休日、午前九時の美樹の下宿。なぜか仙台から妹の麻樹が遊びに来ている。電話が鳴る。
- 電話
- 「おーい、電話だぞっ。おーい」
- 美樹
- 「はいもしもし、狭淵ですけど。あ、先生ですかどうなさ
いました? ……はぁ、そうなんですか。……あ、それは嬉しいですね。今ちょうど金欠病でして。……はいはい、判りました。では……そうですね。お昼過ぎぐらいまでにでも顔を出すようにします。それでは」
- 麻樹
- 「どした?」
- 美樹
- 「うむ、バイトの依頼でして」
- 麻樹
- 「なにすんだ?」
- 美樹
- 「本探し。知り合いの文学部の先生にちょくちょく頼まれ
るんだけどね」
- 麻樹
- 「ふーん」
- 美樹
- 「という訳で、今から、ちと吹利まで出かけてくるので。
あ、その辺に転がっている物については適当に使ってよいですから」
- 麻樹
- 「兄貴、電車代はあるのか?」
- 美樹
- 「(財布を開けて)そう言えば、ないですな」
- 麻樹
- 「かせばいいんだろ」
- 美樹
- 「と、言うわけで、麻樹、すまないが五百円ばかり貸して
もらえないだろうか」
- 麻樹
- 「かまわんが(五百円玉を美樹に手渡す)」
- 美樹
- 「ありがたい。バイト代が入ったらすぐ返すから」
飛び出していく美樹。それを見送る麻樹。
- 麻樹
- 「全く。いつまでたっても……」
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