ぷるるるる……ぷるるるる……。
- 竜胆
- 「はい、豊秋れす(チョコパイを食べてる)」
- 父・竜明
- 「あ、おとうさんだけど」
- ビィ
- 「あぎゃ?」
- 竜胆
- 「(静かにしてなさい。ぐいっ) え、お父さん。どーした
の?」
- 父・竜明
- 「いや、今度出張で、大阪に行くから、ついでに顔でもみ
てこうかと思ってな」
- 竜胆
- 「え? いついつ?」
- 父・竜明
- 「明後日」
- 竜胆
- 「(で。その日は更ちゃんと映画を見る約束が……でもで
も、お父さん、気前がいいから、お小遣いくれるかも……ううん、どーしよっ。悩んじゃうぅ(0.1秒)) ……うん、わかった」
- 父・竜明
- 「じゃあ、吹利の駅に着いたら、電話するからな」
- 竜胆
- 「はーい」
がちゃ。
- 竜胆
- 「はうっ、更ちゃんに電話電話……(ぴぽぱ)……出ない(^^;)
これぞまさに電話に出んわ……って、バカ言ってる場合じゃないってぇ(^^;)」
- ビィ
- 「あぎゃ」
その頃の更毬剽夜。
- 剽夜
- 「ぬおおおおおお(がちゃがちゃ)。私はっ、覇王丸に愛を
感じるんだあ! (侍魂をやってる)」
さて、当日。
- 竜胆
- 「結局、当日になっても連絡が着かなかったよぉ(^^;)
こーなったら、覚悟を決めるしかないわっ」
- 剽夜
- 「お待たせなのだ」
- 竜胆
- 「あ、更ちゃん。あのね。ちょっと相談があるんだけど」
- 剽夜
- 「なんだ、唐突に。そりゃ構わんが。対戦に付き合って欲
しいのか? しょうがないなあ」
- 竜胆
- 「ちがーう! あのね。びっくりしないで聞いてね。
……お父さんが、こっちに来てるの……」
- 剽夜
- 「ほう。それで、食事でもどーだ? なんて言って来たん
だな」
- 竜胆
- 「そーなの。でね、吹利駅で待ち合わせてるんだけど……」
- 剽夜
- 「それなら問題はないではないか。映画を見た後、行って
来るといいぞ」
- 竜胆
- 「それがね。待ち合わせ時間が……今なの……」
- 剽夜
- 「何! それは、つまり、私にも付き合えと言うのか(^^;)」
- 竜胆
- 「だって、更ちゃん捕まらないから、今日まで連絡つかな
かったんだもん(^^;)」
- 剽夜
- 「むう。覚悟を決めるしかないのか」
- 竜胆
- 「そんなに固くならなくてもいいと思うんだけ……」
- 父・竜明
- 「お、いたいた。竜胆」
- 竜胆
- 「おとーさん!」
- 剽夜
- (ほう。これがあきりんのパパか。さすがに似てないな)
- 父・竜明
- 「おかーさんも来てるんだ」
- 竜胆
- 「え。聞いてないよ(^^;)」
- 父・竜明
- 「びっくりさせようかと思ってな。ん? そちらの彼は?」
- 竜胆
- 「あ、えーと。おんなじサークルのぉ」
- 剽夜
- 「更毬剽夜と申します。はじめまして。暁工科大工学部3
回生です」
- 父・竜明
- 「はじめまして、竜胆の父、竜明です。不出来な娘がいつ
も世話になってます」
- 竜胆
- 「不出来って、おとーさん(^^;)」
- 父・竜明
- 「本当のことだろう。それに、こういう場では、そう言う
ものなんだ」
- 竜胆
- 「それはわかってるけど」
- 剽夜
- 「(さすがあきりんのパパだ。ただモンじゃない)」
- 父・竜明
- 「さて、せっかくだから、更毬君。君も一緒にどうだ?」
- 剽夜
- 「せっかくの親子水入らずというやつなのに、悪いですよ」
- 父・竜明
- 「日頃、竜胆が世話になってるお礼と言う意味で、どうだ
い」
- 剽夜
- 「そういう意味なら、お言葉に甘えさせてもらいます」
なぜか焼肉屋。
- 父・竜明
- 「恥ずかしい話だが、竜胆は焼肉が大好きでね(じゅーっ)」
- 竜胆
- 「おとーさん、だったら言わなくてもいいじゃないぃ」
- 父・竜明
- 「はっはっは。いいじゃないか(ぱく)」
- 剽夜
- 「なんとなく、わかりますよ。竜胆さんを見てれば
じゅーっ)」
- 竜胆
- 「(さすがに改まった場ではそーゆー模範的な呼び方をする
もんねぇ。更ちゃんって呼ぶのは、止めた方が良いかな?)
- 父・竜明
- 「更毬君。改まってもらわなくてもいいよ。普段呼んでる
呼び方でいい」
- 剽夜
- 「そうですか。普段はあきりん、って呼んでるんですけど
ね(ぱく)」
- 父・竜明
- 「ああ、構わないよ。その方が、かしこまらなくていいだ
ろう(ごくごく)」
- 竜胆
- 「おとーさん、あたしの分も残しといてよ。ほっといたら、
全部食べちゃうんだから(ごくごく)。更ちゃん、隙を見せたら、駄目だよ。自分のお肉は確保しないと(せっせせっせ)」
- 剽夜
- 「あきりん。言葉通りの行動だな(^^;)」
- 竜胆
- 「こーゆー食欲魔人と暮らしてたら、こーなっちゃうのよ
ぱく)」
- 父・竜明
- 「食欲魔人とは失礼だな」
- 竜胆
- 「ぴったりだと思うんだけど……」
- 父・竜明
- 「私のどこが食欲魔人だ? (ぱくぱく)」
- 竜胆
- 「そーやって、ぱくぱく食べるところ」
- 剽夜
- 「仲のいい親子ですね」
- 竜胆
- 「……なんか引っ掛かる言い方ね」
- 剽夜
- 「あきりんのお父さんなんだな、ってよく解りますよ」
- 父・竜明
- 「まあ、竜胆も全然女の子らしくないからな。更毬君も大
変だろう」
- 剽夜
- 「ええ、もう(笑)」
- 竜胆
- 「(なんか、和やかだ……ドラマなんかじゃ、すごく険悪
になるはずなのに……)」
- 竜胆
- 「ちょっと、失礼……ほほほ」
- 父・竜明
- 「……相変わらず変なやつだ」
- 剽夜
- 「そうですね」
- 父・竜明
- 「さて、更毬君。一つ訊ねたい事、いや、確認したい事が
有るんだがね」
- 剽夜
- 「なんでしょう?」
- 父・竜明
- 「竜胆のコト、どこまで知ってるのか、それが知りたいん
だ」
- 剽夜
- 「……おっしゃる意味がよく解りませんが」
- 父・竜明
- 「吹利がどういうところかは、私も少しは知っているつも
りだよ。娘を下宿させているところだからね」
- 剽夜
- 「……あき、いや、竜胆さんの事ですか……、竜胆さんに
は、いつも驚かされてばかりですよ」
- 父・竜明
- 「それもそうだろうな。竜胆には、いろいろと変わったと
ころがあるからな。話題を限定しよう。その、竜胆の変わったところについて。これなら、少しは話せるんじゃないか?」
- 剽夜
- 「竜胆さんの、性格とか……」
- 父・竜明
- 「人格とかね」
- 剽夜
- 「彼女の、人格についてはかなり知っているつもりではい
ます」
- 父・竜明
- 「そうか。分裂症患者だと思ってるのかい?」
- 剽夜
- 「私を試すつもりでしょう? そんなことはありません。
私は、竜胆さんをそんな目で見た事はありません。もちろん、おじさんもそうでしょう?」
- 父・竜明
- 「そのつもりではいるよ。ただ、世間が常にそう思ってく
れるとは限らないからね」
- 剽夜
- 「竜胆さんが、紅雀院に入ったのも、それが理由ですか?」
- 父・竜明
- 「ああ、あのままこっちにいても、竜胆にとっていいこと
は決してなかっただろうしね。こんな事件を知っているかい。『高校生集団脳死事件』。3年前に、起こったんだが」
- 剽夜
- 「……知っています。竜胆さんも、それに?」
- 父・竜明
- 「あの子だけは無事だったがね。事件のあらましを、私の
知っている範囲で話そう……まあ、高校生のグループが、全員脳死に陥った、それが新聞の見出しレベルだな」
- 剽夜
- 「私の知っているレベルでは、そのグループのメンバーに
は、いくつか共通点があります」
- 父・竜明
- 「流行っていたのかどうかは知らないが、彼らは、みな、
前世では仲間だと思っていたようだね。強大な敵と戦う為に、ともに戦った戦士だと。まあ、あの年頃の子たちによくある夢想ってやつだ」
- 剽夜
- 「竜胆さんも、そうだったんですか」
- 父・竜明
- 「あの子は、今でもそう思っているようだがね。私には、
信じられない。仮に、あの子が本当にそうだったとしても、それを確かめる事は出来ないからね……関係者が、みな脳死と判断された以上」
- 剽夜
- 「……」
- 父・竜明
- 「だが、あの子がそう言うんだから、そうなんだろう。私
はそう信じている。親だからね。君は、どう思っているんだい? 意見として、聞かせてくれないか」
- 剽夜
- 「私は、あの事件は、あながちウソではないと思っていま
す。集団で脳死に陥った。しかも、原因は不明。私のような立場の人間なら、それで十分なんですが……」
- 父・竜明
- 「私のような人間だとね。そうは思えないんだ。科学的に
解明されなければ、こじつけてでも、科学の範疇に収まるようにする。それが、普通の人間っていうもんだろう」
- 剽夜
- 「……」
- 父・竜明
- 「たぶん、自分の娘が当事者でなければ、今でもそう思っ
ているだろう。だが、竜胆を見ていると、竜胆がウソを言っているようには見えないし、なにか、思い込んでいる、それだけとも思えないんだ」
- 剽夜
- 「私のような若輩が、こんなことを言うのはなんですが、
その判断は間違ってないと思います。……娘さんに、御理解があるんですね……竜胆さんも幸せでしょうね」
- 父・竜明
- 「誉めないでくれよ、照れるじゃないか」
- 剽夜
- 「私は……竜胆さんが言っている事は、本当だと思ってい
ます。詳しい事は解りませんが、なんらかの原因があって、高校生のグループは、全員……竜胆さんをのぞいて、脳死状態に陥った。それは事実ですしね」
- 父・竜明
- 「君なりの解釈を聞かせてくれないか……」
- 剽夜
- 「……竜胆さんに聞いたのですが、彼女たちのような、前
世の記憶を持った人間というのは、だいたい、その記憶の復活に関して、二通りのパターンがあるそうです。まず、うまれつき持っている者。この場合は、まったく問題がありません。精神的な負担と言う意味で。残る一つですが……後から思い出す、というパターンの方ですね。
こちらに問題があるんです」
- 父・竜明
- 「……つづけてくれないか」
- 剽夜
- 「前世の記憶が復活した場合、当然、今までの記憶とはな
んの関連もない訳ですから、かなりの混乱を生じます。
その結果、精神的に参ってしまうこともあるでしょう。
竜胆さんも、それで苦しんだと言っていました。……一時、竜胆さんが別人に思えた時はなかったですか?」
- 父・竜明
- 「あったよ。高校3年の初め頃か。例の事件の起こる少し
前だ」
- 剽夜
- 「おそらく、竜胆さんたちのグループのメンバーは、その
時期にみんなして、前世の記憶を復活させたんでしょう。それで、その混乱に耐え切れず、精神の死、医学的見地で言う脳死に陥った。そう思っています」
- 父・竜明
- 「竜胆が別人のように見えたのは……」
- 剽夜
- 「精神を守る為だとおもいます。自分の人格を維持する為、
別の人格を作り出し、竜胆さん自身の人格は、殻に閉じこもった。そすることで、竜胆さんの人格は崩壊を免れた。たぶん、自衛作用でそうしたんだと思いますが……」
- 父・竜明
- 「……なるほど」
- 剽夜
- 「なぜ、竜胆さんたちがそうしたのかは解りません。すみ
ませんが」
- 父・竜明
- 「いや、十分参考になったよ。一般には信じてもらえない
だろうが、君の説明でかなり納得する部分があった」
- 剽夜
- 「……脳死に陥った高校生……竜胆さんの仲間ですが、回
復した人物はいるんですか」
- 父・竜明
- 「いや、いないよ。 少なくとも、私の知っている限りで
は……」
- 剽夜
- 「竜胆さんがなかなか里帰りしない理由がわかりました……」
- 父・竜明
- 「こっちに戻って来ても、辛い事を思い出させるだけだろ
うしね。正月とか、盆くらいにしか帰らなくていいと言ってあるんだ」
- 剽夜
- 「……」
- 竜胆
- 「お待たせしました……あれ? あんまり箸が進んでない
のね。あたしの為に残してくれたの? おとーさん」
- 父・竜明
- 「ああ。せっかくだからな。滅多に食べないだろうから、
今のウチに食べておけ」
- 竜胆
- 「はーい……更ちゃん、おとーさんとなんか話した?」
- 剽夜
- 「いろいろと興味深い話をな……」
- 父・竜明
- 「更毬君は、お前にはもったいないくらい、人間が出来て
るなあと思ってたところだ」
- 竜胆
- 「……複雑な気分」
- 父・竜明
- 「ははは。まあ、食べなさい。更毬君もね。遠慮しないで」
- 剽夜
- 「では、いただきます」
吹利駅前。
- 父・竜明
- 「じゃあ、おとーさんは帰るからな」
- 竜胆
- 「気をつけてね。駅、乗り過ごしちゃ駄目よ」
- 父・竜明
- 「お前じゃないんだから、そんなミスはしないよ……更毬
君と仲良くな(小声)」
- 竜胆
- 「うん」
- 父・竜明
- 「じゃあ、更毬君、これからも面倒だろうが、竜胆をよろ
しく頼まれてくれるかい」
- 剽夜
- 「ええ、できる限り……今日は、ごちそう様でした」
- 父・竜明
- 「それじゃ、もう時間だから……(駅の構内に消える)」
- 竜胆
- 「行っちゃった」
- 剽夜
- 「……もう、こんな時間か。帰るのがめんどくさいな。ど
うせ明日も休みだし、今晩、泊めてくれ」
- 竜胆
- 「いいよ。KOFの対戦でもしよ☆」
- 剽夜
- 「ああ」
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