エピソード220『由香里現る』


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エピソード220『由香里現る』

登場人物

紫源滋(むらさき・げんじ)
  :都市魔法(アーバンマジック)使い。アマチュアTRPGデザイナー。本職はプータロー。
雲雀ヶ丘由香里(ひばりがおか・ゆかり)
  マリオネイター。源滋の東京での友人。

main

紫源滋の部屋。何の前触れもなく鳴り出した電話の音に何故か源滋は戦慄を感じる。

源滋
「……もしもし」
女性
「もしもし? 紫源君? あたし。由香里」
源滋
「……現在、この電話はお客様の都合により使用出来ませ ん」
由香里
「なぁんだ、また電話止まってんのぉ。じゃ、しょうがな いな。直接行こうか」
源滋
「あっ! たった今繋がったようですッ!(汗)」
由香里
「あら、残念」
源滋
「……なんです、由香里さん。何の用です?」
由香里
「あたしねぇ、スクール卒業したの」
源滋
「あっそ。よかったね」
由香里
「でね、紫源君ならお祝いしてくれるかなァと思って来た の」
源滋
「ふぅん、それ……で……って、来たってどこに!?」
由香里
「奈良。それじゃこれからそっち行くから」
源滋
「えっ? ちょ、ちょっと待って下さいよ!」
電話
「がちゃん。つーつーつー……」
源滋
「……えらいこっちゃ……由香里さんが来ただって……!?」

数分後、一人の女性が源滋の家の扉を叩いた)

由香里
「し・げ・ん・くぅん。開けてぇ」
源滋
「現在、この扉はお客様の都合により……」
由香里
「あ、お構いなく。扉さん、開いて」
「了解」
源滋
「あっ!」

扉が勝手に開いた)

由香里
「よ。お久しぶり」
源滋
「……その背中にしょってる大きなリュックサックの正体 を原稿用紙20枚以内で説明せよ……」
由香里
「生活家財道具一式」
源滋
「……3点。ではそれをしょってる理由を簡潔に述べよ」
由香里
「引っ越し」
源滋
「……赤点だァッ!(泣)」
由香里
「卒業したのはいいけどさ、新聞配達にかまけたせいで就 職活動出来なかったのよ。で、とりあえず知り合いのいる所にでも行って安堵の溜め息を付きたいな、と思って。と言う訳で、こっちでの家が見つかるまで、置いてくれる?」
源滋
「本件は反対多数により棄却します」
由香里
「……あたし、ここしか行く所無いんだけどなァ……(哀)」
源滋
「……(汗) 判った、判りましたよ! ただし新しい家を 早く決めて下さいよ!」
由香里
「やったぁ! ありがと、紫源君」
源滋
「……あぁあああぁぁぁぁああああぁあ……(崩)」

暫く後)

由香里
「あ、断っておくけど、もし襲おうとか言うそぶりでも見 せようものなら……」
源滋
「……どこの世界に怪物襲うヤツがいるんですか?」
由香里
「(ぴく)……ものなら、こうなるからね」

源滋を指差す由香里。突然源滋の服が動き出す)

源滋の服
「こちょこちょ……!」
源滋
「わひゃ!? わ、ちょ、ちょっと!? わひゃ、わひゃひゃ、 わはっはははは!? ゆ、由香里さん、やめ……げひゃひゃ! やめて下さ……うひゃひぃ……前言、撤回しま……すからっはっはっは!」
源滋の服
「こちょこちょ……」
由香里
「……いつやっても反応が面白いわね、くすぐり」
源滋
「……ぜぇ……ぜぇ……」
由香里
「じゃ、勝手で悪いけど、ここら辺使わせてもらうね」
源滋
「……どーぞ……ぜぇ……ぜぇ……」
由香里
「あ。ちょっと手伝って。パソコンとか重いものあるから」
源滋
(……パソコンをリュックに入れてしょってきたのか、この 人は……)

雲雀ヶ丘 由香里。あらゆる物体に擬似人格を持たせ、勝手に動かさせる事の出来る能力【マリオネイト】を使う。だが、才能は主に源滋に対する意地悪と新聞配達で居眠り運転をする事に費やされていたと言う。



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