エピソード117『初詣』


目次


エピソード117『初詣』

人物紹介

湊川観楠(みなとがわ・かなみ)
ベーカリー楠店長。23歳独身、子供有り
浅井素子(あさい・もとこ)
吹利学校高等部2年。パン屋の看板娘
日阪朝(ひざか・はじめ)
観楠の友人、パン屋の常連
高村文雄(たかむら・ふみお)
大学院生。常連達のボス的存在(笑)
出雲大輔(いずも・だいすけ)
少女漫画家。文雄とは幼なじみ
豊秋竜胆(とよあき・りんどう)
誤解されやすい女子大生(苦笑)
岩沙琢磨呂(いわさ・たくまろ)
吹利高校2年生。竜胆とつるむこと多し? 
城島由加梨(きじま・ゆかり)
吹利学校高等部2年。素子の親友
 

大晦日最終営業日

観楠
「はぁ……今年もど〜にかおわった……(疲労困憊)」
竜胆
「すごい人でしたねぇ……年末年末ぅっって感じ(笑)」
琢磨呂
「なんだそりゃ。しかしまぁ、大晦日だってーのに、暇な 連中ばっかじゃねぇか」
竜胆
「……あんたもその1人じゃない」
素子
「お疲れさまでした。はい、どぉぞ(にこっ)」
琢磨呂
「お、すまねぇな(カップをとって、飲む)」
素子
「あ! 岩沙……」
琢磨呂
「……なんだ、コーヒーじゃねぇか。おれは紅茶が好きな んだが……(撲っ!) ってーな! いきなりなにすんだ!」
竜胆
「(小声)何でモコちゃんがあんたに『お疲れさまでした』 で、さらに『にこっ』っでコーヒー入れんのよ! んっとに、デリカシーの無いヤツ!(ぷぃっ)」
琢磨呂
「……そ、そうか!!( 汗) 素子、すまん! このとーり!」
素子
「せっかく入れたのに……(がぁぁぁぁぁん)」
竜胆
「ご、ごめんねモコちゃん……(汗) ほら、もっとちゃん と謝んなさいよっ!」
素子
「なぁんて(笑) こういうこともあろうかと、実はポット に沸かしてあるんです(笑) はい、りん姉」
竜胆
「いいの? いっただきまぁす(こくっ)」
素子
「と、店長、お疲れさまでした」
観楠
「ん? ありがと……ふぅ……ん。今年最後の素子ちゃん のコーヒーかぁ……いやぁ、仕事後のこの『ひととき』のために生きてるなぁ(笑)」
素子
「えっ……」
観楠
「うん、やっぱりおいしいなぁ……ごちそうさま(笑)」
素子
「あ、ありがとうございます……(ぽっ)」
竜胆
「(小声)おやぁ、顔が赤いんでないかい?(笑)」
素子
「(小声)え? だ、暖房のせいですよ……」
「なかなか大変そーやったな」
観楠
「おう、って……何故、お前がこんなところにいる!?」 
「昼からずっとおったやないか」
大輔
「でも、来ちゃうんですよねぇ(笑)」
文雄
「うむ。年末とは言うモノの、いつもの習慣というヤツだ な。ここに来る理由などそれほど無いのだが……あえて言えばダイヤモンドネットワークの初詣オフまでの時間潰しといったところかね。まあここにいる必然が無いのは変わりない」
観楠
「文雄さんに大輔さんまで……特に大輔さん」
大輔
「なんです?」
観楠
「お仕事は……大丈夫なんですか?(汗)」
大輔
「ふふん、まかせてください。子供の頃からの『段取り魔 人』というあだ名はだてじゃありません(得意満面)」
素子
「あ。じゃぁ私、当分の間オフですね?」
大輔
「もぉなんぼでも休んだってちょーだい!(笑)」
素子
「やったぁ! すが師匠ですねっ。年末の読み切りも、カ レンダーも、単行本の加筆修正分も付録のイラストも、新年号の表紙とカラーページも全部済んだんですよね?」
大輔
「うんうん、完璧完璧! ……新年号の?」
素子
「表紙と、カラーページです……が?(汗)」
大輔
「……(青ざめる)」
素子
「まさか……できてないとか?(汗)」
大輔
「ななな、なにを言ってるのかな? ん、大丈夫大丈夫……」
「の、割に真っ青や(笑)」
文雄
「うむ。ついでに脂汗も出ているようだな」
大輔
「これはね……(脂汗) そう、暖房が……あ、店長。わし、 急用を思い出したんで帰りますわ(大脂汗)」
観楠
「あ、なんのおかまいもしませんで」
大輔
「あー浅井ちゃん。オフの件だけど……あ、やっぱりいい や。うん、いいです……(よろよろと出ていく)」
観楠
「お、お疲れさま……(苦笑) さて、閉める前に……大掃 除、と行きますか」
 
文雄
「うむ。そうなると邪魔になるな。我々は退散するとしよ う」
「そやなぁ……ここにおってもしゃーないし、帰ろ」
琢磨呂
「姐さん、俺達も帰るか?」
竜胆
「『俺達』ってのはなによ……そーね、帰りましょ。じゃ、 モコちゃん店長さん、良いお年を!」
 
観楠
「……全員逃げたか……しょーがない、ぼちぼち始めるか な」
素子
「あの……私は? にか手伝うことあったら……」
観楠
「そーだなぁ……あ、あがっていいよ」
素子
「でも……」
観楠
「ちょこちょこやってたし、うん。あとは1人でも余裕だ な(笑)」
素子
「じゃぁ……着替えますね」
観楠
「うん、お疲れさま(笑)」
☆  ☆  ☆

電話
「(呼出音)」
観楠
「誰だこんな時間に? もぉ店閉めたっつーの……お待た せしました、ベーカリー楠です……はい? あぁ、お友達の……少々お待ち下さい」
素子
「じゃぁ、お先に失礼します」
観楠
「あ、いいところに。電話だよ」
素子
「私にですか? もしもし……なんだ、由加梨かぁ」
由加梨
『なんだじゃ無いわよ! ちゃんと誘ったんでしょうね?』
素子
「え?」
由加梨
『初詣よ、は・つ・も・う・で! 店長さん、誘わないの?』
素子
「……ムリに決まってるじゃない! まだ仕事残ってるん だから」
由加梨
『手伝ってあげるとか?』
素子
「言ったわよ……でも、断られちゃったし……」
由加梨
『ふぅん』
素子
「なによぉ……そういう由加梨はどうなのよ?」
由加梨
『んっふっふー。酒井君、誘っちゃった☆ で、OKもらっ たわよ(笑)』
素子
「えーっ!(あのカタブツが女の子とねぇ……)」
由加梨
『……まぁ、植木君とか久永君もいるんだけどね……(汗)』
素子
「なぁんだぁ(笑)」
由加梨
『だからさ、素子も頑張ってみない? あんたのことだか ら、まだ、声もかけてないんでしょ?』
素子
「なにが『だから』かよくわかんないけど……うん」
由加梨
『じゃぁ、そういうことで(笑) バイバイ』
素子
「(溜息)由加梨ってばおせっかいなんだから……」
観楠
「あー……も、素子ちゃん」
素子
「はい?  、電話終わりました長々とどうも……あはは」
観楠
「……もしよかったら……初詣、いかない?」
素子
「は、初詣……ですか?」
観楠
「明日のお昼前くらいかな?  や、だめだったらいいん だ」
素子
「あ、あの……えーと……わ、私で良ければっ!」
観楠
「……そんな力まなくても……(笑)」
素子
「え、あ、やだ……(笑)」
観楠
「じゃぁ……明日の……10時に、ここに来てくれるかな?」
素子
「はい!(笑顔)」

当日、待ち合わせ時間

素子
「(時計を見る)……ちょっと早かったかな。 んー……(窓 ガラスを見ながら)髪、おかしくない……?
カッコ? ……大丈夫、大丈夫」
観楠
「素子ちゃん」
素子
「店長! あけましておめでとうございます(笑)」
観楠
「おめでとう。今年もよろしくね(笑)」
かなみ
「素子ねえさまっ!(にこっ)」
素子
「かなみちゃんも?(汗) あけましておめでとう、かなみ ちゃん(苦笑)……ですよネ。店長が、かなみちゃんほっとくわけ、無いですもんね……」
観楠
「(苦笑)いや、ホントは……」
かなみ
「素子ねえさま、みてみてっ!(くるりん)」
素子
「あ、かなみちゃん着物なんだぁ。へぇ〜……可愛い…… 似合ってる似合ってる(笑)」
かなみ
「ほんとっ!?  かったぁ(にこにこ)」
素子
「店長が買ってあげたんですか?」
観楠
「ん? あぁ。お隣の……伊川さんがネ(笑) その手の職 業で、作ったから是非って。着付けまでしてくれて……まぁ借りるだけにしといたんだけど(にこにこ)」
素子
「私も着物にすれば良かったかな……」
観楠
「あ、それは見たかったなぁ(笑)」
素子
「え……」
観楠
「あ、いやいや(笑) じゃ、行こうか」
素子
「そうですね」
かなみ
「素子ねえさま、手つないでっ」
素子
「はいはい(笑顔)」

某初詣するところ、境内のはずれ

観楠
「予想はしてたけど……(大汗)」
素子
「すごい人でしたね、はぁ」
観楠
「……あの、さ……一つ訊いていいかな?」
素子
「え?  は、はい」
観楠
「月並みな質問だけど……素子ちゃんは何お願いしたの?」
素子
「……えーと、私は……内緒です(くすっ)」
観楠
「だよね(笑) ごめんね、変なこと訊いて(笑)」
素子
「店長は?  何お願いしたんですか?」
観楠
「(素子に向きなおる、表情はマジ)……聞きたい?」
素子
「えっと……」
観楠
「(そのまま見つめる)」
素子
「あの……(とくん、とくん、とくん……)」
かなみ
「父様、父様っ!」
素子
「(どきっ!!) か、かなみちゃん……(赤面)」
観楠
「ん、なにかな?」
かなみ
「かなみね、りんごのと、ふわふわのがほしいのっ」
観楠
「……りんご?」
素子
「あ、リンゴアメのことじゃないですか? 棒が付いてる ヤツよね?(汗)」
かなみ
「うん! それとふわふわっ!(笑顔っ)」
観楠
「なるほど……となると、ふわふわって言うのは綿アメの ことだね? はは、『ふわふわ』かぁ(笑)」
かなみ
「ほしいのっ!」
観楠
「ん……じゃ、お約束できるかな?」
かなみ
「おやくそく?」
観楠
「うん。残さないで食べちゃうことと、ミかにもわけてあ げることの2つ……できるかな?」
かなみ
「……うん!」
観楠
「はい、よくできました(笑顔) あ、素子ちゃん」
素子
「はい?」
観楠
「お参りも済んだし……予定入ってないならさ。お昼、食 べに行かない?」
素子
「そう、ですねぇ……」
かなみ
「父様、素子ねえさまといっしょにお昼たべるの?」
観楠
「素子ちゃんがOKしてくれたらネ」
かなみ
「いっしょにいこっ!(素子の手をひっぱる) ねぇ、いっ しょにいくのっ」
素子
「え、あ?(わたわた)」
観楠
「こらこら、素子ちゃん困ってるじゃない(苦笑) ごめん ね。で、どうかな?」
素子
「あ、あの……実は、友達と約束があって……ごめんなさ い!」
観楠
「……そ、っかぁ。じゃ、仕方ないね(苦笑)」
素子
「ほんとに……折角……(由加梨の馬鹿ぁ!)」
観楠
「あ、気にしないで(笑) かなみちゃん、行くよ」
かなみ
「素子ねえさまは?」
素子
「ごめんね、今日は一緒に行けないの……また、今度ね(笑)」
かなみ
「うん!」
観楠
「じゃ、また今度店で……今日は有り難う(笑)」
素子
「あ、いえ……(くすっ)」
かなみ
「素子ねえさま、さようならぁ(にこっ)」
素子
「バイバイ、かなみちゃん」

観楠、数メートル歩いて振り向く……

観楠
「素子ちゃん!」
素子
「はい?」
観楠
「……(素子をじっと見る)」
 かなみ ;「父様、どうしたの?」
観楠
「……ん? あ、なんでもない、んだ。ごめん……じゃ、 またっ」

観楠、再び歩き出す

素子
「……何だったのかな? (くすっ)今年は良いことあると いいなぁ……」



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