エピソード118『吹利駅前恋愛模様☆』


目次


エピソード118『吹利駅前恋愛模様☆』

登場人物

紫源滋(むらさき・げんじ) 都市魔法(アーバンマジック)使い。アマチュアTRPGデザイナー。 本職はプータロー。
豊秋竜胆(とよあき・りんどう) 究極美少女転生戦士(自称)。

きたるべき弐月拾四日に備えて

ある日の事、チャイムがなった為、竜胆がドアを開けると、そこに剽夜が立っていた。剽夜はかしこまってお辞儀をすると次のように言った。

剽夜
「おはようございます!(メガネきらーん)」
竜胆
「あ、おはよう、更ちゃん」
剽夜
「今日は、豊秋三佐にお願いがあって参りました!」
竜胆
「さ、更ちゃん……ケンスケ入ってるよ(汗)」
剽夜
「自分を、バレンタインのチョコレート作りに、参加させ て下さい!」
竜胆
「へ?(汗)」
剽夜
「というわけで、あきりんと一緒にチョコレートをつくる ことになったのだ」
紫擾
「はあ、それはまたケッタイなことを」
剽夜
「いやいや、前々から興味はあったのだ。しかし、こうい う時でもないと、出来そうにもないからなあ」
紫擾
「しかし、更毬さん。あきりんと一緒に作ってどうするん です? どうせ自分がもらうものを、自分でつくるというのはどうかと思いますが……」
剽夜
「安心してくれ、ちゃんと私のもらう分はあきりんに一人 で作ってもらうから。それに君の分も義理チョコを配る事を考えると、たくさん作るだろうから、試作段階で味見してもらう事になるだろうし」
紫擾
「いや、それは嬉しいんですけど、そういう問題では……」
剽夜
「他にどんな問題があるというのだ?」
紫擾
「(こ、この人だけはわからん……)」
竜胆
「……どーしてこーなったんだろう」
剽夜
「あきりん。クマのぬいぐるみと話してないで、さっさと 準備を始めないか!」
竜胆
「は〜い……ねぇ更ちゃん。なんかヘンだと思わない?」
剽夜
「男がお菓子をつくることがか? ヘンとは思わないぞ」
竜胆
「いや、そうじゃなくてね。男の人ってゆうのは、この日 は受け取る側だと思ってたから……つくる側に更ちゃんがいるのはヘンだよ、やっぱり」
剽夜
「何を言うか。あきりん一人に任せたら、きっとつくれな いに違いない。だから、私がコーチしてやろうと言うのだ」
竜胆
「……言ったわねぇ、あたしがチョコもつくれないかどー か、とくと見せたる!」
剽夜
「では、お手並みを拝見しようか」

鍋に直接、元のチョコレートをぶち込もうとする竜胆(笑)

剽夜
「やっぱりな(ふう)」
竜胆
「や、や〜ね、軽いジャブよ、ジャブ☆」
剽夜
「そんなことをしたら、チョコがお鍋に張り付いて、焦げ てしまうぞ。ちゃんと湯浴じゃなかった、湯煎をしないとな。こーやってお湯をはってだな、器に入れたチョコを暖めるのだ」
竜胆
「ほーほー……なんてね☆ ちゃ、ちゃんと知ってるわよ、 それくらい(汗)」
剽夜
「ほぉ? じゃあ、さっきの行為は……」
竜胆
「な、なんでもないっス(汗)」

しばらく時間がたった。

剽夜
「むう、もうコツをつかんでやがる(汗)。こういうカンの いい生徒は教師としても教えがいがあるというものだ。
うんうん」
竜胆
「……最近、どうもあたしのことを見くびってるわね。言っ たでしょ、これくらい楽勝だって」
剽夜
「うむ、では、型にはめるのだ」
竜胆
「借金を取り立てるの?」
剽夜
「……型に流し込むのだ」
竜胆
「……ボケたのに突っ込んでくれない」
剽夜
「いいから早くしなさい。固まってしまうぞ」
竜胆
「はい、先生。これでいいですか?」
剽夜
「うむ、上出来だ。あとは固まるのを待つだけだ」
竜胆
「先生」
剽夜
「む、何かね豊秋君」
竜胆
「理科の時間では、こーゆー時は沸騰石を入れてたんです けどぉ、入れなくていいんでしょうかぁ?」
剽夜
「うむ、確かに私も入れたいのだ。しかし、沸騰石がない。 よって、入れることは出来ないから、入れてない。うむ、理論的だ」
竜胆
「納得しました(まぜまぜ)」
剽夜
「ということで、作り方は教えた。本番は自分一人でやっ てみなさい」
竜胆
「はい、先生」
剽夜
「では、さらばだ」
竜胆
「……お店で買って済ませるつもりだったのに……どーし よう、これ……」

習作として作ったにしては大量のチョコレートが、キッチンにでん、と(笑)

竜胆
「……義理はこれで済ませるか……」

弐月拾四日:幼稚園にて

「おーい、かなみぃ」
かなみ
「なぁに?」
「あのさぁ。かなみはおれにチョコ、くれるよなっ?」
かなみ
「チョコ?」
「うん」
かなみ
「かなみが望ちゃんにあげるの?」
「そう」
かなみ
「どーして?」
「どーしてって……『ばれんたいんでー』だろ?」
かなみ
「ばれんたいんでーってなぁに?」
「ばれんたいんでーってゆーのは、おんながすきなおとこ にチョコわたす日なんだ。かなみ、しらなかったのか?」
かなみ
「うん、しらなかったの」
「かなみはおれのこと、すきだよなっ?」
かなみ
「うん、すき!(にこっ)」
「じゃぁ、チョコ……」
「のぞむ、ぬけがけはずるいぞっ」
大樹
「そーだ。ちゃんすはこうへいであるべきだ」
智博
「おれのかなみちゃんがのぞむなんかにチョコわたすわけ ないだろっ」
「う……うるせぇっ! がいやはだまってろ!」
毅&大&智
「なんだとぉ!(怒)」

(4人、取っ組み合いを始める)

かなみ
「やめてやめてっ!」
めぐみ
「かなみちゃんもたいへんねぇ(笑) まぁ、しばらくやら せてりゃいーのよ(笑)」
真美
「いいなぁかなみちゃん……もてもてねっ!」
「で? だれにあげるのか、きめた?」
かなみ
「えーと……わかんないの」
由美
「あのなかでだれがいちばんすき?」
かなみ
「うー……(悩)」
真美
「みんなってのはだめよ」
「そーゆー由美ちゃんはだれにあげるの?」
由美
「ふっふっふー。な・い・しょっ☆」
めぐみ
「あー、ずっるーい(笑)」

(4人、誰にあげるかでもりあがる)

かなみ
「むー……(大悩)」

で。
 愛娘が幼稚園で小さな頭を悩ませているころ、おやぢの店(笑)では……

弐月拾四日:ベーカリーにて

竜胆
「こんにちわぁ〜」
観楠
「やぁ、いらっしゃい……あれ、今日は1人なんだ?」
竜胆
「?」
観楠
「いや、更毬さんか岩沙君と一緒かと思ったんだけど……」
竜胆
「?? あたし、来るときは大抵1人なんですけど?」
観楠
「そ、そだっけ?(汗)」
竜胆
「?? ……なにかあるんですか?」
観楠
「ん? いや、なんにも」
竜胆
「??」
観楠
「あぁ、気にしなくていいよ(汗) はは、ははははは…… えっと、いつものヤツでいいよね?」
竜胆
「はぁい、まってまぁす☆」

(観楠、奥に消える)

竜胆
「……店長さん、なにが言いたかったんだろ……ま、いっ か。悩むなんてこのあたしに、ぜっせいのきゅーきょくびしょーじょに似合わないわよおーほほほ(笑) でも、憂いを含んだこの美しすぎる瞳、名付けて『りんどうちゃん1万ボルトきらきらこーせん』で世の男どもをめろめろにってのも捨てがたいわっ(ぐっ) あぁっ、なんて罪作りな女に生まれたのかしら……(とーすい)」
男性客
「あのー……」
竜胆
「(さっそく来たわねっ) なにか御用かしら?」
男性客
「すみませんが、もしよろしければそこの席貸していただ けませんか?」
竜胆
「あたしの向かいならあいてるわよ。お座りなさいな」
男性客
「いえ、そーじゃなくて……(汗)」
女性客
「そこの席、変わって欲しいんです!(真剣)」
男性客
「お願いします!(真剣)」
竜胆
「そ、そんなに真剣にならなくても……いいわよ(汗)」

(竜胆、2人の雰囲気に圧倒され席を譲る)

観楠
「お待たせ。あれ、席変えたの?(笑)」
竜胆
「なんか圧倒されちゃいまして」
観楠
「だろうねぇ(苦笑)」
竜胆
「……店長さん、なにか隠してませんか?(疑りっ)」
観楠
「へ? ……いやぁ、今日は忙しいなぁ!(苦笑)」
竜胆
「教えて下さいぃ!」
観楠
「いや、その……教えろと仰られましても……」
源滋
「それは私がお答えしましょう」
観楠
「紫さん……いつのまに?(汗)」
源滋
「前に言ったじゃないですか、私に不可能はありませんよ」
竜胆
「で、なにを教えてくれるのかしら?」
源滋
「たわいもないことです。あぁ、なにか飲み物を頂けます か? ……さて。最近のことですが」
竜胆
「えぇ」
源滋
「この辺りの……そうですね、中学から高校生までの女性 の間にある噂が流れてまして……聞きたいですか?」
竜胆
「教えてくれるって言ったじゃなぃ!」
源滋
「ふっ、そう言うだろうと思いました(笑)」
竜胆
「……しまいにゃぁ怒るわよ(むきー!)」
源滋
「からかいがいのある人ですね……じゃなくて!(大汗) その噂というのは。この店の、さっき貴方が座っていたところで男女間での告白をすると幸せになれるという」
竜胆
「……(呆れてモノが言えない顔)」
源滋
「出所もはっきりしない、実によくある都市伝説の一種で すが時期が時期ですし今回はどうやら……」
竜胆
「どうやら、なに?」
源滋
「それは、ご自分でお確かめ下さい(笑) では、私はこの 辺で失礼します(くっくっく)」
竜胆
「あ、ち、ちょっとぉ!? 振るだけふっといて、それは酷 いんじゃない!?」
竜胆
「……ちょむかぁぁぁぁぁ〜〜〜っ!(怒)」
観楠
「お待たせしま……あれ、紫さんは? ……どしたの?(苦 笑)」
竜胆
「あの失礼な人ならどっか行きました(ぷぃっ)」
観楠
「そ、そう。これ、どーしよかな……」

(竜胆、観楠の手からカップを奪い、中身を飲み干す)

観楠
「り、りんどうちゃん!?(汗)」
竜胆
「お勘定はあとでっ」
観楠
「そりゃ、かまわないけど……どうしたの急に?」
竜胆
「さっきの男ひっ捕まえて、全部聞き出すんですっ」

ベーカリー楠からわずかに離れたアパート。紫源を追って来た竜胆が現れる。

竜胆
「まちなさい!」
源滋
「やあ、さっきの方じゃないですか。まだ何か?」
竜胆
「思わせぶりな事だけ言って消えるなんて、ちょっとひど いんじゃない?」
源滋
「……謎は、解明する瞬間が一番面白い。その楽しみを残 しておいただけですが?」
竜胆
「ああ言えばこう言う……」
源滋
「あーいえばじょ○ゆー」
竜胆
「……(怒)」
源滋
「もとい。で、聞きたい事は何ですか?」
竜胆
「知ってる事全部話しなさい!」
源滋
「と言われても、あらかた言ってしまいましたし」
竜胆
「何か思わせぶりな終わり方したじゃない?」
源滋
「時期的なものとか考えると、あながち噂では済みそうに ないな、と。それだけです」
竜胆
「それだけ?」
源滋
「それだけだと思いますか?」
竜胆
「……(ーー#)」
源滋
「待って! 乱舞技はちょっと待って!」
竜胆
「人を小馬鹿にしてないで、さっさと吐きなさい!」
源滋
「やれやれ、気の短い人だ。良いですか? 噂というのは、 そもそも何故起こると思います?」
竜胆
「……は?」
源滋
「大体は、誰かがそれを必要としてるんですよ。ある事実 を隠蔽するために流される噂。自分の好奇心を満たすために探る噂。自分に当てられた陰口もまた、噂の類です。
それらは誰かが必要とした時に発生します。自分に悪い噂は立っていないか、何か面白い噂はないものか、調べると大抵は何かが見つかります。噂は、人に発見され、存在し続けるのが好きなんです」
竜胆
「……はぁ……」
源滋
「およそそう言った話というのは、大衆の興味が無くなる と同時に消えます。噂と言う存在自体が無かった事になるんです。故に噂は忘れられ、消えて行くのを嫌います。
だから人に見つけられ、存在しようとします。一度存在を得たものは、無くなる事を本能的に避けるものですから。さて、ここで問題なのは、誰があのベーカリーにそう言う話を存在させる必要を求めたのか、です」
竜胆
「でも、噂って大抵適当な所から発生するんじゃないの?」
源滋
「あなたは愚か者ですか? 人の話を聞いてなかった…… 拳骨はやめて、痛いから」
竜胆
「……続きは?」
源滋
「あのベーカリーの内部に、ベーカリーにそう言う噂を呼 び込んだ人が居ます。だから余所ではなく、ベーカリーに噂が立ったのです」
竜胆
「まあ、常連客の中には、そう言う事考える人もいるかも ねぇ……」
源滋
「一人や二人じゃありませんね。あそこの霊場が尋常でな い事を除いても、あの噂は真実になる可能性が強い。さて、あれほどまでに強く願っているのは誰やら。……あなたは違いますか?」
竜胆
「(赤) なっ、何よ、いきなり?」
源滋
「大体ああいった噂を強くするのは女性ですからね。誰か うまく行ってないカップルとかはいません? あそこの常連客で」
竜胆
「居ると言えば居るのかもしれないし……でも、あなたが それを突き詰めてどうするの?」
源滋
「ま、都市伝説の類に興味が在りましてね。守ってやりた いんですよ、都市伝説達を……(遠い目)」
竜胆
「……はぁ……」

再びベーカリーにて

琢磨呂
「ふっ、ついにこの日が来たか! すべての女性が本音を 明かすこの日が! 正直、この鞄だけじゃ全部入りきるかどーか、不安でしょーがないぜ」
観楠
「凄い自信だね、琢磨呂くん」
琢磨呂
「ま、解りきってることですがね。ふわーっはっはっは」
由加梨
「ところで、素子。いつ渡すのよ」
素子
「え……仕事が終わってから渡そうかと思ってるんだけど」
由加梨
「それじゃ店長さんが可哀想でしょ? みんなが義理とは 言え、チョコもらってる時に、本命がもらえないなんて」
素子
「で、でも、みんないるし……恥ずかしいじゃない」
由加梨
「……ま、それもそうね。ところで、酒井くん、遅いわね」
素子
「酒井は、こないんじゃないかなあ?」
由加梨
「ど、どどどどうして?」
素子
「……あいつの性格からして、今日だけはこないと思う。 こーゆーの、嫌いだし」
由加梨
「そ、そんなぁ……」

そこに竜胆が戻ってきた。

竜胆
「ちーっす☆ミ 良い子のみんな、良い子にしてたかなぁ? おねーさんが義理チョコ渡しに来ましたよん☆ミ」
観楠
「げ、元気そうだね竜胆ちゃん(汗)」
琢磨呂
「元気じゃねー姐さんなんて、姐さんじゃねーっスよ、店 長」
観楠
「それもそーだね。元気な竜胆ちゃんは明朗会計現金払いっ やつだね(元気と現金を掛けた我ながらハイレベルな駄洒落だ! これは笑える! くっくくっ)」

と1人満足。

琢磨呂
「……」
竜胆
「……シャレ、ですか?」
観楠
「わ、忘れて、今言ったこと(汗)」
竜胆
「磨きがかかってますね、店長さん☆ミ」

というわけで、竜胆は義理チョコを配りはじめた。

竜胆
「はい、店長さん☆ミ」
観楠
「ありがとう、竜胆ちゃん」
竜胆
「はい、岩沙☆ミ」
琢磨呂
「あ、ありがとよ……(義理かよぉ)」
竜胆
「……嫌なら返して。自分で食べるから」
琢磨呂
「いやいやいやいや、メチャ嬉しすぎるぜ!」
竜胆
「(にっこり)それで良し……はい、モコちゃん」
素子
「は、はい? あ、あたしにですか?(汗)」
竜胆
「うん。美味しいから絶対食べてね☆ミ」
素子
「は、はあ……(大汗)」
由加梨
「(小声)ちょ、ちょっと、あの人、素子の何なの?」
素子
「(小声)純粋に好意を表してるんだと思うんだけど……(汗)」
琢磨呂
「おぉい、素子に渡した方が、でかくないか?」
竜胆
「ソォリィ、イッツハンドメイデン。手作りだから、サイ ズにばらつきがあるのよ」
琢磨呂
「手作りか……(ぱく)。姐さん……こいつぁ、結構大人の 味だな」
竜胆
「そぉ? ちょっとばかしブランデー入れただけよ?」
観楠
「(う……こりゃお酒入ってるな。でも、折角作ってくれ たんだし……)」
慎也
「緑ちゃん、こないンかなぁ…… (口に出していることに
気がついていない)」
「来てます……」
慎也
「おおうっ! いつの間に……」
「いえ……急いでたので、ストーキングモードで……いや いや、忍び足で来たんです」
慎也
「(ストーキング? なんでストーキングなんだ?)」
「あ、あの、片山……さん……こ、これ、受け取って下さ い」
慎也
「! な、なにこれ……(汗)」
「チョ、チョコレートです……一生懸命作ったんで、絶対 ……食べてください……」
慎也
「あ、ありがとう……(お、重い……)」
「重いですから、気を付けて下さいね……」
慎也
「へ、平気や、このくらい……(汗)」
「……しっかし、今日ばっかりは店の雰囲気違ぉとるな。 居心地悪いわ……」
美々
「はっじめちゃん! どぉしてこんな隅っこにおるン?  どこにおるか判らんかったわ……」
「み、美々か、嚇かすなよ(汗)」
美々
「朝ちゃん。はい、チョコレートっ☆ミ」
「なんや、オレにくれるンか……」
美々
「朝ちゃんにあげやんと、誰にあげるのぉ? ……そや、 お姉ちゃん以外の女の人から、チョコもらわんといてね。怒るでしかしぃ!」
「……まだまだやな。そーゆー時に使うンとちゃう」
美々
「ええの。そのうち、朝ちゃんから盗んだるから」
 
 からんころん。
大輔
「どぉもぉ〜(お気楽)今日はなんか賑やかだなぁ」
素子
「あ、師匠師匠。これっ」
大輔
「あ、ありがとう、浅井ちゃん。いや〜来てよかったなあ」
素子
「(亜紀さんからはもうもらったんですか? 師匠)」
大輔
「それが……(涙目)」
「どぉもみなさん、はじめましてぇ〜☆ミ」
「な、なんや?」
「あたし、この度出雲せんせぇの担当をさせていただいて おります、水杜蓉子と申しますぅ〜」
竜胆
「の、の〜みそがチーズピザになっちゃいそぉ(汗)」
素子
「……どういうことです?(汗)」
大輔
「それが語るも涙、聞くも涙の物語が……」
蓉子
「もぉ〜せんせぇったら、 嬉し涙は流さないでください よぉ〜☆ミ センパイに代わって、あたしがしっかり担当しますから〜☆ミ」
大輔
「っていうわけなんだ(泣)」
素子
「はぁ……亜紀さんが副編に……」
文雄
「むう、今日はいつになく賑やかであるな」
剽夜
「いやいや、就職試験模試で遅くなってしまったのだ」
紫擾
「別に理由はないが遅くなってしまったのだ(笑)」
竜胆
「あ、竜王様、更ちゃん、紫擾君。チョコだよ〜チョコが あるよ〜☆ミ」
紫擾
「結局試食はあるか」
剽夜
「さすがあきりんだ。興味があるうちはちゃんと言いつけ を守るあたりが」
「おい。そこの新人。亜紀さんはどうしたんだ!?」
蓉子
「あたしですかぁ?」
「お前以外に誰がいる? 私にも渡すモノがあるだろうが。 さぁ、さっさと出すのだ」
蓉子
「? え〜とぉ、ないんですけどぉ」
「無いはずが無かろう? 北原亜紀さんから私への愛の証 であるバレンタインチョコだ。貴様、言付かってないのか?」
蓉子
「しらないですぅ〜」
「き、貴様! この私に公衆の前でハジをかけというのか!!」
蓉子
「う……だって、しらないんですぅぅ〜〜(泣)」
「な、何を泣くっ!?」
竜胆
「あーらら泣かしたわねバカ雀士。あんたなんかにあの亜 紀さんがチョコくれると、思ってること自体が間違いなのヨ(ふふん)」

閉店の時間

常連もさすがにぞろぞろと帰って行く。

竜胆
「……あ」
剽夜
「どーたらこーたら」
文雄
「なるほど、しかし、アレがこーなって」
竜胆
「岩沙? ちょっと……」
琢磨呂
「どーしたんだよ、改まって」
竜胆
「ほ、本命つくるときにね、分量間違えちゃって……でも、 みんなにあげられるほどはなかったから……これ、あげる。はい」
琢磨呂
「……ありがとな」
竜胆
「い、言ったでしょ、余ったからだって(汗)。別に他意は 全然ないんだからね(汗)」
琢磨呂
「そーいうことにしとくよ。ありがたく食べさせてもらう ぜ……じゃな、お休み。また明日」
竜胆
「また、明日ね」
剽夜
「しかし、アレがこーなるなら、それはどうなるんです?」
文雄
「うむ、それはだな。どうなると言っても云々」
竜胆
「……お話、まだ終わらないんですか?」
剽夜
「当分終わりそうにないぞ。この分だと、語り明かすこと になるかもしれん」
竜胆
「(ぶーぶー)」
文雄
「ちょっと、家に電話してくるわ」
剽夜
「というわけで、一時中断しているぞ。なにか言いたいこ とと渡したいものがあるんじゃないのか?」
竜胆
「……はい、約束通り、更ちゃんの分、別で作ったんだか ら。先生の言いつけを守る優等生だから」
剽夜
「うんうん。そういう生徒は先生、大好きだぞ」
竜胆
「わ〜い、先生にほめられちゃった☆ミ」
文雄
「(帰って来た)しかし、君等もいい加減謎な関係だな」
竜胆
「謎って……(汗)」
剽夜
「いいじゃないか。謎があるから理系は成り立つんだ。謎 がなくなってしまったら、理系は食ってけないんだぞ」
竜胆
「謎かもしれませんね、竜王様」
文雄
「そうだろう? とりあえず、君等を見てると飽きないか らなあ。実に興味深い」
竜胆
「あたしは竜王様の第一位の部将ですよ。主君が飽きない ようにするのも務めですから(笑)。じゃ、お休みなさい、二人とも」
剽夜
「ああ、お休み。夜更かししないでちゃんと寝るんだぞ。 面白いからといって、テレコンワールドを見ていてはいかんぞ」
文雄
「お休み。またネットか店でな」

で。
 やがて仕事も終わって帰途につく……。

素子
「店長、こっち終わりです」
観楠
「ん。じゃ、あがってくれていいよ。お疲れさま(笑)」
素子
「……あ、あの!」
観楠
「?」
素子
「えっと……な、何でもないです(汗) お先ですっ」
観楠
「おい、店閉めるぞ」
「……」
観楠
「おいってばよ。外に出るか、事務所に行くかしろって」
素子
「じゃぁ、お先に失礼します」
観楠
「明日もよろしくね(笑) さて、お前も帰る準備……」
「……まぁ座れや」
観楠
「? なにかあるのか?(よっこいしょ)」
「……お前……あの子のこと、どー思てる」
観楠
「素子ちゃんか? ……ど、どぉって……(赤っ)」
「単純にゆーとやな、好きとか嫌いとか」
観楠
「そそそりゃおまえ……(瀑布汗) それきいてどーすんだ」
「いやべつにどーこー言うわけやないけどな(笑)」
観楠
「……」
「で、どっちやねん?」
観楠
「……好きに……決まって……(真っ赤) でもなぁ(溜息)」
「でもなんやねん」
観楠
「俺なんかより、もっとカッコいい彼氏いるだろうから…… まぁ、付き合うとかそういうのは望まないけどね(苦笑)
ここに来てくれるだけで俺は……十分満足してるよ。
そりゃあんな可愛い娘が彼女だったら嬉しいけどネ……やっぱ、俺じゃだめだなきっと(苦笑) って言うより自信ねーんだわ、コレが……ははっ」
「……まだ昔のこと引きずっとるんか?」
観楠
「それもあるかも知れんけどね……大体、子供付きのヤロー を好いてくれると思うか?」
「……お前がそー思てるんやったら俺には何も言いようが ない」
観楠
「? どーいう意味だそりゃ……ま、そーいうことにしと こ。……片付けるぞ」

(観楠、閉店業務を手早く終える)

観楠
「さて、帰りますか……んっ! 今日も頑張ったぞっ、と。 ……あれ、素子ちゃん?」
素子
「え、あ、あのっ(わたわた)  ち、ちょっと忘れモノし ちゃってその……(かーっ)」
観楠
「そ、そう(不自然な笑顔)」
素子
「すぐに探しますから……」
観楠
「う、うん。待ってるよ(堅すぎる笑顔)」

(素子、事務所内を探し始める)

観楠
「(いかん。朝が変なこと言うからどーしても意識しちまう。 ……まともに顔あわせらんねーじゃねーかっ! よく考えたら、今この場に2人っ切りなんだよなぁ……はぁっ!? 
おいおい、落ち着け落ち着け、そーだ、こう言うときは深呼吸だ)」
素子
「お待たせしましたぁ……どーしたんです?」
観楠
「へ?(汗) あ、これ? 上着がどーもごわごわで……は、 はは、ははは……(非常に乾いた笑) じゃ、帰ろうか」
素子
「えっ……」
観楠
「遅いからね。駅まで送るよ」
素子
「でも……かなみちゃん待ってるんじゃないですか?」
観楠
「そ、そーれはそーかも……いいや、やっぱり送るよ」
素子
「怒られますよ?(くすっ)」
観楠
「だろうなぁ……(笑)」
素子
「でも(よかった☆)」
観楠
「でも、なに?」
素子
「いえ……(くすくす)」
観楠
「?(笑) じゃ、行こっか」

(まもなく駅に着く。観楠、改札まで付いて行く)

素子
「じゃぁ……」
観楠
「ん、気ぃ付けて。明日も……あ、明日なんだけど」
素子
「はい?」
観楠
「できたらでいいんだけど…… 早めに入ってくれないか な? ドリンクサービスで人手欲しいんだ」
素子
「……じゃ、また電話しますね(笑)」
観楠
「うん、ごめんね(苦笑) それじゃ!」
観楠
「(夜空を見上げる) 浅井、素子ちゃんかぁ……はぁ。俺 にとっちゃぁ高嶺の花もいいところだな、身の程をしれってか……でも、あの噂信じてがんばって見るかな?」

その観楠を影から見守るものがいた……(笑)

源滋
「……そうか。店長さん自身が呼び寄せたのか……。じゃ、 この状況から考えるに、アルバイトの女の子が好きなのか?……それにしても噂の出所の心当たりを聞きに来てまさか張本人にあえるとはなぁ。やはりボクに不可能はないのだな……。(悦) ……あぁっ! 早く話し聞かないと店長さん、帰っちゃうじゃないか!(走)」
観楠
「……でも、なんて言ったらいいんだろう……それにもし 彼女があの噂聞きつけてたりしてて、なんか下心があるみたいに思われると嫌だなぁ……」
源滋
「(突然) お取込中真に失礼しますが……」
観楠
「ぅわぁっ! む、紫さんッ!? いつの……」
源滋
「ふ。ボクに不可能はない、と何度言ったら判るんです?
ちっちっちと指を振る) それはともかく、店長さん。いきなりですが、お宅のお店のバレンタイン席の噂、信じてらっしゃいますか?」
観楠
「(どき)……え? そ、それがどうしたんですか?」
源滋
「いえね、ちょっと噂に関して調べモノをしてまして。例 の噂も一緒に調べてるんですよ」
観楠
「あぁ、それであんな話も知ってたんですか……」
源滋
「まあそんなところです。で、信じてらっしゃいますか?」
観楠
「(どぎまぎ)……と言われましても……まあ、信じてなく もないですが……」
源滋
「……と言う事は、まだ実現したのは見てないけど、信じ るに値する何等かの要因が有りますね? 実現したものを見てれば、信じるも何も、と返されるでしょうし、噂としてしか認識してなければ一笑に付すでしょうし」
観楠
「(どき)……な……何言ってるんですか?」
源滋
「……御存じですか? 噂って、信じてる人には限りなく 現実に近付いて来るんですよ。しょせん噂と一笑に付された噂はただの笑い話に成り下がります。信じ続ければ現実となり、伝説へと姿を変えて行きます……」
観楠
「……はぁ……」
源滋
「語り継がれる限り噂は残り続けます。噂は語り継がれる 事によって存在し続けます。噂は泡のように生まれますが、泡のようにしぼむ事は嫌います。やはり生れた以上はいつまでも存在したがるものなんです(力説)」
観楠
「……そうなんですか……(何を言いたいんだろう?)」
源滋
「あした、うまく行くと良いですね」
観楠
「!!(どきんっ)」
源滋
「では、ボクはこれで……」
観楠
「ちょ……! 紫さ……行っちゃった……(困惑)」
源滋
「よし。やはり店長さん自身が必要としてるのは判った。 後はボクが都市魔法で噂を現実にして、都市伝説として残るようにすれば今回は解決だな……。明日は喫茶店を張らなきゃ」

#つづく予定もあったようであるが……。

その夜、水島邸にて

孝雄
「ふふふふふふふふふ、若者達はいいなぁ、緑もあんなに はしゃいでチョコ作ってたし。うーむ、ママは私にチョコをくれるのだろうか(台所に行くとテーブルの上に書き置きが置いてあるのを見つける)」
孝雄
「おおっ、これはママの書き置きなになに? 香港へ行くの であとはよろしくねぇ〜☆だと? ほ、星まで付てあるし……
ぐぅおおおお、また逃げられたか〜」
「あれ? どうしたのパパ」
孝雄
「緑か……明日からプリンは頼んだぞ」
「プリンは頼んだぞってママは? もしかしてこの紙は……」
孝雄
「香港に行って来るらしい……」
「は、はははは」
孝雄
「ははははは、ハァ」



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