エピソード328『もし俺がバイトなら殴ってる』


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エピソード328『もし俺がバイトなら殴ってる』

ここ数日、某ゲーセンバイト店員であるところの竜胆を悩ませている問題があった。
 それは、夜の十時過ぎてなお制服でゲームしてる高校生である。
 風営法、青少年保護条例などいろいろな理由で、その時間以降に店内にいらると、はっきり言って迷惑なのである。

竜胆
「十時過ぎたからそれ最後にして帰ってね」
高校生1
「あぁ? わかった」

しかし、それで止めるわけがない。
 なぜなら、それが高校生。いきがってるから。

竜胆
「あんた、またゲーム始めてるやん。さっき言ったやろ」
高校生1
「友達待ってる間、暇やから」
竜胆
「とにかく、ほんとに、それ最後にしなさいよぅ」
高校生1
「あ〜」
竜胆
「呉羽さん、なんか言って下さい。あたしが言ってもきか ないんです」
呉羽
「びしっと言ったか?」
竜胆
「やんわりと」
呉羽
「……まあ、きつく言うよりはいいか。わかった」
呉羽
「自分ら、今何時か解ってるか?」
高校生1
「あぁ?」
呉羽
「十時過ぎたら、18歳未満の人間は、ゲーセンおったらあ かんのや。何度も言ぅてるから解ってるやろ」

そう、何回も注意しているのである。
 前に別の店員が注意したら、絡んできた。逆恨みを正当化しようとするのは彼らの特技。

高校生1
「一回くらいええやん」
呉羽
「あと一回って、そうやってエスカレートしてくから言ぅ てるんや。法律で決まってるから、それは店としては守ってもらわな困るんや。わかったか? それ最後にして、帰れよ」
高校生1
「あ〜」
竜胆
「……」
呉羽
「……ったく、社会人違ったら、殴ってるで」
竜胆
「社員じゃなかったらの間違いじゃ?」
呉羽
「……バイトやったら殴ってるな」

呉羽路法、二十三歳。
 竜胆よりイッコ上なだけで、彼はこの店のナンバー2で、店長が休みの今日は最高責任者。

呉羽
「休憩行ってくる」
竜胆
「はい」
高校生2
「おい、どーする?」
高校生1
「あんなん知るか」
竜胆
「……あの人怒らせてもいいの? あの人、ここの社員な んだけど……出入り禁止になっても知らんけど」
高校生1
「あぁ?」
竜胆
「そーなったら、あたしらも、あんたら見つけ次第追い出 すけど、それでもいいの?」
高校生1
「……」
竜胆
「言っとくけど、ウチの店って、そーいうの徹底してるか らね。よその店にも話して、この辺じゃゲーム出来んようになるけど」
高校生2
「(ヤバいって顔)」
高校生1
「……」
竜胆
「素直に十時になったら帰るだけやん。それだけ守れば、 こっちは構わないんだから」
高校生1
「(ゲームオーバー)」
竜胆
「あの人が事務所から出てきた時にまだ店内にいたら、ど うなっても知らんよ。ゲーム終わったんやし、はよ帰りや」
高校生2
「……帰ろか」
高校生1
「おう」
竜胆
「……やっと帰った」
呉羽
「帰ったか」
竜胆
「はい」
呉羽
「素直に言う事きけっちゅうねん。金遣わんくせに、態度 でかい」
竜胆
「そーですよね」



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