湊川観楠(みなとがわ・かなみ) ベーカリー楠店長
湊川かなみ(みなとがわ・かなみ) 観楠の娘を名乗る少女。幼稚園児
豊秋竜胆(とよあき・りんどう) 変な女子大生(笑) ベーカリーの常連
日阪朝(ひざか・はじめ) 観楠の友人
隅田美々(すみた・みみ) 朝の婚約者である桐子の妹。高校生。
伊川望(いかわ・のぞむ) かなみの友達。隣に住んでいる
10月中旬水曜日。観楠のマンションにて。
- かなみ
- 「ただいまっ!」
- ミか
- 「あ、かなみちゃん。おかえりっ」
- ビィ
- 「あぎゃっ!」
- かなみ
- 「ねぇ、父様は?」
- ミか
- 「あのねぇ、お買い物行ったよ」
- かなみ
- 「えーっ! お手紙よんでもらうのにぃ(ぶぅ)」
- ミか
- 「お手紙って、大人の人しか読めないのよね」
- ビィ
- 「あぎゃぎゃ! (手を挙げる)」
- ミか
- 「なぁに?」
- ビィ
- 「あぎゃ、あぎゃぎゃ! ぎゃぉ〜す!」
- かなみ
- 「(ジト目っ)」
- ビィ
- 「あ……あぎゃっ(汗)」
- ミか
- 「ビィちゃん、読めるって」
- かなみ
- 「ほんとっ!?」
- ビィ
- 「あんぎゃ!」
- かなみ
- 「じゃ、これよんで(封筒を渡す)」
- ビィ
- 「ぎゃっ! (自信っ)」
- ミか
- 「ビィちゃんって……すごいのねぇ」
- かなみ
- 「ねぇ、はやくっ! (期待☆)」
- ビィ
- 「あぎゃ(汗)」
- ミか
- 「『いまから読む』って」
- かなみ
- 「うん」
- ビィ
- 「あぎ……(大汗)」
- ミか
- 「『えーと』って」
- かなみ
- 「お手紙はなかにあるの!」
- 観楠
- 「ただいまぁ〜」
- かなみ
- 「あ、父様っ! おかえりなさい! (笑顔)」
- 観楠
- 「かなみちゃんも、おかえり(笑顔)」
- ミか
- 「パパ、おかえりなさぁい」
- 観楠
- 「はい、ただいま。お、ビィが来てるのか…… なんか汗
かいてないか、お前?」
- ビィ
- 「あ、あぎゃぁ! (力一杯否定する)」
- 観楠
- 「わかったわかった(笑) ん、お前何持ってんだ?」
- かなみ
- 「あ! お手紙もらったのっ!」
- 観楠
- 「誰からかな?」
- かなみ
- 「みどり先生からなの」
- 観楠
- 「え…… なんだろ一体? まさか……(悪い妄想が駆け
めぐる)」
- かなみ
- 「望ちゃんももらってるの。父様、はやくよんでっ(笑顔)」
- 観楠
- 「あ、幼稚園からの連絡か。はいはい、ちょっと待ってね。
えーとぉ……あ、運動会だって」
- かなみ
- 「うんどうかい!?」
- 観楠
- 「みんなでかけっこしたり、踊ったりするんだよ」
- かなみ
- 「父様も?」
- 観楠
- 「もちろん。ミかと一緒にかなみちゃんを応援しに行くか
らね」
- かなみ
- 「……うんっ! (キラキラの笑顔)」
- 観楠
- 「(か、可愛い……っ) で、日時は…… 次の日曜日だぁ!?
こういうことはもっと早く連絡してくれよなぁ」
- かなみ
- 「父様?」
- 観楠
- 「あ、なんでもないよ」
- かなみ
- 「望ちゃんのトコ行ってくるねっ」
- 観楠 :「はい、いってらっしゃい。日曜日かぁ…… さぁて、どー
- しよっか」
次の日:ベーカリー楠にて。
- 朝
- 「暇やなぁ、相変わらず」
- 観楠
- 「暇なのは大学生くらいだ。俺は俺で仕事してるし、素子
ちゃん達は試験中だし……」
- 朝
- 「おかげでかなみの相手はできんわ 素子さんとは会えん
わ……(笑)」
- 観楠
- 「……まてぃ。素子ちゃんがなんだよ」
- 朝
- 「由加梨って娘もおったなぁ。あと、あの子……更毬さん
とくっついてる?」
- 観楠
- 「竜胆ちゃん。だからそれがなんだと……まぁえーわい。
ゆーとれ」
- 朝
- 「俺まだなんにもゆーてへんで? なにか心当たりでもあ
るんか?」
- 観楠
- 「……は、おいといて。お前さ、それだけ暇あるんやった
ら」
- 朝
- 「なんかあんの?」
- 観楠
- 「運動会……見に行かん?」
- 朝
- 「誰の?」
- 観楠
- 「あの娘の幼稚園で、今度の日曜日」
- 朝
- 「また急な話やな」
- 観楠
- 「だからチト困ってんの。店休めんからなぁ今回は」
- 朝
- 「でもお前、それは行っとかなあかんで」
- 観楠
- 「だから、あの娘が出るところだけ見に行って……」
- 朝
- 「休んだら?」
- 観楠
- 「それも考えてんけどなぁ(大悩)」
(急に店内がブラックアウトする)
- 朝
- 「な、なんや!?」
- 観楠
- 「停電かっ!?」
- 声
- 「違うわっ!」
(入り口とおぼしきあたりにスポットライト)
- 観&朝
- 「はぁ?」
- 竜胆
- 「誰かが私を呼んでいる! 助けて欲しいと叫んでる!
悩みお困り即解決! 正義のヒロイン豊秋竜胆におまかせよっ☆」
- 朝
- 「帰ろ……」
- 観楠
- 「ち、ちょい待ち! 俺だけで相手せぇってか!? (大汗)」
- 竜胆
- 「今回から、登場にも演出を加えてみたわ。TVの前のみん
な、カッコよかったでしょ? ま、ヒロインとして当然よね☆」
- 黒子達
- 「(拍手喝采・花吹雪の後、退場)」
- 竜胆
- 「ありがと☆ さて、今回の依頼は…… なんだ、店長さ
んですか」
- 観楠
- 「な、なんだって……(大汗)」
- 竜胆
- 「……なるほど、かなみちゃんトコの運動会ですか。だけ
どお仕事で見に行けない、と言うのね?」
- 観楠
- 「まだなにも言ってないよ…… あってるけど(苦笑)」
- 竜胆
- 「……それは、お店を休んで運動会へ行くことで円満な結
末を迎えるコトでょう」
- 朝
- 「急に占い師になるか(笑) いつ着替えたんや」
- 観楠
- 「つまり、休んだ方がいい、と君らは言うわけやな」
- 竜胆
- 「一年に一度の晴れ舞台なんですから、やっぱり見てあげ
なきゃダメですよ☆」
- 朝
- 「あ、元に戻った」
- 観楠
- 「うーん……(大悩)」
- 竜胆
- 「行かないんですか? (攻撃態勢)」
- 観楠
- 「わ、わわわ、わかった、判りました! 行きます、行か
せていただきますっ!」
- 竜胆
- 「よろしい(笑顔)今日も迷える子羊を導いてあげることが
できたわじゃぁね、みんな。また来週っ☆」
- 観楠
- 「……はっ! な、なんだったんだ一体(大汗)」
- 朝
- 「行かな、殺されそーやな(笑)」
- 観楠
- 「ふぅ……明日かぁ。どーなるかなぁ」
- 朝
- 「まだゆーてる」
- 観楠
- 「いや、行くには行くけどな。やっぱり全部が全部見るわ
けにはいかんのよ、これが」
- 朝
- 「どないすんねん?」
- 観楠
- 「そやなぁ。とりあえず、あの子が出る種目のみ応援にい
こかなと、思てる」
- 朝
- 「できんのか?」
- 観楠
- 「とりあえず、俺の仕事だけ終わらせといて、あとはパー
トまかせでもOKな状態にしてやな……」
- 朝
- 「……」
- 観楠
- 「まぁ、『技』を使えばなんとかなるかな(呟く)」
- 朝
- 「『技』ってなに? また子供つくるんか? (笑)」
- 観楠
- 「作ってどーするよ?」
- 朝
- 「人手が増えるとか…… 身内やから人件費もかからんや
ろ(笑)」
- 観楠
- 「なんの話だっ! さて、こーしちゃおれん。明日のシフ
ト組まんと」
- 朝
- 「……子宝倍増計画やな(笑)」
- 観楠
- 「はいはい。あ、朝さぁ。明日ヒマ?」
- 朝
- 「とりあえず予定はない」
- 観楠
- 「良い話があるんやけどな…… 俺もお前も共に幸せにな
ることができるという」
- 朝
- 「いかへんで」
- 観楠
- 「あ、そぉ? 俺がおらん間、幼稚園であの子の相手して
くれるだけで今までのツケが数ページ無くなるんやけどなぁ」
- 朝
- 「そんなもんしらん」
- 観楠
- 「桐子さん、このごろよく買いに来てくれるんだわ、これ
が(笑)」
- 朝
- 「……ひ、ひきょー」
- 観楠
- 「決定な(笑) んじゃ、明日。頼むで。弁当くらい出した
ろ」
- 桐子
- 「こんにちわぁ」
- 観楠
- 「あ、どうも。いらっしゃいませ(営業スマイル)」
- 桐子
- 「朝君。いたの?」
- 朝
- 「『いたの』て……」
- 観楠
- 「今日はなにを? (笑)」
- 桐子
- 「そーねぇ…… とりあえず食パンと…… 朝君、なにか
食べたいモノある?」
- 朝
- 「ここのは全部食うた」
- 桐子
- 「じゃぁ、食パンを1斤とバケットを1本お願いしますね
笑顔)」
- 朝
- 「……」
- 桐子
- 「どうかしたの?」
- 朝
- 「なんでもない。あ、明日やけどな……」
- 桐子
- 「ヒマならいくらでもあるわよ(笑) どこか、連れてって
くれるんだ?」
- 朝
- 「あー…… 朝から出かけるから(……言えん)」
- 桐子
- 「ふぅん。ま、帰りながら話しましょ」
- かなみ
- 「父様、明日お天気よね?」
- 観楠
- 「そーだね(笑) うん、新聞にお天気だって書いてある
よ(笑)」
- かなみ
- 「かなみね! かけっこと、玉入と、おゆうぎと、かりも
のきょうそうと!」
- 観楠
- 「うんうん(プログラムを見ている)」
- かなみ
- 「きばせんと、ぼうたおしと、だいしょうがいきょうそう
と!」
- 観楠
- 「うんうん…… き、騎馬戦? 棒倒し? 大障害競
走?(汗)」
- かなみ
- 「たくさん出るのっ!」
- 観楠
- 「ちょっとまって……(汗) かなみちゃん、騎馬戦とか棒
倒しなんてやるの? (心配)」
- かなみ
- 「うん」
- 観楠
- 「(嘘だろおい……)げげ、ホントに書いてある…… 誰だ
よ、こんなプログラム組んだヤツはぁ! 子供が怪我したらどーすんだ!?」
- かなみ
- 「かなみ、ケガなんてしないもん。望ちゃんがいるもん!」
- 観楠
- 「(望がいたらどーして怪我しないんだ?)」
- 望
- 「かなみぃ! うんどーかい、いこーぜっ」
- 観楠
- 「の、望! 今何時だと思ってるんだ!?」
- かなみ
- 「うん! 今日はがんばろうねっ」
- 観楠
- 「頑張ろうねって…… 2人とも、待ちなさい!」
- か&望
- 「(笑いながら手に手を取って出ていく)」
- 観楠
- 「ちょ、ちょっと待ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!(大汗)
……なんだ、は、ははっ(苦笑) しかし、なんつー夢だ
……(時計を見る) あ、時間か(欠伸)」
観楠のマンション。
- かなみ
- 「ふぁ……んんっ(のびっ)」
- ミか
- 「かなみちゃん、おはよ!」
- かなみ
- 「ミか、おはよっ! 父様は?」
- ミか
- 「あのねぇ、お仕事行ったよ」
- かなみ
- 「えーっ! 今日はかなみといっしょにうんどうかい行くっ
て言ったのに!」
- ミか
- 「すぐにかえって来るって言ってたよ」
- かなみ
- 「ごはんは?」
- ミか
- 「さきにたべてなさいって」
- かなみ
- 「ぶぅー!」
同時刻。ベーカリー楠厨房。
- 観楠
- 「だめだ、ちんたらやってらんねぇ! 久々に技使わんと
……にしても、なんでこんな日に別注が入るんだぁ!! (時計をみる) やばい! あの子が起きる時間だぁ! 勘弁してくれもぉ……」
同時刻。桐子宅。
- 桐子
- 「あ、朝君。起きた?」
- 朝
- 「……なんで日曜やのに朝から起きなあかんねん」
- 美々
- 「朝ちゃん、何処かいくん?」
- 桐子
- 「湊川さんから頼まれたんでしょ? 普段お世話になって
るんだから。はいコーヒー」
- 朝
- 「桐子はえーかも知れんけど」
- 美々
- 「質問に答えてない! どこいくんよ、こんな朝から起き
出して。普段は昼回っても寝てる朝ちゃんが今日に限って普通に起きて、お姉ちゃんと喋ってるなんて絶対普通やないわ」
- 朝
- 「……」
- 美々
- 「さては、あたしを放ったらかしてお姉ちゃんとどっか遊
びに行くつもりやったんとちゃう? ズルいでそんなん!」
- 朝
- 「まだなんにもゆーてへん」
- 美々
- 「そんなん訊かんでもわかるわ! 決めた。今日は朝ちゃ
んから離れへんからね」
- 朝
- 「別にかまへんけど……幼稚園行くだけやで?」
- 美々
- 「何しに? まさか……お姉ちゃん!?」
- 桐子
- 「違うわよ。何考えてんのよこの子は……朝君の知り合い
の方が、ちょっとね」
- 朝
- 「だから来てもしゃーないで」
- 美々
- 「むぅ」
しばらく後。観楠のマンション。
- ミか
- 「パパ、おそいねぇ」
- かなみ
- 「(黙々と朝食を終える)」
- ミか
- 「あ、ミかが片付けるから、かなみちゃん着替えたら?」
- かなみ
- 「(黙々と着替えに入る)」
- ビィ
- 「あぎゃぁ(こんこん)」
- ミか
- 「あ、ビィちゃん。おはよっ。かなみちゃん、ビィちゃん
がきてるよ」
- かなみ
- 「(黙々と着替え続行)」
- ビィ
- 「あ……あぎゃ、ぎゃ? (汗)」
- ミか
- 「(パパぁ、早く帰ってきてよぉ!)」
同時刻、ベーカリー楠。
- 観楠
- 「よし、仕込みおわり! 指示表書いて……これでよし。
んじゃ、ちっと出かけますんで、後お願いします! なにかあったら……留守電にでもお願いしますね。じゃ、そういうことで!」
- パート
- 「お疲れさまでした〜」
- 観楠
- 「やばいやばいやばいやばいやばいやばいっっっっっ!
絶対起きてるよな……で……あぁぁっ(泣)」
さらに後。観楠のマンション。
- 望
- 「かなみぃ〜、幼稚園いこーぜっ!」
- ミか
- 「あ、望ちゃん。おはよっ」
- 望
- 「ミかもおはよっ。かなみは?」
- ミか
- 「あのねぇ……かなみちゃん、望ちゃんがきたよぉ」
- かなみ
- 「(奥で座って動かない)」
- 望
- 「おーい、かなみぃ」
- かなみ
- 「……」
- ミか
- 「かなみちゃん……(汗)」
- 望
- 「なぁ、どうかしたのか?」
- ミか
- 「あ、う、えっとぉ……かなみちゃんまだ寝てるから……
大汗) すぐに行くから、望ちゃん、先に行ってて?」
- 望
- 「そぉかぁ……」
- 観楠
- 「ただいまっ!」
- ミか
- 「パパ!」
- 観楠
- 「ごめんね、遅くなって。かなみちゃん、お待たせ。さぁ、
行こうか……かなみちゃん?」
- 望
- 「オレ、先に行くから。かなみぃ、はやくこいよぉ。じゃ
なっ」
- 観楠
- 「かなみちゃ〜ん……」
- かなみ
- 「(ぶっっすぅぅぅぅぅぅぅ!)」
- 観楠
- 「(あ、あかん……相当怒ってるぞこれわ……)ご、ごめん
ね? もっと早く帰ってくるはずだったんだけど……僕が悪かったネ。……あ、かなみちゃんが片付けてくれたんだ?」
- かなみ
- 「ミかだもん」
- 観楠
- 「(し、しまった!)」
- かなみ
- 「(立ち上がる)」
- 観楠
- 「あ、かなみちゃん……いずこへ? (汗)」
- かなみ
- 「うんどうかい、いくの」
- 観楠
- 「あ、そだね(汗) それじゃぁ僕も用意しなくちゃね(大汗)
えーっとぉ、財布と鍵と、弁当水筒タオルにハンカチ、カメラを忘れちゃいけないな」
運動会当日、伝明寺幼稚園にて。
- 美々
- 「ここなん?」
- 朝
- 「(来てもしゃーないのに) そう」
- 美々
- 「ふーん……で、朝ちゃんの知り合いのヒトって誰なん?」
- 朝
- 「観楠。パン屋のヤツ。まだ来てないみたいやな」
- 美々
- 「かなみって言うん? 変な名前やね」
- 朝
- 「その変な名前を自分の娘にも付けとる(笑)」
- 美々
- 「娘て……その人朝ちゃんと同い年ちゃうの? それで……
もう子供おるん! 朝ちゃん」
- 朝
- 「なんや」
- 美々
- 「負けてたらあかんやん!」
- 朝
- 「な、なんの話をしてんねん(汗)」
- 美々
- 「なんのて、うちのお姉ちゃんにハジかかせたら許さへん
で!」
- 朝
- 「そーゆう問題やないやろ……(大汗)」
- 美々
- 「なんでもええわっ!」
- 観楠
- 「おーい。あれ? 2人で来たんか」
- かなみ
- 「朝兄様、おはよっ!」
- 美々
- 「おはようございます」
- 朝
- 「来たか」
- 観楠
- 「おぅ。今日はたのむで」
- 朝
- 「しゃーない」
- 観楠
- 「お互いのためや(笑) ところで……なんで妹さん来てん
の?」
- 朝
- 「まだ妹ちゃう」
- かなみ
- 「えっと……湊川かなみってゆーの」
- 美々
- 「え? あぁ。ウチは角……じゃなくて(あっぶなぁ〜)、
隅田美々ゆうねん。かなみちゃんやね、よろしく(笑)」
- かなみ
- 「みみ姉様ね!」
- 美々
- 「うーん……『お姉ちゃん』、て呼んでくれる? (苦笑)
そっちの方がウチはええんやけど」
- 観楠
- 「でやな。俺はやっぱり仕事がある」
- 朝
- 「それで?」
- 観楠
- 「とりあえずやな(プログラムを見せる)、あの子が出ると
ころは帰ってくるから……この、丸印してあるトコね」
- 朝
- 「それまで相手したったらえーんやな」
- 観楠
- 「ま、そーゆうコト。んじゃ、頼むわ」
- 朝
- 「頼むわって、なに? もぉ帰んの?」
- 観楠
- 「開会式くらいは見ていこかな」
- 美々
- 「男どーしで、なにヒソヒソやってんよ、やらしー!」
- かなみ
- 「やらしー!」
- 観楠
- 「これ! そういうことを言っちゃ、ダメだよ」
- かなみ
- 「ふーんだ」
- 観楠
- 「ふーんって……そんな……(汗)」
- 朝
- 「なにかあったんか? (笑)」
- 観楠
- 「なにもない!」
- かなみ
- 「お姉ちゃん、いこっ!」
- 美々
- 「いこいこ(笑) 今日の応援はまかしとき(笑)」
- 朝
- 「嫌われてるやないか(笑)」
- 観楠
- 「うっうっうっ……(目の幅涙)」
- 観楠
- 「んな、ちっと頼むわ。すぐ帰ってくるから!! (去)」
- 朝
- 「最初から休みにすりゃえーのに……ナンギなヤツ」
- 美々
- 「あれ? お父さんは何処いったん?」
- 朝
- 「仕事あるとかゆーて、今帰りよった」
- 美々
- 「あかんやん! 今日は子供の運動会やろ、休みとって当
然ちゃうの!? ちょっと……なにそれ、信じられへんわ」
- 朝
- 「俺にゆーてもなぁ……あいつの考えやから、しゃーない」
- 美々
- 「なんでそこでゆーたらへんの? あれ、そういえば。奥
さんは?」
- 朝
- 「見たこと無い」
- 美々
- 「見たこと無いて……んじゃ何? かなみちゃんて、お母
さんおらへんの!?」
- 朝
- 「おるとは思うけど、何処におるかは知らん」
- 美々
- 「ふぅん(思考中)……なるほど、そういうわけ。朝ちゃん!」
- 朝
- 「?」
- 美々
- 「ウチ、まだ姪も甥もいらんからね。やっぱり早いわ、ま
だ(頷)」
- 朝
- 「……なんでそっちへ持っていく? (苦笑)」
- 美々
- 「朝ちゃん、よー言うてるやん。『一点集中』て(笑)」
……しばらく後。
- 観楠
- 「はぁっ、はぁっ! ま、間にあったか? (ぜいぜい)」
- 朝
- 「いまから入場行進やな」
- 観楠
- 「これは……なに?」
- 朝
- 「騎馬戦」
- 観楠
- 「……(ばたっ)」
- 朝
- 「倒れてる場合やないんとちゃうか? (笑)」
- 観楠
- 「いきなり怪我したら、どーすんだっ!」
- 美々
- 「かなみちゃーん、頑張りやぁ!」
さらに時間経過。
- 観楠
- 「これも結構辛いな……」
- 朝
- 「お、今回はまだ余裕があるな」
- 観楠
- 「次は、なんやったっけ?」
- 朝
- 「大障害競走」
- 観楠
- 「おい……」
- 朝
- 「ゆーても、あんなんやったら怪我はないやろ? (指さ
す)」
- 観楠
- 「そーゆー問題か? (大汗)」
- 美々
- 「かなみちゃーん、楽勝、楽勝ぉ〜」
- 観楠
- 「あう……やっぱり休みたい……」
- 朝
- 「仕事なんか入れるからや」
- 観楠
- 「入れたくて入れてんじゃねぇ……あ、お昼持ってきた。
4人分」
- 朝
- 「またパンか? (笑)」
- 観楠
- 「しゃーない。店で作れるモンつったらこんなんしかない」
- かなみ
- 「お姉ちゃん!」
- 美々
- 「あ、ヒロインのご帰還や(笑) 頑張ってたね、スゴイス
ゴイ」
- かなみ
- 「でもまだ『いちばん』じゃないの」
- 観楠
- 「惜しかったね(笑) でも、きっととれるよ、1等賞」
- 朝
- 「そやなぁ……ここは一発、オヤジが頑張って……」
- 観楠
- 「なんだそりゃ?」
- 朝
- 「ほれ、ここに家族参加の競技があるやろ? これは出な
あかんで」
- 観楠
- 「飯食ってすぐ走んのか……ま、いいか」
- かなみ
- 「父様、はしるの?」
- 観楠
- 「うん。絶対、1等賞とるから(にこっ) かなみちゃん、
応援してくれるかな?」
- かなみ
- 「うん! 1等賞ね!」
- 観楠
- 「負けるかこの……っだらぁぁぁぁぁぁ! (僅差で1位)
とったか、とったな? おぉっしゃぁぁ!」
- 朝
- 「お、手ぇふっとる。親がムキになってどないすんねん(笑)」
- 美々
- 「そういうもんやねんて、きっと(笑) かなみちゃん、よ
かったね」
- かなみ
- 「うん! (笑顔)」
午後も半ば。
- 観楠
- 「どーにか片づいたぞ、と……はぁ(ぐて)」
- 朝
- 「無茶やゆーてんのに(笑)」
- 観楠
- 「終わったからもぉええって感じやな(笑) で、最後、何?」
- 朝
- 「第36回伝明寺杯。2ハロンのクラス対抗男女混合リレー」
- 観楠
- 「あのなぁ……競馬やないんやから」
- 朝
- 「予想できたで。かなみんとこはやな……いままでの成績
からみて……まぁ、△やな。当てれば結構でかい(笑)」
- 観楠
- 「あのなぁ」
- 朝
- 「冗談や(笑) でもリレーはホンマ。牡牝……やなくて、
男女混合でクラス対抗」
- 観楠
- 「むぅ。じゃ、気合い入れて応援するかな(笑)」
- かなみ
- 「ひっく……ぐすっ……(涙)」
- 望
- 「かなみ、泣くなって。ころんだの、誰もおこってないぜ、
な?」
- 美々
- 「怒るわけないやん。かなみちゃん、元気だそ?」
- 朝
- 「ま、惜しかったけどな。また今度あることやし」
- かなみ
- 「……泣いてないもん! (涙)」
- 望
- 「(泣いてるよ……)」
- 観楠
- 「かなみちゃん、頑張ったんだから。みんな誉めてるよ?」
- かなみ
- 「……ほんとに?」
- 観楠
- 「うん。転んでもすぐに立ってゴールまで走ったじゃない。
リレーは1等賞取れなかったけど、今日の1等賞はかなみちゃんだよ(笑顔)」
- かなみ
- 「でも、みんなが言うの……」
- 望
- 「そんなことねぇって! もし、かなみの悪口いうヤツが
いたらおれがそいつらやっつけてやるからなっ! (ぐっ)」
- 観楠
- 「おいおい、穏やかに頼むぞ望(笑) ね? だから、元気
出そうよ」
- かなみ
- 「……うん! (にこっ)」
- 朝
- 「んじゃ今日は帰るわ」
- 観楠
- 「あ、そぉ? ん……すまんかったな、今日は」
- 朝
- 「まぁ楽しかったから良しとしよう(笑)」
- 美々
- 「それじゃ、失礼します。かなみちゃん、また会おねっ!
笑)」
- かなみ
- 「お姉ちゃんもねっ! ばいばぁ〜い」
- 観楠
- 「やれやれ、何とか終わったな。疲れたなぁ……(欠伸)
さて。かなみちゃん、今日はなにが食べたいかな?」
- かなみ
- 「あのね、かなみねっ……」
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