エピソード95『美樹と麻樹』


目次


エピソード95『美樹と麻樹』

まえがき

1995年8月、ふと無連絡で4ヶ月もの自転車旅行に出ているうちに、いつの間にか親によって休学届けが出されていた狭淵美樹は、その間は行方不明とされていた。
 その後、京都の下宿に戻らずに富山の実家にて、ゴロゴロしながら休学を解くタイミングを見計らっている。
 妹の麻樹は、この休学に怒り狂っている。

本編

正月三日。美樹の実家。美樹は書斎にて寝そべって読書中。

美樹
「うーむ。やはり、この人物は実在なのか。とすると、こ こまではこの作者は完全に歴史的事実に基づいている、と。
とするとこっちはどうなんだろう、いったい」

起き上がって書棚の方へ向かおうとする。電話が鳴る。

狭淵家の電話
「電話だよ! 電話だよ! 電話だよ! 電話だよ!
電話だよ! 電話だよ! 電話だよ! 電話だよ!
電話だよ! 電話だよ! 電話だよ! 電話だよ!」

これが呼び出し音である。美樹は引き返して受話器を取る。

美樹
「はいもしもし」
向こう側
「もしもしもし」
美樹
「もしもしもしもし」
向こう側
「もしもしもしもしもし」
美樹
「もしもしもしもしもしもし」
向こう側
「もしもしもしもしもしもしもし」
美樹
「もしもしもしもしもしもしもしもし」
向こう側
「もしもしもしもしもしもしもしもしもし」
美樹
「もしもしもしもしもしもしもしもしもしもし」
向こう側
「もしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもし」
美樹
「もしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもし
指を折って数えている)」
向こう側
「もしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしも しもし」
美樹
「む。一回多かったな。そちらの負けですね。うーむ」
向こう側
「くぅ。負けた……で、美樹だな」
美樹
「と言うことは麻樹か」
麻樹
「そうだが」
美樹
「いまどこだ?」
麻樹
「いま、公衆電話があるところに降りてきた」
美樹
「山頂から初日の出でも拝んでたのか?」
麻樹
「いや、雪が降っていて駄目だった」
美樹
「そうか。いまから戻ってくるのか?」
麻樹
「さすがに一回は戻らんとまずいだろう」
美樹
「まぁ、そうだな」
麻樹
「多分夕方の6時半の列車で富山駅に着く」
美樹
「そうか」
麻樹
「迎えに来るように。自動車で」
美樹
「うむむ。判った」
麻樹
「あ、後で色々と話がある」
美樹
「着いてからにしないか(汗)」
麻樹
「うむ。着いてからな。ゆっっくりと」
美樹
「うむ。じゃぁ、富山駅で」
麻樹
「では」

切れる電話。一つ溜息をつく美樹。天井をしばし睨んだ後に一言。

美樹
「ま、いっか」



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