7月上旬・ベーカリー楠・雨。
素子、三郎に手紙を託していわく「店長に渡せ」と。三郎用事ありて、手紙三彦に託す。学校終わる。三彦ベーカリーに行きて、その用を忘る。小刻居り、しこうして帰る。
(からんころん)
- 観楠
- 「いらっしゃいませ……や、三彦君。そのカッコだと……
今日も傘無しだったのかな?(笑)」
- 三彦
- 「朝方は降っておりませんでしたので、必要無しと判断し
ましたが……梅雨めにしてやられたであります」
- 観楠
- 「折り畳み傘は常備してた方がいいと思うけどね(笑) あ、
いつものやつでいいよね」
- 三彦
- 「いや、今日は冷たい方で」
- 観楠
- 「あれ、めずらしいね? ま、いいけどね」
- 緑
- 「こんにちわぁ……はぁ、やっぱり降ってきました」
- 観楠
- 「こんちわ(笑) あれ、緑ちゃんも傘無し?」
- 緑
- 「朝のは曇りでしたし、帰るまでもつかなと思ったんです
が」
- 観楠
- 「ふぅ……ん」
しばらく時間経過。
三彦動く様子無し。
(からんころん)
- 慎也
- 「こんちわぁ。いやぁ、えらい降ってきました」
- 観楠
- 「慎也君……は」
- 慎也
- 「は?」
- 観楠
- 「いや……いい(汗) その様子だとタオルいるよね?」
- 慎也
- 「すいませんが(苦笑)」
- 三彦
- 「水島氏」
- 緑
- 「はい?
- 三彦
- 「勘定を」
- 慎也
- 「もう帰るんか?」
- 三彦
- 「小用を思い出した」
- 観楠
- 「あ、傘持ってく? ビニールの予備ならあるけど」
(外の雨はきつくなっている)
- 三彦
- 「む(汗)」
- 観楠
- 「今から風邪ひくと大変だからさ、持ってきなよ?」
- 三彦
- 「しからば、御借りいたします。では」
- 観楠
- 「気ぃつけてね」
(からころろっ)
- 三郎
- 「……」
- 観楠
- 「いらっしゃ……三郎君、もか(汗)」
- 三郎
- 「いやまぁこういうことは梅雨ともなれば当たり前の事で
して」
- 観楠
- 「風邪ひいても知らないからね(苦笑)」
- 慎也
- 「ほれ、これでアタマふけば?」
- 三郎
- 「どの道帰りも濡れる。となればこのままでいるのも一興」
- 観楠
- 「そーはいかない(笑) 座るならちゃんと体拭かないと、
水の一杯も出さない事にしよう(笑)」
- 三郎
- 「けけ、けけけけけけ店長」
- 観楠
- 「なに?」
- 三郎
- 「手紙にはなにが?」
- 観楠
- 「……は?」
- 三郎
- 「手紙には何が書いてあったかと聞いてます」
- 観楠
- 「いやその……手紙ってなに?」
- 三郎
- 「古来、手紙と言う物は(云々) というわけで、さぁ内容
は?」
- 観楠
- 「手紙がどういった物かは判ってるつもりだけど、三郎君
の言ってる事がどーにもわからないなぁ(汗)」
- 三郎
- 「三彦が店長に手渡したと、このメモ用紙に書いてありま
すが」
- 観楠
- 「今三郎君が書いたんじゃないか(汗) 三彦君が?」
- 三郎
- 「そう、酒井が」
- 観楠
- 「……別になにももらってないよ?」
- 三郎
- 「嘘おっしゃい」
- 観楠
- 「いや、ほんとに。彼からはなんにも受け取ってない」
- 三郎
- 「は?」
- 観楠
- 「は? って言われても困るんだけど」
- 三郎
- 「む、むむむむむむむ……(考)」
- 観楠
- 「手紙かぁ。なにか大事な事だったのかな?」
- 三郎
- 「まぁ、送り主にすれば重要な事かもしれませんな」
- 観楠
- 「送り主って、三彦君じゃないの?」
- 三郎
- 「酒井が誰かに手紙を書くなんて思えんけどね、正月でも
あるまいし(笑)」
- 観楠
- 「じゃ、誰からだったんだろ……」
- 三郎
- 「(……にぶい)さて、帰ります。店長」
- 観楠
- 「ん?」
- 三郎
- 「無意識のうちにある願望その他の傾向が日常の行動を支
配する事があります。その願望がたとえ意識的なものでも、無意識的なものでも。自分で認めたくない、もしくは自覚していない傾向によって『抑圧』が働き、意識しないままに『不快な行動』を回避し、『不快な記憶』を忘れようとする」いわゆる『意図の忘却』、「我々は小切手の入っている封筒より、請求書の入っている封筒のほうを置き忘れ易いであろう」
- 観楠
- 「は……はぁ(呆然)」
三郎、雨の中を走り去る。
- 観楠
- 「んー……何が言いたかったんだろ?(悩)」
- 慎也
- 「いつものことですやん(笑)」
- 観楠
- 「いや、それはそうなんだけどネ。手紙ってのがきになる。
今度三彦君が来たらきいてみよ……」
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