エピソード206『虫眼鏡でも大きくならないもの』


目次


エピソード206『虫眼鏡でも大きくならないもの』

登場人物

大門喬
不幸な人。
湊川観楠
パン屋の店長
湊川かなみ
観楠の愛娘

本編

かなみ
「ねぇ、これはなぁに? 父様?」
観楠
「これはね。虫眼鏡と言って小さい文字を大きくする物な んだよ」
かなみ
「本当?(早速近くにあった新聞広告に虫眼鏡を近づけて みる)わぁ、ほんとうに大きくなったぁ!」
「ちょっと貸して下さい。(手に持っていた紙切れに虫眼 鏡を近づけてみる)ちぇっ。大きく見えないや」
観楠
「喬さん、それ何の紙だったんですか?」
「……聞きたい?」
観楠
「え? ……ええ」
「あのねぇ……給料明細書なの」

そう言って立ち去っていく喬の後ろ姿はどことなく寂しげに見えた……。



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