エピソード94『美樹、帰還(?)』


目次


エピソード94『美樹、帰還(?)』

出演

狭淵美樹(さぶち・みき)
活字中毒者
岩沙琢磨呂(いわさ・たくまろ)
サバゲの達人
豊秋竜胆(とよあき・りんどう)
エーテル使い
片山慎也(かたやま・しんや)
夢幻術士
長瀬顕(ながせ・けん)
弾き通のシスオペ
酒井三彦(さかい・さぶひこ)
カタブツ高校生
久永涼介(ひさなが・りょうすけ)
サイキック
浅井素子(あさい・もとこ)
白魔術師
士堂彼方(しどう・かなた)
機械人形
日阪朝(ひざか・はじめ)
幻術家
湊川観楠(みなとがわ・かなみ)
ベーカリー楠店長

お久しぶり

ある日のベーカリー楠。午前中。
 珍しく常連は一人もおらず、珍しくどこも壊れていない(^^;
 唐突に大きな黒いスポーツバッグを肩に背負った美樹が現れる。

美樹
「あぁ、店長、お久しぶりです」
観楠
「あれ? 美樹さん、どうしてたんですか? 最近見ませ んでしたけど」
美樹
「店の前だけど、自転車おいといて大丈夫かな? あ、浅 井さん、コーヒー一杯お願いします」

喫茶店の方に入って腰を下ろす美樹。

美樹
「どっこらせーの」

やたらと重そうな黒いスポーツバッグを床に下ろす。
 素子がコーヒーを入れて持ってくる。コーヒーを飲んで一息。

美樹
「いやぁ、ちょっと、北海道まで行って来まして」
観楠
「……旅行していたんですか。ところでその荷物は?」
美樹
「旅行中に買った本です。他の荷物は自転車にくくりつけ ておいて良いんですが、本は濡れると困りますから。これ、ここの皆さんへのお土産です (そう言いながら、中から紙袋を出す) 山分け用のメモがついていますから、皆さんで分けて下さい」
観楠
「あ、すいませんね、わざわざ」
美樹
「いや、一息ついたら、京都の方に廻って、実家に一回、 顔出さなきゃなんないんです。まぁ、一週間ぐらいしたらまた顔だしますし」
観楠
「??」
美樹
「自転車で行ってきたんですよ。で、今からあと富山まで 自転車で一往復するって事です」

カップの残りのコーヒーを飲み干して、立ち上がる。

美樹
「あ、今日中に、京都の用事済ます予定なんで、これで」

コーヒー代をテーブルの上に置いて、店を出る美樹。
 そのまま、バッグを自転車の後ろの荷台にくくりつけて立ち去る。
 思わず、扉の外まで見送ってしまった観楠と素子の視界にはよたよたと小さくなっていく荷物満載のママチャリが映っているのであった。

昼下がりのベーカリー楠

いつもの面子が集って、美樹からの土産物を分配している。
 〜〜 美樹の土産物指定メモより 〜〜

てきとーに分けてくれればいいもの
北海道ラズベリークッキー
ホワイトチョコレート詰め合わせ
三陸名物「鴎の卵」
店長へ
 「児童心理学者の勧める絵本リスト」
かなみちゃんへ
 くまさんのえのついた、としょけん。
酒井さんへ
 論文コピー「現存する火縄銃とその保存と手入れ」
日阪さんへ
 鎌倉八幡宮の夫婦円満のお守り。
高村さんへ
 恐山イタコ全氏名住所リスト。
出雲さんへ
 「海が見える国道」全リスト。
更毬さんへ
 三陸海岸から発進する謎のロボットのキーホルダー。
シスオペさんへ
 正体不明のLSI。
植木さんへ
 20年前のクレイジーキャッツのコンサート入場券。残念 ながら半券は無し)
片山さんへ
 のみの市で入手した旧海軍の10センチ砲弾
久永さんへ
 論文コピー「空中浮遊術とその変遷」
浅井さんへ
 論文コピー「現存する35種類の惚れ薬とその調合法」
豊秋さんへ
 国会図書館より「異界転生譚リスト」
論文コピー「現代の豊胸術とその危険性」
岩沙さんへ
 在日米軍F-16パイロットの使用していたニーボード
士堂君へ
 正体不明のオブジェのキーホルダー(ニセコで入手)

いずれも稚内までの過程で入手したものです(^^;

「土産わけるんはえーけどな、この狭いところで……どな いやっちゅうねん。おこるでぃしかしぃ!(笑)」
観楠
「狭いんじゃなくて、人数が多すぎるだけだろーが」
竜胆
「岩沙、あんた外に出てなさいよ」
琢磨呂
「この寒いのにか? じょぉだんじゃないぜ。まぁ、なん だ。狭い喫茶にこの人数が入っていられるのも、姐さんによるところが大きいよな」
竜胆
「なんであたし?」
琢磨呂
「その『ない(ス)ばでぃ』に感謝だ!(笑)」
竜胆
「……今すぐ冥土が見たいようね(むきー!)」
涼介
「まただよ……(呆)」
三郎
「もう、常套句と化しとるな。あ、事務所借りるとか?」
素子
「前にダメって言ったでしょ」
慎也
「とりあえず大きい荷物はそっちへ回して」
「個人的な物だけ分配しよう。その方が良いと思うに1票」
三彦
「お主……いたのか(汗)」
「失礼な(笑)」
彼方
「個人配布の物は小物の様ですし。お菓子などはあとで出 してもらいましょう」
大輔
「じゃ、店長さん。お願いしますねぇ(笑)」
観楠
「ほいきた。チョコをちょこっとお皿にわけてぇ〜、クッ キーくっきり同じ数ぅ〜(鼻歌まじりで奥に消える)」
一同
「……(絶句)」
文雄
「いっそ封印するかな」
「わけてからでも遅ないやろ。で、誰がなに?」
三彦
「メモがここにありますが」
琢磨呂
「まぁ待て、 普通にわけたんじゃ面白くない。 ここは一 つ……ゲームをするぞ」
慎也
「なにすんの?」
三郎
「まさか土産争奪インドアサバゲとか言わんだろーな(笑)」
琢磨呂
「違う! 数々の土産物を見てだな、誰にどの物が配分さ れるか全員で予想するのだ」
竜胆
「じゃまくさいわねぇ」
琢磨呂
「全員の予想を集約した結果で配分を決めるとしよう。で は、用紙を……ないな。素子、紙と鉛筆を人数分だ」
素子
「そんなことしなくても、メモ見てわければ速いのに…… いいわ、まってて(事務所に行く)」
観楠
「みなさんお待たせ、お茶が入りましたよ……あれ、素子 ちゃんは?」
琢磨呂
「事務所。すぐ戻ってくる」

(しばらくして)

琢磨呂
「よし、結果を発表するぞ。まず、一番多かったのはこれ だ。 『児童心理学者の勧める絵本』は、 満場一致でてんちょーに」
観楠
「満場一致……あぅ(汗)」
「お前以外に誰がおるねん(笑)」
琢磨呂
「つぎに多かったのが……『異界転生譚リスト』と『現代 の豊胸術とその危険性』。特に重要なのはこの2冊目!
これはもぉ絶対だな(笑)」
慎也
「りん姉しか……(笑)」
竜胆
「言ってなさい(ふん)」
 
 と、いうように。わかりやすい物はすぐわけられた。
涼介
「なんで空中浮遊の論文が?(汗)」
文雄
「うむ。もっと研鑽を積むように、とのことだな。私のこ れは非常に有り難いぞ」
大輔
「海が見える国道リスト……ロケでも行けってことかなぁ。 あ! 亜紀さんから逃げるのに役立つかも……」
素子
「……惚れ薬の調合法……」
竜胆
「使ってみたら?(耳打ち)」
素子
「え! や、やだ、そんな……(ぼふっ)」
「……(汗)」
観楠
「はよ、身ぃ固めぇ。言うことやな(笑)」
三郎
「あと、残ったのは……なんか同じようなやつばっかりや な(笑)」
観楠
「琢磨呂君と三彦君と慎也君と顕君……それに更毬さん士 堂君か。誰がもらっても違和感無いねぇ(笑)」
「で、結果は?」
琢磨呂
「(うーむ……このやまとな資料の数々…… 三彦達にゃぁ もったいねぇぜ)」
三彦
「結果は、と訊いている」
琢磨呂
「あ?  あぁ、結果ね。まず、このキーホルダーだけど。 まりまりさんと、士堂さんだ」
竜胆
「更ちゃんは……この、謎のオブジェのヤツよね(笑)」
琢磨呂
「こっちの特撮っぽいのは士堂さん」
彼方
「やぁ、これは有り難いです」
琢磨呂
「で、LSIは俺。ニーボードは俺。砲弾は俺。 火縄銃のレ ポートも俺のものっ!」
慎也
「待ったれや!」
「……ウソはよく無いぞ」
三彦
「貴様……それでも帝國軍人か!」
竜胆
「ちょっと、集計結果見せなさいよ!」
琢磨呂
「君たち……俺が信用できないって言うのか?」
三・慎・顕
「まったくその通りだ!」
竜胆
「岩沙……あんた、いくらんでもセコイわよ」
涼介
「そうだよ。全部、岩沙君て書いた覚えないし」
素子
「その弾って……片山君じゃないの?」
観楠
「火縄銃の話は三彦君だと思ったんだけどな」
「戦闘機乗りの部品は君やろ」
彼方
「消去法で、LSIは長瀬さんということになりますね」
竜胆
「さぁ、証拠はあがってるのよ!  お姉さんに正〜直に言っ てごらん?」
琢磨呂
「う……」

(その後、ベーカリー内で小爆発、白煙が上がる。毎度のごとく、通行人達は気にもしない)



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