エピソード20『どっか行こっ!』


目次


エピソード20『どっか行こっ!』

明日は日曜日

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かなみ
「父様! 明日の日曜日にどこか連れてって!」

げげっ! やっぱりきたかっ!!  しっかりしているとはいえ、 幼稚園児に
 「サービス業のなんのかんの」を説いても…… しかも「日曜日」というとこ
 ろが……(大苦悩)
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 某月某日土曜日、ベーカリー楠にて

観楠 
「に、日曜日……(大汗) って明日のコトかな……?」
かなみ
「そう! 明日はとってもいい天気なんだって(笑顔) め ぐみちゃんも雅美ちゃんも直美ちゃんも瞳ちゃんもひろ君も仁文くんも一清くんもみんな、みぃんな遊びに行くって、いってるモン。だから、かなみもいきたいのっ! ねぇねぇ父様ぁ!!」
観楠 
「(視線をそらす) え……えっと、その……(脂汗)」
朝 
「……四六のガマかお前は(笑) 別にええやんか。たまに は」
観楠 
「たまにって……お前なぁ、日曜日だよ? 俺、パン屋だ よ? 店開けないでどーするよ??」
朝  
「……臨時休業にするとか(笑)」
観楠 
「なにを無責任なコトを……」
かなみ
「ねぇ、父様ったら! かなみも遊びに行くのっ!!」
ミか 
「いくのっ!!」
朝 
「で、どーすんねん?(笑)」
観楠 
「人事みたいに言うし……(溜息) あのね、かなみちゃん、 僕は……パン屋さんだよね?」
かなみ
「(む!) 父様……ダメなの? (疑惑の眼差し)」
観楠 
「(ぎっくぅぅぅ!! す、するどい!)……や、あの……」
朝 
「ばればれやな(笑)」
観楠 
「かなみちゃん、ごめん!! コレ、このとーり!! あぁ、 水曜日が確か祝日だったからその日に……」
かなみ
「いやっ!! 明日がいいのっ! 絶対遊びに行くのっ!!」
美樹 
「店長、水曜は大雨だって週間予報で出てたよ」
観楠 
「美樹さん……(トホホ) だ、だめ? じゃぁ、朝に連れ ていって……」
かなみ
「や!」
観楠 
「じゃぁ出雲さんは……だめか(落ちるとか落ちないとか いってたしなぁ) あ! 素子ちゃんと一緒に……」
かなみ
「や!! 父様と一緒がいいのっ!! 明日いくのっ!!」
観楠 
「かなみちゃ〜ん……困ったなぁ」
朝  
「一体なにがあんねん。日曜や祝日やゆうてもココはいつ もかわらんやろ? どうせ暇になるって」
観楠 
「そ、そんなコト言うか……まぁそういうコトもあること があるが」
朝  
「見栄はらんでもええって。かなみ、明日大丈夫や!(笑) なぁ、観楠」
観楠 
「お、お前なぁっ!?」
かなみ
「ほんと? ほんとにほんと? 父様っ! (笑顔)」
観楠 
「え、え、と……う、うん……」
かなみ
「よかったぁ! (笑顔) ミか、明日父様が遊びに連れて いってくれるのよっ! いーでしょ? ミかも連れていってあげるからね! ね、父様! ミかもいいでしょ!?」
朝 
「あ、俺もついていこ(笑) かなみ、俺もいい?」
かなみ
「父様、朝兄様もねっ! ね!」
観楠 
「もぉ、好きにして……(しょうがない、か)」
素子 
「こんにちわぁ〜」
かなみ
「あ、素子姉様! あのねあのねっ!!」

集合!

翌日早朝、ベーカリー楠前

観楠 
「ふぁ、あぁ〜あ、ふぅ……」
かなみ
「父様ったら、カバさんみたい! おっきなあくび!(笑)」
観楠 
「そ、そう? (照) さて、そろそろ時間だけど……きち んと来るかな? みんな……」
文雄 
「私はもう来てるが(笑)」
観楠 
「(びびっくぅぅ!) ふ、文雄さん…… (背中に回り込ま ないで……) 相変わらずですねぇ」
かなみ
「おはようございます文兄様!」
文雄 
「うむ、おはよう(笑)」
三郎 
「おはようっす!」
三彦 
「隣に同じであります!! (敬礼)」
観楠 
「やぁ、お二方、おはよう(笑) 調子はどう?」
三郎 
「いや〜もう、快調快調! (大笑)」
三彦 
「皇国の興廃がかかったこの日に不調などとは言っておれ ません!! (直立不動)」
観楠 
「……別に戦地に赴くワケじゃないんだから……(笑)」
三彦 
「『軍人は万事戦斗を以って礎となせ』とあります! 山 登りとはいえ訓練です!」
美樹 
「なにがなんだか……おはよう。店長、かなみちゃん」
観楠 
「やぁ、美樹さん(笑) おはようございます……あれ、お ひとりですか? 士堂君は?」
美樹 
「さぁ……どうだったかな? 来るとは言ってたけど」
涼介 
「お、おはよ〜! 寝坊しかけた……」
観楠 
「おはよう、涼介君(笑)」
朝  
「お、もう集まってるし」
かなみ
「あ、朝兄様!」
観楠 
「遅ぇーぞぉ! (笑)」
朝 
「いつものことや。俺で最後? あとはおらんの?」
観楠 
「えーと……長瀬君、片山君、士堂君と……あぁ、漫画家 コンビがまだ来てない]
朝  
「前3人はそのうち来るやろ。問題は……あとの2人やな」
観楠 
「なんでも締め切りぎりぎりらしいから……ムリやったら 連絡入れるって、素子ちゃんが」
朝  
「なぁ、店の中で待たへん? 立ってんのもなんやし、ま だ眠いし、喉乾いたし……(笑)」
観楠 
「言うと思たわ……鍵持ってきて良かった。 (かちゃり) 皆さん、中へどうぞ……」

そのころ……
 士堂彼方は、三十分迷った揚げ句、ついに「ベーカリー楠」を発見することに成功した。

彼方 
「やっぱり、狭淵さんと来るべきだったかな……ん? パ ン屋の前にだれもいない。遅すぎたのかな? ……早すぎたってことはないはずだし。どうしよう」

ふらふらとパン屋の前をうろつく。

彼方 
「可能性としては。 1.先に出発した。
 
2.皆何らかの用事で、この場所を離れている。
 
3.実は集合場所が間違っていた。
この中で、2が一番可能性が少ない。となると、1か3だ けど。どちらにしても、既に集合時刻を過ぎていることは明らか……いや、もう一つ可能性があった。
  
4.集合時刻を間違えた。
 
このばあい、
 
4a.実はとっくに集合時刻が過ぎている=1。
  
4b.実はまだ集合時刻ではない。
 
の二つに分かれる。となると……」

彼方、うろうろしながらぶつぶつ呟いている。

美樹 
「おや?  士堂君じゃないか? ……おーい、士堂君」
彼方 
「誰か呼んだかな? (顔を上げる) おや、何で狭淵さん がこんなところに? ちょうどよかった、集合時間と集合場所を確認したいんですが」
美樹 
「……(呆れている) みんな、中で待ってるよ。どうした の?」
彼方 
「し……しまった。店の中で待っている、という可能性を 忘れていた」
美樹 
「……(絶句)」
観楠 
「やぁ、士堂さん。おはようございます(笑) あれ? 随 分と軽装なんですね」
彼方 
「(カシャカシャ……チーン!)そう言えば、そうだった」
観楠 
「今日は一日中、伊吹山ですよ? 皆さんは……三彦君…… その重たげな背嚢は?」
三彦 
「は! 山岳侵攻戦の装備一式であります!!」
涼介 
「その、足に巻いてるのって、なんだよ」
三彦 
「これはゲートルと言うのだ」
観楠 
「三彦君らしいね(苦笑)」
観楠 
「美樹さんも、結構な荷物ですね……双眼鏡なんか持って るところが(笑)」
美樹 
「いや私の場合、書籍関係が多いんで……どうしてもかさ ばってしまって」
観楠 
「なるほど」
観楠 
「……朝、お前、服装はいいとして荷物は? そのハンド バッグだけ?」
朝 
「他にいらんやろ」
観楠 
「……弁当とかはどーすんだ」
朝  
「それは……当然お前が用意してるハズ! (笑)」
観楠 
「なんでやねん! ……ってな(笑) 早起きして良かった わ。サンドで良ければ全員分作ってきたから」
朝 
「ま……まめな奴……(笑) それでそんなゴツイ荷物持っ とるんか」
一同 
「ラッキー!!」
観楠 
「ラ、ラッキーって……まさか皆さんも?」
文雄 
「わたしは握り飯を用意してきたが……それももらおう!
笑)」
観楠 
「そ、それは……(愕然)」
三郎 
「いやぁ〜日頃の行いがいいとな〜(笑)」
涼介 
「コンビニ行ったのに……いいや、朝飯代わりに今食べよっ と(笑)」
美樹 
「私もそうしよう(笑) あ、店長、コーヒーお代わり(笑)」
彼方 
「(カシャカシャ……チン!)便乗して、かまいませんか?」
三彦 
「他人の糧をあてにするとは貴様らそれでも皇軍兵士かっ!     :(ぐぅぅぅぅ〜きゅるるる)」
涼介 
「三彦もそうなんじゃないか(笑)」
三彦 
「(空白)……貴様!! 上官を愚弄するか!! 銃殺だ!!」
一同 
「(大笑)」

そのころ、ベッドの中の片山慎也は……

慎也 
「ん〜? (時計を見る) あ、やっぱり……(--; 寝坊す る夢見て、まさかと思ったら見事に寝坊しちゃったよ。いくら予知出来ても起きた時には手遅れじゃねぇ……(^^;」

頭をかきながらベッドから起き上がり、彼なりに急いで、服を着替える。

慎也 
「う〜む。今から歯ぁ磨いてぇ、寝癖直して、紅茶飲んで かぁ。んで、ベーカリー楠まで自転車で飛ばして12、3分 と。集合時間に15分遅れかぁ。まあ、みんな居なかったら直接伊吹山に行くかぁ。あ、そのまえに顕の家に電話だ。あいつもきっと寝てるだろう……」

と言うわけで、顕に電話。トゥルルルルルル……

「ふわぁ〜い(眠たそう)、もしもし」
慎也 
「やっぱりいたか、もしもし。僕だ」
顕  
「あ、慎也か。なんだ?」
慎也 
「ふわぁーいじゃ、ない! 時計を見てみろ!」
顕  
「(みる)やべ! 遅刻じゃないか」
慎也 
「そのたうり! と言うわけだから、私は君の家へ自転車 で強襲するのでそれまでに出撃準備を整えるやうに。ではオヴァー、(ガチャ)」
顕  
「あ、おい! 切れたか。ん? でもあいつもこんな時間 かけて来たと言う事はあいつも寝坊じゃないか? (^^;」

慎也は、一通りの身だしなみを整えて車庫に置いてる自分の愛機を引っ張り出して来る……。

慎也 
「髪型よ〜し! 歯ぁ磨いたぁ! 金持ったぁ! 荷物も 持ったぁ! よ〜し! 今から顕の家まで最大戦速で突入の後、 ベーカリー楠に突入だぁ!  限界に挑戦! 頼むぞぉ、我が愛機!」

と全速力で愛機を飛ばして一路、顕の家へと向かう慎也であった……
 約束の時間に遅れること十数分後……

慎也 
「遅刻だ、遅刻!! 顕が寝坊するから悪いんだぞ!(急ぐ)」
顕  
「んなコト言ってもな……ウィルスが暴れ出して大変だっ たんだぞ! 不可抗力という奴だ! (慌てる)」
慎也 
「あ、見えた、ベーカリー楠!」
顕  
「しかし、誰もおらんぞ!? どういうコトだ!」
慎也 
「先に行っちゃった、とか……(走る)」
顕  
「それは大変……とにかく行って見るべし!(さらに走る)」
慎也 
「(む!) 負けるかぁっ! (追い抜く)」
顕 
「(ぬぉ!) まだまだ甘いっ! (抜き返す)」
慎也&顕
「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!」

抜きつ抜かれつ同時に店内に!! 

慎也&顕
「遅れましたぁっ!!」
観楠 
「……ドア、壊さないで下さいね、お二人さん(苦笑)」
一同 
「おそーい!」
観楠 
「あとは……漫画家コンビだけですね」

ちょうどそのころ、出雲の仕事場では……

大輔 
「ひ……日が昇ってしまった……(よろりら)」
亜紀 
「……先生……まだですかぁ〜(ぎんぎん)」
大輔 
「も、もう少し……(し、死ぬかも……腹減った……)」
素子 
「師匠〜、亜紀さ〜ん。コーヒーが入りましたよぉ〜」
亜紀 
「あら……悪いわね素子ちゃん……(ずずっ)」
大輔 
(ばたっ)
亜紀 
「!  せ、先生っ!!」
大輔 
「おわった……(ぽつり)」
亜紀 
「ごくろうさまでしたっ!! さぁっいそがなきゃぁ、ほら、 原稿を貸して下さいなっ!! ……よし、全部あるわね。それじゃぁ先生、また今度!!」
素子 
「はぁ〜、何とか終わりましたね……(時計を見る) あ! 師匠! 今日、どうします?」
大輔 
「なにが……(ぽつり)」
素子 
「伊吹山ですよぉ! ほら、パン屋の常連さんみんなで行 こうってあれ、ですよ」
大輔 
「……イブキヤマ……」
素子 
「うーん……さすがに無理そうねぇ(苦笑) じゃぁ、TEL入 れますね」
大輔 
「伊吹山っ!! 行くっ! 行ってやるっ!!」
素子 
「行くって……準備はできてるんですか?」
大輔 
「抜かりはないっ!! さぁ、出発だっ」

素子は白いTシャツにオーバーオール姿の上に白いヨットパーカーを羽織りながら……

素子 
(こういうところだけしっかりしてるんだから……)

大輔は、黒Tシャツの上に外出用の白い上着を羽織り、上着の腕をまくっていく。ちょいとチンピラ風の登山客のようである。(^^;(^^;
 いつのまにか机の下にあったリュックには、「カメラ」と「スケッチブック」が装備されてあった。あと「お絵描き道具類」は言うまでもない……
 もしもの時に備えて、スケッチブックに「力作」を数点挟んでおく事は忘れていない。今までのオフを考えると、何が起こるか分からないからである。
 観楠が用意しているのを知らず、途中で「弁当」を買いにコンビニへ寄る。

大輔 
「浅井ちゃんの分も払うから、好きなの選んでね。 (^^; 当然、飲み物も(^^;」
素子 
「ジャワティーストレートがいいでーす!」
大輔 
「あ。山頂で“ビール”もいいかもなぁ。(^^;」
素子 
「いいですねぇ、 いい日本酒もあれば言う事はな……あ れ? (^^;」
大輔 
「所で、誰かクーラーバック持ってきてるかな? (^^;」
素子 
「あ、『使い捨てパノラマカメラ』も買って下さい!」

約束の時間にさらに遅れること十数分……「はよせな日ぃ暮れるで」という朝の言葉に被さって、『ベーカリー楠』のドアの鐘がなった。
  カラカラカラ……

大輔 
「まいど〜」
素子 
「遅くなりましたぁ」
観楠 
「あ、来た来た(笑) いやぁ、噂をすればですね。皆で待っ てたんですよ」
大輔 
「すんませんすんません、ギリギリまで仕事入ってたんで
笑)」
観楠 
「アレからずっとですか? (笑)」
大輔 
「ずっとです(笑)」
観楠 
「で、無事間に合ったと(笑)」
大輔 
「おかげさまで(笑) 二度とやりたくないですね、あれは
笑) 最終、土日でよかった。平日だと、浅井ちゃんに手伝ってもらえませんからねぇ」
観楠 
「それは……(苦笑)」
大輔 
「あの子に作品の半分を任せていますからねぇ(笑)」
観楠 
「徹夜したんでしょ、当然。そのわりには出雲さん、やけ に顔色いいですよねぇ?」
大輔 
「あ、これ? 浅井ちゃんに、ケアルをかけてもらったか ら」
観楠 
「ケアル?」
大輔 
「うん。ホイミでも可です(笑)」
観楠 
「なるほど。応急処置ですか(笑)」
大輔 
「体力の上限が低く設定されていると、十分、全回復して くれるんで助かりますわ(笑)」

到着

(某月某日まだ午前
近鉄吹利駅内にて)
観楠
「う……やっぱり込んでる……」
「こっちも大人数やしな。えと……13人?」
観楠
「そ、そんなにおるんか(笑) とりあえず、はぐれんよう にせんと……あれ?」
「なに?」
観楠
「えと……うわ! (焦)かなみちゃんがおらん!! (大汗)」
ははははは、朝っ! お前、知らんか!? (大焦)」
「(コイツは……)  知らん! (笑) 大方こんなところと か……(幻術発動)」
観楠
「う! ま、まさか……(乾いた笑い)」
「こういうコトとか……(悪のり) あ、もしかしたらこう いうコトかもしれん!! (さらに悪のり)」
観楠
「(がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん)」
「どないする? (笑)」
観楠
「ど、ど、どないしょ……あう……(パニック寸前)」
大輔
「(またやってる……) 店長、店長! かなみちゃんなら、 浅井ちゃんと一緒にお手洗いに行ったじゃないですか(笑)」
観楠
「え……あれ? そ、そうでしたっけ? (大照)」
大輔
「そーですよ(笑)」
「難儀なやっちゃ(笑)」
観楠
「……おめーがいらん事するからだろーがっ!! (怒)」
由加梨
「もーとこっ!! (笑)」
素子
「あ、由加梨じゃない。なんでココに?」
由加梨
「伊吹山に写生に行くところ。美術部の作品展示会がある のよ(笑) 素子は?」
素子
「あ、あたしも……。バイト先の人達と一緒に」
かなみ
「素子姉様、お待たせっ!」
由加梨
「姉様? ……素子に妹いたっけ?」
素子
「ううん。店長の娘さんで……かなみちゃんっていうの」
由加梨
「店長って……あの? ち、ちょっとこっち来なさいよっ」
素子
「いたた……痛いわよっ」
由加梨
「素子、あんたまさか……」
素子
「まさかって……(赤面) ち、違うわよっ(大慌)」
由加梨
「な〜にが違う? でも、まさが子持ちが相手とは……知 らなかったわ……」
素子
「べ……別にいいじゃない」
由加梨
「良くないわよ! いーい? そういうのを世間では『不 倫』っていうのよ?」
素子
「ふ……そ、そんなんじゃ……(赤面)」
由加梨
「相手は奥さんいるんでしょ?」
素子
「え、と……わかんない……」
由加梨
「わかんないって、じゃぁバツイチとかなワケ? だった らよけいに悪いわよ!」
素子
「なーによぉ! 店長のこと悪く言わないでよねっ!! い い人なんだから!」
由加梨
「いい人なら相手がバツイチでしかも子供付きでもいいわ け?」
素子
「いいじゃない! 由加梨だって、あえばわかるわよっ」
由加梨
「……真剣なんだ」
素子
「な……急にシリアスしないでよ、もぅ(照)」
由加梨
「ま、いいわ。素子がそこまで言うんだから、間違いはな いわね。で、 さっきの話だけど、 私も付いてっていいのね?」
素子
「そ、そんなこと言った?」
由加梨
「しっかりとね(笑)」
かなみ
「姉様、この人だあれ?」
素子
「あ、かなみちゃん……(照)」
由加梨
「初めまして(微笑) 城島由加梨っていうの。素子姉様の お友達よ(笑)」

登山口

某月某日日曜正午過ぎ、伊吹山登山口にて

観楠
「やれやれ、やっと着いたぞ、と(吐息)」
「ココって、なにがあんねん」
観楠
「えーっと……わ、わからん……文雄さん、なにかご存じ ですか?」
文雄
「うむ。古来伊吹山は神の住まう山として崇められ続けて きた。その信仰を示すのがこの戸主神社だ。戸主とはすなわち気吹戸主のことであり、罪や汚れを風によって吹き飛ばしてくれる神のこと。この神社で心身を清めた後でないと伊吹山には登れないことになっていたんだな。伊吹山が神聖視されていたことが良く分かる存在だな。……ううっ、最近しゃべり方が新谷先生に似てきたな」
観楠
「……だそうだ」
「人穴ってのがおもろそーやな。なんかこう……クルもん がある! (笑)」
観楠
「それは、俺も見たいぞ(笑)」
かなみ
「父様、早く行こうっ!! (わくわく)」
観楠
「ん、そだね(笑)ま、とりあえず登ろか。さて……どんな コースがあるんだっけ?」
「えーとやな(パンフを見る)……3つあるで。親子でハイ キングコース(初級)、中・上級登山者用コース、そして……実戦生き残りコース(鯖ゲーマー専用)?  な、 なんやコレ! (笑)」
観楠
「さ、サバゲーマー専用? 何考えてんだ……」
かなみ
「ねぇ、父様っ! 早く行くのっ!!」
観楠
「あ、はいはい(笑) 俺はかなみちゃんと初級コース行く わ。皆さんは?」
「このところ運動してないからなぁ……俺も初級にしよ」
美樹
「わたしも初級にしましょう。せっかくみんなで来たんだ し、一緒の方が良いでしょうし」
彼方
「(思考中……)データが一番豊富そうなところ……中・上 級かな?」
文雄
「そのハズだが。でわ、私は中級に行くとしよう(笑)」
大輔
「大丈夫かいな、文ちゃん?」
文雄
「うむ。初級はこのあいだクリアしてしまったのでな(笑)」
大輔
「なるほど……どーしよかな……?」
素子
「徹夜明けってのを忘れないで下さいね(笑)」
由加梨
「素子はどーするの?」
素子
「う〜ん……あたしはねぇ……」
由加梨
「(小声) 当然、初級コースよね(微笑)」
素子
「な、なんで、そー……(照)」
由加梨
「照れるな照れるな(笑)」
素子
「そーゆー由加梨はどうなのよ。酒井たちと一緒に実戦コー スに行きますか? ほら……デザートイーグルならここにあるから(笑)」
由加梨
「……って、なんでエアガンなんか持ち歩いてんのよ(笑)」

それを横目で見ながら、美樹の独り言。

美樹 
「うーむ。最近の女子高生はエアガンを持ち歩くのか。な るほど、最近は物騒だからなぁ」
素子
「徹夜中の気分転換に(笑) で、どーするの? ……真剣 に実戦コース行く気じゃないでしょーね?」
由加梨
「まさかぁ(笑) 一緒に初級コース行くわよ。写生しなきゃ いけないから、荷物多いしね。それに……気になるじゃない(笑)」
素子
「またぁ、なんでそーもっていくのよ」
由加梨
「まあまあ(笑) さ、行きましょ。待たしちゃ悪いでしょ」
大輔
「……文ちゃん、わしは初級を行くことにするわ」
文雄
「君の状態を考えると、無難な線だと思う(笑)」
大輔
「まあねぇ。わざわざ苦労して山登りしたいと考えんし。 ただ君が初めてのコース行くというのが、心配なのだわな」
文雄 
「もっともな意見だ。当然、道に迷う可能性は高い(笑)  だがしかし、どうにかたどり着けるという自信もあるぞ」
大輔 
「君はそれでよくても、同行する人が不幸でしょーが(笑)     :……んで、まぁ考えたんだが、君達に助っ人をつけようと思う。いつ着くのか分からんのでは、お互いいらん心配するだろうし」
文雄
「ふむ。……ということは、ここで何か呼び出すのかね?」
大輔
「ま、そゆことだわ。……展開が早いがな(謎笑)」

スケッチブックを開いて、色鉛筆でさらさらと落書きを始める大輔。
  上級組は、先に出発しようかとモメているところ。
  初級の皆は、大輔の描くのをなんとなく覗いている。
  というより、彼が描かないと進むことができないのだ(笑)
  同じ物を三つ描いたところで、大輔のその手がようやく止まった。

大輔
「(ポンポンポン、と) よし召喚成功。さぁ……こいつを 連れていってくれ」
文雄
「……なんだね、この針ネズミをつぶしたような生物は?」
大輔
「ん? 知らないか? 電波怪獣ビ@コンだけど?」
文雄
「知らんぞ(笑)」

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 ●@ーコン
  帰ってきたウ@ト@マン(新マ@)に登場した怪獣。
  体長37m、体重1万3千トン。
  電離層に住み、空中の電波を吸収してエネルギー源とする。
  大気圏では時速2000キロで飛行。角から50万ボルトの感電電流を出す。
  電波怪獣の異名をもつように、あらゆる電波を吸収、放出する事が可 能。こいつが見たモノ、聞いたモノはそのままテレビやラジオに生で 放送されるという。
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大輔
「……と、こういう奴。こいつなら、電波を受けて互いに 交信することができるはずだわ。早い話が、トランシーバーの代わりだ(笑)」
文雄
「君らしいといえば、君らしい(笑)」
大輔
「場所が場所だけに、 どれだけ役に立つかは疑問やけど ねぇ。まぁ、おらんよりマシだろ? (笑)」
文雄
「まず、気になるのは可愛くないということだが(爆笑)」
大輔
「ま、知ってる人間は、似てると言うと思うぞ(笑) 可愛 い、可愛くないは別にしても(苦笑)」
三彦
「……我々は当然、この実戦コースだな。各員、用意はい いか!?」
慎也
「OKだよ〜」
「慎也に同じ!」
三郎
「ワシもいくんかいな、かなわんなぁ(笑)」
涼介
「(まずいかも……) 僕、中級に行こうっと……」
三彦
「こらぁ、久永上等兵! どこへいくかぁ!!」
涼介
「げ、ひょっとして僕もそっち組なのか?」
三彦
「当然である! 理由なき撤退など言語道断!! ……敵前 逃亡罪で銃殺されたいか?」
涼介
「だから何でそーなるんだよっ!!」
三彦
「つべこべ言うな! 小ぉ隊ぁぃ整列!! 番号ぉ!  
1.2.3.……) では我々は出撃します! (敬礼) 右向けえ 右! 小隊、前進!」
観楠
「三彦君は元気だねぇ(苦笑)」
大輔
「ああっ、上級組ちょい待ちぃ〜!」
三彦
「ハッ! 全体止まれっ! ……何でありますか、出雲閣 下?」
大輔
「君らにも、こいつを渡しておこうかと思ってねぇ」
三彦
「その物体を、でありますか(ヒクヒクッ……)」
大輔
「見た目がグロテスクなのは、怪獣だからしかたないよ(笑) ただ、トランシーバー代わりにはなると思うから、定期連絡を入れる手段として……ね?」
三彦
「……」
大輔
「……(苦笑)」
三彦
「……了解しました。……おい、片山伍長!!」
慎也 
「おい? 俺にもたせるのか? これを。(結構いやそう) そんなことしたらお前、女装して抱き付いてやるぞ」
三彦 
「にゃにぃ〜、貴様、私に喧嘩うっとるのか! (大焦り)」
慎也 
「抱き付いてやろうか? (にやり)」
三彦 
「いや、今の話しはなかった事にしよう。 (涼介の方へ向 き直る) 久永上等兵!!」
涼介
「……何だよぅ(泣)」
三彦
「我が小隊では、貴君を通信兵として迎え入れようかと思 う!」
涼介
「へいへい、名誉であります、と(ぷぅ!)」
三彦
「うむ、そこでだ。こいつの世話をしばらく頼むことにす る。今日一日の辛抱だ、仲良くしてやれ(押しつける(笑)」
涼介
「な、な、なんで! ……こんなの卑怯だ、横暴だぁ(泣)」
三彦
「この命令には絶対服従だ。いいな、分かったな!(困惑)」
涼介
「……出雲さん、なんでちゃんとしたトランシーバーを描 かなかったんですかぁ(泣)」
大輔
「いやぁ、私がトランシーバーの構造を理解していないか ら、描いても役に立つかどうかが怪しいのだわ(苦笑) ま。これは、武器なんかを描く時にも言えることなんだけど」
涼介
「……なら、こいつは理解しているって言うんです    か? (泣)」
大輔
「分からないところを想像で補える分、怪獣の方が理解し ていると言えるかな。小さい時から見まくったからねぇ、こういうの。アハハハハ……(乾いた笑い)」

こうして、上級組出発。

大輔 
「さて。  最後の一匹は、  当然私が持つことになるの か……(泣)  空飛ぶから、 重くなくていいんだけど(泣)可愛くないよなぁ……あ! かなみちゃん、かなみちゃん」
かなみ
「なぁに?」
大輔
「コイツに、名前つけて欲しいんだけど(笑顔)」
かなみ
「コイツって、どれ?」
大輔
「どれって……あぁっ、いない! どこ行ったんだろ……」

(どすんばたんほこりもうもう)

ミか
「ふーっ!! (怒)」
怪獣
「しゃげ〜! (怒)」
大輔
「お、お前! なにやってんだ! (焦)」
怪獣
「しゃぁぁっ! (電気攻撃)」
ミか
「きゃんっ!!」
かなみ
「あぁっ! ミかをいじめたっ!!」
怪獣
「しゃげ〜(笑?)」
かなみ
「かなみ、この子キライ!! (ぶー!)」
大輔
「トホホ……」
観楠
「まぁまぁ、そんなに気にしなくても(笑) でも、これっ てなんです?」
大輔
「あれ、店長は知らないんですか?」
「そーいえば、俺も知らんなぁ」
かなみ
「この子なんか知らないモン! いーっだ!」
ミか
「いーっだ!!」
怪獣
「かかかかかかかか(笑?)」
大輔
「……いー加減にしろっ! (殴る)」
彼方 
「怪獣? (怪獣の目を覗き込む)」
怪獣 
「ぎゃ?」
彼方 
「かいじゅうう」(持ち上げる)
怪獣 
「ぎゃぎゃぎゃ!」(怯えている)
彼方 
「この造形、良いですね。質感もよいし。デザインも、き れいですね。ああ、怪獣だ」(なぜなぜ)
文雄 
「士堂君、知ってるのかい?」
彼方 
「知ってますよ。怪獣でしょう? 怪獣、怪獣。やはり、 怪獣は良いですね」(にこにこ)
文雄 
「ふむ。ならば、その扱いは君に一任しよう。では、我々 も出発しようではないか」
彼方 
「そうですね。どうやら皆さん出発するようですし」
怪獣 
「しぎゃあぁ……」(疲)

そんなこんなで、すべての組が出発する事になる……

「とりあえず登ろや。はよせんとかなみがごねるで(笑)」
かなみ
「父様ったら、早くっ! (ぶー)」
観楠
「はいはい(笑) さぁ行こうか! では皆さん、頂上で!!」

初級コース

某月某日日曜午後、伊吹山にて

「(ぜいぜい) し、しんど……きっついわ……」
かなみ
「父様! 朝兄様! 早く早く! (笑顔)」
観楠
「タバコなんぞ吸ってるから……この際、やめたら?」
「やめへん! (笑)」
観楠
「まぁ、好きにして。あ、今度からうちの喫茶コーナー禁 煙にするから(笑)」
「なんで?」
観楠
「いや、お前しか吸わへんし、俺が嫌いやし(笑)」
美樹 
「そうですよ。煙草がどれだけ周囲の人間の寿命を縮めて いるか知らないんですか? 煙草の副流煙を吸うことによって、廻りの人間の肺ガン発生のリスクを約十倍以上に高めているんですよ。いや、店長、良い判断ですよ。かなみちゃんに、健康に悪い煙草の煙混じりの空気なんか吸わすのは親としての態度ではありませんよ。一回、煙草吸ってた人と吸ってない人の肺の実物を見せてあげたいですよ」
文雄 
「うむうむ。私の父は昔チェーンスモーカーだったのだが、 煙草をやめて10年経ってからも黒い痰が出るそうだ。だいたい、ニコチンなんてアルカロイド系でもトップクラスの猛毒を野放しにしている政府がおかしいというものだ」
素子 
「私は正面切って批判はできないです。おばあちゃん家が、 タバコ屋だから。両親とも、そこそこ吸うし。嫌いだけど、人が吸ってる分には気にしないし、側にもよれますよ。煙は避けますけど。私自身、妊娠中も吸ってたらしいから(^^;……17+α年間、副流煙を吸い続けて来てなれっこになってる所がありますからねぇ……」
観楠 
「(え! (冷や汗) 素子ちゃんが妊娠中…… ) 素子ちゃ ん……」
素子 
「はい?」
観楠 
「に、に、に……」
素子 
「に?」
観楠 
「妊娠してる……の?」
素子 
「は?」
観楠 
「ははは……(乾いた笑) 聞き違いだよね(汗)」
朝  
「なに、もうそんな心配することしたんか? ……やっぱ りか。まあたしかに妊婦がおるなら煙草はひかえんと……」
素子 
「(赤面) ち、ちがいますよ、ただ母にあたしがタバコを 妊娠した時に吸っていただけで(わたわた)」
由加梨
「……素子、日本語になってないわよ」
朝  
「むむ、どうも様子がおかしいな……(笑) 冗談やのにそ んなに慌てるか? 普通……(笑)」
観楠 
「だー! どっちにしても禁煙や!」
「む、むごい……」
観楠
「まぁ、かなみちゃんのため、と思ってちょーだい」
「…… そや!  素子さんみたいに今のウチから鍛えてや な……」
観楠
「なにを馬鹿なことを……(呆)」

ここで、出雲大輔はひとつおかしな事に気がついた。

大輔
「……文ちゃん、中級コースに行ったんじゃなかった?」
文雄
「ありゃ? そういえば、なんでみんながいるんだろう」
大輔
「こっちは初級コース! 早速道、間違えたな(笑)」
文雄
「うむ。どうやらそのようだ」
大輔
「そのようだって、あのねぇ。士堂君はどーしたんだ?」
文雄
「一緒に来てる……」
大輔
「な、ワケないでしょ!! で、どーすんの? 一緒に行く かい?」
文雄
「いや、中級に戻る」
大輔
「頑固だねぇ。で、どーやって!?」
文雄
「その怪獣を貸してくれないかな」
大輔
「あ、なるほどネ」
文雄
「うむ。で、コイツはどーやって使うのかな?」
大輔
「……えと……そいつに向かって話しかければいいと思う んだけど、多分」
文雄
「なんか不安だが、大丈夫なのかね(笑)」
大輔
「文ちゃんが一番不安なんだって(笑)」
文雄
「あー、もしもし士堂君、聞こえるかね?」

そのころ、中級コースの彼方は……

彼方
「かいじゅぅぅぅぅぅぅ!!」
怪獣
「あぎゃぁぁぁぁぁ! (怯)」

無線混線大混乱

涼介
「あれ、なんか聞こえた……あ、コイツか?」
怪獣
「あーもしもし士堂君、聞こえるかね?」
「これ、高村さんの声ちゃうか?」
慎也
「そぉ? 聞こえんかったから……」
三彦
「その後の通信はどうか!」
涼介
「いまのとこなにも……これだけ」
三郎
「応答した方がええんとちゃう?」
三彦
「そのとおり! 我々の現状を打開する方法として、最適 であると思われる。では久永通信兵、そのようにせよ」
涼介
「なんで僕が……(コイツ、可愛くないなぁ) あ、もしも し高村さんですか? 久永ですが……」
三彦
「……まるで電話応対だな」
涼介
「いいじゃないかぁ!!」
怪獣
「もしもし高村さんですか? 久永ですが」
彼方
「かいじゅうぅぅぅぅ……あれ、なにか喋ったぞ。こちら 士堂。高村さんは……あれ? いない。高村さ〜ん」
文雄
「おぉ、通じたようだ。士堂君、私はちと道に迷った様だ。
いまからそっちへ戻るから、 しばらく待っててくれんか な?」
涼介
「……だって。高村さん、こっちに来るのかなぁ?」
「でも、なんかへんだな」
慎也
「うん。会話の内容が食い違ってるような……士堂さん、 ココにはいないよね」
三郎
「まぁでも、コイツは使えることが判明したし(笑)」
「俺もなんか言ってみよう」
慎也
「あ、じゃぁ僕も!」
三郎
「おぉーい、聞こえますかぁ、植木で〜す(笑)」
涼介
「あぁもぅ、押さないでよっ!」
三彦
「貴様ら……通信は簡潔に、現状のみを報告せんか!! え えい、そいつをよこせい!!」
一同
「横暴だ横暴だ! (ぶーぶー)」
三彦
「これは上官命令である!! こちら酒井小隊。現在道に迷 うも確実に山頂目指し進行中。目標地点到達には少々の遅れが出る模様。以上、通信終わり」
一同
「(ほんとに少々なのか?)」
三彦
「よし、進軍再開だ! とにかく登る方向へ進むぞ!」
彼方
「なんで酒井君の声が聞こえるのかな……まぁいいか、こ のまま登って行けばもうすぐ頂上だし、高村さんもきっと収集データの不足分を補いに行ったんだな、きっと。こちら士堂、了解しました、頑張って頂上まで行って下さい」
文雄
「大ちゃん……これはどーなっとるのかね?」
大輔
「どうって……使えない?」
文雄
「なにか、会話が変なのだが……士堂君と喋っていない気 がする」
大輔
「う 、 そー言われると …… あんまり自信なかったりす る……」
文雄
「むぅ仕方がない。何とか戻ることにしよう」
大輔
「この際、一緒に行けば?」
文雄 
「いや、そうもいかんだろう。中級コースに戻ることにす る」

文雄、中級コースに戻るの事

文雄は来た道を再び下っていった。

大輔
「文ちゃん、ちゃんとたどり着けるかなぁ」
素子
「さあ。妖しいでしょうね」

しかし、戻ってきた。

文雄 
「その怪獣を持って行かねば、士堂君と連絡が取れん」

あまりその性能に信頼していなかったようだが、背に腹は代えられず、刺に気を付けながら、持っていった。実戦コースの面々頂上に到達……?----------------------------------
 実戦コースというだけあって、さすがに多くの障害があった。
 しかし、一行はそれらをものともせず突き進んでいた。

三彦
「諸君、 よく頑張ってくれた。 アト少しで目標地点だ! 一気に攻略するぞ!!」
その他
「(ぐったり)」
三彦
「どうしたぁ! 貴様らそれでも帝國軍人かぁっ!!」
「お前、わかって言ってるんだろうな……」
慎也
「ココを進むって、本気で言ってるんじゃないだろうね?」
三郎
「いくらなんでもこれはちょっとなぁ。無茶やで」
三彦
「お国のために戦おうとは思わんのか貴様ら! たるんど る!!」
涼介
「なら、サブが登ってみなよ! この……断崖を!!」
三彦
「大和魂に不可能はない! さぁ行くぞ、突撃だ!!」
慎也
「……信じるモノは救われる、とは言うけれど (よっこい しょ)」
「(はぁっ) あいつは、なにか、違うんじゃねーか?」
三郎
「おっと、危ない危ない。まさかホンマに登るとはな(笑)」
三彦
「遅いぞ貴様ら、きりきり登らんかぁ! これでは敵に発 見されてしまうぞ!」
涼介
「どこに敵がいるって言うんだよぅ……(もうやだ……)」
三彦
「ほら、手を貸せ。ひっぱってやる」
涼介
「ありがと……はぁぁぁぁぁ、もうだめ……」
「おい、酒井。事情を説明してもらおうか」
慎也
「ココって……うそぉ!」
三郎
「こ、これはないでぇ、いくらなんでも!」
三彦
「なにを言って……(愕然)」
涼介
「みんなどうしたの……え゛え゛え゛え゛え゛え゛!」
看板
『伊吹山登山口 初級→右、中・上級→左へ』
三彦 
「……諸君、おちついて考えろ。我々は常に前進上昇を続 けて来た。断崖を越え、階段を登り、坂を行き、寒難辛苦をものかわと前進し続けて来た。つまり、我々は上へ上へと登ってきていたわけである。しかるにおいてこの看板をどう判断するか……答えは1つしかあるまい。我々が正しい。この看板は、敵の欺瞞作戦の一環だ」
顕  
「……う〜ん」
慎也 
「ごまかし? この看板が?」
三郎
「……じゃコレは何か?」

三郎が指差した方向には、数時間前に出発したはずの特徴ある石畳の登山口があった……

三郎
「なぁ、どうする?」
「俺としてはココが頂上だと信じたい! 信じたいが……」
慎也
「そこに登り口があるしねぇ」
涼介
「わかんないよ、もぉ!」
三彦
「だから言っておるではないか、ココは紛れもなく頂上だ!」
涼介
「じゃぁ、そこの看板と、登山口の説明をどうするんだよぅ」
三彦
「……な……何故だ! ……しまった、敵の罠にはまったか! 
愕然)っておい、貴様らなにをしている?」
「もぉ、お前には頼まん!」
慎也
「……ロープウェイ使おっか、この際だから」
三郎
「冗談やないで、ほんま。三彦らしいオチやけど」
涼介
「ほら、サブも早くっ!」
三彦
「何故だ! 何故なんだぁ!!」
涼介
「うるさい! えい、こーしちゃるっ(怪獣を背中に入れ る)」
三彦
「い、いだだだだだだっ! で、も、俺は確かに見たんだ!  う〜……よっと(怪獣を取り出す) 久永ぁ!! (撲っ)」
涼介
「痛いじゃないかぁ!」
三彦
「当たり前だ!」
「はよ、いこーぜー」

幻聴

そのころ初級コースの一行は着々と頂上に向かって進んでいた。

謎の声
(かな……み……観楠……)
観楠
「(振り返る) え、と……?」
素子
「(目が合う) あ……」
観楠
「素子ちゃん、呼んだ?」
素子
「え、よ、呼んでませんけど……」
観楠
「そぅ……空耳かなぁ。朝……」
「(ぜいぜいぜいぜい)」
観楠
「は、違うな。美樹さん、呼びました?」
美樹
「はぁ? 私は知りませんが」
「(ぜぃぜぃはぁはぁ)……そ、 そろそろ、 ボケてきた、 か……」
観楠
「……へろへろになってまでツッコミに来るか(笑)」
かなみ
「父様ぁー! はーやーくー!! (笑顔)」
観楠
「はいはい(笑)……気のせいかな? だろうな……」
謎の声
(……川観……湊……かなみ……!)
観楠
「(気のせいだ。疲れてんだ、きっと……)」
素子
「店長……?」
由加梨
「大丈夫ですか?」
美樹
「光の加減かな? 顔色が悪いような気がするけど」
観楠
「うん……大丈夫、多分……」
謎の声
(湊川観楠!)
観楠
「!! (脂汗)」
「どないしてん?」
観楠
「(誰だ)」
美樹
「はぁ?」
観楠
「俺に……(なにか用な) の、か!?」
かなみ
「父様……どうしたの?」
観楠
「(一体どこ) に……いるんだっ!?」
素子
「店長、しっかりして下さい!! (体を揺さぶる)」
由加梨
「ちょ、素子っ」
観楠
「姿(を……見せ) ろよっ!」
素子
「店長っ! (平手一発!)」
観楠
「(呆然)」
「おい、観楠! (胸ぐらを掴む)」
観楠
「あ……あれ? みんなどうして集まってんです……なん かほっぺたが痛いぞ……朝、なにやってんだ……」
「なに、て、お前なぁ……」
美樹
「なにも覚えてないんですか? (呆)」
観楠
「なにって……なにかあったんですか?」
かなみ・素子
「(抱きつく)」
観楠
「かか、かなみちゃんに、素子ちゃん!? ど、どうしたの かなぁ? (大照)」
素子
「え……き、きゃぁ! ごごごごめんなさい!! (赤面)」
「(おいしいヤツ……)」

ゴール!

かなみ
「かなみとミか、いっちばぁん! 父様ぁ! (手を振る)」
観楠
「頑張ったね、かなみちゃん(笑) さて、もうチョイだな。 みんなは大丈夫かな(振り返る)」
「あ、あかん……もう限界や(しゃがむ)」
美樹
「(大きく吐息) もう少しで頂上ですよ」
かなみ
「朝兄様ぁ〜、早く早く! (笑)」
観楠
「おら、頑張らんかい(笑)」
素子
「ほら、師匠頑張って……(背中を押す)」
大輔
「浅井ちゃん、ありがとね……どっこいしょぉ(ぜいぜい)」
由加梨
「素子……あんたも元気ねぇ(ふうっ)」
観楠
「さ……ぁて、ついたぞ、と。どうやら我々が最初らしい ですよ、皆さん」
大輔
「やっぱり、きついですわ……普段が普段ですから、仕方 ないですね(ふぅ)」
「さて……とりあえずついたことやし、まずは一服……」
観楠
「こらこら、ココは禁煙だ! 吸うならあっちの……食堂 にいっといで(笑)」
大輔
「そういえば、 文ちゃん、 士堂君と合流できたんかな?  なんか心配(笑)」
素子
「うー……んっ! ちょっと回復したかな」
由加梨
「ほんとに元気な娘ね(笑) さぁて、と。ちょっと休んだ ら写生しなきゃ(道具をバラし始める) えーとカメラと、スケブと、鉛筆……」
素子
「カメラなんているの?」
由加梨
「まぁね。しょっちゅう来るワケじゃないし、色彩はずっ と同じじゃないでしょ? 私の場合はあんまり関係ないんだけど、とりあえずってとこかしら」
素子
「なるほど……由加梨の絵の奇抜な色合いの理由がわかっ たような(笑)」
由加梨
「前衛的って言ってよね(笑) さて、行きますか。あ、素 子……(耳打ち) 頑張ってね(くすっ)」
素子
「なななな、なにをよぉ(赤面)」
由加梨
「なにかしらぁ? (笑) アトで教えてねぇ〜(笑)」

お弁当

観楠
「三彦君達、まだ来ないなぁ」
「上級コースやろ? 鯖ゲーマーに行く手を阻まれてると か(笑)」
美樹
「高村さんは彼方君と合流できたんですかねぇ……」
観楠
「やっぱり一緒に来た方が良かったかな……」
「そーや! お前が悪い! (笑) は、まぁ置いといて、 :飯くわへん?」
観楠
「うーん、どうしよ……もうちょっと待ってもいいかなと 思うが。まぁこの際やから、先に渡しとく。 (荷物をほどく) ほい、お前さんは……これね」
「なになに? 他にもあんの?」
観楠
「とりあえず大人用と子供用にね。かなみちゃんの分以外 は皆同じ……ほれ、他の人の分もよろしく」
「なんで俺が……(笑)」
観楠
「働かざるモノ喰うべからずってな(笑) さて……え、う そぉ!? ……あっちゃぁ〜」
「どないしてん」
観楠
「水筒、お茶入ってたやつ忘れてきてる〜(あう)」
「自販機あるやろ? あっちの方ちゃうか?」
観楠
「こういう所は異常に高いからな……しょーがない。行っ てくるか……」
「あ、観楠が飲みもん買いにいくてゆーてるで!! 俺、な んでもええわ(笑)」
かなみ
「父様、どこかいくの?」
観楠
「ん、飲み物買いに行くんだよ。ちょっと待っててね」
かなみ
「かなみ、かるぴすがいい! ミかも一緒でいーい?」
ミか
「うん」
観楠
「はいはい(笑) 皆さんはなにか、ないですか?」
美樹
「私は……そうですね……」

魔性カナミ

観楠
「さて、と。朝も美樹さんも同じでよしと。えーと、ウー ロンか緑茶は……よし。で、かなみちゃんが……」
謎の声
「みなとがわかなみ!」
観楠
「(びくっ)……誰か呼んだか……? 気のせいだなきっと」
謎の声
「気のせいなんかじゃないわ」
観楠
「そう、確かに聞こえてる……って誰だよおい!?」
謎の声
「しりたい? ふふふ……」
観楠
「だから……じゃなきゃ聞かないって!」
謎の声
「いいわ、教えてあげる。展望台のほうをみて」
観楠
「展望台? (振り向く) えと……」
女性
「こんにちわ。あなたを呼んでいたのは私よ」
観楠
「なにか……用ですか? (不審感)」
女性
「まぁ用ってほどでも無いんだけどね」
観楠
「用がないなら呼ばないでしょう! 変な……よくわから ないけど」
女性
「いいじゃない、わからないことくらい。貴方は今から消 滅するんだから……魔性カナミ! (攻撃)」
観楠
「ま、魔性? ちょっと、なにを言って……うぁぁっ!!」
女性
「あら、掠っただけか……案外やるわね(笑) 次は外さな いわよ!!」
観楠
「なにするんだ! おれが一体何をしたってんだ!?」
女性
「何もしてないわね、今は。でも魔性である以上、なにか 起こされる前に 倒してしまえば 何もできなくなるじゃない(笑) この豊秋竜胆が直々に引導を渡してあげる!」
観楠
「魔性ってなんだよっ! それに……この年で死んでたま るかっ」
竜胆
「男のくせに……往生際が悪いっ!! (連続攻撃)」
観楠
「ぐぁっ……ぅ……ぅぅ……」
竜胆
「素直じゃないからこーなるのよ。さて、消滅する前にな にか言いたいことは?」
観楠
「……(げほっ)」
竜胆
「喋れない? 当然ねぇ、綺麗に入ったもんね。じゃぁ…… さよならでいいかしら? 覚悟はいいわね」
観楠
「(こんな……わけわかんねーよ。かなみちゃん、 ドリン ク待ってるだろうな……情けないな……)」
竜胆
「(観楠を倒して馬乗りになる) さぁ、この世とお別れの 時間ね。大丈夫、一瞬だから痛くもなんともないわよ(笑)」
観楠
「(理不尽な……くぅっ)」
男性1
「あれ、なにやってんだろ!?」
女性1
「さぁ……映画の撮影かなにかじゃないの?」
男性2
「にしては様子が変な」
男性3
「まわりにそういう機材がないしねぇ……」
女性2
「警察呼んだ方がいいのかしら?」

(あれこれいい始める連中が人だかりを作る)

竜王様

文雄
「うむ。どうやら山頂についてしまったようだ。士堂君と
は会えなかったが……また道間違えたかな? おーい、士 堂君! 私は先についてしまったので、待たせてすまないがもう登ってきてくれても結構だ」
女性3
「やだ、なにあの人! ヌイグルミに話しかけてる〜」
男性4
「(小声) そういうことを言うんじゃないよ!」
文雄
「……むぅ、確かにこれはあらぬ誤解を生むような道具だ な。 これからは使用場所に注意しないといかんな(ちっ)さて他の面々は? おや……あの人だかりはなにかな?」
竜胆
「さぁ、 いよいよとどめ! ってなにか騒がしいわね !
あら?)ちょっと! これは見せ物じゃないわよっ!!」
男性5
「見せ物だよ、どう見てもぉ! (笑)」
男性6
「姉ちゃんどうした? その彼氏に振られたのかぁ?(笑)」
女性4
「なぁに、痴話喧嘩なの? (わくわく)」
男性7
「兄ちゃんも頑張れよぉ! (大笑)」
文雄
「ちょっと……すみません……(ずずいっ)」
観楠
「(あ……文雄……さんっ!)」
文雄
「おや、君は……なにをやっておるのかね?」
竜胆
「あら、お知り合いかしら? 貴方、邪魔しないでね。今 取り込んでる最中なんだから」
文雄
「しかし、知り合いが襲われてる以上は見て見ぬ振りする のもできんが」
竜胆
「貴方も魔性なの? そうならあとで相手してあげるわ!」
文雄
「まぁ、焦らないで。とにかく事情を聞こうではないか。 彼から離れたまえ」
竜胆
「うるっさいわねぇ! 黙ってなさいっ! (攻撃)」
文雄
「なになに……『高密度エネルギー体』……気孔の類とは 違ようだが」
竜胆
「私の攻撃を……(驚愕) こんなことができる者で私が知 るのはただ1人。まさか、竜王様!?」
文雄
「違うな。私は高村文雄。ただの学生であって、竜王とか 言う者ではない。とにかく彼を解放して……おぉ!?」
竜胆
「お逢いしとうございました、竜王様! 私です、第一の 配下、ラーフィスです!」
文雄
「違うといってるではないか……」
竜胆
「いーえ、絶対竜王様です! その体つき、横柄な態度、 偉そうなしゃべり方、そして先程の術!! どこをどう見ても竜王様に間違いありません!!」
文雄
「まぁ、良かろう(これを利用して彼を助けるか) さて、 先ほど魔性がどうとか言っていたようだが?」
竜胆
「えぇ、まだ発現しておりませんがいずれ我々に災いをも たらす者、カナミでございます」
観楠
「俺は魔性なんかじゃない!」
竜胆
「(無言で攻撃) こやつ、どういたしましょう?」
文雄
「うむ……真に魔性の者ならばこの場で処分するのだが…… ラーフィス、早まったな」
竜胆
「と、もうしますと?」
文雄
「残念だが彼は魔性の者ではないようだ。彼の波動は魔性 のそれと酷似しているからさしものお前も間違えたようだな。繰り返すが彼は魔性ではない。至急、手当だ」
観楠
「文雄さん……(助かった……)」
竜胆
「まさかそんな……申し訳ありませんでした! ごめんな さい! 私ったらなんて事を(おろおろ) 癒しの術を……では、私が感じた魔性の波動は一体どこから……」
文雄
「(探す振りをする)……どこか遠くへ行ったようだ。脅威 的には感じられない」
観楠
「ふぅ、ひどいめにあった……」
竜胆
「ほんとにごめんなさい! 痛かったでしょ?」
観楠
「いや、わかってもらえればいいんですよ。ま、今後気を 付けてもらうとして。あぁ文雄さん、みんな待ってますよあっちで。士堂さんはどうしたんです?」
文雄
「うむ、会えなかったようだ」

湊川家の家訓

大輔
「……店長、遅いなぁ」
美樹
「どこまで行ったんですかねぇ、自販機ってあそこの他に あるのかな?」
「はよせんと、飯くわれへんで」
素子
「……私、見てきましょうか?」
「そのうちくるやろ。まぁあいつのことやからひょっとし たら、と言うこともある(笑)」
美樹
「うーむ……否定し切れませんね。しかし、こんな所でも 家命を守らなきゃいけないんですかねぇ(笑)」
大輔
「家命? 店長、そんなモノあったのか……かなみちゃん 知ってるなかぁ?」
かなみ
「うーんと……しらないの」
「かなみに聞かんでも……(大輔に耳打ち) というわけや。 生きた証拠がそこにおるやろ(大笑)」
大輔
「店長が聞いたら怒りますよ……(笑)」
素子
「店長がそんなことするわけありません!!」
彼方
「あぁ、やっとついた。そういえば高村さん来なかったな。 :うーん……
・山のなかで急にはぐれた
・怪獣はいないのでもう連絡は取れないこの二つから彼について考えられる全ての状況を……だめだ不確定要素が多すぎる。もっと条件付けを明確にしないと最適な答えが得られない……」
大輔
「あ、士堂さぁん! こっちですよぉ〜」
彼方
「……あそこにいるのは、初級組。やぁどうも。ところで、 高村さんを見かけませんでしたか?」
大輔
「文ちゃん? 会えなかったんか……(やっぱり) うちの 組の怪獣もって、『中級コースに戻る! 』 なコト言ってたんだけどねぇ(溜息) 方向オンチのクセに、頑固なんだから……」
文雄
「それはすまんのう。でも無事についたぞ」
大輔
「(びくっ) だから……背後から声かけるのやめなって! まぁ無事についたね、よかったよかった(笑)」
「あ、観楠も一緒か。遅いなぁ! どこまでいったんや?」
美樹
「待ってましたよ。あれ? そちらの女性はどなたです?」
観楠
「いや、まぁなんだ……」
文雄
「うむ。押し倒されて危険な状態だったので救出してきた」
「押し倒したぁ!? お前……いくらなんでもそこまでする とは思わんかった」
美樹
「まがりなりにも霊山で神聖な所なんですよねぇ、この山。
噂は事実だったか……なるほど」
大輔
「ほ、ほんとにほんとなんですか、店長!?」
素子
「まさか、そんな……う、嘘ですよね? 嘘だと言って下 さい!」
観楠
「嘘って……なにが? 話が全然見えな……」
素子
「(観楠に強烈な平手打ち)……私、私……(涙)」
観楠
「あ、(何故?) あの……」
素子
「最っ低! 大嫌いよぉ!! (泣きながら走り去る)」
「……まぁ、当然の結果やな。ちょっと軽蔑するぞ」
美樹
「全くねぇ……これからは場所をわきまえて下さいね」
大輔
「事情を説明してもらえますか? 場合によっちゃぁ許し ませんからね! (憤慨)」
観楠
「ちょっと待てって! なにがなんだかさっぱりわかんな いぞ! みんな何怒ってるんです?」
かなみ
「父様、素子姉様にいじわるしたのっ!?」
観楠
「なにもしてないよ……誰か説明してくれよ! 混乱する ことだらけだ!!」
「だから、お前がその人押し倒したんやろ?」
観楠・竜胆
「(顔を見合わせる) はぁ?」
美樹
「で、店長は家命を守るべく……」
観楠
「(思考中) なるほど……話が判ったぞ。いっとくが、俺 はなにもしてない! 本当に!」
大輔
「でも今、文ちゃんが『押し倒されてたから』って言って たじゃないですか!」
竜胆
「あの……実は違うんです! 私の勘違いで、この方にご 迷惑をかけてしまいまして。そうですよね竜王様」
文雄
「うむ。私も『この方が押し倒された』 などとは言って ないが」
大輔
「はりゃ? そうだったのか……ふ、文ちゃん! なんて こと言うのさ君わっ!」
文雄
「うーむ、説明不足だったか。反省しよう」
竜胆
「いえ、悪いのは私なんです!」

(わいわいがやがや)

観楠
「あぁもぉ! もういいですよ、終わったことなんですか ら! そんなことより素子ちゃん探さなきゃ……いってきます。皆さんは先に食べてて下さい」
かなみ
「父様、またいじわるするのっ? そんなコトしたら、か なみがゆるさないわよっ!!」
観楠
「しないよ、安心して。謝りに行くんだよ(笑顔)」
「とか言いながら実は……じゃないやろな!」
観楠
「しつけーぞ、おめーはよっ! んなことするかい!」

告白しちゃえば?

由加梨
「(気分良くデッサンしている)……あれ? 素子ぉ、どぉ かしたの?」
素子
「由加梨……(涙)」
由加梨
「なに……素子、なに泣いてんのよ!?」
素子
「どぉしよぉ! あたし、あたし……(大泣)」
由加梨
「ちょ、ちょっと泣いてちゃわかんないわよ! (困) な にがあったの?」
素子
「由加梨ぃ……うん、あのね……」
由加梨
「そっかぁ、そんなことがねぇ」
素子
「でも……かなみちゃんがいるのに、そんな他の女の人と なんて!」
由加梨
「(思考中) でもねぇ……ねぇ、素子いつも自分で言って るじゃない、『店長はそんな人じゃないっ』て。私も今日見てたけど、そんなコトするようには見えなかったな。ちゃんと確かめたの?」
素子
「でも、高村さんが『押し倒されて』って言って、それで 店長すぐに否定しなかった……」
由加梨
「うーん……(思考中) あ! それよそれ! (笑) 誰も 店長さんがその女の人に手を出した、なんて言ってないじゃない、そこを誤解したんだわ、きっと。なぁんだ、素子の早とちり(笑)」
素子
「え……そ、そうなのか、なぁ?」
由加梨
「きっとそうね。素子あわてんぼだから(笑) となると、 店長さん、きっとワケわかんないんじゃない? いきなり張り飛ばしたんでしょ?」
素子
「う……(赤面)」
由加梨
「だったら! さっさと謝っちゃいなさいな(笑) 泣いて るなんて、素子らしくないわよ! 早くしないとその顔、写真に撮っちゃうよ!? (笑)」
素子
「な〜によぉ、 あたしだって 泣くことくらいあるんだか ら……由加梨、ありがとね(笑顔)」
由加梨
「なんのなんの、友達でしょ(笑) あ、謝るついでにと言っ ちゃなんだけど……(耳打ち) 告白しちゃえば? まだだったよね?」
素子
「な、なななな(赤面) そんなコト、突然言われても(大焦) 上手く言えないよお!」
由加梨
「多分、 店長さんも気づいてると思う…… だから、ね? ファイトファイト、きっと大丈夫よ! あ、あとで教えてね(笑)」
素子
「由加梨、そればっかり(笑) うん、頑張ってみる……」
観楠
「どこ行ったのかな……泣かせちゃったなぁ、どうしてい つもこうなのかな、俺ってヤツぁ!」

夕焼け小焼け

観楠
「あっと、もうこんな時間か……」
「どないした?」
観楠
「ん、そろそろ帰らんとな。明日もあるし、これ以上疲れ たら仕事に差し支える……かなみちゃぁん」
かなみ
「なぁに?」
観楠
「そろそろ帰るよ」
かなみ
「え〜、かなみ、まだ遊びたいのに〜」
観楠
「う〜ん、でもね。ほら、もうすぐ夜になるんだよ?」
かなみ
「や! まだあそぶのっ」
観楠
「(しゃがむ) 夜になったらお化けがでるよ?」
かなみ
「や! おばけなんていないもん!!」
観楠
「そうかなぁ? 『遅くまで寝ない子は誰だ〜』って、絵 本に出てきたのがいるんだよ、このお山に。ねぇ大輔さん」
大輔
「(え?) あ、あぁ、そうですね。かなみちゃん、店長の 言うとおりだよ。かなみちゃん可愛いからお化けがさらっていっちゃうかも。ねぇ朝さん」
「そやなぁ……かなみ、遅までおったらこんなやつ (幻術 発動) がでてくるで」
かなみ
「そんなのでないモン! (どきどき) 父様がやっつけて くれるんだからっ」
観楠
「……僕は帰っちゃうよ?」
かなみ
「えーと、えっと……ミかがいっしょだもん(不安)」
ミか
「かなみちゃん、帰ろ?」
観楠
「ほら、みんな帰っちゃうよ? かなみちゃん1人になっ ちゃうよ?」
かなみ
「う……(ぐすっ) そんなの、やだぁ……」
観楠
「ね? また今度連れてきてあげるから、その時はもっと 沢山遊ぼ?」
かなみ
「……父様、指切りしてくれる?」
観楠
「指切り?」
かなみ
「だって父様 、 かなみとあまりあそんでくれないんだも ん……」
観楠
「そ、それは……(焦)」
「それ以上はゆうたらあかん。かなみの言い分ももっとも やしできんでもここは約束しとかな。お前の努力次第でなんとでもなるはずや」
観楠
「そりゃそうなんだが……そうだな。かなみちゃん、指切 りしよう(笑顔)」

帰りの電車にて

かなみ
「(すぅ……)」
観楠
「やっぱり寝ちゃったか……走り回って遊んでたもんなぁ
ふぁ) 俺もちっと寝るかな(ふあぁ……)」
素子
「はぁ……明日からまた学校だぁ」
由加梨
「と、アルバイトの日々ね。今日はなんだか大変だったけ ど、楽しかったね。いろいろと(笑) 」
素子
「いろいろ、ね……(照)」
大和組
「(一同爆睡)」
竜胆
「竜王様、お休みにならなくてよろしいのですか?」
文雄
「うむ。わたしは特に眠たいワケでもないのでな」
竜胆
「じゃぁ、私は眠らせてもらいますね。もぉさっきから欠 伸がとまんなくて……(ふわぁ‥ぁふ) あ、着いたら起こして下さいね……(すぅ)」
大輔
「なんだ、みんな寝ちゃうのな」
美樹
「私はあまり眠くないですねぇ……結構疲れてるハズなん ですけど」
彼方
「エネルギー消耗率……30%。稼動できる時間はまだ充 分(呟く)」
大輔 
「あ、そだ。 忘れんうちにと……彼方君、ハイ、これ。 大和組のなんだけど、涼介君は飼えないって言ってるから。初級のヤツは性格悪いから、こっちでいいやね? (笑)」
彼方 
「もらって良いんですか(にこにこ) では、ありがたく頂 きます。怪獣の人には、私の部屋に住んでいただきますが、それでよろしいでしょうか? (怪獣に)」
怪獣 
「ぎゃ?」
彼方 
「了承、と、認識します。では、暫くおとなしくしていて 下さいね(背中をなでている)」



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