士堂彼方の下宿。木造の一階。
彼方はおらず、美樹が炬燵で寝ている。
- 電話
- (ピロピロピロピロ ピロピロピロピロ)
- 美樹
- 「うにゃ? ふぁい。彼方邸です」
- SF研の女性1
- 「あ、狭淵君? 士堂君は?」
- 美樹
- 「んー、部屋の状態から察するにまだ帰ってませんねぇ」
- SF研の女性1
- 「そっかぁ。まだ実家なの?」
- 美樹
- 「そう聞いてますけど」
- SF研の女性1
- 「他には誰かそこにいるの?」
- 美樹
- 「さっきまで、戸沢氏が居ましたけど。
んー。寝てる間に帰ってみたいですね」
- SF研の女性1
- 「何してたの?」
- 美樹
- 「maslの閲覧会」
- SF研の女性1
- 「ふーん。じゃ、士堂君帰ったら、すぐにアーサー(SF研の
メンバーの出入りする草の根BBS)の方、アクセスするようにって言っといて。あ、メモでも書いといてよ」
- 美樹
- 「了解」
- SF研の女性1
- 「じゃ、よろしく」
- 電話
- (チン)
- 美樹
- 「(めんどくさいですねぇ)うーむ。今は何時でしょうか」
- ほととぎす
- 「ひょーーーーーーーっ、ひょけきょ!」
- 美樹
- 「むぅ。春か……もう一回寝ましょうか」
春の日は燦々と射し込み、再び眠りに落ちる美樹。
しばしの時間経過。
- 電話
- (ピロピロピロピロ ピロピロピロピロ)
- 美樹
- 「(またですか)はい、彼方邸です」
- SF研の女性2
- 「あれ? 狭淵さんですか? 士堂さんは?」
- 美樹
- 「まだ実家だと思いますよ。連絡在りませんし。
もう、お引っ越しでしたっけ?」
- SF研の女性2
- 「えぇ。明後日にも、荷物送っちゃうんです」
- 美樹
- 「就職先、関東でしたよね」
- SF研の女性2
- 「えぇ、神奈川なんですよ。あ、間海ですから」
- 美樹
- 「米軍基地取材の時には寄らせてもらいますよ」
- SF研の女性2
- 「自転車でですか?」
- 美樹
- 「暇がありましたら」
- SF研の女性2
- 「あ、で、用件なんですけど、士堂さん、本棚欲しいって
言ってたんで、とっといたんですけど、取りに来ないんですよ。どうしましょう」
- 美樹
- 「そうですね。鍵は開いてますし、なんだったら、今から、
私、運ぶの手伝いましょか?」
- SF研の女性2
- 「あ、ならお願いできます?」
- 美樹
- 「判りました、なら今から行きますよ」
- SF研の女性2
- 「はーい。それでは」
- 電話
- (チン)
- 美樹
- 「さーて、と。行きますか」
炬燵と電灯のスイッチを切り、立て付けの悪いドアを開いて出ていく美樹。
後には誰もいない。春の光だけが……
- 電話
- (ピロピロピロピロ ピロピロピロピロ ピロピロピロピロ
ピロピロピロピロ ピロピロピロピロ ピロピロピロピロ
ピロピロピロピロ ピロピロピロピロ ピロピロ……)
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