エピソード155『ねぇねぇ、本よんでっ!』


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エピソード155『ねぇねぇ、本よんでっ!』

これは子供に「ねぇ、本を読んで!」と言われた後の各々の反応を調べたものである……。

湊川観楠の場合

かなみ
「ねぇ、本を読んで!」
観楠
「えーっと『ももたろう』だね。
むかーし むかーし
ある所におじいさと おばあさんがいました。
おじいさんは山へ しばかりに おばあさんは川へ洗濯をしにいきました……」

<中略>

観楠
「こうして桃太郎と家来とおばあさん、おじいさん達は、 いつまでも、いつまでも幸せに、暮らしましたとさ。
めでたし めでたし……と。
かなみ?」
かなみ
「くーくー」

かなみは小さな寝息を立てていた。

観楠
「ん……眠っちゃったのか」

少し考えていた観楠。
 やがて立ち上がると、かなみに上からそっと毛布をかけてあげた。

高村文雄の場合

かなみ
「ねぇ、本を読んで!」
文雄
「よかろう。何々、『ももたろう』か……
昔、昔ある所にお爺さんとお婆さんがいました。
お爺さんは山へ芝苅に お婆さんは川へ洗濯をしに行きました。
さて、ここで疑問点が生じる。まず文頭に『昔昔』とあるが、いったいどのくらい昔なのだろうか? 
まずお爺さん、お婆さんが出てきている時点で少なくとも……」
かなみ
「ふわぁぁぁぁ(欠伸)」

<中略>

文雄
「こうして桃太郎と家来とおばあさん、おじいさん達はい つまでも、いつまでも幸せに暮らしましたとさ。
めでたし、めでたし……。
ここで私は幸せについて述べておくべきだろう。今までにもいくらかの人物が……」

かなみ、当然寝ている。
 文雄、まだ続けている。

正正正の場合

かなみ
「ねぇ、本を読んで!」
「(何だ面倒クサイな)あ〜わかった、わかった。『ももた ろう』だな? 
むかーし、むかーし、ある所におじいさんとおばあさんがいなかった! ほれ、終わりだ」

正、絵本をかなみの前に投げ捨てる。
 かなみ、泣く。

長瀬 顕 の場合

かなみ
「ねぇねぇ、お本読んでぇ」
「ん、なになに『ももたろう』か。ちょっと待ってろよ」

話の筋を思い出し、メジャーコード*1とマイナーコード*2に分ける

「むかーしむかしー あるむらにー おじいさんとおば あさんんん がぁ おったそおなー おじいさんはやまにしばかりにぃー おばあさんはかわにせんたくにー」

かなみは心地よさそうに眠りはじめる

(うっ、子守り歌にされちまった……しかし、かわゆい から許すっ)
*1メジャーコード
 明るい雰囲気の和音
*2マイナーコード
 暗い雰囲気の和音
技術的には、メジャーコード構成音の2つ目にフラットをつけるとマイナーコードになる

岩沙琢磨呂 の場合

かなみ
「ねぇねぇ、お本読んでぇ」
琢磨呂
「ん、『ももたろう』か……よし、読んで上げよう」
琢磨呂
「昔々、おじいさんとおばぁさんがおりました」
かなみ
(じっと聞き入る)
琢磨呂
「おじいさんは太平洋へ戦争に、おばぁさんはさらなる田 舎へと疎開して行きました」
かなみ
(首を傾げ始める)
琢磨呂
「おじいさんは、台湾、ガダルと転戦し、最後には硫黄島 で壮絶な最期を遂げられました。おばぁさんはその知らせを聞いていてもたってもいられなくなり……」
かなみ
「ねーねー、たくまろにぃ様、何かお話しが違わない?」
琢磨呂
「……む……何のことだぁ? なんのことだかさっぱりわ かんねーぜ? おじいさんはちゃんと20機撃墜したエースだったし、おばーさんはその後にB29を竹槍で落としたツワモノだぞ?」
かなみ
「……もういいもん! 父様に読んでもらうから」

不破影跳 の場合

かなみ
「ねぇねぇ桃太郎の話して」
影跳
「ゴメン知らないんだ」
かなみ
「えー知らないの(ウルウル)」
影跳
「姉ちゃんに聞いてくる(逃げ出す)」
影跳
「姉ちゃん姉ちゃん」
「うるさいねぇ。いまいいとこなんだから黙ってな」
影跳
「何やってんの?」
「ペンタゴンの防衛システムのハッキング」
影跳
「やめなさい。そんな危ないこと!!」
「おや、そんなこと言ってもいいのかい?
いま世界はわたしの手の内にあるも同然なのよ。ふふふふふふ」
影跳
「俺が悪かった!!」
「まぁわかればいいのよ。で、何の用?」
影跳
「そうそう。桃太郎ってどんな話」
「桃太郎を知らないの? あんな有名な話」
影跳
「知らないもんは知らないんだよ。教えてくれ」
「いいかい、桃太郎は日本三大悲劇と言われているくらい、 それはそれは哀しい話なんだよ。
昔昔、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。おじいさんはやまに芝刈りにおばあさんは川に洗濯に行きました。そこでおばあさんは、大きな桃を見つけました。おばあさんはその桃を持って帰り食べようと思って包丁を……」
影跳
(おじいさんとおばあさんは何を頑張ったんだろう)
「……そして猿、犬、雉に吉備団子泥棒の罪を着せられて 鬼が島に島流しになったんだとさ」
影跳
「姉ちゃんありがとう(^^) (走り去る)」
「影跳をからかうのは楽しいなぁ」
影跳
「かなみちゃん、桃太郎の話をしてあげるよ」
教えられたとおりに話す。
かなみ
「なんかちがうー」(泣)
影跳
(また騙された(T_T))



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