エピソード49『転生戦士』


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エピソード49『転生戦士』

某月某日、「弾き語り通信倶楽部」のTRPGOFFが開かれた。
 場所は、オリジナルルールを手掛けているftこと高村文雄宅である。
 OFF終了後、残っているのは文雄と大輔、剽夜と竜胆だった。

竜胆 
「あっ、ネコだ。おっきい。かわいぃぃぃぃ」
剽夜 
「ひもがついてるぞ」
文雄 
「こいつは噛むからなあ。他のネコと隔離しているのだ」
竜胆 
「かまれたら、穴開きますか? 竜王様」
文雄 
「この通りだ(手首を見せる)」
剽夜 
「傷が残ってますね」
竜胆 
「……後ろから見てもこのネコ、まるいですね(笑)」
剽夜 
「はははは。確かに丸い」
竜胆 
「このネコ丸君サマ、胴体だけでも普通のネコ3匹ぶんは ありますよ(笑)」
大輔 
「ところで、御両人。絵を描いてくれない?」
竜胆 
「いいですよ」
剽夜 
「ちょっと眠いから、一眠りしてから……(横になる)。 今日は疲れたのじゃ……」
大輔 
「どうしたんだい、彼は?」
竜胆 
「ちょっと彩華ラーメンを食べに天理まで行ってたんです」
大輔 
「それは凄い事を(^^;)」

しばらくして

剽夜 
「ぐーっ、すーっ、むーっ……(ぽりぽり)」
文雄 
「彼は、寝ているのか?」
竜胆 
「いびきをかいてるから、寝てますよ」
文雄 
「さすが、手慣れたものだ」
竜胆 
「見慣れてますから(笑)。寝息が激しい時は寝てます……
描き描き)。ちょっとあたしも疲れて来ました(横になる)」
大輔 
「これで文ちゃんも横になれば川の字だ(笑)」
文雄 
「私はそれ程疲れていないのでな」
剽夜 
「むーっ、すーっ」
竜胆 
「ここじゃちょっと寝返りが打てません……よっと」
大輔 
「Lの字型か……竜胆ちゃん、蹴られるよ?」
竜胆 
「多分大丈夫ですよ……」

そう言って竜胆は机代わりのこたつの下に体を潜らせた。まるで、ネコが狭いところに好き好んで入って行く様だった。
 結果、寝ている剽夜の足元に竜胆の頭が位置する事になった。

竜胆 
「うん、これで大丈夫。ふうーっ、一休み……(ぽこっ) はうっ! (頭を抱える) い、痛いよ更ちゃん(泣)」
剽夜 
「……ああ、済まない、あきりん(汗)。悪かった、ごめん」
文雄 
「どうしたのだ?」
大輔 
「剽夜くんが竜胆ちゃんの頭を寝惚けて蹴ったみたいだ」
剽夜 
「大丈夫か、あきりん(汗)」
竜胆 
「だ、大丈夫」
文雄 
「よほど悪い夢を見ていたようだな」
剽夜 
「包丁を持った女の子に追っかけられる夢を見た……(汗)」
竜胆 
「シュールな夢ね」
剽夜 
「うん、かどで待ち伏せて、一本包丁を蹴落としたんだが、 更に背中からもう一本出て来たので、振り降ろされた包丁をマガジンで受けたのだが、突き刺さった包丁をぐいぐい押して来るんだ。それは女の子の力とは思えなかった……仕方が無いので、迫り来る刃先を歯で受けて、その腕を蹴りあげたら、戻りの脚があきりんの頭にに当たったようだな。本当に大丈夫か?」
竜胆 
「うん、大丈夫……(頭を押さえてる)、どんな女の子だっ たの?」
剽夜 
「結構可愛い女の子だったぞ……それにしてもリアルな恐 い夢だった……トラウマになりそうだ……やはり合宿で『クトゥルフ』をやったのがよくなかったようだ」

あくる晩 竜胆の部屋

剽夜
「(描き描き)……あきりん、今からカラオケに行くぞ!」
竜胆
「行きますか(ノる)」
剽夜 
「行かれますか」
竜胆 
「閉店まで一時間だけど、カラオケに直行!」
剽夜 
「おう!」

駅前には人影も少ない。まあ、午前4時前ともなれば当然だ。

竜胆 
「まさか、入店拒否なんてされないよね」
剽夜 
「一時間だから大丈夫だろう」
竜胆 
「今回は突っ走らせて頂きます」
剽夜 
「練習に丁度いいな……ん? 珍しいな。通行人がいるぞ」
竜胆 
「そうだね……」
剽夜 
「! あきりん、避けろ」
竜胆 
「わあっ! ちょっと、危ないじゃない」
少女 
「……」

少女の手には包丁が握られていた。街灯の光が反射して、その鋭い刃を浮かび上がらせている。

少女 
「……(ひゅっ)」
竜胆 
「くっ、なんなのよ? これ以上やると、こっちだって容 赦しないから!」
剽夜 
「私が引き付けるから、あきりん、どうにかしてくれ」
竜胆 
「わかった!」
剽夜 
「しかし、なんなんだ? この子は……(がしっ)、とても 女の子には思えんぞ、この腕力……」
竜胆 
「更ちゃん! この子、まだ包丁持ってる!」
剽夜 
「むう! (蹴り) しゃれにならんぞ……」
竜胆 
「更ちゃん、 巻き込まれないように気を付けてね! え いっ」
少女 
「くう……! (ごほっ)」
剽夜 
「! まだ動けるのか? まずい(手を放す)」
少女 
「壊す……! 壊す……!」
竜胆 
「きゃっ! なんなの? ちょっと、 やめなさいって! 痛っ!」
剽夜 
「あきりん?」
竜胆 
「大丈夫……! こんなのかすり傷!」
剽夜 
「そうは見えんぞ。ここはいったん……逃げよう」
竜胆 
「……しかたないわね」

すたすた

剽夜 
「一体何だったんだ? あの子は……」
竜胆 
「さあ……」
剽夜 
「正直な話、逃げ切れたとは思えないな……これでよし、 と」
竜胆 
「……ありがと、更ちゃん。服、弁償するね」
剽夜 
「気にするな。一宿の礼と思ってくれ。さて、どうする? これから。たぶん追って来てるはずだ」
竜胆 
「……あたしと更ちゃん、どっちが狙われてるのか知らな いけど、放って逃げるのもしゃくだし、どっちみち逃がしてくれそうにもないし……」
剽夜 
「気が進まないけど、戦うしかないようだな」
竜胆 
「そうね。……よっと(立ち上がる)」
剽夜 
「左腕、大丈夫か?」
竜胆 
「大丈夫だって……痛いけど」
剽夜 
「さて、そろそろ来る頃だ……」
竜胆 
「来たわ」
少女 
「……壊す……」
剽夜 
「すまないがあきりん、時間を稼いでくれ」
竜胆 
「あいよ」
少女 
「……壊す……修羅……」
竜胆 
「壊されるわけにはいかないのっ(エーテル攻撃)」
少女 
「(無言でふっ飛ぶ)」
剽夜 
「……暗き影の住人よ!」

剽夜の呪文が完成した。林立するビルが織り成すいくつもの影が、少女を包み込む。

竜胆 
「……凄い妖気ね……」
剽夜 
「呪文からも判るだろうが、いわゆる黒魔法だからな。あ きりんには少し辛いかも知れん。そんなに長くは続かないから、済まないが我慢してくれ」
竜胆 
「うん……(へなへな)」
剽夜 
「とりあえず包丁は取り上げておこう。こんなもので刺さ れたら痛いなんてものじゃないからな」
竜胆 
「気を付けてね……」
剽夜 
「(包丁を取り上げる)さて、口くらいはきけるはずだが、 話してはくれないだろうな……思考を読むか」
竜胆 
「……更ちゃん、止めた方がいいよ……その子は、何かに 支配されてる……」
剽夜 
「そのようだな。しかし、このままにしておくわけにもい かん」
竜胆 
「その子……強すぎる……! 離れて!」
剽夜 
「? な、何だ?」
少女 
「壊す!」

少女は自らを戒めている影を取り込んでいた。その影は、剽夜の支配を離れ、逆に剽夜を束縛しようとした。

竜胆 
「更ちゃん! (エーテル攻撃)」

またもや少女は無言でふっ飛ぶ。

剽夜 
「助かった、あきりん」
竜胆 
「(はあっ)……その子……きっと、前に……知っていたよ うな気がする」
剽夜 
「……修羅の住人か?」
竜胆 
「(無言でうなずく)……たぶん……あたしじゃ……倒せな い」
剽夜 
「あきりん、逃げるぞ(竜胆を軽々と抱き上げる)」
竜胆 
「あ……ちょっと、更ちゃん(赤面)」
剽夜 
「苦情はあとだ!」
竜胆 
「ごめんね、重いでしょ」
剽夜 
「お約束だな、こういう状況での(笑)」
竜胆 
「……そんなこと考えてなかったのに」
剽夜 
「まあ、いい。せっかくだから、なにか作戦でも考えてく れ」
竜胆 
「あたしがそーゆーの苦手なの、 知ってて言ってるんで しょ」
剽夜 
「はっ、そうだった。あきりんは素でロールプレイできる 希有な存在だったんだ……いつも、私が作戦を考えていたのだった……」
竜胆 
「どーせ、あたしは素で大ボケキャラをロールプレイ出来 ますよーだ(ぷんぷん)」
剽夜 
「私としたことがうかつだった……ん? あきりん、後ろ を見てくれないか」
竜胆 
「んー。追っかけて来てる……」
剽夜 
「しゃれにならんぞ。夢で見たまんまではないか」
竜胆 
「あたしの頭、蹴った時のアレ?」
剽夜 
「そうだ」
竜胆 
「あのまま、夢見てたら、勝ったんでしょ?」
剽夜 
「うむ。たぶんな。しかし、皮肉にも、夢と同じなのは、 鞄がない事だ」
竜胆 
「でも、あたしがいるってのは、夢と違うでしょ」
剽夜 
「そうだな……さすがに疲れた。このへんで迎撃するしか ないようだな……ほい」
竜胆 
「……しかたないなあ。アレを使うしかないみたいね」
剽夜 
「アレ?」
竜胆 
「折伏刀。実体はないけど、十分効果はあるはずよ。特に、 あの子に憑いてるやつにはね……」
剽夜 
「出し惜しみしてたのか?」
竜胆 
「うん。だって、使ってる姿を想像してみてよ」
剽夜 
「……変だな」
竜胆 
「でしょ。絶対、変な目で見られるから、使わなかったの
左手を鞘に見立てるように、構える)」
剽夜 
「酒飲みながら聞いた覚えはあったが……あきりんも使え たのか」
竜胆 
「ラーフィスちゃんよりは威力が落ちるけどね……結局の ところ、使い手の霊力で威力が変わるから」
少女 
「……修羅……壊す……殺す……」
竜胆 
「……(剣を抜き放つしぐさ)」
剽夜 
「私はなにをすればいいのだ?」
竜胆 
「魔法で援護!」
少女 
「……く……折伏刀か……」
竜胆 
「見えるみたいね。だったら、話は早いわ」
剽夜 
「援護魔法ね……。えーと、」

と言いつつ、剽夜はポケットからハンカチを取り出し、すばやく広げながら、呪文を詠唱する。

剽夜 
「我が魔法名に於いて命ず。”布”と言う名をもって、そ の天駆ける力宿らん。”天女羽衣”」

呪文の詠唱が終わると、ハンカチがふわっと浮き上がって、竜胆の体を羽衣のように覆った。

竜胆 
「なにこれ、更ちゃん?」
剽夜 
「いわゆる、天女の羽衣と言うやつで、体が軽くなる魔法 だ。あきりんは、足をけがしているからな……一応空も飛べるぞ」
剽夜 
(しかし、 この呪文は終わるとハンカチがだめになるんだ よな……ふぅ、まっ、いいか)
竜胆 
「あ、だいぶ楽に動ける。ありがとう、更ちゃん」
剽夜 
「一宿の礼だ」
竜胆 
「(少女に向き直って)出来れば使いたくなかったけど…… こっちもやられる訳にはいかないのっ!  えぇぇぇい(ぶんっ)」
少女 
(包丁で受けようとする)
竜胆 
「無駄よっ」

剽夜の霊視能力は、竜胆が手にした刀も、それに切り裂かれた少女の姿も捉えていた。

剽夜 
「……凄い威力だな(道の霊体まで切り裂いてるぞ)」
竜胆 
「まだまだ。浅かったわ」
少女 
「くうっ……痛ぅ……」
竜胆 
「もう一太刀浴びせておかないと安心出来ないわね……」
剽夜 
「あきりん、これ以上やると、この子の肉体にまで影響が 出るぞ」
竜胆 
「それはないわ。更ちゃんに見えてるのは、この子に憑い てるやつの姿よ……この子は、まだこいつの中にいるんだから。こいつを折伏しないと……」
剽夜 
「……本当に大丈夫なのか?」
竜胆 
「これは、神の刀よ。その力も、神の手によるものよ。大 丈夫」
少女 
「……痛い……」
竜胆 
「! この子の魂が表面に……」
剽夜 
「……あきりん? 何か出て来たぞ。……こ、これは…… これが、この子に憑いてたって言うのか……」
竜胆 
「これは……修羅の住人じゃない! まさか、『眠れるセ ト』の……そんな、そんなことって……(汗)」
剽夜 
「あきりん?」
竜胆 
「……ここで……倒しておかないと……」
剽夜 
「あきりん!」
竜胆 
「更ちゃん……あたし、勘違いしてた……憑いてたんじゃ ない、この子が……こいつだったの……」
剽夜 
「え? あきりんみたいにか? 転生体って言うのか」
竜胆 
「うん……だから、こいつを斬ったら、この子も、無事で は済まない……。でも、あたし、この子を……斬らなくちゃいけない……」
剽夜 
「こいつが……あきりんの言ってた、『敵』ってやつなの か」
竜胆 
「うん……正確には、『敵』の一人……。あたしは、こい つを斬らなくちゃ……それが、使命だから……」
剽夜 
「どうしても、か」
竜胆 
「あたしだって、本当は斬りたくない! でもね。やらな いと……皆に、迷惑がかかるわ。今なら、この子だけで済む……」
剽夜 
「……」
竜胆 
「更ちゃん……今なら間に合うから、先に帰ってて……」
剽夜 
「そうはいくか。あきりん一人置いて帰れって言うのか」
竜胆 
「この子を……殺すところを……見られたくない……」
剽夜 
「水臭いな。私とあきりんの仲だろう? それに、その刀、 本当に折伏できるなら、死ぬ事はないだろう?」
竜胆 
「更ちゃん……ありがとう……」
竜胆 
「貴方には悪いけど覚悟してね。えぇぇいっ、……やぁ」

 竜胆は刀で少女の腕を切り付け、返す刀で足を切り付けた。少女は倒れ、
 剽夜の目には、少女の霊体が傷ついてエーテルがどくどく流れ出すのが見
 えた。

剽夜 
『まぁ、これなら普通の人は暫く動けまい……』

 竜胆は刀を握り直し、額にねらいをつけた。少女の顔を見ながら、竜胆
 の頭にある思いが横切る。

竜胆 
(この子のように、私も覚醒に失敗していたら……)

 少女の顔に自分が重なり、その思いに耐え切れず、思わず竜胆は少女か
 ら目を逸らしてしまった。

剽夜 
「危ないっ!! あきりん!!」
竜胆 
「えっ……」

 竜胆が目を開くと、目の前に包丁があった。しかし、その包丁はもう永
 遠におろされる事はなかった。目線を下ろすとその訳が解った。少女の腹
 部から木のナイフの先端が見えていたからである。
  そして、少女の体がゆっくりと崩れ落ち、後ろから剽夜の体がゆっくり
 とあらわれた。

竜胆 
「更ちゃん、なんで……」

 バシッ。乾いた音がビルの谷間にこだまする。

剽夜 
「馬鹿。戦いの最中に目をそらすとは何事だ。死にたいの か!!」
竜胆 
「でも……でも、何も殺さなくたって……」
剽夜 
「覚醒に失敗した修羅が、これから普通の生活をおくれる と思うのか?  誰かが止めなきゃ、この子の回りの人も、この子も被害を受けるんだぞ!!」
竜胆 
「ねぇ、じゃぁ、この子の魂は? この子の未来は? 一 体どうするって言うのよ」
剽夜 
「魂は因果律に縛られているからな。修羅界に戻るだろう」
竜胆 
「……」
剽夜 
「この子の未来は、俺達が背負うしかあるまい。俺達には その責任が有るんだ。人を殺すって言う事は、その人の全てを背負うって事だからな……過去も未来も」
竜胆 
「でも、他の方法はなかったの!?」
剽夜 
「無かったと言えば嘘になる。確かに最善の策とは言えな い。しかし、考えてみろ。折伏するって事は、属性を変えるって事だ。修羅の権化と化した物から、修羅という心を全く消すんだぞ。そういう心を無くしてまともに生活できると思うのか?」
竜胆 
「じゃぁ、これからも救うすべはないって言うの?」
剽夜 
「いや、覚醒にさえ失敗しなければ、善の心も残っている からな、折伏したら丁度よくなるんだがな。また、覚醒に失敗していても、折伏する力を加減すれば何とかなるだろう……。もっとも、それは大変難しい事だがね」

 剽夜は、頭を掻きながら、竜胆の視線をかわして宙を見て言った。

剽夜 
「……いやぁ、今回はとっさの事で術を使いそこなったん だ。竜胆を失うわけにはいかなかったのでね」

 それだけ言うと、剽夜はくるりと竜胆に背を向けた。そして、竜胆は風
 の音が変ったのに気付いた。そう、それはまるで泣きぶさむように吹いて
 いるのであった。

竜胆 
「……」

 そして、竜胆の返事は風の音にかき消され人の耳に届く事はなかった。

竜胆
「……更ちゃん……あたしは……正しかったの? もしか
          して、あたしは……許されない事を……」
剽夜
「……」
竜胆
「前世がどうであれ、人を一人、殺してしまった……」
剽夜
「それは……」
竜胆
「あたしのせいで、更ちゃんの手を……」
剽夜 
「……あきりん」
竜胆 
「え?」
剽夜 
「あきりんは何も気にする必要はないと思うのだが」
竜胆 
「でも……」
剽夜 
「結局のところ、あきりんの理屈を借りれば、本体がする べき事のはずだ。あきりんはラーフィスの転生体なんだろう? 言ってみれば、代理人のようなものじゃないのか」
竜胆 
「でも、あたしはラーフィスなのよ?」
剽夜 
「最初から知ってた訳じゃないだろう。あきりんは責任感 が強いから、それを知った時に素直に従っただけじゃないのか。本当に戦うべきなのは、ラーフィスであって、その転生体であるあきりんじゃない。そう思うんだが……」
竜胆 
「……」
剽夜 
「そう考えないと、やっていけないぞ」
竜胆 
「なんか、逃げてるみたいで嫌だ」
剽夜 
「じゃあ、どうするんだ。この子の親に謝るのか?」
竜胆 
「……」
剽夜
「だから、無理矢理でも納得するしかないんだ」
竜胆 
「……」
剽夜 
(言い過ぎたかな……)
竜胆 
「……わかった」
剽夜 
「そうか。じゃあ、これからどうするんだ?」
竜胆 
「とりあえず、この子を交番にでも……(ふらっ)」
剽夜 
「あきりん? しっかりしろ……(ゆさゆさ)」
竜胆 
「……疲れたみたい……更ちゃん、お願いできる?」
剽夜 
「私一人では怪しまれるではないか。せめて交番までは一 緒に来てもらわないと……」
竜胆 
「そうだね。じゃ、行こっか……」
文雄 
「どうしたのかね、二人とも顔色が良くないぞ。……とき にその娘は何なのかね?」
竜胆 
「……」
文雄 
「やれやれ、言いたくないのかね。(少女にルーズリーフ をあてる)」
剽夜 
「みゅう、いきなり封印する気か?」
文雄 
「別に資料術は封印するばかりがのうじゃないんだがね。 実際には封印するよりは、こうして読み取るだけのほうが楽だぞ」
剽夜 
「(ルーズリーフを読む) ……正確に読めているな。傷害 者、能力、身体状況……このままでは一時間後に衰弱死か……」
文雄 
「助ける気が有るんなら、新谷ゼミに連れていくぞ。そう でないなら……預かっておこう。紙に封じて。封じている間は時も凍ったままだから死ぬことはないし……それを苦痛に感じることさえできんからな」
竜胆 
「竜王様……本当に、あたしたちは……いえ、何でもない です」
文雄 
「……気にする事はない。間違った事はしていないはずだ からな。それより、助ける気はあるのか、ないのか」
竜胆 
「力だけを……封じる事は出来ないのですか?」
文雄 
「(しばし沈黙)無理だな。解っているはずだ、お前自身 が、そうできないように」
竜胆 
「あたしは、この子を助けたいのです。たとえ、それが使 命に反するとしても……この子に、罪はありません。そうでしょう?」
文雄 
「……その通りだ。では、吹利学校まで付き合ってもらう ぞ。大丈夫だ、新谷先生は信用出来る人物だからな」
竜胆 
「はい……」



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