エピソード153『ホワイトデーとかいう行事もあったんですねぇ』


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エピソード153『ホワイトデーとかいう行事もあったんですねぇ』

3月14日。吹利市、京大吹利キャンパス内の公衆電話ボックス。
 美樹が電話をかけているようです。

美樹
「うん、京阪の吹利駅と言うことでどうでしょう」
美樹
「そうですね。少し暖かくなったとはいえ、アレは応えま したからね」
美樹
「3時では?」
美樹
「うーん、なら、いつならそれ終わって出てこれます?」
美樹
「あ、そうなんですか」
美樹
「なら、そう言うことで。4時半で」
美樹
「それでは。4時半に」

あ、出てきました。4時半らしいです。
 4時15分過ぎ。京阪吹利駅。
 人を待たせるのが嫌いな美樹は、早めに来すぎています。
 しかし、読む本はいくらでもある模様。柱にもたれ掛かって、何やら、「九谷焼と甲冑」なる古ぼけた本を広げています。
 背表紙に値段のシールが貼ってあるところを見ると古本のもようです。
 居心地悪そうに、背中をしきりにもたれ直しています。
 あ、駅の出口の方から、ショートカットの女性が現れました。
 美樹を見つけると真っ直ぐに向かってきます。
 「先輩!」
 声をかけられて、美樹は本をしまってショルダーバッグを持ち直す。
 「や」
 短く、返す。
 「その辺の喫茶店でもはいろか?」
 そう言いながら、駅の出口に向かう二人。
 「あ、先輩?  あたしいい喫茶店見つけたんですよ。パンも売ってるの」
 「へー」
 そういう店って結構あるんだなぁと考えながら、相づちを打つ美樹。
 「ベーカリーが、メインみたいなんだけどね」
 「なんて店?」
 「ベーカリー楠ってゆーの」
 思わず転けそうになる美樹。
 「ぶない。割るところであった」
 「どうしました?」
 「それ、知り合いの店なんですよ。ほら、ネット関係のさ」
 「ふーん、そうなんだ」
 「という訳で、別の店にしませんかね」
 「えーっ。いいけどーっ」
 少しふくれる彼女。
 美樹は、ごまかすつもりか、アーケード内の小さな店を指さす。
 「で、そこにしません?」
 「アオダマ?  ふーん、ま、良いですけどね」
 「お茶一杯ぐらいおごりましょう」
 「らっきー」
 軽く肩をすくめながら店に入る美樹。
 テーブルについて、美樹はアップルティーを、彼女はロシアンティーを頼む。
 「で、これ。一応おかえしということで」
 美樹は、いつもの鞄から小ぶりの箱を取り出して彼女に手渡す。
 「ん。ありがと。帰ってから楽しみに開けてみるわ」
 ……んで、用件は終わったようで、1時間弱の歓談のあとで、
 二人は、店を出ていく。
 「ほんじゃ、また」
 「じゃ」
 店の前で反対方向に分かれていく二人。
 しかし美樹は気付いていないもようです。
 この店も、高校生組のたまり場であったということに……(笑)
 #このあと特に話題には発展しなかったのか……



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