エピソード144『インフルエンザ』


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エピソード144『インフルエンザ』

おぞましいもの

「しっかし、あいつが絡むとろくな事が無いからな……」

ぼやきながら歩く朝、その隣には「御目付役」と称してついてきた美々がいる。(単なる好奇心という話も……)

美々
「で、どこなん郁代さんの家って?」
「あんなやつに「さん」付けせんでええ」
美々
(この間の写真の件からえらい機嫌悪いな……)
「ほら、車でいくで」

ぴ〜んぽ〜ん。

美々
「……」
「……」

ぴ〜んぽ〜ん。

美々
「……」
「……」

ぴんぽん、ぴんぽん、ぴんぽん、ぴんぽん、ぴんぽん、ぴんぽん。

「こらぁ郁代〜!! でてこんかい!!」

ドアを叩く朝。その横で美々がドアノブを回すと……。

美々
「朝ちゃんあいてるで」

一人暮らし用アパートらしく玄関はこじんまりと小さく、すぐ台所になっている。ふすまがあり、その奥で咳き込む声が聞こえる。

美々
(? 女の人のような咳……?)
「郁代、おるんやろ、はいるで」

がらっと襖を開けると案の定ふせっている郁代の姿があった。

「……」
美々
「……」
郁代
「けほっけほっ。ふー。ふー」
美々
(色っぽい)
(おぞましいな)
「はー。(溜息)郁代きたで」
美々
「こ、こんちわ……」
郁代
「あ、あれ? ひーちゃん? この人は?」
「美々ゆーて、俺の妹みたいなもの」
郁代
「……あ、 この間ゆーてた『この世に2つある……(大事 ものの1つ)』」

ボグッ! 

美々
「朝ちゃん! 病人に何するんよ!」
「こっ、こいつは……」

ぎりぎりと首を絞め上げられる郁代。
 閑話休題

「で、飯はくっとんのか?」

力無く郁代は首を振る。

郁代
「そんな気力もわかんわ」

美々は朝をちょっとつついた。

美々
「(小声で)朝ちゃん。 郁代さんてやっぱり女の人やん。
ジト目)」
「(小声で)前にもゆーたやろ、変身能力者やて。それに写 真と顔ちゃうやろ。別のやつに変わっとるんや」
美々
「(小声で)そー言えばそうやな」
郁代
「けほっけほっ。ふーふー」
「美々悪いけどお粥かなんか作ってやってくれへんか?」
美々
「えーよ」
郁代
「すみません。ご迷惑をおかけしま……けほっけほ」
「……(お前の存在自体が俺にとって迷惑や)」
郁代
「あの、できれはかつおだしの梅味が……」

美々は台所にいってしばらく後戻ってくる。

「ん。えらいはやいやんか」
美々
「……。私の手にはおえんわ。この台所」
「どないしたんや」
美々
「だって、鰹節にカンナやで! 一体いつの時代の台所や のん、ここ」

朝と美々がさして広くない台所見に行くと、そこには様々な調理器具が所狭しとおいてあり、またぶら下がっている。ふと、ガス台を見るとそこにはおそらく炭で熱を加えるのだろうとおぼしきコンロがおいてあった。
 ガス台は……ない。

「これは……変な奴やと思っていたけどこれほどまでに凝 り性やとは……」
美々
「どうしよう、お姉ちゃん呼ぼうか?」
「……お手上げやな」

#つづくかな? 



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