小説『星に閃く物語』


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小説『星に閃く物語』

 さわさわ……。風が、好きだ。
 木の葉が風にゆられる音を聞くのも、好きだ。
 風に何かが舞うのを見るのも、好きだ。
 風をその身に感じるのが、好きだ。

 屋根の上で寝ころびながら、そんなことを思う。
 夏和流の部屋は、窓が屋根に通じている。
 もちろん、屋根に囲いはない。落ちたら、きっと痛い。
 でも、星の輝きが見たかった。

 今日は七夕。
 姉に言われるまで、忘れていた。
 だから短冊にお願いを、忘れてしまった。
 もったいない。
 せめて、星を見てやろう。

 車が通る。自転車が通る。人が通る。
 こんな、屋根の上でボーっとしているのを見られたら、ちょっと恥ずかしい。
でも、恥ずかしさより。
 天の川は、見えない。
 天体に詳しいわけでもないから、彦星と織り姫がどれかもわからない。
 何となく、あれかな、とは思うけれど。

 星は、見えない。
 ずっと前、東京にいた頃、友人とよくキャンプにいっていた。
 その時、本物の空を見たことがある。凄い数の星だった。
 今は、明るすぎて、偽物。
 ……でも、それでも。
 それでも、綺麗だ。

 見ているうちに、吸い込まれそうになる。
 そんなこと、初めて。
 こんなにじっくりと見たことがないからだ。

 ふと、お願いしちゃおうと、思う。
 なんにしよう? 
 本に囲まれて、ぐうたらとその本を読みながら過ごすのが、彼の夢。
 でも、あんまり大きな願いでも、かなうわけないしなぁ。
 それに、夢はまだ他にもあった。

「世界中の、全ての人が、幸せになりますように」

 無理だって事は、わかっている。
 そんなこと、できるわけない。あるわけない。
 ……それでも、彼は夢を諦めない。

 風は、まだ吹いてる。
 大好きだ。


解説

 南河夏和流さん(ハンドル)による、三河夏和流(人物名)の話。表現から考え
ると、散文詩とみたほうが良いのかも知れませんね。



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