ある日、板金から帰ってきた愛車とともに、紫擾くんが、竜胆にリターンマッチを挑んできた。前回、ポリさんが水を差したせいで、うやむやになった勝負の決着をつけたいらしい。
- 紫擾
- 「というわけで、今度こそ吹利最速が誰か、きっちり決着
をつけてやるぜ」
- 竜胆
- 「あたしはどーでもいいんだけどね(笑)」
- 紫擾
- 「そ、それじゃ困る(汗)。勝負だ!」
- 竜胆
- 「今日は寒いから道は空いてそうだよね」
- 紫擾
- 「邪魔するやつはいないってことだな。よしよし、ならこっ
ちも遠慮せずに踏み込めるってわけだ」
- 竜胆
- 「しかたないなぁ。じゃあ、駅前の交差点から出発して、
ゴールは峠の上ね。登り勝負」
- 紫擾
- 「はいな」
んで、バトる二人。
- 竜胆
- 「やっぱ寒いから、グリップしないな〜」
- 紫擾
- 「今頃あきりんは寒がってるんだろ〜な〜」
峠にさしかかる二台。
めちゃ寒い。
- 竜胆
- 「この寒さじゃちょっとペース落とさないとしんどいわ」
吹利の峠は割と緩やかな高速コーナーが続いてる。
だから、大型でも安心して(笑)、攻められる(笑)。
- 紫擾
- 「あきりんめ〜、なんだかんだ言って、めちゃ速いじゃな
いかぁ。私が板金で乗れない間に、腕を上げたな……しかし、このままじゃ済まさないぞぅ……?」
後方から、ハイビームがすごいペースで上ってくる。
そのまま、紫擾くんの車をパスしていった。
ちなみに、メーター読みで120キロ。
- 紫擾
- 「な、なんじゃぁ? バイクかぁ?」
前方数メートルを走ってた竜胆のバイクをもパスして、そいつはぐんぐん上っていく。
- 竜胆
- 「……な、なに? すっげー速さ……」
峠のてっぺん。
何台か、走り屋らしいバイクやら車やらが止まっている。
しかし、さっきのらしいのはいない。
- 竜胆
- 「紫擾くーん。さっきの、なに?」
- 紫擾
- 「それはこっちが聞きたいのだ。あんなのがいるなんて、
聞いてないのだ」
- 竜胆
- 「聞き込みしてみよっか」
- 紫擾
- 「そうしましょう」
- 走り屋1
- 「あんたら以外、誰もきてないと思うけど」
- 走り屋2
- 「俺ら、だいぶ前からいるけど……そんなん、見てないな」
- 走り屋3
- 「もしかして、幽霊か?」
- 走り屋4
- 「昔の走り屋の幽霊?」
- 竜胆
- 「……」
- 紫擾
- 「お嬢さん、どー思います?」
- 竜胆
- 「なんか、音がね……しなかったのよ(汗)。抜かれた時
に」
- 紫擾
- 「私も聞こえなかったなぁ。ハイビームはすっきり見えて
たのに」
- 竜胆
- 「なんか、カウルの感じは昔っぽい感じだったけどね。前
がでっかくて」
- 紫擾
- 「なんなんでしょうな」
- 竜胆
- 「ともあれ、勝負はあたしの勝ちね」
- 紫擾
- 「う。ああいう状況では、勝負どころじゃ……」
- 竜胆
- 「じゃあ、保留ということにしといたる」
- 紫擾
- 「ありがと〜ございます〜(^^;)」
数日後。
- 竜胆
- 「む〜」
- 紫擾
- 「やあ、あきりん。憂いてるね」
- 竜胆
- 「そりゃまあ憂いもするわ。これ見て」
- 紫擾
- 「ほい。なにやら古めかしいバイクだねぇ」
- 竜胆
- 「ホンダNR500。昔のレーサー。これなんよ」
- 紫擾
- 「はあ?」
- 竜胆
- 「これにこの前おいてかれたのよぅ!」
- 紫擾
- 「はあ、そうですか。こんな古いのにねぇ」
- 竜胆
- 「そう! いくらレーサーたって、こんな昔の骨董品に!
ホンダの最新最高性能を誇るCBR1100XXがぁ……うるうる」
- 紫擾
- 「あきりんの腕が足りなかったんじゃないか?」
- 竜胆
- 「そうかもしれない……だから、リターンマッチしたる」
- 紫擾
- 「……負けず嫌いだねぇ」
- 観楠
- 「気をつけて、安全運転でね?」
- 竜胆
- 「安全運転じゃ、バトルに勝てません」
- 観楠
- 「そりゃ、ま、そーなんだけど……心配だなぁ(汗)」
んで、また数日後。
- 竜胆
- 「紫擾くん、お待たせっ」
- 紫擾
- 「なんで軽バンで現れるんだぁ?」
- 竜胆
- 「これを持ってくるのにいるのよ」
中にはRVF(RC45)が入ってた。
- 竜胆
- 「8耐仕様のやつをそのまま持ってきたの」
- 紫擾
- 「……どこから?」
- 竜胆
- 「知り合いのお店。CBRを物質(ものじち)に出して……」
- 紫擾
- 「よくやるなぁ(汗)。これで負けたらどーすんの?」
- 竜胆
- 「……もう挑まない」
- 紫擾
- 「それが賢明だね……ま、私もすごいのを持ってきたんだ
けど」
- 竜胆
- 「あ、FD3Sだ。うわ、悪趣味なリアウィング。高橋弟って
感じぃ」
- 紫擾
- 「ふっふっふ。こいつのコーナリング性能とパワーがあれ
ば、パンダトレノにも負けないぜ」
- 竜胆
- 「……嘘つけ」
- 紫擾
- 「ごめんなさい、大嘘です」
- 紫擾
- 「やや、あきりん、いつの間にツナギに着替えてたんだ?」
- 竜胆
- 「さっき。車の中でね」
- 紫擾
- 「なんだ、一言言ってくれたら、着替えを手伝ってあげた
のに」
- 竜胆
- 「いらんわ……そろそろ出ようか? エンジン暖めないと
いけないしぃ」
- 紫擾
- 「公道最速仕様とレース車両があるんだ、今回は負けないぞ」
- 時雨
- 「あぁ!!」
- 観楠
- 「どうしたんです?」
- 時雨
- 「今わかりましたが、この軽バンってMTじゃないですか」
- 観楠
- 「それがどうかしましたか?」
- 時雨
- 「店長、あきりんはAT専用の免許ですよ」
- 観楠
- 「そっそれは……、犯罪者だね(笑)」
- 時雨
- 「そうですねぇ(笑)」
- 竜胆
- 「いや〜、ここまで持ってくるのは大変だった」
- 時雨
- 「そりゃそーだろう」
- 竜胆
- 「一速だとがっこんがっこんいって大変だから、二速で発
進してたんだけど、まあいいわな(笑)」
ところでてんちょは今いずこであろーか(笑)
- 時雨
- 「店長さんなら、さっき 『私のことを忘れないで下さい
ねぇ〜』って言いながら去っていきましたが(笑)」
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