エピソード202『大門喬の不幸な異能』


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エピソード202『大門喬の不幸な異能』

近鉄吹利線を走る電車の中で……

「つまらない話だな。睡眠口座を量産したいのか店は?」
日之丸吹利店クレジット顧客開拓キャンペーンと書かれた通達を握り締めながらつぶやく)
同僚
「まぁ、日之丸が他社に対抗して出来ることって言やぁ、 このくらいだから仕方ないって」
(めまいがしたように頭を押さえて) 「わかってますけどね、言わずにはいられないって感情がありますんで(苦笑)」
同僚
「わかるわかる(苦笑) じゃ、俺、新本町地区だからココで降りるわ」
「帰りパチンコに寄らないよーに(笑)」
同僚
「大門もゲーセンに寄るなよ(笑)」

吹利駅到着

(さて、ついたか……取り合えず昼飯食ってそれからだな うまいパン屋があるって聞いたし(喜))「思ったより人通りが少ないな」
まわりの店を見物しながらしばらく歩く)「あ……子供連れだ」

以下、その子供連れの会話

影跳
「姉ちゃん、昼飯くらい俺が作るから、毎日外食するのは やめてくれよ、ただでさえ今月苦しいのに(涙声)
「銀行の預金口座をいじればすむことじゃないの。
それとも何、また1ヶ月連続で同じロシア料理をごちそうしてくれるのかしら(棘)」
影跳
「好き嫌いしてると大きくなれないよ」
「私は永遠の美少女だからいいの」
影跳
「婆ァのクセに(ぼそっ)」
(無言でなぐる)

容赦ない連続攻撃、いやぁもう描写できないくらい残酷な攻撃。

影跳
(虫の息)
「ほら、いつまでも寝てんじゃないの(叩き起こす)」
影跳
「いててててて…… (上体を起こし頭をさする)
ん…… (なにか見つけた) 姉ちゃん人が倒れてるよ……。

地面に突っ伏している大門喬。

(そろそろおむかえがきたようです。
父さん、母さん今までありがとう……さようなら)
↑走馬灯がラストシーンに差し掛かっている)
「あら、ホントだ」
影跳
「救急車呼ばなきゃ、取り合えずこの人をベーカリー楠ま で運んでおこう」
「じゃ、がんばってね影跳」
影跳
「……」
手伝っては、くれないだろうなぁ)

ベーカリー楠店内……

からん、ころん

影跳
(喬を背負っている)「観楠さーん(ぜいぜい)」
観楠
「あ、影跳君いらっしゃい……!?
おもむろに立ち上がって) どうしたの、その人?」
影跳
「まず、一緒に運んでくれませんか?(ひぃひぃ) 重くて かなわないから」

観楠と影跳、喬を長椅子に寝かせる。当の喬は目覚める様子はない。
 影跳が観楠に事情を説明しているうちに……
 からん、ころん。

「影跳ぉ。公衆電話まで行ったけど財布がなくって救急車 呼べなかったわ」
観楠
「あのね、寧ちゃん。110番や119番っていうのはお金を入 れなくてもかけられるんだよ」
影跳
「ええっ、知らなかった」
「……へ、へぇ、そうなんだぁ(忘れてた)」
影跳
(けっ!)
(無言で影跳に向かって突き出した手をぐっ! と握って 見せる)
影跳
(無言で3歩下がって、土下座)
観楠
「(二人に冷汗を流しながら)じゃあ、とにかく救急車を……」
「ぃゃ、けっこうです……(ゆっくり上体を起こして)
もう、大丈夫ですから」
観楠
「ホントに大丈夫ですか?」
(ああ、ホント痛いかったよ(泣)) 「ええ、ただのめまいみたいなものですから」
観楠
「道で倒れていたんでしょう?  もう少し休んだ方がいいですよ」
影跳
「そうだよ、幸い今日もここも空いてるし……」
観楠
「幸いって……そういう言い方って(半泣き)」
(影跳を睨んで)
なにシャレにならんコト言ってンのよっ!!(小声))

そこらへんにあったトレイで影跳を殴る。

影跳&喬
「いてっ!!」
観楠&寧
「は?」

寧、もう3発ほど影跳の頭を加減無しで殴ってみる。

影跳
「いたたたたっ!!」

どたっ!
 喬はそのまま長椅子から転落してしまった。

「なんか知らないけど、おもしろいわね(笑)」
(ひどい、ひどすぎる……

立ち上がって長椅子に座る。

観楠
「(なにやってるんだ? この人は) 大丈夫ですか」
「……体質なんですよ」
観楠
「は?」
「他人の痛みに過敏で、他人が殴られると自分も殴られた ように感じて、ダメージを受けてしまうんですよ」
影跳
(……ははぁ、もしかしたら最初倒れていたのも僕らが原 因じゃないだろうか)
観楠
「(やっぱり変な人だなぁ) そうなんですか……しかし、 なんでまた僕たちにそんな事を?」
「一応言っておかないと、あの子がやめてくれそうにあり ませんから」
影跳
「でも、姉ちゃんが意地悪だったら、さらに僕をブン殴り 続けるよ(笑)」
(トレイを高々とふりあげる)
影跳
「わわわわわっ! そんなもので殴ったらまたこの人が倒 れちゃうよ(汗)」
「後で憶えてらっしゃいよ(ぎろり)」
「大丈夫ですよ。この子はそんな事はしません」
観楠
「なぜ?」
「(大汗)……そ、それは……そう思っただけですよ、そん な意地悪な女の子じゃないって」
エンパシーで彼女の罪悪感を感知したなんて、さすがに言えないからな……)
「えへへ……(照)」
影跳
(だまされてる……)
(殺す、絶対殺す)
「さて……大分楽になったし……仕事に戻らないと……
(観楠、影跳、寧に向かって) どうも、ご迷惑をおかけしました……」
「ううん。……ホントにもう大丈夫?」
影跳
「原因は僕らだから、謝るのは僕らのほうだよ」
「いや、現にここまで運んで、救急車まで呼ぼうとしてく ださったわけですから……
(名刺を取り出して、影跳と観楠に渡す)
またお礼に伺いますので、差し支えなかったらお名前を教えていただけますか?」
影跳
「僕は不破影跳で……こっちは不破寧っていいます」
観楠
「僕は湊川観楠といいまして、ここ、ベーカリー楠の店主 をしてます」
「え、ここがベーカリー楠なんですか?」
観楠
「ええ、そうですが……なにか?」
「いえ、ここで昼食をとろうと思っていたものですから」
影跳
「(名刺を見て) そのためにわざわざ京都から?」
「もちろん仕事で来たんですけど、友人から吹利においし いパン屋があるって聞いたので……」
観楠
(じぃぃぃぃん)
県外にここの事が流れているんだぁ……
おいしいなんて…… パン屋冥利に尽きるなぁ……)
「そういや、私たちもお昼まだだったよね。影跳」
「そうでしたか、でしたら私に払わせてください」
影跳
「え、いいんですか?」

この後、30分間ほど昼食……

寧&影跳
「ごちそうさまでした」
「ごちそうさまでした、観楠さん。すごくおいしかったで すよ。……と、お会計はこちらでよろしいですね?」
観楠
「あ、はい。 えっと金額丁度ですね」
「では、私は仕事がありますのでこれで……またお伺いし ますね」

喬、ベーカリー楠を後にする。

喬のいなくなって間もないベーカリー楠……

「うーふふふふ、影跳ぉ。喬さんいなくなっちゃったわねぇ。
環ちゃんとの待ち合わせまでまだ時間があるから、その間にさっきの暴言の清算をしましょーねぇ(両手をわきわきしている)」
影跳
「姉ちゃん……」
「なによ」
影跳
「青い空が奇麗だよ……(現実逃避モード発動)」
「そんな事でごまかせるとでも?(ひくひく)」
影跳
「白い雲も素敵だよ……(現実逃避モード継続中)」
「(ぶちん!) い、言いたいことはそれだけかしら?
……かぁーげぇーとぉぉぉ」
影跳
(現実逃避モード瞬間解除) 「……っひぃぃぃぃぃ!(顔面蒼白)」

寧、トレイを振り回し、影跳を追い回す。

観楠
「寧ちゃんっ! トレイはそんな風に使っちゃだめだよ」
影跳
「……っぎぃゃああああぁぁぁあぁあああっ!!」
観楠
(たのむから店壊さないでぇ……)

叫びは大通りに向かって歩いている喬の耳にも聞こえた

「ベーカリーから聞こえたなぁ、……何かあったんだろう か?(ベーカリー楠まで走って、窓から覗き込む)」

そこでは、トレイで頭を殴られ続けている影跳の姿が……

「……はうっ(その場に倒れ込む)」

それから、十数分後……寧の気がおさまった頃、ベーカリー楠のドアが鳴った。
 からん、ころん

「観楠さーん、影兄!! 店の前でスーツ着た人が倒れてる んだけど……」



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