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エピソード58 『RCFC』*========================
 ある日。ベーカリー楠にて。
 アンパンをかじる岩沙の前に竜胆現わる。

竜胆
「ふっふっふ〜〜」
琢磨呂
「うぉっ!」
竜胆
「あ〜ら。岩沙君じゃな〜い。ゲンキしてるかなぁ〜〜?」
琢磨呂
「あ、え、ま、まぁね!(てんちょー!姐さんちょっとお   かしいぜ?どうしちまったんすか?)」
観楠
「あ、竜胆ちゃんいらっしゃい。(私に言われても分から   ないですよ。本人に聞いてみたら?)」
琢磨呂
「(これだけのヒソヒソ会話がデビルイヤーに聞こえてな   いというのも恐いしなぁ)あ、姐さん、なんかいい事で   もあったんか?」
竜胆
「ふふふっ。あのね、じつはね。ふふ……ふふふふふ……」
琢磨呂
「(あ、危なすぎる!)」
竜胆
「やっぱり内緒」
琢磨呂
「クッ……このアマぁ……」
竜胆
「分かったわよ、教えて、あ・げ・る。じつはね、私のファ   ンクラブが出来ちゃったの! 名付けて『RCFC』なの。 ねっ、可愛いでしょう?」
琢磨呂
「まっ、人の好みってな十人十色って言うしな。B76がも てはやされても、不思議ではないか……てんちょー、も う1個ちょうだい」
竜胆
「あんったねぇ〜〜! 自分の立場っての、ほんっと分かっ   てないわねっ!」
琢磨呂
「何のことだぁ?」
竜胆
「あたしのファンクラブが出来て、そして私がここにいる」
琢磨呂
「うんうん。それがどーかした?」
竜胆
「まだ会員が少なく、早急に会員を集めてるって事は?」
琢磨呂
「胸の小ささのせいだから、自業自得ってわけ……   (ボコッ)っってーなー! 何すんだよ!」
竜胆
「人が気にしてる事を……」
琢磨呂
「事実とは、無情なものだ」
竜胆
「とにかくっ、これにサインしなさい!」
琢磨呂   
「何だこりゃ? RINDO・CHAN・FAN・CLUB・登録用紙!?   こ、これにサインしろだって? 冗談きついぜ、姐さん」
竜胆
「この私の目が冗談を言ってるようにみえる?」
琢磨呂
「幾らだ?」
竜胆
「3000円!」
琢磨呂
「(コイツ、俺の財布の中身が空だって事知ってんじゃねー    のか?) よ、良しっ! 手をうとうじゃないか。お   互いの幸せの為に……(カキカキ) よしっ! 出来た、
        3000円!」
竜胆
「ありがとっ! さすが岩沙。じゃぁ、お金は今年中に払   い込んでね」
琢磨呂
「ハぁ?」
竜胆
「入会費無料、年会費3000円よ。そこの用紙の端にちっちゃ く書いてあるでしょう?」
琢磨呂
「……(確かに書いてある)」
(暫し時間が止まる)

観楠
「岩沙、君!?」
琢磨呂
「だ、だ、だましやがったな、あのアマぁ〜〜!   (銃を抜く)」

その時、既に店の前から、豊秋竜胆氏のバイクは姿を消していた……
 12.021秒の早業であった。琢磨呂には追う術も無かった……
 ただ一枚、琢磨呂のサインを記した紙だけが、竜胆とともにベーカリー楠から消え去っていたのだ……



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