エピソード131『WHIGHT DAY COUNT DOWN!』


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エピソード131『WHIGHT DAY COUNT DOWN!』

時は既に三月に入り、寒さの中でも春の訪れがそこかしこに感じられる、ここ吹利市。そんな中、紅茶店「アオダマ」を出てゆっくりとした足取りで商店街中心部へ向かう春物のブレザーを羽織った琢磨呂が居た。

琢磨呂
「期末考査も終わったし、大戦略Vも発売されたし……気 分は天国って感じだな。 さて……現像済みの写真と、大戦略の肴にする菓子でも買って、帰るとするか」

琢磨呂は駄菓子屋で大戦略の肴にするだがしを購入し、商店街の端にある本屋「瑞鶴」に入っていった。この本屋は、写真の現像サービスも行っている、彼の行きつけの本屋である。駅前の量販店と違って店は小さいが、彼の好みの書籍を入荷してくれたりするので、愛用しているのだ。

琢磨呂
「おやじさん、写真、出来てる?」
おやじ
「おやじおやじって言うな! 俺はまだ32だ!」
琢磨呂
「……三十路過ぎてよく言うぜ」
おやじ
「ふんっ! ……あ、そうだ、写真だったな。確か岩沙の は……あったあった、720円だ」
琢磨呂
(小銭を出す)「ほれよ」
おやじ
「まいどっ! あ、例のフランス軍の写真集な、3/14に入 荷するって輸入業者の方から連絡があったよ」
琢磨呂
「ほ、ホントかおやじさん!? さっすが! 洋書まで入荷 してくれるとは、さすが『瑞鶴』だ」
おやじ
「注文する奴は、岩沙ぐらいだけどな(笑)」
琢磨呂
「(メモ帳を出して)3月の……いつだっけ?」
おやじ
「話しきけよ(^^; 14日だよ。ホワイトデーさ」
琢磨呂
「OKOK、14だな……ん? ホワイトデー??」
おやじ
「3/14ってったらホワイトデーじゃねーか。岩沙が忘れる なんて……寝惚けたか?」
琢磨呂
「あ、ん? いや、チョット考えごとしててな。俺の脳味 噌は擬似マルチタスクなんだ」
おやじ
「まるちたすく? なんじゃそりゃ?」
琢磨呂
「……もういい……あ、用事あるんで今日は帰るよ。
じゃぁ……」
おやじ
「まいど〜」

琢磨呂は瑞鶴を出ると、踵を返して商店街の中心に向かって歩きだした。途中、一度だけ財布を引き出して残金を確認しながら。
 琢磨呂は商店街の中心部まで来ると、パン屋で売っている安物臭い『ホワイトデー用クッキー詰め合わせ』を幾つか買うと、普段貧乏な琢磨呂とは縁のなさそうな百貨店に入っていった。
 吹利百貨店六階、洋菓子専門店「レキシントン」……琢磨呂は、その店の前に立っていた。

琢磨呂
( 姐さん、プリン……好きだったよな…… 懐が痛むが、 しゃぁねぇか)

少しためらった後、ドイツの有名菓子メーカー「ホルテン」の高級プリンセットを指してこう言った。

琢磨呂
「包装付きで、これを……」
店員
「贈り物でしたら、リボンをお付けいたしますが、何色に なさいますか?」
琢磨呂
「……スカイブルー、ありますか?」
店員
「え、あ、水色ですね、水色ならありますが」
琢磨呂
「じゃ、それで」
店員
「かしこまりました……(包装してる)……それでは、3000 円になります……ありがとうございました」



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