エピソード60『運動会』


目次


エピソード60『運動会』

出演

 湊川観楠(みなとがわ・かなみ) ベーカリー楠店長
  湊川かなみ(みなとがわ・かなみ) 観楠の娘を名乗る少女。幼稚園児
  豊秋竜胆(とよあき・りんどう) 変な女子大生(笑) ベーカリーの常連
  日阪朝(ひざか・はじめ) 観楠の友人
  隅田美々(すみた・みみ) 朝の婚約者である桐子の妹。高校生。
  伊川望(いかわ・のぞむ) かなみの友達。隣に住んでいる

手紙

10月中旬水曜日。観楠のマンションにて。

かなみ
「ただいまっ!」
ミか
「あ、かなみちゃん。おかえりっ」
ビィ
「あぎゃっ!」
かなみ
「ねぇ、父様は?」
ミか
「あのねぇ、お買い物行ったよ」
かなみ
「えーっ!  お手紙よんでもらうのにぃ(ぶぅ)」
ミか
「お手紙って、大人の人しか読めないのよね」
ビィ
「あぎゃぎゃ! (手を挙げる)」
ミか
「なぁに?」
ビィ
「あぎゃ、あぎゃぎゃ! ぎゃぉ〜す!」
かなみ
「(ジト目っ)」
ビィ
「あ……あぎゃっ(汗)」
ミか
「ビィちゃん、読めるって」
かなみ
「ほんとっ!?」
ビィ
「あんぎゃ!」
かなみ
「じゃ、これよんで(封筒を渡す)」
ビィ
「ぎゃっ! (自信っ)」
ミか
「ビィちゃんって……すごいのねぇ」
かなみ
「ねぇ、はやくっ! (期待☆)」
ビィ
「あぎゃ(汗)」
ミか
「『いまから読む』って」
かなみ
「うん」
ビィ
「あぎ……(大汗)」
ミか
「『えーと』って」
かなみ
「お手紙はなかにあるの!」
観楠
「ただいまぁ〜」
かなみ
「あ、父様っ!  おかえりなさい! (笑顔)」
観楠
「かなみちゃんも、おかえり(笑顔)」
ミか
「パパ、おかえりなさぁい」
観楠
「はい、ただいま。お、ビィが来てるのか…… なんか汗 かいてないか、お前?」
ビィ
「あ、あぎゃぁ! (力一杯否定する)」
観楠
「わかったわかった(笑) ん、お前何持ってんだ?」
かなみ
「あ!  お手紙もらったのっ!」
観楠
「誰からかな?」
かなみ
「みどり先生からなの」
観楠
「え…… なんだろ一体?  まさか……(悪い妄想が駆け めぐる)」
かなみ
「望ちゃんももらってるの。父様、はやくよんでっ(笑顔)」
観楠
「あ、幼稚園からの連絡か。はいはい、ちょっと待ってね。 えーとぉ……あ、運動会だって」
かなみ
「うんどうかい!?」
観楠
「みんなでかけっこしたり、踊ったりするんだよ」
かなみ
「父様も?」
観楠
「もちろん。ミかと一緒にかなみちゃんを応援しに行くか らね」
かなみ
「……うんっ! (キラキラの笑顔)」
観楠
「(か、可愛い……っ) で、日時は…… 次の日曜日だぁ!? こういうことはもっと早く連絡してくれよなぁ」
かなみ
「父様?」
観楠
「あ、なんでもないよ」
かなみ
「望ちゃんのトコ行ってくるねっ」
観楠 :「はい、いってらっしゃい。日曜日かぁ…… さぁて、どー
しよっか」

決断

次の日:ベーカリー楠にて。

「暇やなぁ、相変わらず」
観楠
「暇なのは大学生くらいだ。俺は俺で仕事してるし、素子 ちゃん達は試験中だし……」
「おかげでかなみの相手はできんわ 素子さんとは会えん わ……(笑)」
観楠
「……まてぃ。素子ちゃんがなんだよ」
「由加梨って娘もおったなぁ。あと、あの子……更毬さん とくっついてる?」
観楠
「竜胆ちゃん。だからそれがなんだと……まぁえーわい。 ゆーとれ」
「俺まだなんにもゆーてへんで? なにか心当たりでもあ るんか?」
観楠
「……は、おいといて。お前さ、それだけ暇あるんやった ら」
「なんかあんの?」
観楠
「運動会……見に行かん?」
「誰の?」
観楠
「あの娘の幼稚園で、今度の日曜日」
「また急な話やな」
観楠
「だからチト困ってんの。店休めんからなぁ今回は」
「でもお前、それは行っとかなあかんで」
観楠
「だから、あの娘が出るところだけ見に行って……」
「休んだら?」
観楠
「それも考えてんけどなぁ(大悩)」

(急に店内がブラックアウトする)

「な、なんや!?」
観楠
「停電かっ!?」
「違うわっ!」

(入り口とおぼしきあたりにスポットライト)

観&朝
「はぁ?」
竜胆
「誰かが私を呼んでいる! 助けて欲しいと叫んでる!  悩みお困り即解決! 正義のヒロイン豊秋竜胆におまかせよっ☆」
「帰ろ……」
観楠
「ち、ちょい待ち! 俺だけで相手せぇってか!? (大汗)」
竜胆
「今回から、登場にも演出を加えてみたわ。TVの前のみん な、カッコよかったでしょ? ま、ヒロインとして当然よね☆」
黒子達
「(拍手喝采・花吹雪の後、退場)」
竜胆
「ありがと☆ さて、今回の依頼は…… なんだ、店長さ んですか」
観楠
「な、なんだって……(大汗)」
竜胆
「……なるほど、かなみちゃんトコの運動会ですか。だけ どお仕事で見に行けない、と言うのね?」
観楠
「まだなにも言ってないよ…… あってるけど(苦笑)」
竜胆
「……それは、お店を休んで運動会へ行くことで円満な結 末を迎えるコトでょう」
「急に占い師になるか(笑) いつ着替えたんや」
観楠
「つまり、休んだ方がいい、と君らは言うわけやな」
竜胆
「一年に一度の晴れ舞台なんですから、やっぱり見てあげ なきゃダメですよ☆」
「あ、元に戻った」
観楠
「うーん……(大悩)」
竜胆
「行かないんですか? (攻撃態勢)」
観楠
「わ、わわわ、わかった、判りました! 行きます、行か せていただきますっ!」
竜胆
「よろしい(笑顔)今日も迷える子羊を導いてあげることが できたわじゃぁね、みんな。また来週っ☆」
観楠
「……はっ!  な、なんだったんだ一体(大汗)」
「行かな、殺されそーやな(笑)」

運動会前日のベーカリー楠・喫茶

観楠
「ふぅ……明日かぁ。どーなるかなぁ」
「まだゆーてる」
観楠
「いや、行くには行くけどな。やっぱり全部が全部見るわ けにはいかんのよ、これが」
「どないすんねん?」
観楠
「そやなぁ。とりあえず、あの子が出る種目のみ応援にい こかなと、思てる」
「できんのか?」
観楠
「とりあえず、俺の仕事だけ終わらせといて、あとはパー トまかせでもOKな状態にしてやな……」
「……」
観楠
「まぁ、『技』を使えばなんとかなるかな(呟く)」
「『技』ってなに?  また子供つくるんか? (笑)」
観楠
「作ってどーするよ?」
「人手が増えるとか…… 身内やから人件費もかからんや ろ(笑)」
観楠
「なんの話だっ! さて、こーしちゃおれん。明日のシフ ト組まんと」
「……子宝倍増計画やな(笑)」
観楠
「はいはい。あ、朝さぁ。明日ヒマ?」
「とりあえず予定はない」
観楠
「良い話があるんやけどな…… 俺もお前も共に幸せにな ることができるという」
「いかへんで」
観楠
「あ、そぉ? 俺がおらん間、幼稚園であの子の相手して くれるだけで今までのツケが数ページ無くなるんやけどなぁ」
「そんなもんしらん」
観楠
「桐子さん、このごろよく買いに来てくれるんだわ、これ が(笑)」
「……ひ、ひきょー」
観楠
「決定な(笑) んじゃ、明日。頼むで。弁当くらい出した ろ」
桐子 
「こんにちわぁ」
観楠
「あ、どうも。いらっしゃいませ(営業スマイル)」
桐子 
「朝君。いたの?」
「『いたの』て……」
観楠
「今日はなにを? (笑)」
桐子 
「そーねぇ…… とりあえず食パンと…… 朝君、なにか 食べたいモノある?」
「ここのは全部食うた」
桐子 
「じゃぁ、食パンを1斤とバケットを1本お願いしますね
笑顔)」
「……」
桐子 
「どうかしたの?」
「なんでもない。あ、明日やけどな……」
桐子 
「ヒマならいくらでもあるわよ(笑) どこか、連れてって くれるんだ?」
「あー…… 朝から出かけるから(……言えん)」
桐子 
「ふぅん。ま、帰りながら話しましょ」

運動会前夜の観楠のマンション

かなみ
「父様、明日お天気よね?」
観楠
「そーだね(笑)  うん、新聞にお天気だって書いてある よ(笑)」
かなみ
「かなみね! かけっこと、玉入と、おゆうぎと、かりも のきょうそうと!」
観楠
「うんうん(プログラムを見ている)」
かなみ
「きばせんと、ぼうたおしと、だいしょうがいきょうそう と!」
観楠
「うんうん……  き、騎馬戦?  棒倒し? 大障害競 走?(汗)」
かなみ
「たくさん出るのっ!」
観楠
「ちょっとまって……(汗) かなみちゃん、騎馬戦とか棒 倒しなんてやるの? (心配)」
かなみ
「うん」
観楠
「(嘘だろおい……)げげ、ホントに書いてある…… 誰だ よ、こんなプログラム組んだヤツはぁ! 子供が怪我したらどーすんだ!?」
かなみ
「かなみ、ケガなんてしないもん。望ちゃんがいるもん!」
観楠
「(望がいたらどーして怪我しないんだ?)」
「かなみぃ! うんどーかい、いこーぜっ」
観楠
「の、望! 今何時だと思ってるんだ!?」
かなみ
「うん! 今日はがんばろうねっ」
観楠
「頑張ろうねって…… 2人とも、待ちなさい!」
か&望
「(笑いながら手に手を取って出ていく)」
観楠
「ちょ、ちょっと待ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!(大汗)
……なんだ、は、ははっ(苦笑) しかし、なんつー夢だ
……(時計を見る) あ、時間か(欠伸)」

運動会当日朝

観楠のマンション。

かなみ
「ふぁ……んんっ(のびっ)」
ミか
「かなみちゃん、おはよ!」
かなみ
「ミか、おはよっ!  父様は?」
ミか
「あのねぇ、お仕事行ったよ」
かなみ
「えーっ! 今日はかなみといっしょにうんどうかい行くっ て言ったのに!」
ミか
「すぐにかえって来るって言ってたよ」
かなみ
「ごはんは?」
ミか
「さきにたべてなさいって」
かなみ
「ぶぅー!」

同時刻。ベーカリー楠厨房。

観楠
「だめだ、ちんたらやってらんねぇ! 久々に技使わんと ……にしても、なんでこんな日に別注が入るんだぁ!! (時計をみる) やばい!  あの子が起きる時間だぁ! 勘弁してくれもぉ……」

同時刻。桐子宅。

桐子 
「あ、朝君。起きた?」
「……なんで日曜やのに朝から起きなあかんねん」
美々
「朝ちゃん、何処かいくん?」
桐子 
「湊川さんから頼まれたんでしょ? 普段お世話になって るんだから。はいコーヒー」
「桐子はえーかも知れんけど」
美々
「質問に答えてない! どこいくんよ、こんな朝から起き 出して。普段は昼回っても寝てる朝ちゃんが今日に限って普通に起きて、お姉ちゃんと喋ってるなんて絶対普通やないわ」
「……」
美々
「さては、あたしを放ったらかしてお姉ちゃんとどっか遊 びに行くつもりやったんとちゃう? ズルいでそんなん!」
「まだなんにもゆーてへん」
美々
「そんなん訊かんでもわかるわ! 決めた。今日は朝ちゃ んから離れへんからね」
「別にかまへんけど……幼稚園行くだけやで?」
美々
「何しに? まさか……お姉ちゃん!?」
桐子 
「違うわよ。何考えてんのよこの子は……朝君の知り合い の方が、ちょっとね」
「だから来てもしゃーないで」
美々
「むぅ」

しばらく後。観楠のマンション。

ミか
「パパ、おそいねぇ」
かなみ
「(黙々と朝食を終える)」
ミか
「あ、ミかが片付けるから、かなみちゃん着替えたら?」
かなみ
「(黙々と着替えに入る)」
ビィ
「あぎゃぁ(こんこん)」
ミか
「あ、ビィちゃん。おはよっ。かなみちゃん、ビィちゃん がきてるよ」
かなみ
「(黙々と着替え続行)」
ビィ
「あ……あぎゃ、ぎゃ? (汗)」
ミか
「(パパぁ、早く帰ってきてよぉ!)」

同時刻、ベーカリー楠。

観楠
「よし、仕込みおわり! 指示表書いて……これでよし。 んじゃ、ちっと出かけますんで、後お願いします! なにかあったら……留守電にでもお願いしますね。じゃ、そういうことで!」
パート
「お疲れさまでした〜」
観楠
「やばいやばいやばいやばいやばいやばいっっっっっ!  絶対起きてるよな……で……あぁぁっ(泣)」

さらに後。観楠のマンション。

「かなみぃ〜、幼稚園いこーぜっ!」
ミか
「あ、望ちゃん。おはよっ」
「ミかもおはよっ。かなみは?」
ミか
「あのねぇ……かなみちゃん、望ちゃんがきたよぉ」
かなみ
「(奥で座って動かない)」
「おーい、かなみぃ」
かなみ
「……」
ミか
「かなみちゃん……(汗)」
「なぁ、どうかしたのか?」
ミか
「あ、う、えっとぉ……かなみちゃんまだ寝てるから……
大汗) すぐに行くから、望ちゃん、先に行ってて?」
「そぉかぁ……」
観楠
「ただいまっ!」
ミか
「パパ!」
観楠
「ごめんね、遅くなって。かなみちゃん、お待たせ。さぁ、 行こうか……かなみちゃん?」
「オレ、先に行くから。かなみぃ、はやくこいよぉ。じゃ なっ」
観楠
「かなみちゃ〜ん……」
かなみ
「(ぶっっすぅぅぅぅぅぅぅ!)」
観楠
「(あ、あかん……相当怒ってるぞこれわ……)ご、ごめん ね? もっと早く帰ってくるはずだったんだけど……僕が悪かったネ。……あ、かなみちゃんが片付けてくれたんだ?」
かなみ
「ミかだもん」
観楠
「(し、しまった!)」
かなみ
「(立ち上がる)」
観楠
「あ、かなみちゃん……いずこへ? (汗)」
かなみ
「うんどうかい、いくの」
観楠
「あ、そだね(汗) それじゃぁ僕も用意しなくちゃね(大汗) えーっとぉ、財布と鍵と、弁当水筒タオルにハンカチ、カメラを忘れちゃいけないな」

伝明寺幼稚園にて

運動会当日、伝明寺幼稚園にて。

美々
「ここなん?」
「(来てもしゃーないのに) そう」
美々
「ふーん……で、朝ちゃんの知り合いのヒトって誰なん?」
「観楠。パン屋のヤツ。まだ来てないみたいやな」
美々
「かなみって言うん? 変な名前やね」
「その変な名前を自分の娘にも付けとる(笑)」
美々
「娘て……その人朝ちゃんと同い年ちゃうの? それで…… もう子供おるん! 朝ちゃん」
「なんや」
美々
「負けてたらあかんやん!」
「な、なんの話をしてんねん(汗)」
美々
「なんのて、うちのお姉ちゃんにハジかかせたら許さへん で!」
「そーゆう問題やないやろ……(大汗)」
美々
「なんでもええわっ!」
観楠
「おーい。あれ? 2人で来たんか」
かなみ
「朝兄様、おはよっ!」
美々
「おはようございます」
「来たか」
観楠
「おぅ。今日はたのむで」
「しゃーない」
観楠
「お互いのためや(笑) ところで……なんで妹さん来てん の?」
「まだ妹ちゃう」
かなみ
「えっと……湊川かなみってゆーの」
美々
「え? あぁ。ウチは角……じゃなくて(あっぶなぁ〜)、 隅田美々ゆうねん。かなみちゃんやね、よろしく(笑)」
かなみ
「みみ姉様ね!」
美々
「うーん……『お姉ちゃん』、て呼んでくれる? (苦笑) そっちの方がウチはええんやけど」
観楠
「でやな。俺はやっぱり仕事がある」
「それで?」
観楠
「とりあえずやな(プログラムを見せる)、あの子が出ると ころは帰ってくるから……この、丸印してあるトコね」
「それまで相手したったらえーんやな」
観楠
「ま、そーゆうコト。んじゃ、頼むわ」
「頼むわって、なに?  もぉ帰んの?」
観楠
「開会式くらいは見ていこかな」
美々
「男どーしで、なにヒソヒソやってんよ、やらしー!」
かなみ
「やらしー!」
観楠
「これ! そういうことを言っちゃ、ダメだよ」
かなみ
「ふーんだ」
観楠
「ふーんって……そんな……(汗)」
「なにかあったんか? (笑)」
観楠
「なにもない!」
かなみ
「お姉ちゃん、いこっ!」
美々
「いこいこ(笑) 今日の応援はまかしとき(笑)」
「嫌われてるやないか(笑)」
観楠
「うっうっうっ……(目の幅涙)」

開会式終了

観楠
「んな、ちっと頼むわ。すぐ帰ってくるから!! (去)」
「最初から休みにすりゃえーのに……ナンギなヤツ」
美々
「あれ?  お父さんは何処いったん?」
「仕事あるとかゆーて、今帰りよった」
美々
「あかんやん! 今日は子供の運動会やろ、休みとって当 然ちゃうの!? ちょっと……なにそれ、信じられへんわ」
「俺にゆーてもなぁ……あいつの考えやから、しゃーない」
美々
「なんでそこでゆーたらへんの? あれ、そういえば。奥 さんは?」
「見たこと無い」
美々
「見たこと無いて……んじゃ何? かなみちゃんて、お母 さんおらへんの!?」
「おるとは思うけど、何処におるかは知らん」
美々
「ふぅん(思考中)……なるほど、そういうわけ。朝ちゃん!」
「?」
美々
「ウチ、まだ姪も甥もいらんからね。やっぱり早いわ、ま だ(頷)」
「……なんでそっちへ持っていく? (苦笑)」
美々
「朝ちゃん、よー言うてるやん。『一点集中』て(笑)」

競技開始

……しばらく後。

観楠
「はぁっ、はぁっ! ま、間にあったか? (ぜいぜい)」
「いまから入場行進やな」
観楠
「これは……なに?」
「騎馬戦」
観楠
「……(ばたっ)」
「倒れてる場合やないんとちゃうか? (笑)」
観楠
「いきなり怪我したら、どーすんだっ!」
美々
「かなみちゃーん、頑張りやぁ!」

さらに時間経過。

観楠
「これも結構辛いな……」
「お、今回はまだ余裕があるな」
観楠
「次は、なんやったっけ?」
「大障害競走」
観楠
「おい……」
「ゆーても、あんなんやったら怪我はないやろ? (指さ す)」
観楠
「そーゆー問題か? (大汗)」
美々
「かなみちゃーん、楽勝、楽勝ぉ〜」

お昼の時間

観楠
「あう……やっぱり休みたい……」
「仕事なんか入れるからや」
観楠
「入れたくて入れてんじゃねぇ……あ、お昼持ってきた。 4人分」
「またパンか? (笑)」
観楠
「しゃーない。店で作れるモンつったらこんなんしかない」
かなみ
「お姉ちゃん!」
美々
「あ、ヒロインのご帰還や(笑) 頑張ってたね、スゴイス ゴイ」
かなみ
「でもまだ『いちばん』じゃないの」
観楠
「惜しかったね(笑) でも、きっととれるよ、1等賞」
「そやなぁ……ここは一発、オヤジが頑張って……」
観楠
「なんだそりゃ?」
「ほれ、ここに家族参加の競技があるやろ? これは出な あかんで」
観楠
「飯食ってすぐ走んのか……ま、いいか」
かなみ
「父様、はしるの?」
観楠
「うん。絶対、1等賞とるから(にこっ) かなみちゃん、 応援してくれるかな?」
かなみ
「うん!  1等賞ね!」
観楠
「負けるかこの……っだらぁぁぁぁぁぁ! (僅差で1位) とったか、とったな?  おぉっしゃぁぁ!」
「お、手ぇふっとる。親がムキになってどないすんねん(笑)」
美々
「そういうもんやねんて、きっと(笑) かなみちゃん、よ かったね」
かなみ
「うん! (笑顔)」

最後の競技

午後も半ば。

観楠
「どーにか片づいたぞ、と……はぁ(ぐて)」
「無茶やゆーてんのに(笑)」
観楠
「終わったからもぉええって感じやな(笑) で、最後、何?」
「第36回伝明寺杯。2ハロンのクラス対抗男女混合リレー」
観楠
「あのなぁ……競馬やないんやから」
「予想できたで。かなみんとこはやな……いままでの成績 からみて……まぁ、△やな。当てれば結構でかい(笑)」
観楠
「あのなぁ」
「冗談や(笑) でもリレーはホンマ。牡牝……やなくて、 男女混合でクラス対抗」
観楠
「むぅ。じゃ、気合い入れて応援するかな(笑)」

閉会式終了後の帰り道

かなみ
「ひっく……ぐすっ……(涙)」
「かなみ、泣くなって。ころんだの、誰もおこってないぜ、 な?」
美々
「怒るわけないやん。かなみちゃん、元気だそ?」
「ま、惜しかったけどな。また今度あることやし」
かなみ
「……泣いてないもん! (涙)」
「(泣いてるよ……)」
観楠
「かなみちゃん、頑張ったんだから。みんな誉めてるよ?」
かなみ
「……ほんとに?」
観楠
「うん。転んでもすぐに立ってゴールまで走ったじゃない。 リレーは1等賞取れなかったけど、今日の1等賞はかなみちゃんだよ(笑顔)」
かなみ
「でも、みんなが言うの……」
「そんなことねぇって! もし、かなみの悪口いうヤツが いたらおれがそいつらやっつけてやるからなっ! (ぐっ)」
観楠
「おいおい、穏やかに頼むぞ望(笑) ね? だから、元気 出そうよ」
かなみ
「……うん! (にこっ)」
「んじゃ今日は帰るわ」
観楠
「あ、そぉ?  ん……すまんかったな、今日は」
「まぁ楽しかったから良しとしよう(笑)」
美々
「それじゃ、失礼します。かなみちゃん、また会おねっ!
笑)」
かなみ
「お姉ちゃんもねっ!  ばいばぁ〜い」
観楠
「やれやれ、何とか終わったな。疲れたなぁ……(欠伸) さて。かなみちゃん、今日はなにが食べたいかな?」
かなみ
「あのね、かなみねっ……」



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