エピソード340『ベーカリー楠取材さる』


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エピソード340『ベーカリー楠取材さる』

からんからん……。
 午後三時。そろそろ夏の熱さも薄く消えていく時刻。
 珍しく常連以外の人が二人ほど入ってきた。

観楠
「いらっしゃいませ」
女性
「こんにちわ。店長さんはいらっしゃいますか?」
観楠
「はい? 私ですが」
女性
「私、こういうものですが(名刺を差し出す)」
観楠
「『週刊裏吹利 記者 並木紀子』さん?」
紀子
「ええ。実はうちにはいろいろと店を紹介するコーナーが ありまして」
観楠
「はあ」
紀子
「そこにこの店を紹介する葉書が届いたので、取材させて
頂きたいのですが」
観楠
「はあ。まあ、そう言うことならかまいませんが……。
まぁ、立ってるのも何ですから、どうぞおかけください。
お茶を入れて戻ってくる) それで、どういう事をお話したら良いでしょうか?」
紀子
「まずは……」
そこへ、新たな客が現れた。今度は、常連の二人組だ。

夏和流
「あれ?」
みのる
「記者のようだな」
観楠
「あ、夏和流君にみのる君。ちょっと待ってくれるかな(^^;;」
夏和流
「別にかまいませんけれど……。ひょっとして、裏吹利の 記者さんですか?」
紀子
「え、ええ、そうですけれど、なぜそれを?」
夏和流
「だって、僕、ここを紹介する葉書を書きましたから」
観楠
「え? 君が書いたの?」
夏和流
「ええ。いつもお世話になっているお礼です(笑) 記者さ ん、パンはもう食べました?」
紀子
「いいえ。どんな種類があるのかを聞こうとしたところで
あなた達が来たので」
夏和流
「あ、それはごめんなさい。それじゃ、店長さん」
観楠
「ん?」
夏和流
「ここの豊富なメニューを見せて上げましょうよ」
観楠
「そこらにあるのとあんまり変りませんが(笑) たまに新 企画品を試食してもらうだけですよ」
夏和流
「その実験商品にけっこう問題ありませんか?(汗)」
みのる
「それに海産物が入っているパンなんて、そこらにはない」
紀子
「か、海産物? それは、是非見てみたいですわ」
カメラマン
「何枚か写したいんですが」

中略)

夏和流
「そろそろここらでちょっと小休止入れません? 僕、喉 が渇いちゃいました。紅茶下さい」
観楠
「そうですね。ここらで少し休みましょう。……紅茶はど れにするの、夏和流君。ダージリンや、アッサム、ロシアン・ティ、その他いろいろあるよ」
紀子
「そんなにいっぱい種類があるんですか?」
観楠
「ええ。……何せ、うちの客はわがままですから……」

(からんころん)

琢磨呂
「てんちょー、なにしてんだ?」
観楠
「あ、琢磨呂君。うちのメニューについて、ちょっとね」
琢磨呂
「メニュー? ……ししゃもパンとか、あーゆーのを消す とか?」
観楠
「いや、そんなことはしないけれど……」
紀子
「し、ししゃもぱん?!」
夏和流
「ええ。あれは一度食べたら忘れられませんよ……」

その後暫くして。

紀子
「パン屋になられた動機は?」
観楠
「特に理由って無いんですけど……こっちに来る前にやっ てた仕事がそうだったんです」
紀子
「客層とか、幅広いメニューの事などで何か?」
観楠
「この辺の学生さんから商店街を利用される方まで、たく さんですね(笑)」
観楠
「いわれましても……いつまでも同じ物ばかりじゃお客さ ん飽きちゃうじゃないですか」
紀子
「あ、あのう…… それでは、あそこにいる人は何々です か……」
孝雄
「ひゃひゃひゃほほゃひゃひぉようあ! おいちい!」
観楠
「ああ、あれは見ちゃ駄目です。噛みつきますから(笑)」
紀子
「お一人暮らしなんですか?」
観楠
「ええ、マンションで一人暮らしです」
寧 
「かなちゃーんあっそびましょ☆
って、あれ、おぢちゃん今度はこのおばちゃんに手を出してるの?」
紀子
(お、おばちゃん)
観楠
「(汗) あっ、寧ちゃん、かなみちゃんは今ちょっといな いんだよ」
紀子
「かなみちゃん?」
観楠
「えっと、あの、その〜」
紀子
キラーン☆(スクープのよ・か・ん)



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