エピソード113『夢で逢えたら』


目次


エピソード113『夢で逢えたら』

登場人物紹介

片山慎也(かたやま・しんや)
やまと(軍事マニア)で予知夢な高校生
水島緑(みずしま・みどり)
戦闘サイボーグな女子高校生
湊川観楠(みなとがわ・かなみ)
超パン屋でかなみちゃんのパパ
浅井素子(あさい・もとこ)
パン屋の看板娘な女子校生
片山摩人耶(かたやま・まりや)
慎也の妹ちゃん
角田美々(つぬだ・みみ)
物真似幻術師 緑の友達
謎の声
ときどきアレな女子大生(^^;)
豊秋竜胆(とよあき・りんどう)
ときどきアレな女子大生(^^;)
岩沙琢磨呂(いわさ・たくまろ)
やまと(軍事マニア)で女好きなやつ
酒井三彦(さかい・さぶひこ)
やまと(軍事マニア)で堅物なやつ
水島孝雄(みずしま・たかお)
緑のパパ アレ(狂的)な科学者

夢落ち

慎也
「まったく、今日はひどい目にあった……まさか崖から落 ちるなんてな……まったく、肘とか膝はいいとして、どうしてこんな太股のとこなんか破れるかなあ……(汗)。
恥ずかしいったらないな。いや〜んな感じ」
「あ、片山さん。こ、こんにちわ」
慎也
「あ、えーと。みどりさん、こんにちわ」
「な、なんか……凄い格好ですね……」
慎也
「え? あ、ああ、サバゲの帰りだからね(汗)」
「あ……破れてる」
慎也
「え? あ、ああ、ここか。転んで、引っ掛けてしまって」
「……あの……直してあげます……」
慎也
「え?(汗)」
「そんなところ、破れてたら……その、みっともないと思 うし……あたし、いつも、裁縫道具持ち歩いてますし」
慎也
「(しかし、道の真ん中だしなあ) き、気持ちだけでいい よ(汗)」
「そうですか……(悲しげ)」
慎也
「(う! 潤んだ瞳で……)」
謎の声
「慎也君? 女の子を泣かせたりすると、後が恐いわよぉ」
慎也
「はっ? 誰だ? 聞き覚えがあるけど……もしや、りん 姐さん?」
謎の声
「ち、違うわよ、ただの通りすがりのきゅーきょくびしょー じょてんせーせんしよっ(あたふた)」
慎也
「やっぱり。りん姐さんだな(嘆息)」
謎の声
「違うったら! と・に・か・く。緑ちゃんの好意を素直 に受け取るのよっ。でないと、どーなるか……」
慎也
「はいはい。わかりました(汗)」
謎の声
「よーし。でわ、さらばだっ」
慎也
「ふう。まったく(汗)」
「……どうかしたんですか?」
慎也
「え? な、なんでもないよ(汗)。それより……せっかく だから、お願い出来るかな?」
「! よ、喜んで……」
慎也
「(しかし、誰かに見られたりしたら、いや〜んな感じだ な……)」
「(縫い縫い)……で、できました……」
慎也
「ありがとう、みどりさん(にこっ)」
「え……そんな、あたしが勝手言ったんですから」
慎也
「いや、ありがとう……って、ん? 朝か……むー。もし や、夢ってやつなのか……」
摩人耶
「(ドアごし)慎也ぁ。ご飯ー」
慎也
「お、おう」

早朝の水島家

「ん……ふわああああ。よく寝たぁ……」
孝雄
「目が覚めたか、緑!(がちゃっ)」
「(有無を言わさず鉄拳)入って来ないで!」
孝雄
「もがっ。す、すまん緑……」
「まったくもう! 娘の着替えをのぞくなんて最低!」
孝雄
「どうせ製作段階から見られてるんだからいいじゃないか」
「ゴースト(*1)がある今は違うのっ」
*1
緑のようなサイボーグにおいて、機械の身体だけの状態を指して :『ゴーストが無い』、その機械の身体に脳が埋めこまれ、機械で作 :られた"人間のからだ"として機能する状態を『ゴーストが入った』 :と言う。

朝食中の水島家

「パパ。今日は遅くなるから、ご飯、出前取るなりしてね」
孝雄
「な、なに? そーか。ついに緑も……うひゃひゃひゃ。 今度連れて来るんだぞ。お揃いにしてやるから(ぼかっ)もがっ」
「しなくていいの。今日は美々ちゃんとベーカリーに寄る だけなんだから」
孝雄
「そーかそーか。美々ちゃんもサイボーグに……もがっ」
「しなくていいって言ってるでしょっ」

放課後の緑と美々

美々
「じゃあ、ベーカリーいこか? 朝ちゃんいてるかなぁ」
「きっと……いますよ(にこ)」
美々
「そやね。常連やしぃ。にしても。なんか、緑ちゃん嬉し そうやね」
「え? そうですか?(にこにこ)」
美々
「なんかベーカリー行くの、楽しみにしてるみたいやし。 なんかあったん?」
「え……な、何もないですよ(にこ)」
美々
「緑ちゃん、いつも笑ってるし。正直に言うてみ?」
「な、何でもないですって(とん)」
美々
「わあっ! み、緑ちゃんバカ力やね(汗)」
「ごめんなさい、大丈夫ですか?」
美々
「うん、大丈夫。なかなかツッコミ強烈やね。いいもん持っ てるわ」
「それほどでもないですよ(にこ)」
美々
「……今度、二人で漫才やろか」
「いいですねぇ(にこ)」

ベーカリーでは

慎也
「う〜ん(考え込んでいる)」
琢磨呂
「どうした、シン? さては、誰か気になるヤツでもいる んだな?」
三彦
「作戦会議中にたるんどる!」
慎也
「別にそんなんじゃなくて。変な夢を見たから、アレかな あって考えてただけだ」
琢磨呂
「ふむふむ。つまり、変な夢の中に女が出て来たから、現 実で会えるといいなとか考えてたのか」
三彦
「なんだとぉ! 修正してやるっ」
慎也
「だから、そんなんじゃなくてだな(汗)」
琢磨呂
「隠さんでもいいぞ。やばくなったら相談にのってやるか らな」
慎也
「……聞いちゃいねえ」

からんころん

美々
「こんちわぁ。朝ちゃんいてますぅ?」
観楠
「いらっしゃい。朝は今日は来てないよ……あ、緑ちゃん も一緒? いらっしゃい」
「こ、こんにちわ……」
美々
「緑ちゃん、なんでココ来ると、無口になンの?」
「え……その、人が……たくさんいますから……」
美々
「割と人見知りするたちなんやね」
「自分でも……治したいんですけど……」
美々
「ま。気長にやろ? だんだん馴染んで来たら、もっとしゃ べれるようになるって」
「は、はい」
琢磨呂
「ん? 朝さんのおっかけの美々ちゃんと、怪力の緑ちゃ んが来たぞ。ん? どーした、シン」
慎也
「え、なんでもないって」
琢磨呂
「うそつけぇ! 今一瞬の反応、見逃さんぞ!」
慎也
「せやから、なんでもないって言ってるやろ」
琢磨呂
「しらばっくれるかぁ」
慎也
「しらばっくれとらへんって(汗)」
三彦
「まったく……戦友を謀るとは、軍法会議ものだ」
慎也
「なんでや(汗)」
「あ……」
美々
「ん? どーしたん?」
「え、な、なんでもないですよ(汗)」
美々
「……あやしいわぁ」
「そ、そんなんじゃないですって」
美々
「まだ何も言うてへんよ? 何がそんなんじゃないん?」
「え……」
美々
「ま、話はあっちでしよ。ココ立っとっても、営業の邪魔 やし」
「(ふえ〜ん。美々ちゃんって、カンがいいのかなぁ)」
慎也
「(まったく。夢見たその日に、顔合わせるとは……予知 夢やったんか?)」
琢磨呂
「で、どっちだ?(小声)」
慎也
「何が?」
琢磨呂
「見たところ、美々ちゃんは朝さん一筋って感じだからな あ。緑ちゃんか」
慎也
「何がや!(汗)」
三彦
「……上官の問には素直に答えろ」
慎也
「だー! こんな時だけぇ!」
琢磨呂
「安心しろって。男の約束で、言いふらしたりしないから」
慎也
「見返りは? アオダマでロシアンティーか?」
琢磨呂
「そのとおりだ。で? どっちだ?」
慎也
「そんなんやないって、言うてるやろ。……夢、見たんや」
琢磨呂
「予知夢ってやつ?」
慎也
「たぶん」
琢磨呂
「……どっちかって聞いてんのに、答えてないぞ!」
三彦
「まったくだ。上官の問には素直に答えろ。帝國軍人なら な」
慎也
「……しゃあないなぁ。……緑ちゃんの方や」
琢磨呂
「そーかそーか。賢明な選択だと思うぞ。祝砲はいつがい い?」
慎也
「いらんわ(汗)」
美々
「で。何がそんなんちゃうん?(興味しんしん)」
「ですから……いわなきゃだめですか?」
美々
「ここまで来たら、気になるやん。夜寝れへんかったら、 どうしてくれんの?(笑)」
「それは困りますね……」
美々
「や・か・ら。ね。教えて?」
「(赤面)……恥ずかしいですから」
美々
「じれったいなぁ……耳打ちでいいから、ゆってよ」
「今朝……慎也さんの……夢を見たんです……(ごにょご にょ)」
美々
「なるほど。それで、ベーカリーで会ったから、気になる とゆうわけやね」
「(赤面)はい……(うつむく)」
美々
「(萌えるシチュエーションや!)なるほどなるほど。そー ゆーわけかぁ」
「……美々ちゃん……あんまり……大きな声で……」
美々
「あ、ごめん。……緑ちゃん。相談、いつでも乗ったるか らね」

その頃吹利駅前

素子
「さって、バイトバイトぉ☆ 今日も頑張るかぁ……って、 でも、まだ時間があったりする……どうしようかなぁ。
1。ゲーセンで一回やってく。
2。早く行って時間を待つ……」

ふと、目に入る改装オープンの文字。

素子
「やっぱ、一回やってこ☆」
素子
「ここって……前は対戦格闘ばっかりだったけど……フラ イトシムとか、大型がいっぱいあるなあ。酒井とか、岩沙が泣いて喜びそう」
竜胆
「あれ、モコちゃん☆ 来てたの?」
素子
「りん姉さん! ここでバイトしてたんですか?」
竜胆
「うん。知らなかったっけ」
素子
「全然。それで……格闘ものはどこに?」
竜胆
「二階に全部いっちゃったよ。やっぱ、これからはゲーセ ンも綺麗にして、女の子でも平気で入れるようにしないと駄目なんだって」
素子
「綺麗になったのはいいですよね。んじゃ、ちょっとやっ てきます」
竜胆
「グッド・ラック!(親指を立てる)」
素子
「……(汗)」
竜胆
「あ、あたしだって、好きでやってるんじゃないんだから ね(汗)。マニュアルにそう書いてあるんだから(汗)」
素子
「誰が書いたんですか、そのマニュアル」
竜胆
「さあ?」

再びベーカリー楠

琢磨呂
「(……やはりここは……)おい、サブ! 駅前のゲーセン、 知ってるか」
三彦
「いや、知らん」
琢磨呂
「改装してな、大型がたくさん入ったらしい。フライトシ ムもあるらしいぞ」
三彦
「なに! それは行かねば。帝國軍人として」
琢磨呂
「よっしゃ。行こうぜ。しかし、ギャラリーがいないのは 辛いな。美々ちゃんも来る?」
美々
「ええよ。行くわ(立ち上がる)」
「あ……(立ち上がろうとする)」
美々
「(小声)緑ちゃんはここにおってな。すぐ戻って来るから」
慎也
「おい、お前ら……」
琢磨呂
「おれ達が突っ込むから、シンはバックアップで待機!」
三彦
「上官命令だぞ」
慎也
「……ワーレンはともかく、なんでお前まで」
三彦
「知らん」
琢磨呂
「んじゃ、行って来るぜ」
美々
「緑ちゃん、先帰ったら怒るでぇ」
「そんな……」
慎也
「どぉせぇっちゅうねん」

琢磨呂たちは出て行っちゃった。
 後に残る慎也と緑。そして観楠。

「(ど、どうしよう……)」
慎也
「(何から話せちゅうんやぁ)」
観楠
「……さって、仕事仕事(奥に消える)」
「……」
慎也
「……あ〜。緑ちゃん?」
「(どきーん)は、はいっ」
慎也
「なんか……変な事になったけど……」
「そ、そうですね……」
慎也
「緑ちゃんってさ。最近越してきたんやった?」
「は、はい……そうです」
慎也
「こっちには、もう慣れた? ネットやと、結構書き込ん でるけど」
「は、はい……あの……ネットだと、なんか、緊張……し ないで済みますので……」
慎也
「そんな、緊張せんでええよ。気楽に行こ?」
「は、はい……」
観楠
「(……はっ、いかんいかん。のぞき見てるなんてよくな い! それにしても……間が……素子ちゃん、はやく来てくれぇ)」

ゲーセンに待避

ところかわってゲーセン。

琢磨呂
「ここだ、サブよ。オレ達の新たなる空は!」
三彦
「うむ」
美々
「ところでさぁ。緑ちゃんたち、うまくやっとるかなぁ」
琢磨呂
「シンについては心配ないぞ」
三彦
「うむ」
素子
「え〜い! えいっえいっ」
竜胆
「モコちゃん、うまいのねぇ」
素子
「結構、やってますからね☆」
琢磨呂
「とりゃあ! 木の葉返しィ!」
三彦
「うぬ、ちょこざいな!」
美々
「凄いン? それ」
琢磨呂
「そりゃねぇぜ(汗)」
素子
「(階段を下りながら)りん姉さんはヴァンパイアハンター やらないんですか?」
竜胆
「バーチャ2で手一杯なのよ……レイレイがもうちょっと 強かったら、ハンターもやりこむんだけどね」
素子
「やりこんでるじゃないですか……うにゅ? 酒井? 何 してんの?」
酒井
「作戦行動中に私用無線を入れるな!」
竜胆
「ま、糸電話でもない限り、無線よね」
素子
「それはちょっと違うのでわ(汗)」
竜胆
「だって、線ないじゃない。無線よ、無線」
素子
「(汗)」
琢磨呂
「おりゃあ、後ろ取ったぞ!」
酒井
「くっ……不覚!」
琢磨呂
「姐さんよ、オレの華麗な飛行、見てたか?」
竜胆
「はえ? 見てないよ」
琢磨呂
「じゃあ、今から見せてやらぁ! サブ! もういっちょ だ!」
三彦
「よかろう」

再び空に旅立つ二人。

素子
「あ〜あ、入り込んじゃってる」
竜胆
「ところで、モコちゃん。バイトはいいの?」
素子
「あ。そろそろ行かなくっちゃ……」
美々
「! お姉さん、お姉さん。今は少し……」
素子
「ふみ? なんかあるの?」
美々
「ええ、あるんですよぉ」
竜胆
「だったら、なおさら行かなくちゃ。ベーカリーの平和は モコちゃんが守るのよっ!」
素子
「(ノる)そーとも、あたしがやらねば誰がやるっ! 浅井、 いきま〜す!」
美々
「あっ、お姉さんお姉さん! 行ってしもた……。今行っ ても困るだけやのにぃ……」
竜胆
「何があるの?」
美々
「あ〜、え〜と、その〜、アレなんですよ、お姉さん」
竜胆
「アレって? そーいや、美々ちゃん一人って珍しいわね。 いつもは朝さんか緑ちゃんと一緒にいるのに」
美々
「え、まあ、そーゆーこともありますって」
竜胆
「だいたい、美々ちゃんが岩沙たちとつるんでること自体 妖しい……」
美々
「な、なんでもないですってぇ(汗)」
竜胆
「わかった! いや、違うわねぇ……もしかして……いや、 それはないわねぇ(ぶつぶつ)」
美々
「(汗) それじゃ、あたしこの辺で」
竜胆
「あ、バイバイっ。しかし、気になるなぁ……」
美々
「お姉さんってカンがええンか悪いンかわからへん(汗)」

ベーカリー楠っ

素子
「浅井、入りまーす」
観楠
「あ、素子ちゃん。良く来てくれたよ……」
素子
「うにゃ? 何かあったんですか?」
観楠
「いや、雰囲気についていけなくて……(指差す)」
素子
「……片山と……緑ちゃん? ほーっ、へーっ、ふーん」
観楠
「あの雰囲気に、どう対処していいものかわからなくて…… いや、助かったよ」
素子
「え、じゃあ、店長どうしてたんですか?」
観楠
「え? いや、なるべく普通にしてたよ(汗)」
素子
「くすっ。じゃ、着替えてきますねっ」
観楠
「……見抜かれてるかなぁ」
その頃緑と慎也は……----------------------

慎也
「み、緑ちゃん、エアコンバットとかさ、やったことある? フライトシムっていうやつ」
「え、あ……ふ、フライトシミュレーターのことですか?」
慎也
(しめた!)「それそれ」
「ええ、私、女の子だけど、けっこうああいうゲーム好き なんですよ……あの、女の子がああいうゲームやるって……ヘンですか?」
慎也
(折れるほど激しく首を左右に振って)「ヘンじゃないって!」
「良かった(クスッ)」
慎也
(こ、この話題なら話が出来るかもしれないぞ!)
慎也
「緑ちゃん、気に入ってる機体はどんな奴?」
「え……やっぱり、あのF22とかF20とかのデザインと運動 性能がスキですね。慎也さんはどんな機体がお好きなんですか?」
慎也
「え、え、お、わち? わちは……えっと……やっぱ、 YF23かなァ……(うお! ミスった! 緑ちゃんのF22と正反対じゃないか!)」
「YF23ですか。あの機体は、運動性能に少し難があるみた いなんですけど……」
慎也
(胸を張って)「そこは腕でカバーするんだよん」
「慎也さんって、上手なんですか? フライトシミュレー タ」
慎也
「だいたいの奴は余裕で倒せるよ? 岩沙レベルにはさす がに歯が立たないけどね。ありゃバケモンだ……」
(まずい……話題が膠着してきた……!?)
「あ、あの、慎也さんはやっぱり機銃戦闘派ですか?」
慎也
「最近は面倒だからミサイル多用してるけど、昔は結構機 銃でならしたもんだったよ」
「ソ、そうですよね。YF23のM61A2バルカン砲はF22と同じ 長砲身タイプで、F16"FightingFalcon"などに搭載されているM61A1に比べて精度も飛躍的に向上していますからね」
慎也
( く、詳しいぞ!  やばい!  ここはうまく受け答え ねば……)
慎也
「あはははは……そうなんだよね(^^;まぁ、対地攻撃はロ ケット砲かな」
「慎也さん、 YF23って内部ベイ式でロケットは搭載出来 な……」
慎也
(激ヤバ!)「あ、いや、それはF16を使った時の話で……」
琢磨呂ぉ〜〜早く帰ってきてくれぇ〜)
「あ、あのっ……片山さん……てゲームセンター……行く こと……あります?」
慎也
「え? ああ、よぉ行くよ。ウィングウォーとかやりにね。 緑ちゃんは……あんまいかへんの?」
「え……一人だと……ちょっと……」
慎也
「(チャーンス)そんなら、今からいかへん?」
「え……でも、美々さんとかが……」
慎也
「別に帰るわけやないし。こっから駅まで、そんなあるわ けちゃうしね。店長さえよければ、鞄置かしてもろて……店長ぉ。鞄、置かしてもろてええです?」
観楠
「え? まあ、目立たないところに……」
素子
「事務所で預かったらどうですか?」
観楠
「そっか。じゃ、預かるよ。くれぐれも忘れて帰ったりし ないようにね」
慎也
「店長、ありがとぉ。じゃ、緑ちゃん、いこか?」
「は、はい」

ゲーセンに合流

ところかわって某ゲーセンでは。

琢磨呂
「ところで、姐さんよ」
竜胆
「ん? なに?」
琢磨呂
「ここじゃ、勝ち抜いても階級章くれないのか?」
竜胆
「あんたねえ。メビウスランドと一緒にしないでよ。あん なお金あるゲーセンとさぁ」
琢磨呂
「なんだ、くれないのかよ」
竜胆
「その代わり1PLAY100円でしょ、こっちは。向こうは階級 章代も入ってンの」
美々
「……そろそろ、もどらへん? どーなってるか、楽しみ やし」
三彦
「懐も寒くなって来た事であるしな」
竜胆
「何が楽しみなの?」
美々
「それはお姉さん、秘密やわぁ」
竜胆
「教えてくれてもいいじゃないぃ(すりすり)」
美々
「もぉぉ、でも、これだけは駄目なん。いくらお姉さんが すりすりしてきても、教えられへんのぉ」
竜胆
「ちぇっ、けち」
美々
「ごめんなぁ、お姉さん」
竜胆
「いいもんいいもん、あたしはこーやって一人寂しく筐体 拭いたり、灰皿集めてたらいいのよ、そーよ、所詮あたしなんてそれくらいがお似合いなんだわ、うるうる」
琢磨呂
「何バカ言ってンだ? じゃな、姐さん」
竜胆
「……フォローがない……」
慎也
「緑ちゃん、メビウスランドって知ってる?」
「い、いえ……」
慎也
「あ、こっち越してきたばかりやったね。ごめんごめん。 メビウスランドってゆうでかいゲーセンあるんや。そこにめっちゃリアルなフライトシムあってな。1PLAY500円ってゆうのが痛いけど、すげーおもしろいんや」
「そうなんですか……楽しみですね(にこ)」
慎也
「緑ちゃんも気に入ると思うで」
「はい(にこ)」

ところ変ってメビウスランド。いつも通り、フライトシムに明け暮れるフライトマニアや、入り口付近で機械式ぬいぐるみ捕獲システムに群がるカップル、ポスター自動販売システムに群がる恐いお兄さんなどでいっぱいである。
 片山慎也と水島緑は、付かず離れず絶妙の間合い50cmで街道を歩き、交わす言葉も少ないままメビウスランド入り口へと近ずいてきた。

慎也
「みどりちゃん、ここに凄いフライトシムがあるんや」
「……あ、ここ知ってますよ。でも……いつも凄く混んで るんですよね」
慎也
「ここのフライトシムは、本物に凄く近い操作が体験でき るって話で、めっちゃ有名やからね。いろんなとこから飛行機マニアが集まってくるねん」
「ふーん……いつも混んでるから、中に入って見たこと無 かったんですよ」
慎也
(……強敵がいませんように……緑ちゃんの前ですぐ負けた ら恥さらしや……)
「あ、あの、慎也さん、入ら……ないんですか?」
慎也
「(ハッと我に返る)あ、はやく入ろう」

入り口をくぐり、 1階の奥まったところにある対戦フライトシミュレータ
 「コンバットウイングス」の筐体の後ろまで来た。その間両者の距離、絶妙の50cmを保っていた。
 コンバットウイングスは、 Namcoと航空自衛隊が共同開発した次世代フライトシミュレータである。実際の戦闘機のコクピットをくり抜いて360度油圧可動の台に乗せ、50インチのディスプレイとセットにした物である。これを2座席用意し、通信対戦を行うわけである。相手だけではなく、コンピュータの操る敵機も出現するため、実際の戦闘により近いものとなっているわけである。
 なお、二次大戦の航空機を扱った「コンバットウイングス・WW2」もすぐ横に据え付けられている。

「うわー、凄いですね。50インチのプロジェクションシス テムに、自由可動式油圧アクチュエータですか」
慎也
「緑ちゃんも一緒にやってみぃへん?」
「……でも……やったことないから……慎也さんがやるの をみてから考えます(一回見ておけば一応のデータ取得は出来るけど、応用する回路がゲーム速度に追い付かないかもしれないからね)」
慎也
「あ、そ、そう?(ますます困った……)」
「慎也さんはWW2と現代と、どちらが得意なんですか?」
慎也
「せやなぁ……現代戦はミサイルがあるからなァ……やっ ぱWW2かなァ……でもYF23が使えるし……でもWW2だったらMK9エンジン搭載の烈風が使えるし……うーむ……YF23のステルス性も魅力だが……」
「あ、あの、慎也さん?」
慎也
(うーむ……悩むなァ……WW2は上手い人が多いから負ける かもしれんしなァ……負けたら面目が……)
「……」
慎也
「(我に返る)はっ!」
「で、どっちにします?(にこっ)」
慎也
「いまの、にこっ! で決心が……ああ……(がらがらがら)」
「……え? あ、私何かまずいこと言いましたか?」
慎也
(ああっ! 口に出てる、しゃべってる……しまった……) 「な、なんでもないよ……は、はははっ……(乾いた笑い)」
「だったらいいんですけど……どっちにするか決まりました?」
慎也
「緑ちゃんも確かYF23A"Grey Ghost"のファンだったよね?」
(嬉しそうに)「はいっ」
慎也
「じゃァ決まりッ。現代戦にするよ」
(慎也さんのYF23A"Grey Ghost"の機動が見れる……わくわく)

かくして、片山慎也は列の後ろにならんだ。緑は寄り添うようにその横にいる(間隔は絶妙の50cm)。慎也がならんでいる列ではない方の列で、約2名が楽しそうに事の成り行きを眺めていた。サングラスとバンダナで変装したつもりになってはいるが、間違いようのないその特長的な顔と話しぶりは、酒井三彦と岩沙琢磨呂その人であった。……暫し時間が経過し、あと数人で片山慎也の番が回ってこようとしていた。しかし、相手側のシートは5人ほど前から勝ち抜いており、その男の技量を物語っていた。胸には三等空佐のバッチ(*2)が光っていた。

*2
このゲームセンターでは、勝ち抜き回数に応じて階級章が景品として :送られるシステムになっている。三等空佐のバッジを付けているのは、 :過去に20機以上叩き落した証拠である。
慎也
(相手は……えーと……げっ! 3佐!? めちゃ強いじゃ ンか……まずい! 夢幻術で鍛えたトレーニングが台無しになるかもしれない……困ったなァ……)

少し離れて事の成り行きを眺めていた琢磨呂たち。

琢磨呂
「おい、サブ! シン負けるんじゃないのか? 相手は佐 官クラスだぜ?」
三彦
「うむ……非常にまずい展開だな……あいては……うむ!?
岩沙よ、いまのミサイル回避をみたか?」
琢磨呂
「(うなずく)……奴ァ……上手いぜ。スナップアップ機動 ヘの転換速度がすべてを物語ってやがる……チャフのリリースも絶妙のタイムだな……」
三彦
「……」
琢磨呂
「……ったく世話のかかる奴め」

そういって琢磨呂は歩きだした。三彦はその後ろを追いかけながら琢磨呂に話し掛ける。

三彦
「どうすると言うのだ?」
琢磨呂
「金取って助太刀してやる……」
三彦
「余計なことはしない方が帝国軍人を鍛え上げるのには良 いと思うのだが……貴様が実行するなら、わしは後ろで待っているぞ?」
琢磨呂
「ケッ……勝手にしろぃ」

琢磨呂は、無言で慎也に近ずいていった。手元のメモに何やらメモしながら、いきなり慎也と緑の前に割り込んでならんだ。慎也を含む数人の軽蔑の視線が琢磨呂の背中に付き刺さる。

慎也
(何じゃコイツ! ムカつくなぁ)

その時、後ろ手に琢磨呂が慎也にメモを渡す。慎也は、緑がこっちを見ていないのを確認してメモを読み始めた。
 『シン、俺だ。貴様にあの相手をつぶすのは、きつかろう。クラスは恐らく佐官だ。俺にとっちゃァいいカモだがな。報酬は1000円、プレイ料金500円を含んでだ。安心しろ、相手をつぶしたら、二回目は地上激突して自滅してやるから。緑CHANの前で、惨めなベイルアウトはしたかないだろう? OKの返事は右を、NOは左』

慎也
(琢磨呂の奴……イキなことをやってくれるやないけ。で も、確かに勝てそうに無いしなァ……よし)

慎也は、前に強引に割り込んだ男の右足を軽く蹴り飛ばした。男は、その瞬間サイフから500円を取り出し、臨戦体制に入った。快調に勝ち進む相手の三佐は、次の次に負けるであろうことなど、夢にも思っていなかった。
 琢磨呂は堂々とコクピットに収まる。相手は今日だけで既に5機を叩き落している。

琢磨呂
(ふん……その自信ありそうな目つきを、敗北の眼差しに替 えてやる!)

琢磨呂はMIG-29Mを、相手は引き続きF16ブロック40を使用する。双方とも、時速600Km前後ですれ違い、それから戦闘が始まる。
 だが、相手のパイロットはとうとう琢磨呂のMIG-29Mを視界に捉える事すら出来なかった。すれ違った後、琢磨呂のMIG-29Mは持ち前の運動性を生かして急上昇して、突然空中に停まったかのような姿勢を取ると、次の瞬間には機首をくるりと真下に向けていたのだ!
 相手のF16はタイトな水平旋回を始めようとしてたのだから、たまった物ではない。旋回平面に対して真上から、琢磨呂のMIG-29Mが降ってきたのだから……。
 ズババババババババン!琢磨呂の一連射はコクピットと燃料タンクを一瞬で砕いた。なす術もなく空中で四散するF16。
 相手のパイロットは頭を掻きながらコクピットを降り、ギャラリーからはどよめきが起こった。

三佐
「……ちょっと油断したなぁ〜」
琢磨呂
(相手がハマーヘッド・ターンに入ってるのに水平旋回を続 けるバカに、油断もクソも在るかってんだよ……。アレぐらいだったら慎也でも十分倒せたんじゃねーのか?)

琢磨呂は次の相手(AV8Bハリアー)のVIFF攻撃をコブラ・ターンでかわして撃破、その次の相手との空戦中にわざと尾根に衝突して、機体を粉微塵に砕いてしまった。

琢磨呂
「(すれ違いざまに)いいトコ見せてやれよ……」

続いて、少し緊張気味に慎也がコクピットに上がる。

慎也
「よし……YF23を選択っと……」

戦闘開始。相手はF15。オーソドックスな相手だ。まずはミサイル合戦。

慎也
「こな……くそッ!」

一発回避

慎也
「どりゃぁ!」

二発回避

慎也
「うおりゃぁ!」

三発回避。反撃開始。

慎也
「たぁりゃ」

一発目、はずれ

慎也
「くらえっ」

二発目、はずれ。敵もさる者引っ掻くもの。なかなかやられてはくれない。
 だが慎也には勝算があった。ほんの一瞬の隙を付いて山岳地帯へと逃げ込む慎也。YF23のルックアヘッド・レーダーや自動衝突回避機構を活用しながら谷間を逃げ回る。

琢磨呂
(シン……彼女の前で逃げ回るなよ……)
「慎也さん……大丈夫かなぁ? だいぶん追われてるみた いだけど……」

相手のF15も谷間を追ってくる……が、尾根の一つを回った時、前方にいるはずのYF23が居なかった。

慎也
「うおーーーりゃぁぁぁぁあ!!」

慎也は、F15が追ってくると確信して、尾根を回った瞬間にありったけの力を振り絞って操縦幹を引いたのだった。8Gもの物凄い重力がかかり、AOA(向かえ角)が80度を越える。YF23はほぼ空中静止した状態になり、そこから機首をパタンとお辞儀するかのごとく前に倒すと、ゆっくりとF15の排気管に照準を合わせた。

SE
プゥゥゥゥゥゥン……

AIM-9Lのシーカーヘッドが心地好いグロールトーン(ロックオンした時の音)を奏でる。

慎也
「もらった、FIRE……よっしゃぁ!」

AIM9Lが炸裂し、F15は黒煙に包まれた。慎也は喜んで両手を挙げた……のが、すべての間違いだった。確かに爆薬と破片はF15の片方のエンジンをずたずたに切り裂いたが、まだF15は飛んでいたのだ!
 破片によってエアブレーキが開きっぱなしになってしまって空気抵抗が飛躍的に増大したF15を慎也のYF23は見事に追い越す形となってしまったのだ。戦術用語で「オーバーシュート」と呼び、絶対的な死を表わすポジションである。
 ガガガガガガガガガガン!
 F15のM61A1ヴァルカン方が炸裂する。YF23のビロードのような輝きを持つボディから航空燃料が吹き出し、次の瞬間真っ赤な火の玉となってしまった。

慎也
(絶句)
琢磨呂
「あっちゃぁ〜!」

# ここで止まっているのか。



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