾していた、特に右肩は弾が止まっているようだった、痛みは消したが失血が
激しい……。組織閉鎖したいが腕を使えないと不便だ、だからすぐに行動を起こ
さねばと思った。
10分経った、ターゲットはとらえていた。たが隙がない、しかたない、つっこ
むか。私は決心すると気から飛び降りる、目の前には奴が待ってましたとばか
りにヘビィマシンガンを構えていた、弾丸が打ち出される構わずに私は突進す
る、その右手にはナイフが握られている。体のあちこちに弾丸がヒットする、
これはヤバイかも知れない後5メートル……3……2……届くっ、私は低い位置から
奴に飛びかかると同時にナイフを繰り出す……。
ねらいどうりだった、頭を破壊すると奴は活動を止めた。私は立ち上がると通
常モードへ移行してふらつきながら白衣の男の所へ戻った。
「いいデータが取れた。ありがとう。今日はもう帰っていいよ」
疲れましたぁ、それに……私の両手はもう血まみれ……
それにしても、この有様を見てパパと慎也さんはどう思うんだろう。


補足

 著作はリュー氏。
 ルール・設定管理のsfとして言えば、技能値13ではこんなに強くは無いんだ
が……ってのはあります、はい。



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