エピソード302『自動車フェチ』


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エピソード302『自動車フェチ』

某日、梅雨のうっと惜しい天気の合間、つかの間の晴れた空がわざわざ傘をもってきた人々を馬鹿にするかのように照りつけている。

時雨
「おのれぇ……」

時雨はわざわざ傘を持ってきた一人であった。折りたたみの傘を持っていないのででっかい傘を持ってきているのだ。

時雨
「昨日まであんなに雨が降っていて、今日も降水確率が90 %なのに雨がふらんとは……授業もおわった今、このまま帰っては傘が無駄になる。こうなっては……」

おもむろにグランドに魔法陣を書き始める時雨、隣ではソフトボールサークルの人たちが羨望の眼差しで見ている(時雨談)

時雨
「エム・ペェー・ヘェ。アル・エス・エル。ガー・エル……」
竜胆
「菊池桃子(パテオ)!!」

叫び声と共に時雨の股間に蹴りが飛ぶ、

時雨
「うぅ……。あきりん、裏切ったなぁ……」
竜胆
「何いってんのよ、こんな公衆の面前で怪しいことをして るんじゃないわよ」
時雨
「別に怪しくなんか……ただ、水の精霊の五芒星を使って 雨を降らそうと……」
竜胆
「あのね、キダ太郎の頭よりあやしいわよ」
時雨
「そっそれは相当怪しいね」
竜胆
「わかればよろしい、ところで私を捜してたって? めぐ みがいってたけど」
時雨
「はにゃ? ……、おぉ、そういえばそうだった」
竜胆
「で、何のようなの?」
時雨
「ここでは何だから、食堂にでも行って話そう。もう空い てる頃だろから」

大学の食堂、お昼には学生でごった返す、高い高いといいながらそれでも外食よりは安くつく、イヤな時代になったもんだ。

時雨
「実はだねぇ、この前の魔神オービスとの戦いで傷付いた 僕にある出来事があったのだ」
竜胆
「何なの?」
時雨
「この前の日曜日に新車の契約をしてしまったのだよ」
竜胆
「へぇ、そうなんだ。よかったじゃない」
時雨
「うん、よかったのは良かったんだけど……」
竜胆
「なんなの?」
時雨
「うむ、ディーラーさんと親父殿と私で契約したのだが、 その時にどさくさにまぎれてTRDのリアウィングをつけたのだ」
竜胆
「それで」
時雨
「それだけなら、よかったんだけど実はついでにTRD製の マフラーをつけちゃったんだ」
竜胆
「はぁ」
時雨
「まだ、それだけなら良かったんだけど、ついでにTRD製 のショックアブソーバーとスプリングもつけちゃってね」
竜胆
「へぇ」
時雨
「百歩譲って、それまでは良かったんだけど、ホイルどう します? って聞かれて、思わずアルミホイルに変えちゃったんだ」
竜胆
「……」
時雨
「でだね、結局SS3のグレードだととっても予算がオーバー してしまったんで、SS2にしたんだ」
竜胆
「別に良いんじゃないの? 確かエンジンは一緒だったで しょ?」
時雨
「確かにそうなんだ、で私も契約した訳なんだけど帰って から見てみたら、ちょって違いがあってね」
竜胆
「そりゃ、全く同じなら、グレードが別れているわけ無い じゃない」
時雨
「確かに、ABSがスポーツタイプかどうかとヘリカルLSDが あるかないかの違いなんだけど……」
竜胆
「あそこのスポーツABSは評判良いのにもったいない、そ れに今時LSDなしを買うのかぁ……」
時雨
「そこでだ、あきりんにどうにかしてもらおうと……」
竜胆
「何で私が?」
時雨
「ふっふっふ、あきりん。この前の契約を忘れているのか ね(エピソード300参照)」
竜胆
「契約?」
時雨
「携帯のプレゼントの時に契約したやつだよ」
竜胆
「そんなのしたっけ?」
時雨
「したの」
竜胆
「証拠は?」
時雨
「ほれぇ(契約書を見せる)」
竜胆
「(ちぇっ)」
時雨
「でだね……」
竜胆
「ちょっと、私にABSやLSDを付け替えさせよとしてもでき る分けないででしょ、2輪ならともかく自動車は無理よ」
時雨
「へぇ、別にそんなこといって無いじゃないか」
竜胆
「じゃ、何なの」
時雨
「いままでの一連の会話でてっきりわかってるかと思った のに、カーステの話しだよ、どんなのが良いのかとか、MDの普及具合を聞こうと思ったのだ」
竜胆
「……紫擾君。あなた、もうちょっと話の要件をまとめて から話さないとおバカだよ」
時雨
「ふっ、かかったな。やっぱり、車の話しだけに場が肝心っ ていいたかったんだ」
竜胆
「はぁ……」



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