エピソード315『素子の手紙』


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エピソード315『素子の手紙』

7月上旬・ベーカリー楠・雨。
 素子、三郎に手紙を託していわく「店長に渡せ」と。三郎用事ありて、手紙三彦に託す。学校終わる。三彦ベーカリーに行きて、その用を忘る。小刻居り、しこうして帰る。
 (からんころん)

観楠
「いらっしゃいませ……や、三彦君。そのカッコだと…… 今日も傘無しだったのかな?(笑)」
三彦
「朝方は降っておりませんでしたので、必要無しと判断し ましたが……梅雨めにしてやられたであります」
観楠
「折り畳み傘は常備してた方がいいと思うけどね(笑) あ、 いつものやつでいいよね」
三彦
「いや、今日は冷たい方で」
観楠
「あれ、めずらしいね? ま、いいけどね」
「こんにちわぁ……はぁ、やっぱり降ってきました」
観楠
「こんちわ(笑) あれ、緑ちゃんも傘無し?」
「朝のは曇りでしたし、帰るまでもつかなと思ったんです が」
観楠
「ふぅ……ん」

しばらく時間経過。
 三彦動く様子無し。
 (からんころん)

慎也
「こんちわぁ。いやぁ、えらい降ってきました」
観楠
「慎也君……は」
慎也
「は?」
観楠
「いや……いい(汗) その様子だとタオルいるよね?」
慎也
「すいませんが(苦笑)」
三彦
「水島氏」
「はい? 
三彦
「勘定を」
慎也
「もう帰るんか?」
三彦
「小用を思い出した」
観楠
「あ、傘持ってく? ビニールの予備ならあるけど」

(外の雨はきつくなっている)

三彦
「む(汗)」
観楠
「今から風邪ひくと大変だからさ、持ってきなよ?」
三彦
「しからば、御借りいたします。では」
観楠
「気ぃつけてね」

(からころろっ)

三郎
「……」
観楠
「いらっしゃ……三郎君、もか(汗)」
三郎
「いやまぁこういうことは梅雨ともなれば当たり前の事で して」
観楠
「風邪ひいても知らないからね(苦笑)」
慎也
「ほれ、これでアタマふけば?」
三郎
「どの道帰りも濡れる。となればこのままでいるのも一興」
観楠
「そーはいかない(笑) 座るならちゃんと体拭かないと、 水の一杯も出さない事にしよう(笑)」
三郎
「けけ、けけけけけけ店長」
観楠
「なに?」
三郎
「手紙にはなにが?」
観楠
「……は?」
三郎
「手紙には何が書いてあったかと聞いてます」
観楠
「いやその……手紙ってなに?」
三郎
「古来、手紙と言う物は(云々) というわけで、さぁ内容 は?」
観楠
「手紙がどういった物かは判ってるつもりだけど、三郎君 の言ってる事がどーにもわからないなぁ(汗)」
三郎
「三彦が店長に手渡したと、このメモ用紙に書いてありま すが」
観楠
「今三郎君が書いたんじゃないか(汗) 三彦君が?」
三郎
「そう、酒井が」
観楠
「……別になにももらってないよ?」
三郎
「嘘おっしゃい」
観楠
「いや、ほんとに。彼からはなんにも受け取ってない」
三郎
「は?」
観楠
「は? って言われても困るんだけど」
三郎
「む、むむむむむむむ……(考)」
観楠
「手紙かぁ。なにか大事な事だったのかな?」
三郎
「まぁ、送り主にすれば重要な事かもしれませんな」
観楠
「送り主って、三彦君じゃないの?」
三郎
「酒井が誰かに手紙を書くなんて思えんけどね、正月でも あるまいし(笑)」
観楠
「じゃ、誰からだったんだろ……」
三郎
「(……にぶい)さて、帰ります。店長」
観楠
「ん?」
三郎
「無意識のうちにある願望その他の傾向が日常の行動を支 配する事があります。その願望がたとえ意識的なものでも、無意識的なものでも。自分で認めたくない、もしくは自覚していない傾向によって『抑圧』が働き、意識しないままに『不快な行動』を回避し、『不快な記憶』を忘れようとする」いわゆる『意図の忘却』、「我々は小切手の入っている封筒より、請求書の入っている封筒のほうを置き忘れ易いであろう」
観楠
「は……はぁ(呆然)」

三郎、雨の中を走り去る。

観楠
「んー……何が言いたかったんだろ?(悩)」
慎也
「いつものことですやん(笑)」
観楠
「いや、それはそうなんだけどネ。手紙ってのがきになる。 今度三彦君が来たらきいてみよ……」



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