エピソード107『観楠、不動産選定す』

目次

• エピソード107『観楠、不動産選定す』

エピソード107『観楠、不動産選定す』

観楠

「えっ、ここが……一千万?!」

不動産屋

「はい、そうでございます……ここは当社の誇る最良物件、 これ以上の御値打ち品はちょっと他社には見当たりませんよ、当社だけ！」

観楠

「うーん……本当にすごいなぁ……」

不動産屋

「建坪50越え駅歩２分でこの御値段。こういう良い物件は すぐ売れてしまいますよ……あ、こちら契約書のほうになっております」

観楠

「うーん、悪くはないんだけど……」

不動産屋

「何を御迷いですか。駅に近くて南向き、おまけに前は大 通り。店舗を持つにはこれ以上に良い所はありませんよ！
これがたったの一千万円なんて当社だけ！」

観楠

「ちょっと中見せてもらえる？」

不動産屋

「はいはい、どうぞどうぞ」

観楠

「へぇ、内装も結構いい材料使ってるじゃない」

不動産屋

「もちろん、当社だけですよ！」

観楠

「ドアの作りも……しっかり……してい……むむむ……
……押しても開かないよこのドア」

不動産屋

「いえ、それが最高だとおっしゃるお客様もいらっしゃる んですよ！」

観楠

「そ、そうですか……」

不動産屋

「ではこちらのドアから御入り下さい、奥のほうが調理場 になっております」

観楠

「へぇ、よくまとまってるね」

不動産屋

「これが当社が誇るシステムキッチンですよ」

観楠

「うーん、ガス管がこれで、水道がこれで……湯沸かし器 は無いけど外かな」

不動産屋

「はい、ボイラーは１基野外にございます」

観楠

「あ、ちゃんとお湯出るじゃない」

不動産屋

「もちろん、当社だけですよ」

観楠

「うーん、これが一千万円とはほんとに安い。
……どうしようかな……」

#そんなところに店を開いたもんだから……。