エピソード135『召喚』


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エピソード135『召喚』

時雨君の自宅、またの名を「忍者屋敷」。およそ300年前に建てられたこの屋敷には数々の謎が残っている。

時雨
「ふぅ、準備完了」

数十本の蝋燭の炎の中、漆黒のローブを身に纏い数十にもおよぶルーンを刻んだ剣を構えながらそうつぶやいた。

トラッシュ
「時雨様、如何なさるつもりで……」

部屋の片隅から声が発せられた。

時雨
「心配することはない。最近は物騒なんでね、保険をかけ ようと思ってるだけだよ」
トラッシュ
「では、御意のままに」

声の主が影の中から現れた。一見、少し大きな黒猫に見えるがその背中からは大きな蝙蝠の羽がはえていた。

時雨
「はじめるよ、サポートを頼む」

時雨はそう言うと目の前に描かれた魔法陣に目を向けた。

時雨
「Omnipotenns Aeterne Deus, Qui totam Creaturam Cnndidisti in laudem et honorem tuum, ac ministeriumhominis,oro ut Spiritum ……」

およそ1時間におよぶこの詠唱が終わる頃、時雨の顔には微かに疲労の表情が見て取れた。

時雨
「至高にして神聖なるエロヒム・ゲボルよ、ソロモンのペ ンタグラムによりて、我、汝を召喚せり。来たりて我が力に従え」

その声を待っていたかのように魔法陣が黒い炎を吹き上げ、一つの形になった。

ゲボル
「ふぅん、小僧か。よく儂をこき使ってくれる」
時雨
「これは、これはご老体にはご機嫌うるわしく……」
ゲボル
「前置きはいらぬ、まったく、契約さえなければ……」
時雨
「それでは用件を。実は最近私の周りが物騒でして、あな たの力を借りようと思いまして」
ゲボル
「いままでの、術だけでは足りぬか」
時雨
「私が得意とするのは召喚術や創造術です。前もって準備 していれば不覚をとることは無いでしょうが、突然の問題には対処しかねます。まさか、私のゴーレムたちを連れて歩くわけにもいきますまい」
ゲボル
「なるほどな、お主が契約を結んだのはほとんどが大人し い者ばかり、実際の戦いとなると使いもんにはならんか」
時雨
「はい、つきましてはあらたに司霊バルツァベルと司霊カ シュモダイと契約を結びたいのです」
ゲボル
「ふぅん、カシュモダイはともかくバルツァベルは火星の ルーラー。おまえに押さえられるのか?」
時雨
「はっきり言いまして、五分五分です。この確率で契約の 儀式を試みる馬鹿な魔導士はいますまい」
ゲボル
「確かにな、それで儂の出番と言う訳か」
時雨
「ご助力感謝します」

東の空がぼんやりとあけてくる頃、閉ざされた地下室から現れた時雨は憔悴していた。

時雨
「これで何とか一人前かな」

独り言を口にしながら、時雨は両腕に新たに刻まれた紋章を眺めていた。



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