エピソード167『入学式を終えて』


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エピソード167『入学式を終えて』

四時過ぎ。既に各部の勧誘作業も終わりはじめ、サークルなどの出店も撤収に入っている。

文雄
「さてと……帰るか」
勧誘員男
「あの、一回の方ですよね」
文雄
「(このひげを見てもそう考えるのか?)ああ、確かに一回 だ。……ただし、修士一回だがな」
勧誘員女
「あの、一回の方ですよね」
文雄
「(どうやら修士の一言がちゃんと理解できていないらし いな)」
勧誘員男
「まだサークルとか決めていないんですよね?」
文雄
「(四時過ぎになっても校内をうろついているというのは、 行くところが決まっていれば無いだろうな)」
勧誘員女
「美術部は面白いですよ」
文雄
「四年前には面白そうなところが無かったんでどこにも入 らなかったんだがな(正確には途中でやめたんだが)」
勧誘員男
「えっと……もしかして院生の方ですか?(汗)」
勧誘員女
「どうもすみませんでしたっ(平謝りっ)」
文雄
「ま、別に良いんだが」

勧誘員達は逃げ去った。

文雄
「世のなか侮れんな(ひげをいじる)」

そして……雑踏のさくら通りを帰途に就いた。

ナンパ男1
「でさ、いいとこ知ってるんだけど行かない?」
一回女1
「そうねぇ……」
文雄
「(入学そうそうナンパかね)」
ナンパ男2
「駅前に良い喫茶店あるんだけど」
一回女2
「ええっ、でも……(躊躇)」
ナンパ男2
「(なんだよ、サテンに誘っただけなんだぜ。たいしたお 嬢様だぜ)」
一回女3
「行ってみましょうよ、ね」
文雄
「(やれやれ)」

数歩歩くごとにナンパの会話が聞こえる。
 さすがに文雄も呆れてしまったらしい。

文雄
「やれやれ、いくらさくら通りだからってこいつはやりす ぎってもんじゃありませんかね、桜姫様。(呟くように)」

困ったような笑みを浮かべた桜姫の姿が、一瞬目に写ったような気がした。



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