それはある日常的な光景だった。剽夜と竜胆はこたつに入りながらエヴァの15話を見ていた。見終ると、剽夜は竜胆に向き直ってこう言った。
- 剽夜
- 「ねぇ、あきりん。キスしよっか?」
- 竜胆
- 「えっ、なに?」
- 剽夜
- 「キスよ、キス。聞こえなかった?」
- 竜胆
- 「えっ、どうして?」
- 剽夜
- 「退屈だから」
- 竜胆
- 「えっ、キスってそんなぁ……」
- 剽夜
- 「金魚の命日に男の子とキスするのイヤ? 天国から見て
るかもしれないからって」
- 竜胆
- 「べつに」
- 剽夜
- 「それとも怖い?」
- 竜胆
- 「うん、だって、更ちゃん、アスカはいってるもん(^_^;」
- 剽夜
- 「気にしない、大丈夫。息止めたりはしないから……。そ
れとも私の事嫌い?」
- 竜胆
- 「そんなことはないけど……」
- 剽夜
- 「じゃぁ、しよう」
剽夜は身を乗り出すと、竜胆の顔の前で、いったん顔を止めてからおもむろに唇を奪う……しばらくして、二人の影は離れた。
- 剽夜
- 『むぅ、なかなかいいデータだ』
- 竜胆
- (ぼ〜っ)
剽夜はそう心の中で呟くと、レポートをまとめだした。しばらくすると、まとめ終わって、鞄にしまう。
- 剽夜
- 「さぁ、まとめ終わったし、ひたるか……」
- 竜胆
- (頭真っ白)
- 剽夜
- 「……これでいい夢が見れそうだ。あきりんもそんなとこ
ろで、ぼ〜っとしてると風邪ひくぞ。じゃぁ、おやすみっ」
剽夜はそう言うと、こたつにごそごそと潜って、1分もたたずに睡眠に入った。そして竜胆は次の日学校に来なかった……。
翌々日。竜胆の友人二人が、竜胆の家を訪れていた。
- 友人1
- 「(ぴんぽ〜ん)出て来ないね」
- 友人2
- 「寝てんのかナ? じゃ、勝手に入ろっか」
- 友人1
- 「どーやって?」
- 友人2
- 「ここに鍵があるんだよ。ほら」
- 友人1
- 「なんで持ってんの?(汗) もしかして、そーゆー関係?
だったら、あたしはお邪魔かな……」
- 友人2
- 「豊秋だってあたしン家の鍵持ってるわよ? おんなじ下
宿生同士だから、なんかあった時の為にって」
- 友人1
- 「あ、そゆこと。じゃ、安心したわぁ」
- 友人2
- 「(がちゃがちゃ)豊秋ぃ、元気ぃ?」
- 友人1
- 「チョコパイとケーキ持って来たよ……アレ?」
- 友人2
- 「いないの? じゃ、上がってよっか」
- 友人1
- 「……それって結構問題あるんじゃ?」
- 友人2
- 「いつものことだから、遠慮しなくていいよ。豊秋だって、
あたしン家来る時はそうしてるしね……」
- 友人1
- 「(やっぱりこいつら妖しい……)」
- 友人1
- 「さって、ゲームでもしよっかな? 豊秋っていっぱい持っ
てるから、結構遊べるのよね……」
- 友人2
- 「にしても……豊秋どこに行ったんだろ? ちょっと探し
てみるわ」
- 友人1
- 「あ、ドラクエがある。やってみよ……」
- 友人2
- 「豊秋? 寝床かな……いないなぁ。もしもし?(トイレ
をノック)いないなぁ。お風呂かな……(ガチャ)」
- 竜胆
- 「(ぶくぶくぶく)」
- 友人2
- 「と、豊秋! あんた何やってんの?」
- 竜胆
- 「アレ? 来てたの……見てのとーり、お風呂入ってンの」
- 友人2
- 「……どー見ても溺れてるよーだったんだけど?」
- 竜胆
- 「気のせいだって……(ぶくぶくぶく)」
- 友人2
- 「絶対気のせいじゃない! ほら、早く出なさい! あ、
あちちっ(汗)」
- 竜胆
- 「あ〜、熱いから気を付けてねぇ(ぶくぶくぶく)」
- 友人2
- 「ん〜、何バカやってんのよ! ほら、お湯抜くわよ?
さっさと出なさい!」
- 竜胆
- 「ん〜」
- 友人1
- 「あ、竜胆、お邪魔してまーす」
- 友人2
- 「まったく。豊秋ってば、もうちょっとでお風呂で溺れ死
ぬところだったんだから……」
- 竜胆
- 「(服を着ながら)単にお湯に顔付けてただけだって……」
- 友人2
- 「まったく、顔見せないからって心配して来たら、何やっ
てんだか。あんたバカ?」
- 竜胆
- 「バカかもしれない……」
- 友人2
- 「まったく、ぼけてンのはいつものことだけど、今日は一
段とひどいわね。なんかあったの?」
- 友人1
- 「相談に乗るわよ……あん、ザキくらった」
- 竜胆
- 「ん〜、そんなにぼーっとしてる?」
- 友人1&2
- 「うん」
- 竜胆
- 「そっか……やっぱり、ヘンかなぁ」
- 友人1
- 「彼氏となんかあったの?」
- 友人2
- 「急に押し倒されたとか」
- 友人1
- 「それはちょっと飛躍し過ぎじゃない?(汗)」
- 友人2
- 「やっぱり? でも、彼氏となんかあったのは確実ね」
- 友人1
- 「えぇっ、じゃあついに……」
- 友人2
- 「たぶん、十中八九間違いないわねっ」
- 友人1&2
- 「で? 結局のところ、どーなの?」
- 竜胆
- 「えっと……キスされた」
- 友人1&2
- 「それでそれで?」
- 竜胆
- 「……それだけ……だと思う」
- 友人1
- 「何よ、ソレ。覚えてないの?」
- 竜胆
- 「うん……昨日一日どうしてたか、記憶ないし……」
- 友人2
- 「まさか、それだけで終わったとか……」
- 竜胆
- 「覚えてないの……」
- 友人1
- 「……豊秋って、割と免疫ないのね」
- 友人2
- 「……意外よねぇ。『り@ん』とか『なか@し』レベルよ
ね」
- 友人1
- 「あんた、レディースコミックの読みすぎなんじゃない?」
- 友人2
- 「なに言ってンのよ、失礼ねぇ! あんたバカ?」
- 友人1
- 「(図星か……)」
- 竜胆
- 「(ぼ〜っ)」
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