これは子供に「ねぇ、本を読んで!」と言われた後の各々の反応を調べたものである……。
- かなみ
- 「ねぇ、本を読んで!」
- 観楠
- 「えーっと『ももたろう』だね。
むかーし むかーし
ある所におじいさと おばあさんがいました。
おじいさんは山へ しばかりに おばあさんは川へ洗濯をしにいきました……」
<中略>
- 観楠
- 「こうして桃太郎と家来とおばあさん、おじいさん達は、
いつまでも、いつまでも幸せに、暮らしましたとさ。
めでたし めでたし……と。
かなみ?」
- かなみ
- 「くーくー」
かなみは小さな寝息を立てていた。
- 観楠
- 「ん……眠っちゃったのか」
少し考えていた観楠。
やがて立ち上がると、かなみに上からそっと毛布をかけてあげた。
- かなみ
- 「ねぇ、本を読んで!」
- 文雄
- 「よかろう。何々、『ももたろう』か……
昔、昔ある所にお爺さんとお婆さんがいました。
お爺さんは山へ芝苅に お婆さんは川へ洗濯をしに行きました。
さて、ここで疑問点が生じる。まず文頭に『昔昔』とあるが、いったいどのくらい昔なのだろうか?
まずお爺さん、お婆さんが出てきている時点で少なくとも……」
- かなみ
- 「ふわぁぁぁぁ(欠伸)」
<中略>
- 文雄
- 「こうして桃太郎と家来とおばあさん、おじいさん達はい
つまでも、いつまでも幸せに暮らしましたとさ。
めでたし、めでたし……。
ここで私は幸せについて述べておくべきだろう。今までにもいくらかの人物が……」
かなみ、当然寝ている。
文雄、まだ続けている。
- かなみ
- 「ねぇ、本を読んで!」
- 正
- 「(何だ面倒クサイな)あ〜わかった、わかった。『ももた
ろう』だな?
むかーし、むかーし、ある所におじいさんとおばあさんがいなかった! ほれ、終わりだ」
正、絵本をかなみの前に投げ捨てる。
かなみ、泣く。
- かなみ
- 「ねぇねぇ、お本読んでぇ」
- 顕
- 「ん、なになに『ももたろう』か。ちょっと待ってろよ」
話の筋を思い出し、メジャーコード*1とマイナーコード*2に分ける
- 顕
- 「むかーしむかしー あるむらにー おじいさんとおば
あさんんん がぁ おったそおなー おじいさんはやまにしばかりにぃー おばあさんはかわにせんたくにー」
かなみは心地よさそうに眠りはじめる
- 顕
- (うっ、子守り歌にされちまった……しかし、かわゆい
から許すっ)
- *1メジャーコード
- 明るい雰囲気の和音
- *2マイナーコード
- 暗い雰囲気の和音
技術的には、メジャーコード構成音の2つ目にフラットをつけるとマイナーコードになる
- かなみ
- 「ねぇねぇ、お本読んでぇ」
- 琢磨呂
- 「ん、『ももたろう』か……よし、読んで上げよう」
- 琢磨呂
- 「昔々、おじいさんとおばぁさんがおりました」
- かなみ
- (じっと聞き入る)
- 琢磨呂
- 「おじいさんは太平洋へ戦争に、おばぁさんはさらなる田
舎へと疎開して行きました」
- かなみ
- (首を傾げ始める)
- 琢磨呂
- 「おじいさんは、台湾、ガダルと転戦し、最後には硫黄島
で壮絶な最期を遂げられました。おばぁさんはその知らせを聞いていてもたってもいられなくなり……」
- かなみ
- 「ねーねー、たくまろにぃ様、何かお話しが違わない?」
- 琢磨呂
- 「……む……何のことだぁ? なんのことだかさっぱりわ
かんねーぜ? おじいさんはちゃんと20機撃墜したエースだったし、おばーさんはその後にB29を竹槍で落としたツワモノだぞ?」
- かなみ
- 「……もういいもん! 父様に読んでもらうから」
- かなみ
- 「ねぇねぇ桃太郎の話して」
- 影跳
- 「ゴメン知らないんだ」
- かなみ
- 「えー知らないの(ウルウル)」
- 影跳
- 「姉ちゃんに聞いてくる(逃げ出す)」
- 影跳
- 「姉ちゃん姉ちゃん」
- 寧
- 「うるさいねぇ。いまいいとこなんだから黙ってな」
- 影跳
- 「何やってんの?」
- 寧
- 「ペンタゴンの防衛システムのハッキング」
- 影跳
- 「やめなさい。そんな危ないこと!!」
- 寧
- 「おや、そんなこと言ってもいいのかい?
いま世界はわたしの手の内にあるも同然なのよ。ふふふふふふ」
- 影跳
- 「俺が悪かった!!」
- 寧
- 「まぁわかればいいのよ。で、何の用?」
- 影跳
- 「そうそう。桃太郎ってどんな話」
- 寧
- 「桃太郎を知らないの? あんな有名な話」
- 影跳
- 「知らないもんは知らないんだよ。教えてくれ」
- 寧
- 「いいかい、桃太郎は日本三大悲劇と言われているくらい、
それはそれは哀しい話なんだよ。
昔昔、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。おじいさんはやまに芝刈りにおばあさんは川に洗濯に行きました。そこでおばあさんは、大きな桃を見つけました。おばあさんはその桃を持って帰り食べようと思って包丁を……」
- 影跳
- (おじいさんとおばあさんは何を頑張ったんだろう)
- 寧
- 「……そして猿、犬、雉に吉備団子泥棒の罪を着せられて
鬼が島に島流しになったんだとさ」
- 影跳
- 「姉ちゃんありがとう(^^) (走り去る)」
- 寧
- 「影跳をからかうのは楽しいなぁ」
- 影跳
- 「かなみちゃん、桃太郎の話をしてあげるよ」
教えられたとおりに話す。
- かなみ
- 「なんかちがうー」(泣)
- 影跳
- (また騙された(T_T))
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