昼前。パン屋内に他に客はおらず、
暇そうな店長と、文庫本を読みふける美樹。
カランカラン……
- 三郎
- 「や、ども」
- 観楠
- 「あれ、三郎君?……今日学校は?」
- 三郎
- 「ははっ、今、音楽の授業なんすよ」
- 観楠
- 「うーむ、変わらんねぇ。確か先週はおなかがいたいだっ
たね」
- 三郎
- 「さすがに3日続けるとバレますわ。ははっ、で今音楽の
授業中だから、次の時間までにもどらないとヤバイんす。急いでいつものししゃも……あ、無い!!」
- 観楠
- 「ああ、ちょっと今日はししゃもで試作をつくっちゃって
ね。ししゃもパンに回すだけの分が無かったんだわ。ごめんね」
- 三郎
- 「がちょ〜ん……(谷風) ま、でも、新作に使ったという
ことは、その新作もししゃも入りなんですよね? それでいいですから」
- 観楠
- 「う、うん、これ……あと3つ余ってるんだけど、1つ10
円でいいよ」
- 三郎
- 「おー、10円なら全部買います!」
- 観楠
- 「そのかわり後でレポートかいてね」
- 三郎
- 「諒解! 5限が現国だから、レポートは帰りにもってき
ますね。あ、それと、コーヒーちょんだいであります」
- 観楠
- 「はいはい、コーヒーね。何にする?」
- 三郎
- 「ボス缶コーヒー!(笑)」
- 観楠
- 「外に自販機あるから(笑)」
- 三郎
- 「うそうそ、……あ、もうあと10分しかない! やばい!
店長、パンとコーヒーを早く!」
- 観楠
- 「あ、ああ……パンはこれ。で、」
- 三郎
- 「コーヒーは……これ!」
- 観楠
- 「あ、それは……」
- 三郎
- 「(一息で飲んで)グッドラック!」
ガランカラン
- 観楠
- 「(……美樹さんの、一息で飲んでしまった……)」
- 美樹
- 「(コーヒーに手を伸ばす。が、しかし中は無い。自分が
飲んだのだろうか? よく覚えていない。……三郎が来た事すら、解っていない) 店長、コーヒーのおかわり御願 い」
- 観楠
- 「は、はあ……(気付いてないのかな……なんか、言いに
くいな)」
- 美樹
- 「あ、やっぱり今のキャンセル。もうそろそろかえんな
きゃ。じゃ」
美樹はお代をおいて店をでていった……
- 観楠
- 「(よくかんがえると、三郎君、金はらわなかったな。ま
あパンは試食だからいいんだけど……) かきかきかき……
帳簿を作製中) うーむ、朝に続いて三郎君がツケの代金第2位だな。まぁ少しづつでも払って貰うか……」
つけになっている分を勘定しているところに、つい今し方、出ていったばっかりの美樹が戻ってくる。
- 観楠
- 「どうしました? 忘れ物ですか?」
- 美樹
- 「(ポリポリポリと頭を掻きながら) 済まないけど、店長、
1000円貸してくんない? いや、さっき本買うときにここの払いのことまではぴったり勘定に入れてたんだけど、京都に戻る電車代ってのをすっかり忘れてて。明日必ず返すからさ」
そう言って財布の中を開いてみせる美樹。
つられて覗き込む観楠。アルミ貨の鈍い輝きが三枚しかない。
観楠、絶句。
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