いつもと同じようにみんなが集まるベーカリー。
そこへ、また人が入ってきた。
- 夏和流
- (からんからん)
- みのる
- 「ついたぞ」
- 観楠
- 「やあ、今日は遅かったね……どうしたの?!」
- 夏和流
- (目に涙がたまっている)
- みのる
- 「原因はこれです(本を出す) その前にとりあえず、麦茶
ありますか?」
- 観楠
- 「あ、うん……(麦茶を出す)」
- 夏和流
- (黙って麦茶を飲む)
- 観楠
- 「それで……なにがあったの?」
- みのる
- 「この本……こいつがいつも読むシリーズのヤツなんです
けれどね。それの登場人物が死んだとかで、泣いているんです」
- 一同
- 「……(あきれかえる一同)」
- 観楠
- 「それで、泣いていたの? 別段大したことじゃ……」
- 夏和流
- 「(きっと睨む) どうして大した事じゃないんですか。好
きな人が死んだんですよ」
- 観楠
- 「いや、物語の中だけの話だし……(^^;;;;」
- 夏和流
- 「いっしょです。この世界も物語じゃないって、観楠さん
証明できます?! 『物語』だって『現実』かもしれないじゃないですか」
- 観楠
- 「それは……」
- 夏和流
- 「だから泣いているんです。ほっといて下さい」
- ドア
- からんからん
- 文雄
- 「……どうしたのかね、つるしあげかね?」
- 観楠
- 「いや……小説の登場人物が死んじゃって悲しいんだそう
で……(困惑)」
- 文雄
- 「うむうむ、分かるなその気持ち。私もいまだに悲劇を読
んだりすると涙ぐむもんだからなぁ」
- 一同
- 「(不信の目)」
- 文雄
- 「だがしかし、泣いている場合ではないのではないかね?」
- 夏和流
- 「え……?」
- 文雄
- 「君が本当に嫌ならば、手段はいくらでもあるはずだ」
- 夏和流
- 「手段……。僕にできるのは……。電話。FAX。葉書」
- 文雄
- 「うむ。それらの手段を使えば、なんとかなるかも知れな
い」
- 夏和流
- 「そうか……。早速やってみます(だぁっしゅ)」
素早く去っていく夏和流。見送る一同。
- 文雄
- 「……意外に、単純だな。もう泣き止んでいる」
- みのる
- 「あれがあいつの長所なんだろう。
ところで、俺は奴の代わりに代金を払うつもりはないが」
- 観楠
- 「え? じゃあ、この帳簿につけておかないと……」
からんからん。もう夏和流が戻ってきた。
- 夏和流
- 「すみません皆さん、住所と名前借ります(どさっ)」
テーブルに詰まれたのは山のような葉書の束……。
連絡先 / ディレクトリルートに戻る / TRPGと創作のTRPGと創作“語り部”総本部