- 喬
- 「つまらない話だな。睡眠口座を量産したいのか店は?」
日之丸吹利店クレジット顧客開拓キャンペーンと書かれた通達を握り締めながらつぶやく)
- 同僚
- 「まぁ、日之丸が他社に対抗して出来ることって言やぁ、
このくらいだから仕方ないって」
- 喬
- (めまいがしたように頭を押さえて)
「わかってますけどね、言わずにはいられないって感情がありますんで(苦笑)」
- 同僚
- 「わかるわかる(苦笑)
じゃ、俺、新本町地区だからココで降りるわ」
- 喬
- 「帰りパチンコに寄らないよーに(笑)」
- 同僚
- 「大門もゲーセンに寄るなよ(笑)」
- 喬
- (さて、ついたか……取り合えず昼飯食ってそれからだな
うまいパン屋があるって聞いたし(喜))「思ったより人通りが少ないな」
まわりの店を見物しながらしばらく歩く)「あ……子供連れだ」
以下、その子供連れの会話
- 影跳
- 「姉ちゃん、昼飯くらい俺が作るから、毎日外食するのは
やめてくれよ、ただでさえ今月苦しいのに(涙声)
- 寧
- 「銀行の預金口座をいじればすむことじゃないの。
それとも何、また1ヶ月連続で同じロシア料理をごちそうしてくれるのかしら(棘)」
- 影跳
- 「好き嫌いしてると大きくなれないよ」
- 寧
- 「私は永遠の美少女だからいいの」
- 影跳
- 「婆ァのクセに(ぼそっ)」
- 寧
- (無言でなぐる)
容赦ない連続攻撃、いやぁもう描写できないくらい残酷な攻撃。
- 影跳
- (虫の息)
- 寧
- 「ほら、いつまでも寝てんじゃないの(叩き起こす)」
- 影跳
- 「いててててて…… (上体を起こし頭をさする)
ん…… (なにか見つけた) 姉ちゃん人が倒れてるよ……。
地面に突っ伏している大門喬。
- 喬
- (そろそろおむかえがきたようです。
父さん、母さん今までありがとう……さようなら)
↑走馬灯がラストシーンに差し掛かっている)
- 寧
- 「あら、ホントだ」
- 影跳
- 「救急車呼ばなきゃ、取り合えずこの人をベーカリー楠ま
で運んでおこう」
- 寧
- 「じゃ、がんばってね影跳」
- 影跳
- 「……」
手伝っては、くれないだろうなぁ)
からん、ころん
- 影跳
- (喬を背負っている)「観楠さーん(ぜいぜい)」
- 観楠
- 「あ、影跳君いらっしゃい……!?
おもむろに立ち上がって) どうしたの、その人?」
- 影跳
- 「まず、一緒に運んでくれませんか?(ひぃひぃ) 重くて
かなわないから」
観楠と影跳、喬を長椅子に寝かせる。当の喬は目覚める様子はない。
影跳が観楠に事情を説明しているうちに……
からん、ころん。
- 寧
- 「影跳ぉ。公衆電話まで行ったけど財布がなくって救急車
呼べなかったわ」
- 観楠
- 「あのね、寧ちゃん。110番や119番っていうのはお金を入
れなくてもかけられるんだよ」
- 影跳
- 「ええっ、知らなかった」
- 寧
- 「……へ、へぇ、そうなんだぁ(忘れてた)」
- 影跳
- (けっ!)
- 寧
- (無言で影跳に向かって突き出した手をぐっ! と握って
見せる)
- 影跳
- (無言で3歩下がって、土下座)
- 観楠
- 「(二人に冷汗を流しながら)じゃあ、とにかく救急車を……」
- 喬
- 「ぃゃ、けっこうです……(ゆっくり上体を起こして)
もう、大丈夫ですから」
- 観楠
- 「ホントに大丈夫ですか?」
- 喬
- (ああ、ホント痛いかったよ(泣))
「ええ、ただのめまいみたいなものですから」
- 観楠
- 「道で倒れていたんでしょう?
もう少し休んだ方がいいですよ」
- 影跳
- 「そうだよ、幸い今日もここも空いてるし……」
- 観楠
- 「幸いって……そういう言い方って(半泣き)」
- 寧
- (影跳を睨んで)
なにシャレにならんコト言ってンのよっ!!(小声))
そこらへんにあったトレイで影跳を殴る。
- 影跳&喬
- 「いてっ!!」
- 観楠&寧
- 「は?」
寧、もう3発ほど影跳の頭を加減無しで殴ってみる。
- 影跳
- 「いたたたたっ!!」
どたっ!
喬はそのまま長椅子から転落してしまった。
- 寧
- 「なんか知らないけど、おもしろいわね(笑)」
- 喬
- (ひどい、ひどすぎる……
立ち上がって長椅子に座る。
- 観楠
- 「(なにやってるんだ? この人は) 大丈夫ですか」
- 喬
- 「……体質なんですよ」
- 観楠
- 「は?」
- 喬
- 「他人の痛みに過敏で、他人が殴られると自分も殴られた
ように感じて、ダメージを受けてしまうんですよ」
- 影跳
- (……ははぁ、もしかしたら最初倒れていたのも僕らが原
因じゃないだろうか)
- 観楠
- 「(やっぱり変な人だなぁ) そうなんですか……しかし、
なんでまた僕たちにそんな事を?」
- 喬
- 「一応言っておかないと、あの子がやめてくれそうにあり
ませんから」
- 影跳
- 「でも、姉ちゃんが意地悪だったら、さらに僕をブン殴り
続けるよ(笑)」
- 寧
- (トレイを高々とふりあげる)
- 影跳
- 「わわわわわっ! そんなもので殴ったらまたこの人が倒
れちゃうよ(汗)」
- 寧
- 「後で憶えてらっしゃいよ(ぎろり)」
- 喬
- 「大丈夫ですよ。この子はそんな事はしません」
- 観楠
- 「なぜ?」
- 喬
- 「(大汗)……そ、それは……そう思っただけですよ、そん
な意地悪な女の子じゃないって」
エンパシーで彼女の罪悪感を感知したなんて、さすがに言えないからな……)
- 寧
- 「えへへ……(照)」
- 影跳
- (だまされてる……)
- 寧
- (殺す、絶対殺す)
- 喬
- 「さて……大分楽になったし……仕事に戻らないと……
(観楠、影跳、寧に向かって) どうも、ご迷惑をおかけしました……」
- 寧
- 「ううん。……ホントにもう大丈夫?」
- 影跳
- 「原因は僕らだから、謝るのは僕らのほうだよ」
- 喬
- 「いや、現にここまで運んで、救急車まで呼ぼうとしてく
ださったわけですから……
(名刺を取り出して、影跳と観楠に渡す)
またお礼に伺いますので、差し支えなかったらお名前を教えていただけますか?」
- 影跳
- 「僕は不破影跳で……こっちは不破寧っていいます」
- 観楠
- 「僕は湊川観楠といいまして、ここ、ベーカリー楠の店主
をしてます」
- 喬
- 「え、ここがベーカリー楠なんですか?」
- 観楠
- 「ええ、そうですが……なにか?」
- 喬
- 「いえ、ここで昼食をとろうと思っていたものですから」
- 影跳
- 「(名刺を見て) そのためにわざわざ京都から?」
- 喬
- 「もちろん仕事で来たんですけど、友人から吹利においし
いパン屋があるって聞いたので……」
- 観楠
- (じぃぃぃぃん)
県外にここの事が流れているんだぁ……
おいしいなんて…… パン屋冥利に尽きるなぁ……)
- 寧
- 「そういや、私たちもお昼まだだったよね。影跳」
- 喬
- 「そうでしたか、でしたら私に払わせてください」
- 影跳
- 「え、いいんですか?」
この後、30分間ほど昼食……
- 寧&影跳
- 「ごちそうさまでした」
- 喬
- 「ごちそうさまでした、観楠さん。すごくおいしかったで
すよ。……と、お会計はこちらでよろしいですね?」
- 観楠
- 「あ、はい。 えっと金額丁度ですね」
- 喬
- 「では、私は仕事がありますのでこれで……またお伺いし
ますね」
喬、ベーカリー楠を後にする。
- 寧
- 「うーふふふふ、影跳ぉ。喬さんいなくなっちゃったわねぇ。
環ちゃんとの待ち合わせまでまだ時間があるから、その間にさっきの暴言の清算をしましょーねぇ(両手をわきわきしている)」
- 影跳
- 「姉ちゃん……」
- 寧
- 「なによ」
- 影跳
- 「青い空が奇麗だよ……(現実逃避モード発動)」
- 寧
- 「そんな事でごまかせるとでも?(ひくひく)」
- 影跳
- 「白い雲も素敵だよ……(現実逃避モード継続中)」
- 寧
- 「(ぶちん!) い、言いたいことはそれだけかしら?
……かぁーげぇーとぉぉぉ」
- 影跳
- (現実逃避モード瞬間解除)
「……っひぃぃぃぃぃ!(顔面蒼白)」
寧、トレイを振り回し、影跳を追い回す。
- 観楠
- 「寧ちゃんっ! トレイはそんな風に使っちゃだめだよ」
- 影跳
- 「……っぎぃゃああああぁぁぁあぁあああっ!!」
- 観楠
- (たのむから店壊さないでぇ……)
叫びは大通りに向かって歩いている喬の耳にも聞こえた
- 喬
- 「ベーカリーから聞こえたなぁ、……何かあったんだろう
か?(ベーカリー楠まで走って、窓から覗き込む)」
そこでは、トレイで頭を殴られ続けている影跳の姿が……
- 喬
- 「……はうっ(その場に倒れ込む)」
それから、十数分後……寧の気がおさまった頃、ベーカリー楠のドアが鳴った。
からん、ころん
- 環
- 「観楠さーん、影兄!! 店の前でスーツ着た人が倒れてる
んだけど……」
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