エピソード279より。270も同内容だったので併合。
元が(小説型)エピソードだったので、描写は小説的でないかも。
それはなにげないいつもの朝だった。
珍しく次の日も忙しくない剽夜は、せっかくだから竜胆で遊ぼうと考えた。
「あきりん、王様ゲームをやろう(きらきら)」
「い、いきなり何言ってんのよスケベ」
「大丈夫だ、服を脱げとかは言ったりしないから。それに、じゃんけんとかで
決めるんじゃなくて、鉄拳2の対戦で決めるんだ」
「ならいいけど」
剽夜のもくろみはこーである。
たまにはあきりんにも家事をさせないと、あきりんが堕落してしまうじゃな
いか。これキレイごと。本音はAこれで勝ってあきりんで遊ぶのだっ。
「そーだなあ。私が勝ったらあきりん、皿を洗え(ふんぞり)」
「あいよ」
第一戦。竜胆の勝ち〜。
「(くっ、こんなはずじゃ。まあいい。最初くらい勝たせてあげないと、機嫌を
損ねたらそれでおしまいだからな)」
「がんばってね〜」
その間に、竜胆は新たな空中コンボをモノにしていた。
皿を洗っている剽夜は気づいてない。
「よし終わったぁ! そーだな、今度は肩がこってるから、肩もみしてもらお
うか」
「へいへい」
第二戦。竜胆の勝ち〜。
「あ、そこ……うっ……気持ちいい……」
「お客さーん、こってますねぇ……(うう、こんなはずじゃ)」
「そーだな、今度こそ勝つ。耳かきをしてもらうぞ」
「はいはい」
第三戦。竜胆の勝ち〜。
「こんなはずじゃ……まあいい。さあ、膝枕してあげるから、頭をのせなさい」
「はい(こと)」
「かりかりかりかり」
「……」
黙って耳かきしてもらってる。えてしてこーいう時は、目をつぶって
るものなんだようんうん)」
「(……可愛いじゃないか)……」
ふと、顔を近づける剽夜。
竜胆の頬に、軽くくちづける。
「……更ちゃん?」
「いやあ、あきりんが可愛かったから。さあ、反対側の耳を見せて〜」
軽く頬を押さえる竜胆。ちょっと顔が赤い。
嗚呼、幸せな休日の朝。
その後も王様ゲームで連勝した竜胆は、どーいうわけか剽夜をツーリングに
誘った。キスされたのが影響してるんだろうねキャー
「さあ行こうかあきりん」
「……って、何処持ってるのよ」
剽夜くん、あきりんのジーンズのベルトループを持っている。それはいいの
だが、前のベルトループである(^^;)
竜胆は横のを持ってと言ったつもりだったのだ。
「えっちぃ! 横のを持ってって言ったでしょ!」
たぶん顔は真っ赤なんだろうけど、ヘルメットかぶってるからわかんない。
ちなみにメットはアライのスーパーeだ。80オーバーで、頭が涼しいメット。
「ぜっったいに、ヘンなとこ触らないでよ?」
「わかったのだ」
お天気は晴れ。
目的地は、山ン中の小さな湖。名前はまだない。
セル一発始動。エンジン快調。わちのもそーありたい(笑)
しばらく快走。風がとっても気持ちいい。竜胆がバイクにこだわる理由が、
ちょっとだけわかったような気がする剽夜。スクーターではこの吹き付ける風
は味わえないから。
急ブレーキ。竜胆はその華奢な手足で、必死にバイクをコントロールしてい
る。
剽夜はその拍子に、手がベルトループからすっぽ抜けてしまったことに気づ
き、焦って手近なところにしがみつく。
そこが竜胆の可愛い胸に手を回すよーなところだったのはお約束か(^^;)
むに☆
柔らかいぞ、意外や意外。大きくなったんじゃない? ねえあきりん
竜胆はそれに気づいてない。路肩をこすって止まる。
路上に、派手なタイヤの跡。
白い猫が慌てて道の反対側に走っていく。
むに☆
竜胆、ほっと一息。
剽夜、しばらく役得。
「……よかった……」
「猫を避けたのか。動物好きのあきりんらしいね」
「……ところで、どこ……握ってる……の?」
「え? ああっ、これは失礼」
ああ、メット越しに伝わるあきりんの視線。ごめんね、でも、そんなあきり
んが見てみたかったんだよ。
「……えっち」
あれ? ぱんちが飛んでこない。
どうしたことだこれわ一体おかしいぞ。
「じゃ、出発しよ」
それからは何事もなくツーリング。
あきりん、すれ違うライダーにピースサインしてる。片手放して安全なのか?
そして、昼過ぎに湖に着いた。
嗚呼、湖面にきらめく初夏の陽光。思わず水面を走りたくなるね。
「更ちゃん……今、水面を走ってなかった?」
「細かい事は気にしない。それより、水が冷たくて気持ちいいぞ」
「ほんとだ」
ブーツを脱いで、ジーンズのすそを捲って、竜胆は水に足を踏み入れる。
よっしゃ、水に入ったな?
宣戦布告と認識したぞ。
「やだ、冷たーい」
「ほらほらほらぁ」
「もー。仕返しっ」
ああ、ばしゃばしゃと水遊び。童心にかえるってこういうこと?
頭真っ白で、楽しいよ。
「へへ〜。実は、おべんと作ってきたんだ〜。先生、お口にあうかどーかはわ
かりませんが」
「あきりんがお弁当を……珍しいこともあるもんだ」
「しかもおいしいじゃないか……もう教えることは何もない」
おべんと食べて、お茶飲んで。
こーなると、ちょっと一休みだね。運転の疲れを少しでもとらないと。
ほら、もうちょっと眠いんだろ。昼寝しよう。
言うとすぐに、あきりんは私にもたれかかるように寝息を。
寝つきがいいじゃないか。うらやましいことはないけど。
ああ、私も寝よう……こーやって地面に寝転がって昼寝するのは、こーいう
時の醍醐味だよね。
目覚めると、もうすぐ夕方黄昏時だった。
湖面は少しずつ、白銀から黄金へとその彩りを変えつつあった。
竜胆は、私の隣でしゃがみこんで、湖面を見つめている。
その横顔は、普段決して見られないような、柔らかい表情。
最近のあきりんは、可愛いじゃないか。
肩に手を回すと、あきりんはそっと身を寄せてきた。
ああ、雰囲気バンザイ。
しばらくそうして、もうちょっとこうしてたいけど、帰りが遅くなるのはま
ずい。
「そろそろ……帰ろうか」
「……もう?」
もの惜しげな竜胆。
見慣れたはずの上目づかいが、私の健康な心臓を撃つ。
「暗くなったら山道はキケンだからね。それに、冷えてくるだろうし」
「……うん」
帰り道。コンビニで休憩。
竜胆が、あったかい缶コーヒーを二つ、買ってくる。
私は、自分のをわざと落した。
「あ……新しいの、買ってくるね」
「いいよ。そっちがいいのだ」
有無を言わさず、あきりんのコーヒーを口にする。
「私はこれくらいで十分だから」
「……ん」
ちょっと恥ずかしそうなあきりん。
そんな表情が見たくなるなんて、一体どうしたんだろう、私は。
「ところで、なんで缶コーヒーなんだ?」
「それがツアラーのお約束だから☆」
日本酒飲んで酔っ払った剽夜。
ホントに酔ってるのかどーかは定かじゃないけど、傍目にはどーみても酔っ
てるから、酔ってるんだろう(笑)
いや、酔った振りらしいけど。
「よっしゃ。今度、おいちゃんがキャンプ連れてったろ」
「ホント?」
「おう、おいちゃんに任せとけ。今度の連休、迎えにくるから」
「やったー、わーい、キャンプだキャンプ☆」
竜胆も酔ってるじゃないか。
そりゃ、剽夜より酒に弱いからなあ。
んで、連休初日。「更ちゃんカー」が竜胆のマンションの前に違法駐車。
いや、人を待ってるんだから違法じゃないかな(^^;)
う〜ん、忘れた(^^;)
今度免許取りそうな人に聞くとしよう。
「あきりーん。きたぞ〜」
「は〜い」
ああ、竜胆。珍しく用意がいいじゃないか。
当たり前だい。こーいうイベントの準備は万端なんスよ。
「じゃあ、出発だ。ああ、最初に行っておくけど、結構山奥だぞ」
「それくらいじゃないと」←なにがだ
嗚呼、竜胆はご機嫌じゃないか。
当たり前だい。だってお出かけだもんね。
途中はとっても馬鹿話の花が満開だったね。
ああ、いつものことだよ。
「私有地につき、関係者以外の立ち入りを禁ず」
「ああ、関係者だからこんなの気にしない気にしない」
がらがらと門を開く剽夜。
はて、関係者とな。
ああ、間違いない、関係者だ。
「関係者って、ここって更ちゃんチの土地なの?」
「違うけど、関係者には間違いない。ここで入れなかったら、キャンプもでき
なくなるぞ」
「それは困る」
そーだろうそーだろう。
そこから走る事、一時間ほど。だって山道だから進みが遅いんだ。
「さあ、着いたぞ。こっからちょっと歩くけど」
「それくらいじゃないと」←だから、なにがだ
少し歩くと、バンガローというにはちと和風な、いわゆる「丸太小屋」があっ
た。とはいえ、昔、きこりの人が宿舎に使ってたのか、それともだれかの別荘
なのか。
「とりあえず荷物は中に入れといて」
「はーい」
ああ、あきりんがみょうに素直だ。いつもこーなら私も苦労せずに済むのに
なあ。
「あきりーん。こっちに小川があるから水遊びをしよう」
「あんた、露骨ですねぇ」
「そりゃもうキャンプだから」
「それくらいじゃないと?」
「そうそう」
ぱちゃぱちゃばしゃばしゃ
「やだ、つめたーい」
「当たり前だ、山の水だぞ。都会じゃ味わえないだろう」
「えいえい」
「やったなあきりん。お返しだ」
ざぶーん
「ちょっと、おぼれたらどーしてくれるの?」
「膝下しか深さがないじゃないか。どーやって溺れるんだ?」
「もー。ずぶぬれになっちゃったじゃない」
Tシャツの胸元をつまんでぼやく竜胆。
どーでもいいけどお嬢さん。透けてますよ、いや、私は一向に構わないんで
すけどねえ。
嗚呼、ピンク色のブラですか、可愛いですね〜。
「やだっ、見ないでよ!」
「早く着替えてきなさい。それとも、お風呂にするかい?」
「あるの?」
「五右衛門風呂がね。知ってる?」
「……釜に、蓋沈めて入るやつ」
「そうそう。私が沸かしてあげるから、ちょっと待ってなさい」
一時間くらいしたかな
「あきり〜ん。沸いたよ〜」
「はーい……更ちゃん、見ないでよ」
「はいはい」
いつもだって半分見られてるよーなもんじゃないか。
いやいや、こーいう場だから改まっちゃうんだよ。
「湯加減はどう?」
「ん〜ビバノンノンっって感じ」
「つまりちょうどいいんだね」
「そゆこと」
「ところで、一つ面白い話をしてあげるよ。私がなんでここの関係者かってこ
とと関係があるんだけどね。ここね、出るんだよ」
「出るって……?」
「ゆーれー」
「やだ、あたしがそーいう話に弱いの、知ってるんでしょ」
「まあまあ。まだ夕方だし、出たりはしないよ」
「ん〜……む〜」
「まあ、それを除霊するのが仕事で、そのついでにキャンプを楽しもうと思っ
たんだけど……その人ね、お風呂でかまゆでにされて死んだんだよ」
「……いやあああああああああああああああああああああああああああ」
ああ、そんな慌てて出ようとしなくても。艶姿がなんてこったいですぜ。
「……なんてね。ウ……ソ☆」
「……ホントに?」
「うん、ウソ」
「もー、更ちゃんのバカ!」
「まあまあ、お茶目なうそじゃない。それより、丸見えなんですけど。いや、
私はいいんですけどね。嬉しいから」
「……いやああああああああああん」
ざぶーん
鼻先までお湯につかる竜胆。あ〜あ、剽夜のいいオモチャになってるね。
うん、そう言われればおもちゃだねえ(笑)
「えっちヘンタイすけべど悪人!」
「ごめん、悪かった。でも、楽しかっただろ」
「……むー」
楽しいか?
いや、剽夜くんは常識が人と違ってるから楽しいねん。
さて、夜。
囲炉裏を囲む二人。
やっぱり晩酌してたりして、もうこの二人ってば酔っ払いコンビなんだから。
「さて、寝ようか。あっちの部屋とこっちの部屋、どっちがいい?」
「……あっち」
「わかった。あ、トイレは外だから」
「む〜。たたき起こしてやる、その時は」
「たたかなくても起きてあげるよ、じゃ、お休み。ぐが〜」
布団にもぐりこんだ竜胆。
でも、なんか寝付けないね。どーしてかな?
わかった、嫌な気配がするからだ。
「……」
みしっみしっ
「……(汗)」
ごとんっがたんっどたっ
「……(大汗)」
ああっ、どこからともなく生暖かい風がっ!
しかも、なんか足がくすぐったいよ(汗)
布団をのぞきこむ竜胆。
幽霊が見えちゃう竜胆には、とってもありがたくないモノが見えた。
脚をはいずりまわす青白い手……
「……(涙)」
竜胆はがばっと起きて、駆けるように部屋を出た。
んで、寝てる剽夜を揺り起こす。
「……どーかした? あきりん」
「……更ちゃん」
「……?」
「……こわいの」
「ふう、仕方ないなあ。添い寝してあげようか?」
「……うん」
ああ、可愛いあきりん。涙目で顔を赤くしながらそんなこと頼むなんて、お
いちゃんイケない気分になっちゃうよ。
「言うのを忘れてたのが悪かったんだけど……ゆーれーね、カップルが離れて
寝てると、出てくるんだよ」
「……じゃあ、更ちゃんが添い寝してくれたら、出ないの?」
「うん。始めに言っとけばよかったね」
「ううん、いいの。……じゃ、布団、半分借りるね」
「枕はちゃんと持ってきてる?」
「うん」
「じゃ、寝付くまで見ててあげるから」
「うん……」
ぎゅっとしがみつくように、竜胆は剽夜の隣に。
その白い肩が震えているのを見て、剽夜は罪悪感にかられた。
やっぱり最初に言っておけばよかった。
剽夜は、竜胆を守るようにその手を竜胆の体にまわした。
私の手で、キミの髪をなでてあげる。
キミの震えが止まるように、キミの怯えが消えるように。
朝。
竜胆が目覚めると、隣には剽夜がいた。
「……ふわぁ……良く寝た……」
「ぐがーぐがー」
じっと、剽夜の寝顔を見つめる竜胆……。
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