岩沙琢磨呂は今、幸せだった。豊秋竜胆と2人だけの甘い時を過ごし、通り過ぎる世俗の時間なぞ、もう関係はないと言い切れるほどの充実した日々を送っていた。望んだ愛とは、これほどまでに素晴らしいものなのであろうか……そんな永遠に続くかのような日々を破壊されたら、人はどう言う行動に出るであろうか?
- 琢磨呂
- 「(ピンポーン) おーい、リン!(ピンポンピンポンピンポー
ン!) リン、早く開けて……ったく、しょうがない奴だなぁ……またTVでもみながら寝たのかな? あれほどカゼ引くからやめとけっていっておいたのに」
ふとドアノブに手を掛けると開いていることが分かった
- 琢磨呂
- 「戸締まりもしてないだと!? お説教だァ〜 (ドアを開け
る) おーい、リン!?(リビングを覗く)リン!?(バスルームを覗く)……いない? どこいったんだ? 買物かな?
突然遊びにくる俺も俺だが、かぎ開けたまま出かけんなよなァ〜……まぁ、俺の合鍵で閉めてもいいんだが、それじゃぁリンが入れなくなるな……しばらく待ってよっと」
- 琢磨呂
- 「さて、風呂でも……!? ……こ、これは!」
先程は気がつかなかったが、玄関に竜胆の靴がある。それも、普段使っているもの3種類と、礼服用の1種類……完全に揃っている。
- 琢磨呂
- 「靴がすべてあって、鍵は開いたまま……話は繋がってき
たようだな…… (銃を出してマガジンをニトロ弾に入れ替える)」
その時、窓の下から車の音がした。
- 琢磨呂
- 「!!(窓に飛び付く)……白の92年型スカイライン……南西
方向へ逃走……国道112ヘ侵入の可能性大」
その瞬間、琢磨呂は竜胆のバイクのカギがしまってある引き出しをあさり、キーホルダーをつかみ出して走り始めていた……
- 琢磨呂
- 「リンにしては珍しく、燃料満タン……OKだ(発進)」
「前方スカイライン……奴か!?」「……そうこう言ってるうちにローソン侵入か……」「……パイロットは男か……奴と決まったわけじゃないからな、慎重に……(その瞬間男の横顔が見える)……え? なんだ、朝さんかよ……遊びに来て、居なかったから帰ったって奴か! くおおおおおっ! 骨折り損だぜ……俺も豚マンでも買って帰るか……」
琢磨呂は、日阪朝の後を追うようにローソンに入ろうとして、偶然覗きこんだ日阪朝のスカイラインを見て驚愕した。
- 琢磨呂
- 「! 後部座席に……女……睡眠中……リン!? 日阪さん
が? そんな馬鹿な……」
- 朝
- 「さて、あとは家に帰って寝るだ……け…… (手に持って
いたローソン袋をおとす)……い、岩沙君……」
- 琢磨呂
- 「朝さん……(目が恐い)」
- 朝
- 「……じつは、これには……」
- 琢磨呂
- 「車……車に……乗れ(左胸に手を入れて威嚇する)」
- 朝
- 「いや、その」
- 琢磨呂
- 「しゃべる前に車に乗れ」
- 朝
- (無言で乗る)
- 琢磨呂
- (後部座席に乗る)「(朝の頭に銃を突きつけて)黙って佐伯
台の廃工場の駐車場までいけ」
- 朝
- 「(ここはおとなしくしたがった方がいいな……)」
目的地に到着する。それまでの間、琢磨呂は朝の頭からピクリとも動かなかった。
- 朝
- 「つ、ついた……」
- 琢磨呂
- 「動機がどうあるのかなぞ、聞きたくない……貴様がやっ
たことは、俺への宣戦布告行為だ……貴様がどう思っていようとな……」
- 朝
- 「ちょっと話させてくれへんか?」
- 琢磨呂
- 「聞きたくないと言ったはずだ」
- 朝
- 「……(くそう)」
- 琢磨呂
- 「以後、気をつけろ……わかったな (薬物投与で眠ってい
る竜胆を抱きかかて車外に出る)」
その後、目が覚めた竜胆から事情を聞き、そのあまりの内容に怒り頂点に達した岩沙は、ボタンを押した。ほぼ同時に、家に帰る途中であった朝の車輌が爆破炎上、奇麗に消え去ってしまった。帰り際に運転席の下に琢磨呂が仕掛けた爆弾によって……
- 琢磨呂
- 「また友達を一人消してしまった……」
- 琢磨呂
- 「(目が覚める) うおおおおおおおおおおおおおおおおお
おおおおおお! ゆ、夢だったのか? いやにリアルな (朝に電話かける)」
- 朝
- 「おう。琢磨呂君やないか。どないしてん?」
- 琢磨呂
- 「ハァ……生きてたか……いや、なんでもないっす。じゃ」
- 朝
- 「(ツーッ、ツーッ) 変な琢磨呂君やな」
- 琢磨呂
- 「……し、しかしリアルな夢だったな……でも、姐さんの
ことリンなんて読んじゃって……(-.-;)デヘ」
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