それは突然に土曜日。英語でいうとSuddenly it is saturday.
文法的な間違いがあるかもしれんが、なに、日本で英語教育を受けた人なら等しく理解できるだろうからいいのだ。この言語に名前を付けるとしたらさしずめジャパニングリッシュという所。前置きが長くなってしまったが、つまり今は吹利学院、四限の授業を終えてあとは終礼をこなせば帰還可能という状況なわけだ。なは……そのまま書きゃ二行で終わってたな。
- 三郎
- 「浅井ぃ、これは何だ」
- 素子
- 「え? ……生物の図説」
- 三郎
- 「それは明白な事実、英語でいうとエビデントなマターだ
が、問題はこの間に挟まっている推定30枚のルーズリーフだ」
- 素子
- 「ああ、それね」
- 三郎
- 「推測するに、落書きと見たが」
- 素子
- 「当たり」
- 三郎
- 「当たりか……」
- 素子
- 「ね、ところで、英語以外、何できる?」
- 三郎
- 「む? ……ドイツ語、ロシア語、スワヒリ語、エスペラ
ンド語、アメリカ語、米語、USA語、イングリッシュの計8ケ国語がネイティブ並みにビシバシだが」
- 素子
- 「じゃあドイツ語で『当たり』は?」
- 三郎
- 「『当たり』」
- 素子
- 「ロシア語」
- 三郎
- 「『当たり』」
- 素子
- 「スワヒリ語」
- 三郎
- 「『当たり』」
- 素子
- 「エスペランド語」
- 三郎
- 「『当たり』」
- 素子
- 「ばか」
……ちーとも本題に入らん。ので一気に場面は本題へと移る。
- 三郎
- 「……さぼりつづけた集大成がこの30余枚……」
- 素子
- 「む」
- 三郎
- 「しかしこれなんかかなり気合入ってるな」
- 素子
- 「あ、それ……は確か30分ほどかけたやつ」
- 三郎
- 「30分……」
- 素子
- 「あ、いや、その間もちゃんとノートは取ってあるし」
- 三郎
- 「いそがしい奴っちゃなあ……」
- 素子
- 「む」
- 三郎
- 「ほな、借りてくで」
- 素子
- 「うん。……え? 落書きも一緒に?」
- 三郎
- 「そのつもりなのだぁが。何かご意見でも」
- 素子
- 「いあ、その。……古いのもあるし、」
- 三郎
- 「いつから溜めてんねん……」
- 素子
- 「やっぱ、見せるの、やだ」
- 三郎
- 「そうはいかん。男子本懐を遂げ……遂げ……」
- 素子
- 「『遂げずば志を語るべからず』」
- 三郎
- 「それだ、それ」
- 素子
- 「……全然、関係無いじゃない」
- 三郎
- 「もちろん。最初の二文字からして破綻しておるな」
- 素子
- 「大馬鹿者。とにかく返しなさい」
- 三郎
- 「ま、いーではないか」
- 素子
- 「だめ。ぜーったいに、だめ」
- 三郎
- 「じゃ……そやな……一枚につき一晩でどや」
- 素子
- 「え……え゛?」
- 三郎
- 「一枚ずつ一泊二日……あれ? ……お嬢さん、何考えた
んや一体」
- 素子
- 「あ? い、いや、その、その……」
- 三郎
- 「……」
- 素子
- 「……」
- 三郎
- 「……」
- 素子
- 「この、おおばかものっ」
ここでY弁護士なら記者団をかき分けるだけですむのだが、哀れなる三郎はこれも何かの他生の縁、遠心力を利用して十分に加速された教科書入り重量鞄の直撃を被るのである。
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