エピソード110『BIRTHDAY PRESENT』


目次


エピソード110『BIRTHDAY PRESENT』

出演

豊秋竜胆
エーテル使い。
更毬剽夜
理論魔術師。
更毬朱美
剽夜の従姉妹。符術師。

なかよし

竜胆
「あはははは……ビィと仲いいのね」
剽夜
「どこがそう見えるんだ」
ビィ
「あぎゃっ!(ぷいっ)」
竜胆
「じゃ、お風呂入ってくるからぁ」
剽夜
「おう、入ってくるがいいぞ。私はビィをいじめて遊んで いるから。うりうり」
ビィ
「あぎぃぃぃ(T_T)」
竜胆
「ん。ビィ? 嫌だったら電撃していいからね」
剽夜
「そんなことをしたら、この部屋の電化製品が全部駄目に なるような気がするのだが」
竜胆
「……やっぱ、駄目。ビィ、がまんしてなさい」
ビィ
「あ、あぎぃぃ(汗)」

事前工作

剽夜
「さて、あきりんが風呂に入ってるうちに、電話しておく か……(ぴぽぱ)。あ、おかあさん?」
朱美
「ぶぶー。違うよ。剽にいちゃん」
剽夜
「あ、朱美か。どうしたんだ? なぜ私の家にいるのだ?」
朱美
「剽にいちゃんこそ、どうして帰って来ないの? せっか く来たのに……」
剽夜
「すまんすまん。大事な用事があってな。そう、大事なん だ、とっても」
朱美
「どう大事なの?」
剽夜
「今日を逃すと、ときめき度が下がってしまうんだ!」
朱美
「? 要するに、彼女の誕生日かなんかなのね」
剽夜
「そういうことだ……彼女だとは言った覚えはないのだが」
朱美
「どう見ても彼女じゃないの(汗)。泊まり込んだりしてる し」
剽夜
「そうなのか……まあ、大事ではあるが」
朱美
「んで? 今日は帰らないって言っておけばいいのね」
剽夜
「そういうことだ……でわ」
朱美
「あ、もしかして、あれ、渡した?」
剽夜
「あれというと、アレだな」
朱美
「あたしが渡したアレ」
剽夜
「うむ。渡すつもりだ」
朱美
「頑張ってね。そのために、わざわざ指輪を選んだんだか ら」
剽夜
「そういうことだと思ってたぞ」
朱美
「さすがに見破られてるか……じゃね、お休み」
剽夜
「おやすみなのだ(がちゃ)」

風呂上がり

竜胆
「ふう、いい湯だった☆ 更ちゃんも入ったら?」
ビィ
「(がらっ)あぎっ☆(ざぶーん)」
竜胆
「……ごめん、ビィがあがるまで待ってね(汗)」
剽夜
「それは構わんがな。あきりん、話があるのだ、座ってく れないか」
竜胆
「ん? なに?(座る)」
剽夜
「これをあげよう。竜胆ちゃんは頑張ったから、先生から の御褒美だ」
竜胆
「わーい、せんせー、これ何?」
剽夜
「開けてみたまえ」
竜胆
「指輪だ……! 着けてみていい?」
剽夜
「ああ、着けてみてくれ」
竜胆
「よく号数わかったね……」
剽夜
「私は観察の結果は忘れんのだよ」
竜胆
「……嬉しい……」
剽夜
「それを着けてれば、無駄に体力を使う事もないだろう。 そういう風にしてもらったからな……私のいないところで、戦って倒れられたら困るからな……」
竜胆
「ん……」
剽夜
「あきりん……あきりんは、随分ときつい戦いを強いられ てるようだからな。少しでも、力になれればと思って、それをプレゼントすることになったわけだ。まあ、私がいない時は、それを私だと思って……くれ」
竜胆
「(抱きついて)ありがとう……」
剽夜
「……気にするな(腕を回そうとする)」
竜胆
「(ぱっと離れて)あ、そーだ。鉄拳しよ☆」
剽夜
「(がくっ)そ、そーだな、つきあうぞ(ちっ)」

過去を見つめて

しばし対戦。

竜胆
「あ〜、対戦したした☆ やっぱ、対戦しないと面白くな いからねえ、こーゆーのは」
剽夜
「そうだな……」
竜胆
「……ね、隣……座ってもいい?」
剽夜
「構わんが?」
竜胆
「い、いやあ、このこたつ、こたつって言っても、布団か けてないけど、 小さいから、隣に行ったら迷惑かなぁって(汗)」
剽夜
「狭いのは気にならんぞ(すすっ)」
竜胆
「(無言で座る)……いつだったっけ?」
剽夜
「なにが?」
竜胆
「更ちゃんがさ、こうやってあたしんチに入り浸る様になっ たのは」
剽夜
「……『天地無用!』のTVが始まってしばらくしてから じゃないか? 私の家ではビデオに録っておけんから、頼んだんだと思うぞ」
竜胆
「そーだったね。じゃ、その……あたしの、能力に気がつ いたのは?」
剽夜
「会って、しばらくしてからだな……会った当初は、変な 子だとしか思ってなかったからなあ……パン屋に入り浸るようになってからだったな。私も異能を持っていると教えたのは」
竜胆
「ほんと……ベーカリーに行く様になって、嬉しかった」
剽夜
「……自分だけじゃないって、わかったからか」
竜胆
「うん……前に住んでたところじゃ、そういう人、いなかっ たから……」
剽夜
「高校の頃か。仲間は見つかってなかったのか?」
竜胆
「……いたよ。今は、もういないけどね……」
剽夜
「みんな、別々の所に行ったのか……」
竜胆
「ううん……違う」
剽夜
「じゃあ、一体?」
竜胆
「みんな、心が……死んじゃったから、もう、いないの」
剽夜
「……」
竜胆
「あたしたちは、元は普通の人間だから、急に能力を身に 着けたりすると、負担がかかっちゃうの……だから、それに耐えられなかったんだと思う……」
剽夜
「よく、無事で済んだな」
竜胆
「無事じゃなかったわ。3ヶ月くらい、死んでたもの」
剽夜
「どういうことだ?」
竜胆
「あたし、時々、すごく変なことするでしょ? 急に高笑 いしたりするし」
剽夜
「それがあきりんだと思ってたんだが?」
竜胆
「正確には違うの。あれは、あたしの中の別人格がやって るの。高校の頃に、自分で作ったの。留守番をしてもらうために」
剽夜
「……体を守る為にか?」
竜胆
「それもあるけどね。肝心なのは、あたしの人格を守る為。 前世の記憶とか、能力の負荷とか、いろいろあって、あたし、壊れる寸前までいってたから……」
剽夜
「苦労、して来たんだな」
竜胆
「とてもそうは見えないんだけどね」
剽夜
「それがあきりんのいいところだろう? 苦労してても表 に出してないじゃないか」
竜胆
「気持ちの切り替えは早いのよ」
剽夜
「早すぎる気もするけどな……時々、嫌な事を思い出して、 落ち込んでる時があるだろう。一人でいる時なんか、特にそれが顕著だ」
竜胆
「一人でいるとね……どうしてもいろいろと考えごとする から……そうすると、どうしても嫌な事に考えがいっちゃうの……誰かといるときは、考えずに済むから、そんなことはないんだけど」
剽夜
「……私は、あきりんが落ち込んでいるのを見ているのは 嫌だからな」
竜胆
「ごめんなさい……」
剽夜
「どうして謝るんだ?」
竜胆
「だって、あたしが……」
剽夜
「性格の問題はどうしようもないと思うぞ。なんでも抱え こんでしまうのが悪いと思っているんだろう?」
竜胆
「うん……解決する力もないくせに、そうしちゃうから、 結局そのままため込んじゃって……悪循環よね」
剽夜
「私が手伝える事なら、手伝うぞ。それに、さっき、落ち 込んでるのが嫌だと言ったのは、別に責めるつもりはなかったんだ。できる限り、一緒にいてやろう、そう言いたかっただけなんだが……言葉が足りなかったな」
竜胆
「……! でも、更ちゃん忙しいのに……」
剽夜
「まあ、確かに忙しいな。しかし、あきりんの家にはどう しても来たい理由があるしな。別に苦にはならんぞ」
竜胆
「え……そ、その、来たい理由って……」
剽夜
「ネオジオだってプレステだってあるし、ビデオを録って おいてくれるしな(笑)。何より、急に泊めてくれと言っても断られたことがないし」
竜胆
「それは……(汗)」
剽夜
「通信だってできるし、風呂にも入れるし」
竜胆
「……」
剽夜
「次の日の用意さえ完璧なら、ここに来る事に何の問題も ないんだ、実は」
竜胆
「……ま、ギヴアンドテイクだから、いいけど」
剽夜
「そういうわけだ。ずいぶんと与えられてるような気もす るが、まあ気のせいだろう。そういうわけだ」
竜胆
「(くすっ)そういうわけなのね」
剽夜
「そういうわけなんだ。じゃあ、気を取り直して、対戦す るか。もう負けはしないぞ」
竜胆
「そう簡単には勝たせないよっ」

数時間後。剽夜は寝転がって対戦しているうちに寝ちゃっている(笑)

竜胆
「いつもごろ寝なんだから……(布団をかける)。風邪ひ いても知らないよ?」
剽夜
「(寝言)そんなことはないぞ」
竜胆
「……今日は、ありがとう、更ちゃん……」



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