エピソード180『女だぁぁ……』


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エピソード180『女だぁぁ……』

琢磨呂
「ういーっ、しんど」
慎也
「そろそろ御飯にするか」
三彦
「ウム、では携帯食量を(がさがさ)」
涼介
「僕はカップ麺で良いや……三彦、お湯頂戴ね」
三彦
「これから湧かす、暫し待つがよい(固形燃料とウイングス トーブを取り出す)」
琢磨呂
「暴れたらションベン行きたくなってきた、ちょっくら行っ てくるわ」
慎也
「30分ぐらいしたらゲーム始めるで?」
琢磨呂
「馬鹿野郎! そんなに長いションベンがあるか(歩き出す)」

ここは吹利県にある、某自然公園。例のメンバーは裏の森でサバイバルゲームに勤しんでいた。

琢磨呂
「公園の裏だから便所があるってのは便利だよなぁ……」

琢磨呂は用を足す為にゆっくりと便所に近ずいてくる。当然全身迷彩服で、サングラスをかけ、ジャングルブーツを履いている。腰には当然ながらベレッタ、肩口のサスペンダーには銃剣が刺さっている。端から見たら漫画に出てくる鬼軍曹のような格好だ。一般人が見たら警察に通報するかもしれない。
 琢磨呂が便所まであと30mに近ずいた時、ダークグレーの洒落たボストンバックを抱えた『美女』が、赤いスカートを穿いた人間をモチーフにしたマークを張り付けられた方の便所に、辺りをきょろきょろと見回しながら入っていった。当然ながら、大便器しかないほうだ、琢磨呂はその反対にある、小便器と大便器を兼ね備えた、青色のズボンを穿いた人間をモチーフにしたマークを張り付けた方の便所に入るのである。

琢磨呂
「? たしかに美人だったが……あんなにきょきょろして、 何かやましい事でもあるのかよ?」

琢磨呂は気が付いていなかったが、その『美女』は琢磨呂に気がつかなかったのだ。バックが森林で30mも離れていると、迷彩服に身を包んだ琢磨呂を発見するにはある程度の視力がないと難しいのだ。
 それはともかく、琢磨呂は不思議に思いつつも、下腹部の廃棄物タンクにかかる圧力を感じ、そのまま青いマークを付けた方の便所に入っていった。

SE
「んじょろろろろろ……じょろ……ぴっ、ぴっ」

男性諸君にとって、聞きなれた効果音が響く。陶器の受け皿に、黄金色の液体がなみなみとそそがれ……ていくのはどうでも良い。
 琢磨呂はその自慢のビッグキャノンをズボンの中にしまい込むと、古ぼけた鏡を見て髪型を直し始めた。その時だった。
 琢磨呂のすばらしき耳は、となりの赤いマークを付けた大便器しかない便所で、衣擦れの音がさらさらと聞こえるのを聞きつけた。
 ムリもない。周りはただただ山で、町の喧騒から完全に隔離された空間であるのだから。

琢磨呂
(うっ……ス@トロの趣味はないが、結構エッチだなぁ、 このシチュエーションは……)
SE
「さら……さらさら……パチッ、カチャカチャッ」
琢磨呂
(ベルトか……いい音だ(ニヤリ)……ってそんなんやって る場合では……さっきなんであんなに周りを見回したりしてたんだ? まさか時限爆弾でも……)

こんな町外れの便所に時限爆弾を仕掛けたところで、吹き飛ぶのは便所の壁だけだと普通はおもうのだが、下心と探求真に燃えた琢磨呂の聡明かつ明晰な頭脳にそんなものが通用するはずが無い。0.02秒後、琢磨呂は姿勢を低くして、赤いマークのついた大便器しかない方の便所へと偵察に入っていた。

琢磨呂
(吹利市民の為の、偵察だ、これは……消して覗きなどでは ない……(と呪文の様に心の中で何度も唱える))

琢磨呂は、唯一閉じられている大便器のあるべき囲いの横にある大便器の囲いに入り込み、そして大便器の先端部分にある金隠しに脚を掛けると、ブーツをきしませない様にゆっくりと身体を上げていった。
 そして大便器の囲いの上から、『美女がいるはずの』大便器の囲いの中を覗き見ようとしたその時、コンピュータRPG等にありがちな、魔法のような音が聞こえてきた。UFO的と言うのだろうか、電子音ではないのだが、この世のものとは思えないような不思議な音だ。

琢磨呂
(やっぱり何か妖しい事でもやってるんだ……美女だからっ て許されると思うなよ……)

不思議な音は2秒程度でぷつりと途絶え、辺りには小鳥のさえずりしか聞こえなくなった。そして、またさっきのカチャカチャと言う音が聞こえ始めた。
 琢磨呂は、腰のベレッタを引き抜くと、金隠しの上の水流しハンドルに脚を乗せ、パッ! と飛び上がると大便器の囲いの上に飛び上がり、そして眼下の
 『美女がいるべきである』空間にベレッタを向けた。電光石火の早業であった。

琢磨呂
「そこで何をやっているかァ!!(物凄い大声)」

端から見れば、琢磨呂こそそこで何をやっているかと言われるようなシチュエーションだったが、琢磨呂はそこにあったものを見て愕然とした……。
 そう、そこには、女物の下着を脱いで、男物の下着を今まさにはかんとする、紛れもない『男性』が存在していたからだ。紛れもないかどうかどうしてわかるのか?
 そう……琢磨呂は見てしまったのだ、その『さっきまで美女の居たはずの空間に存在する男性であろう生命体の股間に生えしモノ』を。

郁代
「……(絶句)」
琢磨呂
「……(半気絶状態)」

刹那、琢磨呂は銃を構えたままの体勢で後方すなわち大便器のあるべき場所へと転がり落ちた。轟音とともに便器を直撃する琢磨呂。
 郁代は灰色のボストンバックに着替えのほとんどを詰め込むと、見られてはならないものを見られてしまったと、一目散に公園の出口へ走り出した。
 精神的ショックと落下ショックで完全に気絶していた琢磨呂を数分後に発見したのは、一緒にサバイバルゲームをやりに来ていた浅井素子17歳であった。
 数時間後……。

素子
「バカ、スケベ、ヘンタイ!」
琢磨呂
(……確かにあれは女だった……それもとびきりの美女。 そして俺が銃を向けたあの男の傍らには、確かに俺が最初に確認した、あの美女が持っていた鞄があった……怪町吹利、謎多き……か……いつか解明してやるぞ、あの美女め!)
慎也
「覗きやって倒れるか、フツー?」
琢磨呂
「ば、馬鹿野郎! 変な音がするから行って見ただけだっ てば!」
三郎
「往生際の悪いやっちゃなァ……覗き見つかってはり倒さ れて気絶しとったんちゃうんかいな?」
琢磨呂
「(銃を向ける)いー加減にしゃぁがれ! 俺は無実だ!」
三郎
「……わ、わーたってば……銃を向けるな、その危ない銃 を」
琢磨呂
「(銃を下ろす)解れば良い」
素子
「ふーーーーーーーん、そーなんだ……ふーーーーーーーん」
琢磨呂
(いっぺんぶち殺してやるこのアマ(ピクピク))



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