エピソード360『吹利学院文化祭'96』


目次


エピソード360『吹利学院文化祭'96』

吹利学院放送部の経緯

これまで吹利学院放送部は文化祭で何をやっていたかと言うと、レンタルしてきたVTRを上映するとか、落とし物や迷子のお知らせをやる程度。ほとんど
 『表舞台でやる活動』らしきコトをやっていなかった。
 以前書いたと思うが、ことしの吹利学院放送部は、一味違う。体育祭では競技のド派手な実況中系を展開。これまではどちらかというとイベントの度に裏方役に徹することが多かった放送部を、一気に『イベントの度に急浮上する』潜水艦のような倶楽部(普段は沈んでるけど……)へと変貌を遂げさせる、その第一歩に成功したのだ。
 現放送部部長にして究極の野心家――岩沙琢磨呂――は、この文化祭と言う日を見落とすはずが無かった。そして、運命の女神は琢磨呂に微笑んだのだった……。

ターゲットは、文化祭!

放送部には他の倶楽部がそうであるように顧問の先生が居る。人はその名を
 『アッキーラ=仲村』と呼ぶ。仲村アキラではなく、アッキーラ仲村だそうな。その奇妙な言動と190Cmに届こうかと言う身長は人を威圧する……もとい、人に奇妙とさえ感じられる。謎多き人物であると言う事以外は全て謎の人物である。

アッキーラ
「(ドスの効いた声で)おい、岩沙」
琢磨呂
「あ……先生、どーしたんすか?」
アッキーラ
「以前岩沙が言ってた計画だけどなぁ、スタジオを使えば 出来るかもしれないぞぉ」
琢磨呂
「す、すたじお? んなもんがこのケチ学校にあるんです かい?」
アッキーラ
「一応スタジオのカッコだけはしているぞぉ」
琢磨呂
「カッコだけと言いいますと?」
アッキーラ :「……カメラもなければ配線もない。あるのは LINE-INの
コネクターのみ」
琢磨呂
「でも……放送部のビデオカメラを設置して出力端子から ダイレクトに繋げば、もしかしたら全校のテレビにリアルタイムで映像を送ると言う俺の野望が達成出来るんじゃ?」
アッキーラ
「LINE-IN と書いてあるだけでなく、本当にちゃんとした LINE-IN ならばのはなしだけどなぁ」
琢磨呂
「そ……そんなぁ……」
アッキーラ
「解らんぞぉ。体育館に 20Wのスピーカーを設置する学校 だからな」
琢磨呂
「(T_T) とにかく、電波がちゃんと飛ぶかどうか、 早い うちにチェックしましょう……」
アッキーラ
「しかし、許可がなかなか下りんとおもうから、直前にな るとは思うぞぉ……」
琢磨呂
「(文化祭直前まで待たされた挙げ句に電波が飛ばなかっ たら、職員室まるごと吹っ飛ばしてやる)」

文化祭準備期間突入!

アッキーラ
「カギ持ってきたぞぉ」
樫根
「いよいよですね、先輩」
琢磨呂
「おっしゃぁ〜! 行くぜッ……(キーをあける)」

琢磨呂と樫根(放送部部員。琢磨呂の後輩であり、麗衣子と同学年)は、スタジオに器材を運びこみ、黙々と接続チェックを始める。電波が飛ぶかどうか、唯それだけが気がかりで、普段は放送部で最も陽気な二人ではあるが、それが解るまでは二人とも無口だ。

琢磨呂
「良し、モニターテレビに出力」
樫根
「OKです、先輩」
琢磨呂
「……(試験用TVに画像出現)……良し、チェックコンプリー ト。さて、いよいよホントの転送テストだ。コネクターは5種類……まず、こいつから(チャキッ)」
樫根
「……画像、出ません」
琢磨呂
「次、こっち(ジャキ)」
樫根
「ちょっと画面が揺れたけど、ダメです」
琢磨呂
「うぬっ……つぎ!(チャキ)」
樫根
「反応……なし……」
琢磨呂
「ええい、あと2つ(カチャ)」
樫根
「ダメみたいです……」
琢磨呂
「男は最後まであきらめなーーーい!(ガチャコン)」
樫根
「全然反応ナシです」
琢磨呂
「ぬおおおおおおおおおっ!俺の夢が、希望がぁぁぁぁぁッ!」
アッキーラ
「岩沙、ブースター(信号増幅機) かまして見たらどうだ」
琢磨呂
「出るもので画室が悪いんだったら信号系のトラブルだけ ど、出ないものにブースターかましてもなあ」
アッキーラ
「(ブースターを繋いでる) 樫根、もう一度やって見てく れ」
琢磨呂
「夢が……希望が……(放心してる)」
樫根
「さっき、系統2で画像が少し揺れたような気がするんで すけど……」

(数分後)

樫根
「出た! 出ましたよ、先輩!!」
琢磨呂
「あん? パチンコか?」
樫根
「何言ってんですか。画像ですよ、電波がちゃんと飛んだ んですよ。配線は生きてましたよ」
琢磨呂
「……な、なにっ!?」
アッキーラ
「やっぱりブースターかましたらちゃんと飛んだぞぉ」
琢磨呂
「む……メカのことで先生に遅れを取るとは俺らしくもな い……」
樫根
「とにかく配線は生きてたんですよ、計画を実行に移す時 です!」
琢磨呂
「よぉぉし……やるかァ!」
樫根
「そーこなくっちゃ、先輩」
琢磨呂
「差し当たって、このくそ汚い(5年ほど使われていなかっ た)スタジオを、カメラに晒せるように掃除せねば」
樫根
「そうですね……ぞうきん持ってこないと……あ、掃除機 があるけど……」
琢磨呂
「バカものぉ! 掃除ごときでうろたえるな。古来から、 掃除というものはなぁ……付いて来い、樫根。掃除とやらのコツを教えてやる」
樫根
(何言ってるんだろう……放送部一の掃除嫌いさんが……)

琢磨呂、文化祭実行委員会本部へ行く。ここは放送室と繋がっており(放送室とスタジオは別)放送部部員が待機している。

琢磨呂
「おーい、麗衣子ぉ〜」
麗衣子
「あ、せんぱーい。どーしたんですか?」
琢磨呂
「うん……実は俺、麗衣子にちょっと頼みたいことがあっ てさ……麗衣子じゃないと、駄目なんだ」
麗衣子
「え? あたしじゃないと?」
琢磨呂
「ああ……麗衣子だったら、引き受けてくれると信じてる から、麗衣子に言うんだけどな」
麗衣子
「う……うん(ほんのり桜色に赤面)」
琢磨呂
「こっち……付いてきて」
樫根
(せ……先輩っていう人は……)

スタジオ到着。

麗衣子
「で、先輩、頼みごとってなぁに?」
琢磨呂
「そーじしてくれ」
麗衣子
「(ほんのり桜色、解除)えっ?」
琢磨呂
「ここがクソ汚ねぇから、ソージして……(^^;」
麗衣子
「(桜色→真っ赤、怒りの赤)ぬぁんですってぇーーー!」
琢磨呂
「え……あ……いや……そ、そう……じ……」
麗衣子
「頼みごとは、それだけっ!?」
琢磨呂
「はい……それだけ……です」
麗衣子
「(嫌そうな顔)」
琢磨呂
「ゾーキン取ってきまーす」
麗衣子
「あっ……(琢磨呂、去る)……もうっ! 先輩ったら。仕 方ないわねぇ……(掃除機に手を掛ける)」
樫根
(先輩……強いんだか弱いんだか分かんないぞ……)

数分後

麗衣子
「先輩、ソコ拭いてっ」
琢磨呂
「へーへー(ごしごし)」
麗衣子
「樫根はソコ!」
樫根
「ほいほい……(ごしごし)」
琢磨呂
(おい樫根、解ったろう? 掃除のしかたってのが)
樫根
(でも結局こき使われんですね……)
琢磨呂
(掃除はあいつの方が本業だから仕方ない! よしんばあ いつに頼らずに俺ら二人でがやったとしても、ココが汚いだの、掃除機の使い方がなっていないだの、後でどうせ文句いわれるに決まってる。餅は餅屋だ)
樫根
(……でもなんかこういうのって凄く情けないんですけど……)
麗衣子
「なんか言った、二人とも」
二人
「(^^;(^^;(^^;(^^;(無言でごしごし)」

スタジオ……セットアップ

琢磨呂
「よし……これから、スタジオをスタジオらしくする!」
麗衣子
「先輩、何やろうとしてんの?」
琢磨呂
「放送部のメジャー化計画だよ(えばりっ)」
麗衣子
「ぢゃなくってぇぇぇ(耳をつねる)」
琢磨呂
「あででででででで!」
麗衣子
「具体的に何やるの、ってこと」
琢磨呂
「(特撮番組のナレーターのような声で)説明しよう。我が 軍……もとい我等が放送部は、ここスタジオにVTRをセットする。そして、全校で計7箇所にTVを設置する。そして、ここスタジオから、 『生放送』で全校に番組をながすのだぁぁぁぁぁぁっ!……はぁはぁ」
麗衣子
「そんな事が本当に出来るものなの?」
琢磨呂
「ふっ……そこのところは(パチン)」
樫根
「できるんだな、これが。クックククク(笑)」
琢磨呂
「ふはははははははははははははは!」
麗衣子
(絶対危ないわ、この二人)
琢磨呂
「ごほごほっ……」
麗衣子
「笑いすぎや」
樫根&琢磨呂
「よけいな御世話だっ!」
樫根
「あ、先輩、早くやろ、早くやろぉぉぉん(うるうる)」
琢磨呂
「どわぁぁぁぁっ、気持ち悪ィ! 何をやるんだ、何を!」
樫根
「……先輩、かんっぜんに忘れてたでしょ」
琢磨呂
「フン(大えばりっ)……何の話しだ?」
樫根
「……デコレーション。スタジオの飾り付けっ!」
琢磨呂
「おおおっ! 同志カシネンスキーよ、よくぞ思い出させ てくれた」

(数分後)

琢磨呂
「まず、アナウンサー用のなが机が要るぞ」
樫根
「(どこからともなく長机を持ち出す)これで行けますよね?」
琢磨呂
「ど……どっから取ってきてん……」
樫根
「隣の部屋に転がってました」
琢磨呂
「う……うむ。あとイスだが、アナウンサー二人+ゲスト をよぶことを考えて、3つ欲しい所な……え!?」
樫根
「はい、3つ。転がってましたよ」
琢磨呂
「(……五次元ポケットでも持ってるんかお前は)」
樫根
「でも先輩、この長机だと放送してる時に足が見えちゃい ますよ」
麗衣子
「先輩、かっこ悪いよそれは。テーブルクロスみたいなの で覆っちゃわないとさぁ……」
琢磨呂
「こりゃ何とかせねばなぁ……おおっ!?」
麗衣子&樫根
「な……とつぜん何を」
琢磨呂
「同志カシネンコフ!! イスもって、来い!」
樫根
「はいはい」

琢磨呂、スタジオの隣の教室の窓際まで走ってゆく

琢磨呂
「ナイスなテーブルクロスが、窓にかかってるじゃぁない か!」
樫根
「そうかっ!」
琢磨呂
「うなづいてないで、イス支えとけよ」

琢磨呂は黄色がかった乳白色のカーテンを外し、先程運びこんだ長机にかける。

麗衣子
「計ったようにピッタリですよ〜、先輩」
琢磨呂
「おっしゃぁ!」
樫根
「なんか、どんどん放送席らしくなってきましたねぇ、先 輩(わくわく)」
琢磨呂
「ああ! あと、コップも持ってきてお茶でも注いでおこ う」
樫根
「奏でる曲は、『テツコの部屋』のテーマソングですか?」
琢磨呂
「……却下する」

数分後、グラス2つがテーブルに並んでいた。

樫根
「もう、最高やないですか!」
麗衣子
「奇麗になるもんやな、ほんまに!」
琢磨呂
「ん……」
樫根
「さ、先輩、TV運びましょうよ」
琢磨呂
「何か、忘れているような気がする」
樫根
「机の上にEVAのフィギュアでも置きますか?」
琢磨呂
「ラーイトニングパーンチ(ドバキッ)」
樫根
「ほげーっ!」
琢磨呂
「何か……なんか物足りないんだぁぁぁっ!」
樫根
「痛いなーもう。で、何が足りないんですか?」
琢磨呂
「それが解ったら苦労せんわぁぁぁぁぁ!」
樫根
「ひぃぃぃ恐ろしやぁ〜」
琢磨呂
「か〜し〜ねぇ〜」
麗衣子
「ねぇ……先輩?」
琢磨呂
「(樫根を追いかけ回すのをやめる) ん、なんだ?」
麗衣子
「なんか寂しいやん。お花でも持ってこようか、明日」
琢磨呂
「そぉぉぉぉだぁぁぁぁぁ!」
樫根
「重曹ですか?」
琢磨呂
「それは重炭酸ソーダーだぁぁ(ばきっ)」
麗衣子
「いきなり何わけ分かんないこと言ってるのよ!  何が 『そうだ!』なのよ」
琢磨呂
「だから重曹……じゃなくって、花だ! 俺が足りないと 思ってたのは」
麗衣子
「じゃぁ、今日の帰りにでもお花屋さん寄って……」
琢磨呂
「あ、ま、い!」
麗衣子
「え?」
琢磨呂
「花屋に行く必要なぞ、ない!」
麗衣子
「……どーせまた、 裏の空き地でタンポポでも拾ってく りゃぁいいとか言うんでしょ!」
琢磨呂
「想像力の貧弱な奴だ……俺はいつもそんな馬鹿な事ばっ かり言ってるようにみえるか?」
麗衣子
(深くうなずく)
琢磨呂
「……もういい、ちょっと用事があるからでかけてくる。 すぐ戻るけど」
麗衣子
「どこ行くのよ。まさかこの忙しい最中に食堂でゆっくり しようなんて魂胆じゃ……」
琢磨呂
「フッ……どこまでも読みの甘いやつめ。茶道室に行って くる。茶道部は、正式名を『茶/華道部』と言うのだ。覚えておいて損はないぞ」
麗衣子
「ああっ!」

茶道部/華道部

吹利学院では文化系クラブの結束は硬い。関係者以外立ち入り禁止! な部室等でも、文科系クラブの有力者はフリーパスなのであった。
 茶道室前の廊下で、生け花の展示の為のスペースを整理している茶道部部員
 「磯咲美樹」と「松本美保子」が居る。

琢磨呂
「おーい! ミキ〜っ」
美樹
「あ、おはよーいわさくん(琢磨呂の3倍のVOLUMEで)」
琢磨呂
「相変わらず元気だな」
美樹
「あんたほどやないって」
琢磨呂
「へーへー」
美保子
「あ、岩沙君だ! おはよっ」
琢磨呂
「よう!」
美保子
「お茶でも飲んでいく?」
琢磨呂
「(麗衣子の恐い顔が頭に浮かぶ) いや、ちょっと忙しい から今は遠慮させてもらうよ。実はね、かくかくしかじかで、生放送するんだけど、その全校に流れる映像に茶道部の花を映してあげようと思ってね」
美保子
「放送部、ことしはそんなことするの?」
琢磨呂
「これまでは目立たない倶楽部だったけどな、俺が部長だ ぜ? 目立たないようにする方が、おかしいってもんだろ」
美樹
「岩沙君が立ってるだけで十分めだつって」
琢磨呂
「ミキほどじゃねーよ」
ミキ
「えーっ! そんな事いわれたらミキこまっちゃーう(ダ ダっこモード)」
琢磨呂
「(小声で) おい松本、大丈夫かミキの奴? ぶっ飛んじ まってるぞ」
美保子
「忙しいからねぇ〜。最後の文化祭ってこともあるしね」
琢磨呂
「……そっか……そうだよな(最後かぁ……実感わかねーな)」

数分後、美保子が花を選んでくれる。

美保子
「これなんかどう?」
琢磨呂
「いや、俺は作法だのゲイジュツだの、これっぽっちもわ からんからな。松本が良いって言ったのでいいよ」
美保子
「じゃぁ……これね!」
琢磨呂
「ほえーっ……よくできてるじゃねーか」
美保子
「新入部員の中学生が作ったのよ」
琢磨呂
「ふーん……じゃぁ、そいつに俺が礼をいってたって伝え といてくれるか?」
美保子
「うん、わかった」
琢磨呂
「……また来るよ。じゃ、文化祭頑張ってくれよな!」
美保子
「岩沙君もね」
琢磨呂
「いわれんでも頑張ってるだろうに。じゃぁな!」

チャラリラッタター! 琢磨呂は『生け花』を入手した。経験値が5上がった、魅力が1上がった。

演劇部の場合

秋に行われる一大イベント。
 燃える人もいれば、冷めてる人もいる。
 ここには前者も後者もいるようだ。

夏和流
「コーキチくぅぅぅぅん!」
洋介
「(ぎくっ)」
夏和流
「演劇部の君がなぜ、今こんなところを歩いてしているの かなぁぁぁぁぁ!」
洋介
「俺、コーキチって名前じゃないから……」
夏和流
「きゃぁっっっっか! 既に君の名はコーキチとして登録 されたのだ! 例えそれが劇の中だけとしても! さあ、とっとと用意する! 劇を始めるぞぉぉぉ」
洋介
「俺は演劇なんかに入りたかったんじゃないのに……」
夏和流
「今更ぐちぐち言わない!」

演劇部の練習風景(一週間前)

夏和流(子役)
「『父さんは、こんな所でなにをしているの?』」
D先輩(父役)
「『おまえ……』じゃなくて、えーと」
全員
「だぁぁぁぁ……」
父役
「ご、ごめん」
夏和流
「せんぱぁい、あと一週間ですよ」
父役
「うん、まあ何とかする」
同級生M
「やはりやめた方が……」
夏和流
「おのれはだまっとれい。なんとしてでもやるのだ」
部長
「まあ、今日はここまでにしておこうか。……ところで夏 和流君、パドル作成はうまくいってる?」
夏和流
「美術部の協力を受け、このとおりです(と、手作りのパ ドルを見せる)」
部長
「(パドルを見ながら) 色が変だけど……」
夏和流
「そ、それは……(汗) 目立っていいかな、と……」
部長
「目立ち過ぎだってば(汗)」
夏和流
「……あとで直しておきます」

そして、前日

部長
「じゃ、今日はここまで」
全員
「ふー」
部長
「で、明日は最後の朝練で8時からね(笑)」
全員
「げげっ!」
夏和流
「今日は『殺戮機械2 特別編』が……」
部長
「明日の早起きのために却下」
夏和流
「……(泣)」
部長
「それより、パドルまだ直してないじゃない」
夏和流
「あ……えっと、明日直しますね(汗)」
同級生M
「ああ、とうとう無理矢理演じさせされる日が……」
夏和流
「やかましい。無理矢理だろうと、ここに入った時点で物 語は決まったのだ。あきらめろ」
同級生M
「……(泣)」

そして本番がはじまった

部長
「準備はいい、みんな?」
夏和流
「……寝不足をのぞけば」
部長
「……昨日テレビをみてたでしょ」
夏和流
「野球放送さえなければ、十分に睡眠時間がとれるはずだっ たんですよぉ(汗)」
部長
「しかも、パドルはとうとう変な色のままだし」
夏和流
「……うっ。あ、赤と青でもきれいですっ(汗)」
部長
「すっごく毒々しいわ」
夏和流
「……(泣)」

そして幕が上がり、曲が流れ……

部長
「(小声) 曲が違うっ!」
夏和流
「(同じく小声) ああ、先生のくせに間違えるかっ!?」
部長
「(更に小声) しょうがない、みんな始めるよっ」

なんとか始めてみたが……

D先輩(父役)
「『おまえ……』じゃなくて、あー」
夏和流(子役)
「(小声) 先輩、合ってますよ。いいんです、続けて」
D先輩(父役)
(気がついていない)
夏和流(子役)
「(更に小声) いいんですってばぁ!」

さらに……

部長
「登場シーンの曲がまた違う!」
全員
「あああ!」

えばっていたくせにセリフを忘れる者も……

D先輩(父役)
「(小声) 俺だっけ?」
夏和流(子役)
(ぼーっとしてる)
U先輩(母役)
「(小声) セリフっ! ここもあるわよっ!」
夏和流(子役)
(気がつかない)
部長(兄役)
「(声が少し大きい) セリフっ!」
夏和流(子役)
「(あ、やばっ)『手が痺れてきちゃった』」
全員
「だぁぁ……」

そして、やっとラスト……

部長(兄役)
「『時計が、動き始めた』(幕が下りる)」
(ぱちぱちぱち)
夏和流
「先輩、キャスト紹介が残ってますよ」
U先輩
「あーん、終わったと思ったから飴がまだ口に……」

反省会

部長
「さて、今日の反省……」
夏和流
「セリフ忘れてました」
D先輩
「セリフ間違えました」
先生
「曲を間違えてました」
部長
「……まあ、お客さんのアンケートはまずまずだけれど」
夏和流
「どんなことが書いて合ったんですか、先輩」
部長
「『三河君の髪型が可愛くなったわけがわかりました』」
夏和流
「短くしただけだぁ!(赤面)」
部長
「『音楽に気をくばりましょう』」
先生
「あああ、みんなごめん〜」
部長
「『セリフがよくでていました』」
夏和流
「……この人は絶対寝てたんじゃないですか?」
部長
「あたしもそー思う。絶対きちんと見てなかったわね。
……まあ、うまかった人もいれば失敗した人もいるという事で、来年がんばりましょう」
夏和流
「でも、来年は先輩たちも、卒業しちゃってますね……(寂 しげ)」
部長
「うん。というわけで、がんばってね、次期部長」
夏和流
「へ? 僕ですか??」
部長
「そ。がんばってね」
夏和流
「(感動している) 是非、がんばらせていただきます」
同級生M
「来年こそは、演劇部から逃げよう……」

こうして、演劇部の文化祭は終わりを告げる。だが、来年もあるぞ! がんばれ、夏和流! 負けるな、夏和流! 大会にでるその日まで! 



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