エピソード150『春なのに……春だから……』


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エピソード150『春なのに……春だから……』

士堂彼方の下宿。木造の一階。
 彼方はおらず、美樹が炬燵で寝ている。

電話
(ピロピロピロピロ ピロピロピロピロ)
美樹
「うにゃ?  ふぁい。彼方邸です」
SF研の女性1
「あ、狭淵君?  士堂君は?」
美樹
「んー、部屋の状態から察するにまだ帰ってませんねぇ」
SF研の女性1
「そっかぁ。まだ実家なの?」
美樹
「そう聞いてますけど」
SF研の女性1
「他には誰かそこにいるの?」
美樹
「さっきまで、戸沢氏が居ましたけど。
んー。寝てる間に帰ってみたいですね」
SF研の女性1
「何してたの?」
美樹
「maslの閲覧会」
SF研の女性1
「ふーん。じゃ、士堂君帰ったら、すぐにアーサー(SF研の メンバーの出入りする草の根BBS)の方、アクセスするようにって言っといて。あ、メモでも書いといてよ」
美樹
「了解」
SF研の女性1
「じゃ、よろしく」
電話
(チン)
美樹
「(めんどくさいですねぇ)うーむ。今は何時でしょうか」
ほととぎす
「ひょーーーーーーーっ、ひょけきょ!」
美樹
「むぅ。春か……もう一回寝ましょうか」

春の日は燦々と射し込み、再び眠りに落ちる美樹。
 しばしの時間経過。

電話
(ピロピロピロピロ ピロピロピロピロ)
美樹
「(またですか)はい、彼方邸です」
SF研の女性2
「あれ?  狭淵さんですか? 士堂さんは?」
美樹
「まだ実家だと思いますよ。連絡在りませんし。
もう、お引っ越しでしたっけ?」
SF研の女性2
「えぇ。明後日にも、荷物送っちゃうんです」
美樹
「就職先、関東でしたよね」
SF研の女性2
「えぇ、神奈川なんですよ。あ、間海ですから」
美樹
「米軍基地取材の時には寄らせてもらいますよ」
SF研の女性2
「自転車でですか?」
美樹
「暇がありましたら」
SF研の女性2
「あ、で、用件なんですけど、士堂さん、本棚欲しいって 言ってたんで、とっといたんですけど、取りに来ないんですよ。どうしましょう」
美樹
「そうですね。鍵は開いてますし、なんだったら、今から、 私、運ぶの手伝いましょか?」
SF研の女性2
「あ、ならお願いできます?」
美樹
「判りました、なら今から行きますよ」
SF研の女性2
「はーい。それでは」
電話
(チン)
美樹
「さーて、と。行きますか」

炬燵と電灯のスイッチを切り、立て付けの悪いドアを開いて出ていく美樹。
 後には誰もいない。春の光だけが……

電話
(ピロピロピロピロ ピロピロピロピロ ピロピロピロピロ
ピロピロピロピロ ピロピロピロピロ ピロピロピロピロ
ピロピロピロピロ ピロピロピロピロ ピロピロ……)



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