エピソード329『純愛セレナーデ:夏風邪』


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エピソード329『純愛セレナーデ:夏風邪』

学校帰り

「……今日の練習はハードでした……(ふらふら)」

水泳というのはハードらしい。
 そりゃあんな抵抗あるところで動いてるんだからな(^^;)

「でも、バイトを休むわけには……急に休んだら、迷惑か かるし……(ふらふら)」

いや、しんどい時は休んでいいんだよ(笑)

「ふう……ちょっと休んでから……」

公園のベンチにへたり込む緑。
 赤いTシャツの女の子がローラースケートをしてる。

「あ、暑い……」

ベーカリー

観楠
「……緑ちゃん、遅いなぁ」
三郎
「店長の駄洒落に耐えられなくなって倒れたとかけけけ」
観楠
「……そんなにつまらないかな?(汗)」
三郎
「それはベーカリー楠独自の味の追求けけけ」
慎也
「……」

シフトの二十分前には必ず来ていた緑。
 シフトは17:00〜21:00。
 今は、16:50。

慎也
「……」
竜胆
「こんにちわ〜……おう、高校生諸君……といっても二人 だけど、勉学にはげんどるかね」
三郎
「キャンプの準備で忙しいですけけけ」
慎也
「……」
竜胆
「キャンプか、夏ねぇ。せーぜー蚊に食われないよーに気 をつけなさいよ」
三郎
「合点承知ですけけけ」

そーこーしてるうちに一時間が過ぎた。
 観楠は緑の家に電話してみるが、サイコな親父がおいちいと言うばかり。

慎也
「ちょっと、出てくる」

公園

目が覚めると、あたりは暗くなっていた。

「……」

自閉症モードにて自己回復。

「疲れが……たまってたんですね……バイト、行かなきゃ」
慎也
「緑ちゃん!」
「し、慎也さん?」
「……部活やりすぎて……疲れて寝ちゃってたみたいです」
慎也
「……そう。頑張り過ぎちゃうんかな」
「あたし……手を抜けない……性質ですから」
慎也
「そっか……今日はもう帰りなよ。店長には僕から言っと くから」
「そんな……あたし、店に行きます……店長に謝らないと」
慎也
「大丈夫やって。一日サボったくらいで、クビにはならへ んと思うし」
「そういう問題じゃ……」
慎也
「女の子は、体大切にせぇへんと……熱心なんは、緑ちゃ んのいいとこやけど、それで体壊したら、余計迷惑かかると思うで」
「……でも」
慎也
「僕だって困る。学校帰りの……楽しみなくなるやんか」
「……え?」
慎也
「……緑ちゃん、バイトもサマになってきたし……エプロ ン似合ってるし……毎日会えるし……」
「慎也さん……」
慎也
「僕はな、毎日、緑ちゃんに会いたい。バイト休みの日な ら一緒にいたい。バイトがあるなら、店で会いたい。だから、元気でいてほしい……」
「慎也さん……」
慎也
「……家まで送るよ」
「はい!」

その後のベーカリー

観楠
「緑ちゃん……来なかったな」
竜胆
「慎也くんもいないし……二人してどっか行ってるとか」
観楠
「……それならそれで連絡してくれてもいいじゃないかぁ
目の幅涙)」
三郎
「閉店後の片付けを考えると泣きたくもなるらしいですな」
竜胆
「あたしでよければ手伝いましょうか?」
観楠
「それは悪いよ……」
慎也
「遅くなりました」
観楠
「慎也くん? 緑ちゃんは?」
慎也
「途中で会いましたけど……気分悪いからって、帰りまし た」
観楠
「そ、そう……」
慎也
「緑ちゃんに代わって、謝ります」
観楠
「……いいよ、そんなの。緑ちゃんがズル休みするような 子じゃないってわかってるしね。でも、今度からはちゃんと連絡するようにって、伝えといてくれる?」
慎也
「はい」

夏の夜

慎也
「……蒸し暑いな……」

粘る湿気が、体にまとわりつく。
 吹利の夏は暑い。

慎也
「……もう寝たかな……電話してみるか」

公衆電話に駆け寄る慎也。
 明かりに群がる虫が嫌。

慎也
「もしもし……」



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