からんからん……。
午後三時。そろそろ夏の熱さも薄く消えていく時刻。
珍しく常連以外の人が二人ほど入ってきた。
- 観楠
- 「いらっしゃいませ」
- 女性
- 「こんにちわ。店長さんはいらっしゃいますか?」
- 観楠
- 「はい? 私ですが」
- 女性
- 「私、こういうものですが(名刺を差し出す)」
- 観楠
- 「『週刊裏吹利 記者 並木紀子』さん?」
- 紀子
- 「ええ。実はうちにはいろいろと店を紹介するコーナーが
ありまして」
- 観楠
- 「はあ」
- 紀子
- 「そこにこの店を紹介する葉書が届いたので、取材させて
頂きたいのですが」
- 観楠
- 「はあ。まあ、そう言うことならかまいませんが……。
まぁ、立ってるのも何ですから、どうぞおかけください。
お茶を入れて戻ってくる) それで、どういう事をお話したら良いでしょうか?」
- 紀子
- 「まずは……」
そこへ、新たな客が現れた。今度は、常連の二人組だ。
- 夏和流
- 「あれ?」
- みのる
- 「記者のようだな」
- 観楠
- 「あ、夏和流君にみのる君。ちょっと待ってくれるかな(^^;;」
- 夏和流
- 「別にかまいませんけれど……。ひょっとして、裏吹利の
記者さんですか?」
- 紀子
- 「え、ええ、そうですけれど、なぜそれを?」
- 夏和流
- 「だって、僕、ここを紹介する葉書を書きましたから」
- 観楠
- 「え? 君が書いたの?」
- 夏和流
- 「ええ。いつもお世話になっているお礼です(笑) 記者さ
ん、パンはもう食べました?」
- 紀子
- 「いいえ。どんな種類があるのかを聞こうとしたところで
あなた達が来たので」
- 夏和流
- 「あ、それはごめんなさい。それじゃ、店長さん」
- 観楠
- 「ん?」
- 夏和流
- 「ここの豊富なメニューを見せて上げましょうよ」
- 観楠
- 「そこらにあるのとあんまり変りませんが(笑) たまに新
企画品を試食してもらうだけですよ」
- 夏和流
- 「その実験商品にけっこう問題ありませんか?(汗)」
- みのる
- 「それに海産物が入っているパンなんて、そこらにはない」
- 紀子
- 「か、海産物? それは、是非見てみたいですわ」
- カメラマン
- 「何枚か写したいんですが」
中略)
- 夏和流
- 「そろそろここらでちょっと小休止入れません? 僕、喉
が渇いちゃいました。紅茶下さい」
- 観楠
- 「そうですね。ここらで少し休みましょう。……紅茶はど
れにするの、夏和流君。ダージリンや、アッサム、ロシアン・ティ、その他いろいろあるよ」
- 紀子
- 「そんなにいっぱい種類があるんですか?」
- 観楠
- 「ええ。……何せ、うちの客はわがままですから……」
(からんころん)
- 琢磨呂
- 「てんちょー、なにしてんだ?」
- 観楠
- 「あ、琢磨呂君。うちのメニューについて、ちょっとね」
- 琢磨呂
- 「メニュー? ……ししゃもパンとか、あーゆーのを消す
とか?」
- 観楠
- 「いや、そんなことはしないけれど……」
- 紀子
- 「し、ししゃもぱん?!」
- 夏和流
- 「ええ。あれは一度食べたら忘れられませんよ……」
その後暫くして。
- 紀子
- 「パン屋になられた動機は?」
- 観楠
- 「特に理由って無いんですけど……こっちに来る前にやっ
てた仕事がそうだったんです」
- 紀子
- 「客層とか、幅広いメニューの事などで何か?」
- 観楠
- 「この辺の学生さんから商店街を利用される方まで、たく
さんですね(笑)」
- 観楠
- 「いわれましても……いつまでも同じ物ばかりじゃお客さ
ん飽きちゃうじゃないですか」
- 紀子
- 「あ、あのう…… それでは、あそこにいる人は何々です
か……」
- 孝雄
- 「ひゃひゃひゃほほゃひゃひぉようあ! おいちい!」
- 観楠
- 「ああ、あれは見ちゃ駄目です。噛みつきますから(笑)」
- 紀子
- 「お一人暮らしなんですか?」
- 観楠
- 「ええ、マンションで一人暮らしです」
- 寧
- 「かなちゃーんあっそびましょ☆
って、あれ、おぢちゃん今度はこのおばちゃんに手を出してるの?」
- 紀子
- (お、おばちゃん)
- 観楠
- 「(汗) あっ、寧ちゃん、かなみちゃんは今ちょっといな
いんだよ」
- 紀子
- 「かなみちゃん?」
- 観楠
- 「えっと、あの、その〜」
- 紀子
- キラーン☆(スクープのよ・か・ん)
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